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卒業後
1004 星暦558年 藤の月 3日 棚以外にも使えるよね?
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新しく服を仕立てたせいで、今年は歴史学会のパーティにシェイラと一緒に参加する羽目になった。
去年はシェイラも特に出席するつもりが無かったのか事前の手伝いだけしてパーティの時間には歴史学会本部にある書庫の方の資料とかを色々と調べていたが、今年は折角新しく仕立てたのだからと引き摺って行かれたのだ。
服なんぞ着てなんぼだと言われたが、着たら着るだけ汚れるんだぞ?
どうしても出席しなきゃいけない時にだけ出せばいいだろうにと思ったが、まあシェイラが綺麗な格好をしているのを見るのは楽しいので付き合うことにした。
仕事の関係で給仕として紛れ込むのではなく、真面に客として参加するパーティなんてあまり経験がないしな。
年末にウォレン爺を捕まえるためにオレファーニ侯爵家の身内の集まりに参加したが、あれは一族の子供とかも一緒になって美味しい物を食べて楽しく騒ぐ集まりって感じで本当のパーティというのとはまた違ったし。
着飾ったシェイラを見るのは良かったが、俺の方は何か緊張して疲れた。
ということで今日は朝食後に工房でお茶を飲むのにソファへでへっと凭れている。
「なんか疲れているねぇ、ウィル。
東大陸に行って何かあったの?」
シャルロがクッキーに手を伸ばしながら聞いてきた。
「いや、あっちはちょっと微妙な話を聞いてウォレン爺に伝えた以外はそれ程疲れるようなことは無かったんだ。だがジルダスに行く前に王都で服を仕立てることにしたシェイラについて行ったら俺の分の正装まで仕立てることになって、折角仕立てたんだからってことで年初の歴史学会パーティに引き摺って行かれて疲れた」
服を仕立てるのってもっと時間が掛かると思っていたんだが・・・シェイラに連れて行かれた店は決まったパターンの組み合わせで服を造り上げるスタイルを提案しているから仕上がりが早いんだそうだ。
流石に靴はまだだったけど。
「服を仕立てたのか。
そのうち婚姻式の服を・・・って話になるんじゃないのか?
結婚したくないからしないならそれもありだろうが、したいのかしたくないのか、ちゃんとシェイラとお互いの希望と予定について話し合っておいた方が良いぞ?」
アレクがちょっと冷やかし気味に言ってきた。
「あぁ~~~~。
まあ、別にあっちに家を借りて毎晩転移門で帰る形にしても良いんだけど、無理に結婚する必要も無いかなぁとも思うんだよなぁ。
ちなみに、シェイラが結婚したいってことになって俺が遠距離通勤することになったら、工房をもっと王都の魔術院に通いやすい場所に移せるかな?」
空滑機《グライダー》での通勤もありだが、あれは王都内まで飛んでいくのは色々と規制が煩そうだからなぁ。
「私はシェフィート商会の方へ行きやすくなるから構わないし、もう少し家賃が高い場所へ工房を移しても収支的には大丈夫だろうが・・・シャルロの家からあまり遠くなるのは問題だろう。
魔術院とシャルロの家との間の中間点ぐらいの場所を探すか?」
アレクが言った。
「そのうち子供が出来たら学校に通ったりするのの便とかも考える必要があるから長期的には家を引っ越すのもありだけど、取り敢えずは空滑機《グライダー》でこっちまで戻ってくる感じになるかなぁ。
王都の外門の傍だったらって感じかな?」
シャルロが応じる。
「まあ、まだまだ先だと思うぞ。
シェイラも実家の方が落ち着くまでは下手に弱みになったり育てて跡取りにしよう!なんて提案されかねないような子供は欲しくないっぽいようなことをちらっと言っていたし。
ちなみにアレクの方はどうなんだ?」
全然何も聞かないが、誰とも付き合いが無いってことは・・・ないよな?
「商家や職人は跡取り以外は独り立ちできるまで結婚しないから適齢期がかなり遅いんだ。
私はセビウスが捕まるまで大丈夫さ」
アレクが笑いながら言った。
『捕まるまで』とか『大丈夫』とか、かなり結婚に対して印象が悪いっぽいなぁ。
アレクの親父さんも長兄もそれ程結婚生活に問題があるとは聞いていないけど、何か外に見えない問題でもあるんかね?
