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卒業後
1035 星暦558年 赤の月 12日 ちょっと想定外な流れ(10)(第三者視点)
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>>>サイド セビウス・シェフィート
(ウィル君の所からこんなものが出て来るとなると・・・先日の自白剤騒ぎにはシェイラ嬢が関わっていたということか)
手に持った手紙を丹念に調べながら先ほど弟と一緒に出て行った青年の事を考える。
魔術師になったアレクとは学生時代からそこそこ仲良くしており、兄との跡取り争いの際にはしてやられた(多分)相手だ。
とは言え、自分もそれ程真剣に跡取りになりたいと思っていた訳ではないので恨みはないが。
自分だったらシェフィート商会を今以上に大きく出来るではあろうが、単に利益率が高い商会になるだけであって、働く従業員が本気で身を捧げるような商会にはならないのは分かっていた。
まあ、兄が動かすシェフィート商会がそこまで従業員から献身を受けられるかも不明だが、自分が動かすよりは人間味がある商会にはなるだろうし、兄が本気でやりたいならどうぞという思いもあり、兄の本気度を測る為に競争に参加していたのだ。
はっきり言って、シェフィート商会を動かすよりは商会に邪魔をしてくる他の商業ギルドの会員や貴族等の情報を集めて手を打てるように準備しておくことや、アレクが仲間と一緒に見つけてきた沈没船の貨物や美術品の歴史を探る方が楽しい。
金儲けよりも色々と難しい事に挑戦するのが自分は好きなのだ。
(こないだの自白剤騒ぎも一体どうやって魔術師の真偽の術にも関わらず捕まらずにやり遂げたのか、調べるのも面白そうだと思ったが・・・シェイラ嬢が関わっているなら下手に突いて彼女まで辿り着いてしまったら後で面倒なことになりかねないから、調べるのは止めておこう)
それよりも。
ギルドの役員になるのにザルガ共和国なんぞの金を使った不届き者をいぶり出す方が重要だし、楽しそうだ。
規模から行くと港から地下トンネルを掘った連中なんかも怪しいが、あれは発覚した時期と掘るのに掛かった時間を考えるともっと昔からあった密輸業者だろう。
となると、それに対抗しようとした商会か?
(トンネルと関係したザルガ共和国側の商会は・・・ヴァットパルナか)
資料を取り出して確認する。
あのトンネルは今まで何年もの年初捜査で見つかっていなかったから今年も大丈夫だろうと油断していたところに当局の襲撃を受けて、街の方の拠点まで隠し金庫を含めたほぼ全ての書類が押収されたのでかなり徹底的にヴァットパルナは検挙された。
ザルガ共和国側は苦情を言ったところでおざなりな対応しかされないのは分かっていたので、アファル王国は王宮側がヴァットパルナ商会に巨額な罰金と延滞税を課した上で商会との取引停止及び商会関係者のアファル王国への入国禁止を言い渡した。
商業ギルド側もそれに反対する動きが殆ど無かったのが多少意外だと思っていたのだが・・・誰か上の方の人間があの商会に競合する商会と繋がっていたのだったらそいつが商業ギルドの動きを鈍らせた可能性が高い。
ヴァットパルナ商会が追い出しを食らったことで取引量が増えた商会は・・・エーダルファ商会と、ヴェルパン商会。
ヴェルパン商会は裏ではヴァットパルナ商会と繋がり、実質あちらの人間を受け継ぎ看板を付け替えただけな商会なのでこちらはこの手紙の主とは関係は無いだろう。
となるとエーダルファ商会と、それに繋がる人間が怪しそうだ。
商業ギルドで2年前の役員投票の際に役を得た人間の関係者を調べていたら、下の玄関の方から来客の音がした。
ウィルから受け取った手紙を隠そうかと手を止めたが、聞こえた声に手を止めて、そのまま待つ。
「ねえ、あの過敏《アレルギー》体質安全用魔具を工房から勝手に流している人間がいるみたいなんだけど、調べて貰える?」
ワインのボトルを手に持った母親が部屋に入ってきた。
「ああ。
それだったら美人の涙に動かされた職人の一人が自分が作った分をこっそり渡していますね。
美人の方は実は既婚だし3人も他に愛人がいるんだから、親切に尽くしたところで報われないだろうに。
腕がいいから切り捨てるのは勿体ないでしょうが騙されたのは今回が初めてではないらしいので、工房の親方と対応策をしっかり話し合う方が良いですよ」
先日入手した情報を書いた紙を母に渡す。
「あらま。
困ったわねぇ。
ちょっと今度、話してくるわ。
で?
何をそんなに楽し気な顔をしているの?」
紙を受け取りながら母がワインを渡しつつ小さく首を傾げる。
「面白い手紙が手に入ったもので。
どの狸の皮を火炙りにすることになるかと考えている所なんでね」
手紙を受け取って目を通し始めた母親が深く息を吐いた。
「あらぁ~。
狸じゃなくて狐かも知れないわよ?
