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卒業後
1051 星暦558年 紫の月 11日 音にも色々あり(14)
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「会議室用のに関してだが、外側に呼び出しベルか緊急非常ベルみたいのがあったら良いという意見があったの」
試作品に対する改善点について聞いたら、持ち運びしやすくとか雑音用の音のタイプとかではなく、ちょっと今までになかった要望が来た。
「外側にベル??」
シャルロが首を傾げて聞き返す。
「あ~。
部屋の中に護衛を入れずに秘密事項に関する会議をやっている時に、裏切り者が居て戦闘になった際に守られる立場の人間が素早く助けを呼べるようにって感じか」
大きな音を立てれば分かるとはいえ、それこそ女性が襲われそうになって悲鳴を上げたら部屋の外に人が通りがかっていたら聞こえるかもと言う程度なので、最初から口元を塞いで襲ったり、凄腕な人間がザスっと護衛役を切り捨て始めたりした場合に外に聞こえる程大きな音を出せるかは確かに怪しい所だからな。
「なるほど。
中に入る護る必要のある人間に持たせる、押したら盗聴用結界の外から大音響で音が鳴るようなスイッチを作って欲しいということですか。
もしくはお茶が欲しい時に呼べる程度か。
まあ、お茶は自分でドアを開けて声を掛ければ良いので、やはりこの際は緊急事態を知らせるための非常ベルが良いでしょうね」
アレクが俺の言葉に頷きながら応じる。
「うむ。
読唇術を持っている人間はそれなりに多いからな。
議題によっては護衛を部屋の中に入れずに話し合いをすることもあるだろう。
もしもの事があった場合、流石に全員が一気に殺されるということは無いだろうから、絶対に殺されてはいけない人間に非常事態を知らせる手段を持たせておけば、ドアの外に待機している護衛が間に合うと期待していると言うところじゃな」
ウォレン爺が言った。
まあ、護衛まで排除した厳選された人間しか入れない狭い部屋の中に潜り込めたプロだったら、何とか話の流れを上手く使ってターゲットの傍に近付いてまず最初にそいつを殺すと思うけどね。
ターゲットと同じ部屋に居るのに呑気に周囲の戦闘力がある人間から殺していく暗殺者なんて居ないぞ?
とは言え、暗殺《アサッシン》ギルドの人間ではなく、単に他国や他派閥に買収されたような人間や自分の悪事がバレそうになって焦っている人間だったらついうっかり手当たり次第に最終目標よりも手前に居る人間から殺そうとする可能性はあるかもだが。
「じゃあ、転移箱の改造版に使った名前を記録させる魔石に名前の代わりに大音量の何かを記録させてそれを流す感じにする?」
シャルロが提案する。
あれ?
考えてみたら、魔石に音を記録してそれを再生できるんだったらベルやシャカシャカ音じゃなくってなんかもっと無難な音を記録させてそれを繰り返し再生させることも可能か?
でも音の録音と再生用の魔術回路ってそれなりに複雑で高くつくな。適当な雑音を流せば良いだけの部分はシャカシャカと単純な構造を動かして音を出す方が壊れにくいし安くつく。
それこそ軍部に納品する魔具に関してもっと威厳のある音にしろとか要求があったら考えても良いけど、特に気にしていないみたいだし。
「甲高い女性の悲鳴か・・・突撃命令用のラッパの音でも鳴らしてくれればそれこそ慌てて人が集まるとおもうぞ?」
ウォレン爺が提案した。
いや、女性の悲鳴って確かに音が通るし注意を引くが、部屋の中に居る人間にとってかなり致命的な風評被害になりかねないんじゃないか?
突撃命令用のラッパなんて言うのもちょっと不穏だが・・・軍部で使う分には護衛とか周囲の騎士や兵士が素早く反応して良いのかも?
「突撃命令用のラッパが鳴った時って走り去るんじゃないんだ?
音の元に寄って来るのかね?」
突撃する先って敵陣の方なんだろ?
「突撃命令用のラッパは通常の状況で鳴らすことは許されておらん。
軍部であれが鳴ったら何事かと確実に人が集まる」
ウォレン爺が肩を竦めながら教えてくれた。
へぇぇ。
まあ、煩くて迷惑だから早々鳴らさないだろうとは思っていたが、突撃命令用のラッパって決まった状況でしか鳴らしちゃいけないんだ?
だったらどこでそれを鳴らさせて記録・再生のテストするのか、ちょっと微妙な気もするが・・・まあ、女性の悲鳴だって記録も再生も困る音だもんな。
ラッパの方が無難か。
ウチの工房の方だったら別に突撃命令用のラッパを鳴らしても大丈夫だろうし。
・・・元軍属のおっさんとかって近所に居ないよな?
