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卒業後
326 星暦553年 黄の月 6日 ちょっと趣味に偏った依頼(8)
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ウィルの視点に戻ります。
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「僕とアレクとで上から人避け結界の魔術陣をできる限り記録してくるから、ウィルはシェイラと遺跡に組み込まれていたらしき巨木を調べてきたら?
安全装置を付けるのは当然として、女性や学者の方々に自力で登らせるよりは浮遊《レヴィア》で樹の周りをゆっくりと周りながら上がっていくのが良いと思うな」
空滑機から降りてきた俺とシェイラに、シャルロがニコニコしながら話しかけてきた。
まあ、つい先日まで現役で機能していた魔術陣だから、俺じゃ無くても探す気になってじっくり見て回ればシャルロとアレクでも人避け結界は探せる。
だが、俺が視て図面化した方が効率的じゃ無いか?
・・・いや、俺以外でも視てとれるなら、シャルロがやった方が良いか。
俺って図面を書くのがあまり得意じゃ無いんだよなぁ。
前回のオーバスタ神殿遺跡の際に色々言われたな、考えてみたら。
「分かった。
じゃあシェイラ、まず後ろの樹から調べるか?」
振り返って、何やらツァレスと話し込んでいるシェイラに声を掛けた。
「そうね。
ツァレスさんがやりますか?
空滑機程は高く上がらないでしょうし、もっとゆっくりになると思いますよ?」
シェイラがツァレスに声を掛けた。
・・・浮遊の術って掛けた対象を浮かすだけなら良いけど、動こうと思ったら俺が手を繋いで引っ張る必要があるんだよね。
あまりおっさんの手を繋いで中空を動き回るのってやりたくないんだが・・・。
残念ながら、ツァレスはそこら辺のことを分かっていないのか、実際の術の起動方法に興味が無いのか、やる気満々だった。
「良いね!!!
じゃあ、僕が上がってくるからシェイラは通信機で伝えたことを記録にとっておいてくれるかい?」
あ~あ。
まあ、良いけどさ。
しょうが無いので、シェイラから安全装置を受け取り、ツァレスに付けるのを手伝う。
上に行きたがってジリジリしているツァレスに邪魔されながら安全装置を付け終わった時には、アレクとシャルロは既に上空に姿を消していた。
・・・考えてみたら、図形に落とし込むのはシャルロがやる方が良いが、空滑機を飛ばすのは別にアレクじゃなくって俺でも良かったじゃん。
ちょっと騙されたような気分だ。
アレクもきっと、おっさんと手を繋いで巨木の周りをゆっくり回っていくのが嫌だったに違いない。
「浮遊」
そんなどうでもいいことを考えながら、術を俺とツァレスに掛けゆっくりとテントの後ろの巨木の幹の周りを漂い始めたら、声にならない悲鳴を上げてツァレスがしがみついてきた。
うわっ!!
ひょろりとした見た目の癖して、ツァレスって意外と腕力がある!
力の限りに腹回りに抱きつかれて、苦しいぞ・・・。
「大丈夫ですよ、まだこの高さなら飛び降りたって痛くもないぐらいですし、もしもの事があっても安全装置を付けているので危険はありません」
おいおい。
まだ1メタ程度だぞ。
脚立3段分ぐらいだ。
天井に付けてある照明の魔道具の魔石を交換する際とかに、この高さならぽいっと飛び降りるだろうが。
「いや、だけど、足元が!!!」
「宙に浮くのですから足元がないのは当然でしょう。
大丈夫です。もしもの時の為にこの安全装置があるんですし、俺が手を離したとしても術の魔力が尽きるまでは落ちるのでは無く、単に宙に静止状態になるだけです。
樹の周りに居るのですから、樹を伝って降りていけますよ。
浮遊は宙に浮くだけなので、一日中2人で宙に浮いていても大丈夫なほど魔力の消費が少ないですから、魔力切れを心配する必要もありませんし」
何やらパニックしているツァレスを宥めようとするが、全く耳に入っていないようだ。
おいおい。
高いところが嫌いと言っても、まだ『高いところ』まで行ってないじゃないか。
この遺跡との関係を見ようと思ったら、数百年前に地表より上にあった部分を見る必要があるんだから、何かあるとしたらその場所はもっとずっと上の方になるぞ?