流石に鼠がこれを遣る勇気はないと思うけど・・・楽しそうね」
楽しい狩りの時間になりそうだ。
(ウィル君の所からこんなものが出て来るとなると・・・先日の自白剤騒ぎにはシェイラ嬢が関わっていたということか)
手に持った手紙を丹念に調べながら先ほど弟と一緒に出て行った青年の事を考える。
魔術師になったアレクとは学生時代からそこそこ仲良くしており、兄との跡取り争いの際にはしてやられた(多分)相手だ。
とは言え、自分もそれ程真剣に跡取りになりたいと思っていた訳ではないので恨みはないが。
自分だったらシェフィート商会を今以上に大きく出来るではあろうが、単に利益率が高い商会になるだけであって、働く従業員が本気で身を捧げるような商会にはならないのは分かっていた。
まあ、兄が動かすシェフィート商会がそこまで従業員から献身を受けられるかも不明だが、自分が動かすよりは人間味がある商会にはなるだろうし、兄が本気でやりたいならどうぞという思いもあり、兄の本気度を測る為に競争に参加していたのだ。
はっきり言って、シェフィート商会を動かすよりは商会に邪魔をしてくる他の商業ギルドの会員や貴族等の情報を集めて手を打てるように準備しておくことや、アレクが仲間と一緒に見つけてきた沈没船の貨物や美術品の歴史を探る方が楽しい。
金儲けよりも色々と難しい事に挑戦するのが自分は好きなのだ。
(こないだの自白剤騒ぎも一体どうやって魔術師の真偽の術にも関わらず捕まらずにやり遂げたのか、調べるのも面白そうだと思ったが・・・シェイラ嬢が関わっているなら下手に突いて彼女まで辿り着いてしまったら後で面倒なことになりかねないから、調べるのは止めておこう)
それよりも。
ギルドの役員になるのにザルガ共和国なんぞの金を使った不届き者をいぶり出す方が重要だし、楽しそうだ。
規模から行くと港から地下トンネルを掘った連中なんかも怪しいが、あれは発覚した時期と掘るのに掛かった時間を考えるともっと昔からあった密輸業者だろう。
となると、それに対抗しようとした商会か?
(トンネルと関係したザルガ共和国側の商会は・・・ヴァットパルナか)
資料を取り出して確認する。
あのトンネルは今まで何年もの年初捜査で見つかっていなかったから今年も大丈夫だろうと油断していたところに当局の襲撃を受けて、街の方の拠点まで隠し金庫を含めたほぼ全ての書類が押収されたのでかなり徹底的にヴァットパルナは検挙された。
ザルガ共和国側は苦情を言ったところでおざなりな対応しかされないのは分かっていたので、アファル王国は王宮側がヴァットパルナ商会に巨額な罰金と延滞税を課した上で商会との取引停止及び商会関係者のアファル王国への入国禁止を言い渡した。
商業ギルド側もそれに反対する動きが殆ど無かったのが多少意外だと思っていたのだが・・・誰か上の方の人間があの商会に競合する商会と繋がっていたのだったらそいつが商業ギルドの動きを鈍らせた可能性が高い。
ヴァットパルナ商会が追い出しを食らったことで取引量が増えた商会は・・・エーダルファ商会と、ヴェルパン商会。
ヴェルパン商会は裏ではヴァットパルナ商会と繋がり、実質あちらの人間を受け継ぎ看板を付け替えただけな商会なのでこちらはこの手紙の主とは関係は無いだろう。
となるとエーダルファ商会と、それに繋がる人間が怪しそうだ。
商業ギルドで2年前の役員投票の際に役を得た人間の関係者を調べていたら、下の玄関の方から来客の音がした。
ウィルから受け取った手紙を隠そうかと手を止めたが、聞こえた声に手を止めて、そのまま待つ。
「ねえ、あの過敏《アレルギー》体質安全用魔具を工房から勝手に流している人間がいるみたいなんだけど、調べて貰える?」
ワインのボトルを手に持った母親が部屋に入ってきた。
「ああ。
それだったら美人の涙に動かされた職人の一人が自分が作った分をこっそり渡していますね。
美人の方は実は既婚だし3人も他に愛人がいるんだから、親切に尽くしたところで報われないだろうに。
腕がいいから切り捨てるのは勿体ないでしょうが騙されたのは今回が初めてではないらしいので、工房の親方と対応策をしっかり話し合う方が良いですよ」
先日入手した情報を書いた紙を母に渡す。
「あらま。
困ったわねぇ。
ちょっと今度、話してくるわ。
で?
何をそんなに楽し気な顔をしているの?」
紙を受け取りながら母がワインを渡しつつ小さく首を傾げる。
「面白い手紙が手に入ったもので。
どの狸の皮を火炙りにすることになるかと考えている所なんでね」
手紙を受け取って目を通し始めた母親が深く息を吐いた。
「あらぁ~。
狸じゃなくて狐かも知れないわよ?
流石に鼠がこれを遣る勇気はないと思うけど・・・楽しそうね」
楽しい狩りの時間になりそうだ。
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