まあ、単に面倒なだけという可能性もあるが。
事業とか記録に関してはきっちりマメなアレクだが、個人的な生活とか人付き合いに関しては案外と怠け者だよな。
まあ、取り敢えず俺もアレクも急ぐ必要はないんだ。
ノンビリしていこう。
一応シェイラにそれに異議がないかだけはそのうち聞いておくけど。
「そんじゃあそっちはいいとして、次は何を作る?」
かなり遊んでいたからな。
ちゃんと今年分の収入を稼がないと。
去年はシェイラも特に出席するつもりが無かったのか事前の手伝いだけしてパーティの時間には歴史学会本部にある書庫の方の資料とかを色々と調べていたが、今年は折角新しく仕立てたのだからと引き摺って行かれたのだ。
服なんぞ着てなんぼだと言われたが、着たら着るだけ汚れるんだぞ?
どうしても出席しなきゃいけない時にだけ出せばいいだろうにと思ったが、まあシェイラが綺麗な格好をしているのを見るのは楽しいので付き合うことにした。
仕事の関係で給仕として紛れ込むのではなく、真面に客として参加するパーティなんてあまり経験がないしな。
年末にウォレン爺を捕まえるためにオレファーニ侯爵家の身内の集まりに参加したが、あれは一族の子供とかも一緒になって美味しい物を食べて楽しく騒ぐ集まりって感じで本当のパーティというのとはまた違ったし。
着飾ったシェイラを見るのは良かったが、俺の方は何か緊張して疲れた。
ということで今日は朝食後に工房でお茶を飲むのにソファへでへっと凭れている。
「なんか疲れているねぇ、ウィル。
東大陸に行って何かあったの?」
シャルロがクッキーに手を伸ばしながら聞いてきた。
「いや、あっちはちょっと微妙な話を聞いてウォレン爺に伝えた以外はそれ程疲れるようなことは無かったんだ。だがジルダスに行く前に王都で服を仕立てることにしたシェイラについて行ったら俺の分の正装まで仕立てることになって、折角仕立てたんだからってことで年初の歴史学会パーティに引き摺って行かれて疲れた」
服を仕立てるのってもっと時間が掛かると思っていたんだが・・・シェイラに連れて行かれた店は決まったパターンの組み合わせで服を造り上げるスタイルを提案しているから仕上がりが早いんだそうだ。
流石に靴はまだだったけど。
「服を仕立てたのか。
そのうち婚姻式の服を・・・って話になるんじゃないのか?
結婚したくないからしないならそれもありだろうが、したいのかしたくないのか、ちゃんとシェイラとお互いの希望と予定について話し合っておいた方が良いぞ?」
アレクがちょっと冷やかし気味に言ってきた。
「あぁ~~~~。
まあ、別にあっちに家を借りて毎晩転移門で帰る形にしても良いんだけど、無理に結婚する必要も無いかなぁとも思うんだよなぁ。
ちなみに、シェイラが結婚したいってことになって俺が遠距離通勤することになったら、工房をもっと王都の魔術院に通いやすい場所に移せるかな?」
空滑機《グライダー》での通勤もありだが、あれは王都内まで飛んでいくのは色々と規制が煩そうだからなぁ。
「私はシェフィート商会の方へ行きやすくなるから構わないし、もう少し家賃が高い場所へ工房を移しても収支的には大丈夫だろうが・・・シャルロの家からあまり遠くなるのは問題だろう。
魔術院とシャルロの家との間の中間点ぐらいの場所を探すか?」
アレクが言った。
「そのうち子供が出来たら学校に通ったりするのの便とかも考える必要があるから長期的には家を引っ越すのもありだけど、取り敢えずは空滑機《グライダー》でこっちまで戻ってくる感じになるかなぁ。
王都の外門の傍だったらって感じかな?」
シャルロが応じる。
「まあ、まだまだ先だと思うぞ。
シェイラも実家の方が落ち着くまでは下手に弱みになったり育てて跡取りにしよう!なんて提案されかねないような子供は欲しくないっぽいようなことをちらっと言っていたし。
ちなみにアレクの方はどうなんだ?」
全然何も聞かないが、誰とも付き合いが無いってことは・・・ないよな?
「商家や職人は跡取り以外は独り立ちできるまで結婚しないから適齢期がかなり遅いんだ。
私はセビウスが捕まるまで大丈夫さ」
アレクが笑いながら言った。
『捕まるまで』とか『大丈夫』とか、かなり結婚に対して印象が悪いっぽいなぁ。
アレクの親父さんも長兄もそれ程結婚生活に問題があるとは聞いていないけど、何か外に見えない問題でもあるんかね?
まあ、単に面倒なだけという可能性もあるが。
事業とか記録に関してはきっちりマメなアレクだが、個人的な生活とか人付き合いに関しては案外と怠け者だよな。
まあ、取り敢えず俺もアレクも急ぐ必要はないんだ。
ノンビリしていこう。
一応シェイラにそれに異議がないかだけはそのうち聞いておくけど。
「そんじゃあそっちはいいとして、次は何を作る?」
かなり遊んでいたからな。
ちゃんと今年分の収入を稼がないと。
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