1メタでパニックしているのでは、どう考えても数十メタは上がる必要があることを考えると、ツァレスが巨木の上の方を調べるのは無謀じゃ無いか??
ツァレスに深呼吸をさせてみても、色々なだめすかしても状況が好転しないので、取り敢えず地面に降りた。
「・・・シェイラに観察して貰って、ツァレスが記録する方が現実的な気がしますが」
まるで空滑機で上空を高速で滅茶苦茶飛び回ったかのようにへたり込んだツァレスを見て、ため息を押し殺して提案した。
高いところが苦手な人って、ツァレスみたいな遺跡バカでも知的興味が恐怖を押しのけることが出来ないんだなぁ。
遺跡の発掘隊にいるような学者達って空腹感や睡眠不足を平然と無視するから、こういう遺跡バカの知的興味って全てのことを上回ると思っていたが・・・そうでもなかったようだ。
「大丈夫ですか?」
俺たちのやり取りを聞いていたシェイラがテントから出てきた。
「シェイラ。
すまない、観察の方を頼む。
ウィルにずっと横についていて貰うんだから大丈夫だろうと期待していたんだけど、やはり駄目だった・・・」
がっくりと落ち込んだ感じでツァレスが安全装置を外してシェイラに渡す。
そうか。
元々、不安だったのか。
安全装置を付ける際に妙に興奮していると思ったら、あれは不安を押し殺していたからなんだな。
「任せて下さい!」
ちょっと同情を込めた目でツァレスを見ていたが、それでも嬉しそうにいそいそとシェイラが安全装置を身に付けた。
こっちは高さは全然平気だよなぁ。
却って、夢中になっているときに上から連れ戻すのが大変そうな気がする・・・。
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「僕とアレクとで上から人避け結界の魔術陣をできる限り記録してくるから、ウィルはシェイラと遺跡に組み込まれていたらしき巨木を調べてきたら?
安全装置を付けるのは当然として、女性や学者の方々に自力で登らせるよりは浮遊《レヴィア》で樹の周りをゆっくりと周りながら上がっていくのが良いと思うな」
空滑機から降りてきた俺とシェイラに、シャルロがニコニコしながら話しかけてきた。
まあ、つい先日まで現役で機能していた魔術陣だから、俺じゃ無くても探す気になってじっくり見て回ればシャルロとアレクでも人避け結界は探せる。
だが、俺が視て図面化した方が効率的じゃ無いか?
・・・いや、俺以外でも視てとれるなら、シャルロがやった方が良いか。
俺って図面を書くのがあまり得意じゃ無いんだよなぁ。
前回のオーバスタ神殿遺跡の際に色々言われたな、考えてみたら。
「分かった。
じゃあシェイラ、まず後ろの樹から調べるか?」
振り返って、何やらツァレスと話し込んでいるシェイラに声を掛けた。
「そうね。
ツァレスさんがやりますか?
空滑機程は高く上がらないでしょうし、もっとゆっくりになると思いますよ?」
シェイラがツァレスに声を掛けた。
・・・浮遊の術って掛けた対象を浮かすだけなら良いけど、動こうと思ったら俺が手を繋いで引っ張る必要があるんだよね。
あまりおっさんの手を繋いで中空を動き回るのってやりたくないんだが・・・。
残念ながら、ツァレスはそこら辺のことを分かっていないのか、実際の術の起動方法に興味が無いのか、やる気満々だった。
「良いね!!!
