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卒業後
1052 星暦558年 紫の月 14日 音にも色々あり(15)
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パッパラパッパ、パッパラパッパ、パッパラパッパー!!
『救助要請!救助要請!!』
パッパラパッパ、パッパラパッパ、パッパラパッパー!!
『救助要請!救助要請!!』
楽団に貸したのと同じ防音用魔具の中で鳴らした緊急事態用の音をウォレン爺に聞かせる。
「どうですかね?
長時間ループさせてもある程度の時間が経ったらどうせ中の人間が死に絶えているか犯人が逃げているだろうというウィルの意見を採用して、緊急用スイッチを押したら2ミルだけなり続ける形にしてあります」
アレクが説明した。
一回分だけ記録してそれをループさせることも考えたが、ループさせるための魔術回路と魔石よりも2ミル分だけ記録させてそれを一回流す方が単純な構造と少ない費用ですむので、頑張って2ミル分を記録したのだ。
どうせ部屋の中で殺し合いが始まっていたら、2ミルも経てば犯人は見切りをつけて逃げてるか、ターゲットが死んでるかだろうし。
突撃用トランペットを鳴らしたり怒鳴ったりを続けるのは意外と2ミルの間だけでも疲れた。
怒鳴るのも長時間やろうと思うと息が切れるんだな。
ちなみにトランペットに関しては、俺やシャルロやアレクが頑張って息を吹き込んでも最初は『ふ~』という空気が抜ける音しか出ず、もう少しコツがつかめても『プー!』という気の抜けた子供用のオモチャのような音までしか進化しなかった。
暫く練習したが、結局諦めてキルスから人を借りた。
突撃用トランペットと楽団用のトランペットでは比べるのも烏滸がましいぐらい複雑さが違うらしいが、一応楽団用でも突撃命令のと同じ様な音が出せていたので、あれで良いだろう。
突撃用のトランペットってプロの音楽家じゃなくて素人の兵隊が鳴らすんだから、息さえ吐き出せれば良いんじゃないの???と俺たちはかなり驚いたんだが。
これって戦場でもしもの事があってラッパ吹きが倒れたりしたら、そこら辺の軍人でも同じような音が出せるんかね??
突撃開始の時に指揮官の傍にいるであろうラッパ吹きが既に死んでいるんだったら突撃なんぞしない方が良いから構わないだろうが、指揮官とラッパ吹きが死んじまって撤退命令を出せなくなったらどうなるんだろう?
まあ、魔術師が居る戦場だったらラッパ吹きじゃなくて魔術師による炎や雷の術で合図とすることもできるが・・・空にそんな物を打ち上げる魔力があったら敵軍にそれを放つ方が撤退の際の敵の足止めにもなるだろうに。
願わくは、俺たちがそんな戦場に出なけりゃいけないような事態にならないと期待したい。
・・・シャルロが居る状況で味方が不利になってシャルロに危険が及びそうになったら、さっさと蒼流が敵軍を水で洗い流しちまいそうだが。
兵士を直接殺すのに精霊を使うのは、余程差し迫っていない限りどの国もそれなりに自制しているのでそんな事態にはならないと願っている。
学院長は若い頃には戦場へ駆り出されてたという話だが。
それはさておき。
「トランペットの音は良いが・・・ちょっと声の方は気が抜けるの。
丁度いい鬼軍曹を知っているから、明日にでもそいつを寄越そう」
ウォレン爺が言った。
やっぱり?
俺とシャルロとアレクで怒鳴り合ってみたんだが、どれもイマイチ音量が大きくないし迫力と言うか緊急性も微妙だったんだよなぁ。
元々俺は大声を出すよりも静かに動く方だし。
シャルロは大声を出すこと自体が品格にもとると教わってきたお坊ちゃまだし。
アレクも魔術師が怒りに我を忘れて怒鳴るなんてみっともないし危険だと考えて育ってきた人間だからな。
怒鳴るのってそれなりに慣れていないと意外と上手く出来ない事が判明した。
「そうですね、大声を出すのに慣れている軍人に来て貰った方が良いでしょう。
それが終わったら一度実際に騎士団の会議室なり執務室なりで使ってみてどの程度の距離まで音が届くかも試したいですね」
アレクが言った。
「ちなみに、その鬼軍曹の声って他へこれを売り出した際に使ってもいいよね?」
シャルロが口を挟む。
「・・・まあ、良いが。
商家でそんなトランペットの突撃命令の音とか救助要請の怒鳴り声が鳴り響いて、他の人が救助に来てくれるのか?
慌てて皆が逃げてしまう気もするぞ?」
ウォレン爺が首を小さく傾げながら聞き返した。
「まあ、商家の場合でしたら暗殺者や頭のおかしい人間が入り込んで人を殺し始めたなら、管理職や当主はさっさと逃げて、警備担当だけ来るかそれこそ街の警備兵でも呼ぶ方が良いですからね。
ある意味、『逃げろ』と言う警告代わりだと考えて貰っても構いませんよ」
アレクが応じる。
なる程。
既に死んでいる可能性が高い会議中の人間よりも、他の幹部が殺されない様に逃げろと言う警告代わりになるのか。
まあ、普通の商家でそこまで物騒なことは滅多に起きないとは思うが。
騎士団の拠点でだったら試しに鳴らしても良いだろうが、これを普通の商家で試しに鳴らす場合は防音用魔具を使わないと近所迷惑になりそうだな。
『救助要請!救助要請!!』
パッパラパッパ、パッパラパッパ、パッパラパッパー!!
