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卒業後
1015 星暦558年 藤の月 16日 棚以外にも使えるよね?(12)
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「ガビガビに固まっちゃってて泥が全然取れてないじゃん、これ!」
試作品から取り出したオムツは変な形に折れ曲がって固まっており、一番外側の汚れは落ちていたが広げてみたら内側部分にはガビガビに固まった泥がべっとりへばりついていた。
実際にウンチが付いたオムツを試作品で試したくはなかったので(赤ちゃんのウンチの入手も面倒そうだし)、シャルロが『感触的にこんな感じかな?』と言って捏ねた泥をべっとりと塗り付けたオムツを適当に赤ちゃんのお尻を拭いた感じに動かして、最初の水分除去とブラッシングをした後の汚れ落としの部分の試作品に突っ込んでみたのだが・・・。
全然駄目だった。
却って水分除去したことで泥(実際だったらウンチ)がオムツの生地に張り付いてしまった感じがするぞ、これ。
「オムツの片側を何かで留めて、下から強風を吹き付ける形にして乾かしながらオムツも伸ばしてみるか?」
かなり魔力が必要になりそうだし、小さな箱の中で強風を吹き付けたらどうなるのかちょっと不安だが。
「最後にブラッシングして汚れの除去もしなくちゃならないんだ。風で動かすよりも最終的にブラッシングに向いた形にした方が良いだろう」
アレクが言った。
「・・・じゃあ、がっと一気に水分を除去するんじゃなくて、徐々に水分を抜きつつ中を揺らして生地を広げる形で何度もローラーの上でも動かす形でブラッシングと汚れの除去をしてみたらどうだろかな?」
眉を顰めてガビガビに固まったオムツを見ていたシャルロが提案した。
揺らしながら水分を除去することでオムツが広がるかは試してみないと分からないが、ローラーで動かしながらブラッシングは試してみる方が風でべっとりウンチがへばりついて固まったオムツを伸ばそうとするよりは現実的かな?
ついでにローラーで動かしている間に一箇所でそこを通った布の汚れを除去させる形にすればいいし。
「ブラシの回転をローラーより少し早くすることでオムツの生地を広げる形にならないか、試してみようぜ。
あまりしっかりブラシが生地に絡みつくようだとオムツが伸びちゃうかも知れないから、上を軽く撫でるぐらいで良いが、多少でもローラーで動くオムツより早く動く形にしたらぐしゃぐしゃに固まっている生地が広がるかも?」
ぐしゃっと畳んだ形で固まっていた場合にブラシが生地にめり込まない様、ちょっとしたバネっぽい支柱か何かでブラシを支えて洗濯物の厚さに応じて上に動くようにした方が良いだろうな。
「揺らすのはどうやってする?」
シャルロがちょっと首を傾げながら言った。
「ローラーを動かす為に回す左右の軸を綺麗な円形の筒じゃなく、5角形ぐらいのデコボコな形にしたらベルト部分の動きがガタンガタンとなって揺れるんじゃないか?」
ささっと黒板の上に二つの五角形を両端に据えてそれを覆う形のベルトっぽい物を描きながらアレクが言った。
なる程。
上手くいくかは知らんが、試してみる価値はありそうだ。
◆◆◆◆
何度か試作品を造り、水分除去に使う魔力やローラーの動き、ブラシの位置や汚れ除去の魔術回路の設置等色々と試して、やっと『泥がべったり』だったオムツが『薄っすら黄土色に汚れた』程度まで改善された。
何通りかの泥での汚れを試してみたんだが、やっとそれなりになったぜ。
とは言え。
「これって最初からウンチが付いたまま乾いちゃっているとダメだな。
乾いている場合は水をかけて濡らしてから入れろって注意書きをした方が良さそうだ」
アレクがメモを取りながら言った。
「泥がべったりだったのが丸められてカラカラに乾いて状態になっていた場合、どの程度の水が必要か試してみようぜ」
泥が取れたオムツを手に取り、シャルロ監修の泥を塗りたくってから丸め、乾燥《ドライ》の術を掛けて中まで乾かす。
「・・・泥って意外と固いんだな」
まあ、考えてみたら泥を乾かして火を通して究極に固めたのが陶磁器なのだ。
固いのも不思議は無いか。
熱を通すと性質が変わる物もあるから普通に乾かしたウンチじゃあ陶磁器並みの固さにはどれ程放置したところでならんだろうけど。
多分。
「まあ、そこまで固くなる程ウンチ付きオムツを放置するとは思わないけどね~。
取り敢えず、コップ一杯の水を掛けたらどうなるか試してみたら?」
シャルロが軽い感じで提案した。
作業台の上に丸めて乾かして固まったオムツを置き、水をかける。
「・・・あっさり流れ落ちちゃって殆ど沁み込まなかったぞ」
泥が装甲みたいな感じになって中までちゃんと水が沁み込まずに流れ落ちている。
まあ、考えてみたら土を捏ねて焼いた壺に水を溜めておけるのだ。
乾いてガビガビに固まった泥が短時間だったら水をはじいても不思議は無いか。
「しょうがないね、ここまでガビガビに固まったらオムツを捨てるか、桶にでも入れた水に暫くつけとけって注意書きしておこう」
アレクがため息を吐きながら言った。
まあ、考えてみたらここまでガビガビに乾くまで放置できるなら、オムツも予備が沢山あるんだろう。
だったらいくつかは捨てても良いか。
大量に溜まっていた場合は勿体ないだろうが、大量にあるなら樽にでも水を入れてその中に暫くつけておけばいいんだ。