じゃあ、僕が上がってくるからシェイラは通信機で伝えたことを記録にとっておいてくれるかい?」
あ~あ。
まあ、良いけどさ。
しょうが無いので、シェイラから安全装置を受け取り、ツァレスに付けるのを手伝う。
上に行きたがってジリジリしているツァレスに邪魔されながら安全装置を付け終わった時には、アレクとシャルロは既に上空に姿を消していた。
・・・考えてみたら、図形に落とし込むのはシャルロがやる方が良いが、空滑機を飛ばすのは別にアレクじゃなくって俺でも良かったじゃん。
ちょっと騙されたような気分だ。
アレクもきっと、おっさんと手を繋いで巨木の周りをゆっくり回っていくのが嫌だったに違いない。
「浮遊」
そんなどうでもいいことを考えながら、術を俺とツァレスに掛けゆっくりとテントの後ろの巨木の幹の周りを漂い始めたら、声にならない悲鳴を上げてツァレスがしがみついてきた。
うわっ!!
ひょろりとした見た目の癖して、ツァレスって意外と腕力がある!
力の限りに腹回りに抱きつかれて、苦しいぞ・・・。
「大丈夫ですよ、まだこの高さなら飛び降りたって痛くもないぐらいですし、もしもの事があっても安全装置を付けているので危険はありません」
おいおい。
まだ1メタ程度だぞ。
脚立3段分ぐらいだ。
天井に付けてある照明の魔道具の魔石を交換する際とかに、この高さならぽいっと飛び降りるだろうが。
「いや、だけど、足元が!!!」
「宙に浮くのですから足元がないのは当然でしょう。
大丈夫です。もしもの時の為にこの安全装置があるんですし、俺が手を離したとしても術の魔力が尽きるまでは落ちるのでは無く、単に宙に静止状態になるだけです。
樹の周りに居るのですから、樹を伝って降りていけますよ。
浮遊は宙に浮くだけなので、一日中2人で宙に浮いていても大丈夫なほど魔力の消費が少ないですから、魔力切れを心配する必要もありませんし」
何やらパニックしているツァレスを宥めようとするが、全く耳に入っていないようだ。
おいおい。
高いところが嫌いと言っても、まだ『高いところ』まで行ってないじゃないか。
この遺跡との関係を見ようと思ったら、数百年前に地表より上にあった部分を見る必要があるんだから、何かあるとしたらその場所はもっとずっと上の方になるぞ?
1メタでパニックしているのでは、どう考えても数十メタは上がる必要があることを考えると、ツァレスが巨木の上の方を調べるのは無謀じゃ無いか??
ツァレスに深呼吸をさせてみても、色々なだめすかしても状況が好転しないので、取り敢えず地面に降りた。
「・・・シェイラに観察して貰って、ツァレスが記録する方が現実的な気がしますが」
まるで空滑機で上空を高速で滅茶苦茶飛び回ったかのようにへたり込んだツァレスを見て、ため息を押し殺して提案した。
高いところが苦手な人って、ツァレスみたいな遺跡バカでも知的興味が恐怖を押しのけることが出来ないんだなぁ。
遺跡の発掘隊にいるような学者達って空腹感や睡眠不足を平然と無視するから、こういう遺跡バカの知的興味って全てのことを上回ると思っていたが・・・そうでもなかったようだ。
「大丈夫ですか?」
俺たちのやり取りを聞いていたシェイラがテントから出てきた。
「シェイラ。
すまない、観察の方を頼む。
ウィルにずっと横についていて貰うんだから大丈夫だろうと期待していたんだけど、やはり駄目だった・・・」
がっくりと落ち込んだ感じでツァレスが安全装置を外してシェイラに渡す。
そうか。
元々、不安だったのか。
安全装置を付ける際に妙に興奮していると思ったら、あれは不安を押し殺していたからなんだな。
「任せて下さい!」
ちょっと同情を込めた目でツァレスを見ていたが、それでも嬉しそうにいそいそとシェイラが安全装置を身に付けた。
こっちは高さは全然平気だよなぁ。
却って、夢中になっているときに上から連れ戻すのが大変そうな気がする・・・。
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