一応パディン夫人に確認してから実験しよう。
というか、まずはラッパを入手しなくちゃな。
試作品に対する改善点について聞いたら、持ち運びしやすくとか雑音用の音のタイプとかではなく、ちょっと今までになかった要望が来た。
「外側にベル??」
シャルロが首を傾げて聞き返す。
「あ~。
部屋の中に護衛を入れずに秘密事項に関する会議をやっている時に、裏切り者が居て戦闘になった際に守られる立場の人間が素早く助けを呼べるようにって感じか」
大きな音を立てれば分かるとはいえ、それこそ女性が襲われそうになって悲鳴を上げたら部屋の外に人が通りがかっていたら聞こえるかもと言う程度なので、最初から口元を塞いで襲ったり、凄腕な人間がザスっと護衛役を切り捨て始めたりした場合に外に聞こえる程大きな音を出せるかは確かに怪しい所だからな。
「なるほど。
中に入る護る必要のある人間に持たせる、押したら盗聴用結界の外から大音響で音が鳴るようなスイッチを作って欲しいということですか。
もしくはお茶が欲しい時に呼べる程度か。
まあ、お茶は自分でドアを開けて声を掛ければ良いので、やはりこの際は緊急事態を知らせるための非常ベルが良いでしょうね」
アレクが俺の言葉に頷きながら応じる。
「うむ。
読唇術を持っている人間はそれなりに多いからな。
議題によっては護衛を部屋の中に入れずに話し合いをすることもあるだろう。
もしもの事があった場合、流石に全員が一気に殺されるということは無いだろうから、絶対に殺されてはいけない人間に非常事態を知らせる手段を持たせておけば、ドアの外に待機している護衛が間に合うと期待していると言うところじゃな」
ウォレン爺が言った。
まあ、護衛まで排除した厳選された人間しか入れない狭い部屋の中に潜り込めたプロだったら、何とか話の流れを上手く使ってターゲットの傍に近付いてまず最初にそいつを殺すと思うけどね。
ターゲットと同じ部屋に居るのに呑気に周囲の戦闘力がある人間から殺していく暗殺者なんて居ないぞ?
とは言え、暗殺《アサッシン》ギルドの人間ではなく、単に他国や他派閥に買収されたような人間や自分の悪事がバレそうになって焦っている人間だったらついうっかり手当たり次第に最終目標よりも手前に居る人間から殺そうとする可能性はあるかもだが。
「じゃあ、転移箱の改造版に使った名前を記録させる魔石に名前の代わりに大音量の何かを記録させてそれを流す感じにする?」
シャルロが提案する。
あれ?
考えてみたら、魔石に音を記録してそれを再生できるんだったらベルやシャカシャカ音じゃなくってなんかもっと無難な音を記録させてそれを繰り返し再生させることも可能か?
でも音の録音と再生用の魔術回路ってそれなりに複雑で高くつくな。適当な雑音を流せば良いだけの部分はシャカシャカと単純な構造を動かして音を出す方が壊れにくいし安くつく。
それこそ軍部に納品する魔具に関してもっと威厳のある音にしろとか要求があったら考えても良いけど、特に気にしていないみたいだし。
「甲高い女性の悲鳴か・・・突撃命令用のラッパの音でも鳴らしてくれればそれこそ慌てて人が集まるとおもうぞ?」
ウォレン爺が提案した。
いや、女性の悲鳴って確かに音が通るし注意を引くが、部屋の中に居る人間にとってかなり致命的な風評被害になりかねないんじゃないか?
突撃命令用のラッパなんて言うのもちょっと不穏だが・・・軍部で使う分には護衛とか周囲の騎士や兵士が素早く反応して良いのかも?
「突撃命令用のラッパが鳴った時って走り去るんじゃないんだ?
音の元に寄って来るのかね?」
突撃する先って敵陣の方なんだろ?
「突撃命令用のラッパは通常の状況で鳴らすことは許されておらん。
軍部であれが鳴ったら何事かと確実に人が集まる」
ウォレン爺が肩を竦めながら教えてくれた。
へぇぇ。
まあ、煩くて迷惑だから早々鳴らさないだろうとは思っていたが、突撃命令用のラッパって決まった状況でしか鳴らしちゃいけないんだ?
だったらどこでそれを鳴らさせて記録・再生のテストするのか、ちょっと微妙な気もするが・・・まあ、女性の悲鳴だって記録も再生も困る音だもんな。
ラッパの方が無難か。
ウチの工房の方だったら別に突撃命令用のラッパを鳴らしても大丈夫だろうし。
・・・元軍属のおっさんとかって近所に居ないよな?
一応パディン夫人に確認してから実験しよう。
というか、まずはラッパを入手しなくちゃな。
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