「じゃあ、次はぬるま湯の中で洗う部分だね~」
泥落としの部分からぬるま湯での洗濯部分への移動はどうやるかはまた後で考えよう。
試作品から取り出したオムツは変な形に折れ曲がって固まっており、一番外側の汚れは落ちていたが広げてみたら内側部分にはガビガビに固まった泥がべっとりへばりついていた。
実際にウンチが付いたオムツを試作品で試したくはなかったので(赤ちゃんのウンチの入手も面倒そうだし)、シャルロが『感触的にこんな感じかな?』と言って捏ねた泥をべっとりと塗り付けたオムツを適当に赤ちゃんのお尻を拭いた感じに動かして、最初の水分除去とブラッシングをした後の汚れ落としの部分の試作品に突っ込んでみたのだが・・・。
全然駄目だった。
却って水分除去したことで泥(実際だったらウンチ)がオムツの生地に張り付いてしまった感じがするぞ、これ。
「オムツの片側を何かで留めて、下から強風を吹き付ける形にして乾かしながらオムツも伸ばしてみるか?」
かなり魔力が必要になりそうだし、小さな箱の中で強風を吹き付けたらどうなるのかちょっと不安だが。
「最後にブラッシングして汚れの除去もしなくちゃならないんだ。風で動かすよりも最終的にブラッシングに向いた形にした方が良いだろう」
アレクが言った。
「・・・じゃあ、がっと一気に水分を除去するんじゃなくて、徐々に水分を抜きつつ中を揺らして生地を広げる形で何度もローラーの上でも動かす形でブラッシングと汚れの除去をしてみたらどうだろかな?」
眉を顰めてガビガビに固まったオムツを見ていたシャルロが提案した。
揺らしながら水分を除去することでオムツが広がるかは試してみないと分からないが、ローラーで動かしながらブラッシングは試してみる方が風でべっとりウンチがへばりついて固まったオムツを伸ばそうとするよりは現実的かな?
ついでにローラーで動かしている間に一箇所でそこを通った布の汚れを除去させる形にすればいいし。
「ブラシの回転をローラーより少し早くすることでオムツの生地を広げる形にならないか、試してみようぜ。
あまりしっかりブラシが生地に絡みつくようだとオムツが伸びちゃうかも知れないから、上を軽く撫でるぐらいで良いが、多少でもローラーで動くオムツより早く動く形にしたらぐしゃぐしゃに固まっている生地が広がるかも?」
ぐしゃっと畳んだ形で固まっていた場合にブラシが生地にめり込まない様、ちょっとしたバネっぽい支柱か何かでブラシを支えて洗濯物の厚さに応じて上に動くようにした方が良いだろうな。
「揺らすのはどうやってする?」
シャルロがちょっと首を傾げながら言った。
「ローラーを動かす為に回す左右の軸を綺麗な円形の筒じゃなく、5角形ぐらいのデコボコな形にしたらベルト部分の動きがガタンガタンとなって揺れるんじゃないか?」
ささっと黒板の上に二つの五角形を両端に据えてそれを覆う形のベルトっぽい物を描きながらアレクが言った。
なる程。
上手くいくかは知らんが、試してみる価値はありそうだ。
◆◆◆◆
何度か試作品を造り、水分除去に使う魔力やローラーの動き、ブラシの位置や汚れ除去の魔術回路の設置等色々と試して、やっと『泥がべったり』だったオムツが『薄っすら黄土色に汚れた』程度まで改善された。
何通りかの泥での汚れを試してみたんだが、やっとそれなりになったぜ。
とは言え。
「これって最初からウンチが付いたまま乾いちゃっているとダメだな。
乾いている場合は水をかけて濡らしてから入れろって注意書きをした方が良さそうだ」
アレクがメモを取りながら言った。
「泥がべったりだったのが丸められてカラカラに乾いて状態になっていた場合、どの程度の水が必要か試してみようぜ」
泥が取れたオムツを手に取り、シャルロ監修の泥を塗りたくってから丸め、乾燥《ドライ》の術を掛けて中まで乾かす。
「・・・泥って意外と固いんだな」
まあ、考えてみたら泥を乾かして火を通して究極に固めたのが陶磁器なのだ。
固いのも不思議は無いか。
熱を通すと性質が変わる物もあるから普通に乾かしたウンチじゃあ陶磁器並みの固さにはどれ程放置したところでならんだろうけど。
多分。
「まあ、そこまで固くなる程ウンチ付きオムツを放置するとは思わないけどね~。
取り敢えず、コップ一杯の水を掛けたらどうなるか試してみたら?」
シャルロが軽い感じで提案した。
作業台の上に丸めて乾かして固まったオムツを置き、水をかける。
「・・・あっさり流れ落ちちゃって殆ど沁み込まなかったぞ」
泥が装甲みたいな感じになって中までちゃんと水が沁み込まずに流れ落ちている。
まあ、考えてみたら土を捏ねて焼いた壺に水を溜めておけるのだ。
乾いてガビガビに固まった泥が短時間だったら水をはじいても不思議は無いか。
「しょうがないね、ここまでガビガビに固まったらオムツを捨てるか、桶にでも入れた水に暫くつけとけって注意書きしておこう」
アレクがため息を吐きながら言った。
まあ、考えてみたらここまでガビガビに乾くまで放置できるなら、オムツも予備が沢山あるんだろう。
だったらいくつかは捨てても良いか。
大量に溜まっていた場合は勿体ないだろうが、大量にあるなら樽にでも水を入れてその中に暫くつけておけばいいんだ。
「じゃあ、次はぬるま湯の中で洗う部分だね~」
泥落としの部分からぬるま湯での洗濯部分への移動はどうやるかはまた後で考えよう。
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