『救助要請!救助要請!!』
楽団に貸したのと同じ防音用魔具の中で鳴らした緊急事態用の音をウォレン爺に聞かせる。
「どうですかね?
長時間ループさせてもある程度の時間が経ったらどうせ中の人間が死に絶えているか犯人が逃げているだろうというウィルの意見を採用して、緊急用スイッチを押したら2ミルだけなり続ける形にしてあります」
アレクが説明した。
一回分だけ記録してそれをループさせることも考えたが、ループさせるための魔術回路と魔石よりも2ミル分だけ記録させてそれを一回流す方が単純な構造と少ない費用ですむので、頑張って2ミル分を記録したのだ。
どうせ部屋の中で殺し合いが始まっていたら、2ミルも経てば犯人は見切りをつけて逃げてるか、ターゲットが死んでるかだろうし。
突撃用トランペットを鳴らしたり怒鳴ったりを続けるのは意外と2ミルの間だけでも疲れた。
怒鳴るのも長時間やろうと思うと息が切れるんだな。
ちなみにトランペットに関しては、俺やシャルロやアレクが頑張って息を吹き込んでも最初は『ふ~』という空気が抜ける音しか出ず、もう少しコツがつかめても『プー!』という気の抜けた子供用のオモチャのような音までしか進化しなかった。
暫く練習したが、結局諦めてキルスから人を借りた。
突撃用トランペットと楽団用のトランペットでは比べるのも烏滸がましいぐらい複雑さが違うらしいが、一応楽団用でも突撃命令のと同じ様な音が出せていたので、あれで良いだろう。
突撃用のトランペットってプロの音楽家じゃなくて素人の兵隊が鳴らすんだから、息さえ吐き出せれば良いんじゃないの???と俺たちはかなり驚いたんだが。
これって戦場でもしもの事があってラッパ吹きが倒れたりしたら、そこら辺の軍人でも同じような音が出せるんかね??
突撃開始の時に指揮官の傍にいるであろうラッパ吹きが既に死んでいるんだったら突撃なんぞしない方が良いから構わないだろうが、指揮官とラッパ吹きが死んじまって撤退命令を出せなくなったらどうなるんだろう?
まあ、魔術師が居る戦場だったらラッパ吹きじゃなくて魔術師による炎や雷の術で合図とすることもできるが・・・空にそんな物を打ち上げる魔力があったら敵軍にそれを放つ方が撤退の際の敵の足止めにもなるだろうに。
願わくは、俺たちがそんな戦場に出なけりゃいけないような事態にならないと期待したい。
・・・シャルロが居る状況で味方が不利になってシャルロに危険が及びそうになったら、さっさと蒼流が敵軍を水で洗い流しちまいそうだが。
兵士を直接殺すのに精霊を使うのは、余程差し迫っていない限りどの国もそれなりに自制しているのでそんな事態にはならないと願っている。
学院長は若い頃には戦場へ駆り出されてたという話だが。
それはさておき。
「トランペットの音は良いが・・・ちょっと声の方は気が抜けるの。
丁度いい鬼軍曹を知っているから、明日にでもそいつを寄越そう」
ウォレン爺が言った。
やっぱり?
俺とシャルロとアレクで怒鳴り合ってみたんだが、どれもイマイチ音量が大きくないし迫力と言うか緊急性も微妙だったんだよなぁ。
元々俺は大声を出すよりも静かに動く方だし。
シャルロは大声を出すこと自体が品格にもとると教わってきたお坊ちゃまだし。
アレクも魔術師が怒りに我を忘れて怒鳴るなんてみっともないし危険だと考えて育ってきた人間だからな。
怒鳴るのってそれなりに慣れていないと意外と上手く出来ない事が判明した。
「そうですね、大声を出すのに慣れている軍人に来て貰った方が良いでしょう。
それが終わったら一度実際に騎士団の会議室なり執務室なりで使ってみてどの程度の距離まで音が届くかも試したいですね」
アレクが言った。
「ちなみに、その鬼軍曹の声って他へこれを売り出した際に使ってもいいよね?」
シャルロが口を挟む。
「・・・まあ、良いが。
商家でそんなトランペットの突撃命令の音とか救助要請の怒鳴り声が鳴り響いて、他の人が救助に来てくれるのか?
慌てて皆が逃げてしまう気もするぞ?」
ウォレン爺が首を小さく傾げながら聞き返した。
「まあ、商家の場合でしたら暗殺者や頭のおかしい人間が入り込んで人を殺し始めたなら、管理職や当主はさっさと逃げて、警備担当だけ来るかそれこそ街の警備兵でも呼ぶ方が良いですからね。
ある意味、『逃げろ』と言う警告代わりだと考えて貰っても構いませんよ」
アレクが応じる。
なる程。
既に死んでいる可能性が高い会議中の人間よりも、他の幹部が殺されない様に逃げろと言う警告代わりになるのか。
まあ、普通の商家でそこまで物騒なことは滅多に起きないとは思うが。
騎士団の拠点でだったら試しに鳴らしても良いだろうが、これを普通の商家で試しに鳴らす場合は防音用魔具を使わないと近所迷惑になりそうだな。
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