994 / 1,038
卒業後
993 星暦557年 桃の月 17日 家族(?)サービス期間(17)
しおりを挟む
「それじゃあまず、木型を作るためにサイズを測りましょう」
爺さんがシャっと巻き尺と紙を取り出して俺に近寄ってきた。
「え?
前回靴を買おうとした時も何か測ってただろ?
何かノートに書きこんでいたと思ったが、あれは残っていないのか?」
それなりに時間をかけて測られた記憶があるんだが。
あんまり足元に人がしゃがみ込んで色々と触れてくるのって好きじゃないんだよなぁ。
足ってある意味逃げるために一番重要な部位だし。
「あれは大雑把に足のサイズを把握してあの時点で店にあった既製品が入るかを確認しただけです。
折角一から靴を造らせるのです。
ぴったり合う靴にする為にはしっかり測って木型を作らねば!」
爺さんにびしっと言われて足を押さえつけられてしまった。
ぐいっと紙の上に足を載せて、何やら足の輪郭をなぞっている。
くすぐったいんだが。
「一度作れば次回以降は変な歩き方をしたり怪我したりして足の形が変わっていないか確認するだけで済むから、今回我慢すれば次回以降が楽になるわよ~?」
店の奥で女性の店員と話し合っていたシェイラが声を掛けてきた。
そうなのか。
まあ、奥の壁にある木型を見る限り、ほぼ足の形と同じように見えるからなんだったら店に来ずに皮とスタイルだけ指定して通信機で連絡して作って貰うというのも可能そうだな。
というか、靴をオーダーメイドする人間は毎回こういう風に木型を作っているんだったら、贔屓の店を知っていれば靴をプレゼントするなんて言うのも可能そうだな。
サイズが合わない靴なんて貰ってもしょうがないから靴はプレゼントに向かないと思っていたが、服よりも確実に身体に合う物を造らせることが出来そうだ。
まあ、とは言ってもデザインとか色とかを選ばなきゃならないとなるとハードルが一気に高くなるが。
第一、相手がどんな靴を持っているか把握していないとうっかり既に持っているのと似たような靴を送ってしまったらあまり喜ばれないだろうし。
シェイラの買い物の仕方を見るに、服に合わせて靴も作らせているみたいだから、基本的に持っている服に合わせた靴は持っているってことになる。
つまり持っていない色の靴を造らせて贈っても着る服が無いってことになる・・・のか?
服まで贈らなきゃいけないとなったら予算がかなり大きくなるし・・・靴の贈り物って言うのは無しか。
流石に服の色やデザインを選んで贈るのは俺には難易度が高すぎて無理だ。
「ちょっと足を上げてください」
足をなぞり終わった爺さんに言われて右足を上げると、巻き尺を足の先とか甲の辺とか、何か所か巻かれ、爺さんが紙に数字を書き込む。
「数字でサイズを測っても、形はそれなりに個人差があるんじゃないのか?」
木型って言うのは足の模型みたいな物に見える。
あれに合わせて靴を造るとしたら、形が違ったらやっぱダメなんじゃないのか?
「それなりに足の形というのはパターンがありますからの。
良くあるパターンにそって個人差の大きい部分をしっかり測って合わせれば大体大丈夫です。
靴の素材はそれなりに柔らかく曲がる皮ですから、多少の形の修正だったら靴紐で出来ますし」
爺さんが今度は左足の方を軽く叩いて上げさせながら言った。
なるほど。
木型そのものは足の模型みたいに見えるが、合計のサイズさえ合っていれば多少形が違っても皮の方が足に合わせて曲がるか。
そうだよな、靴は木で出来ている訳じゃあ無い。
少なくともここで作っているのは。
「じゃあ、これで後は任せたってことで良いんだな?」
足のサイズを測り終えて、一安心してシェイラの所に行こうとしたらぐいっと本のような物を目の前に押し付けられた。
「さあ、デザインを決めましょう」
魔術学院時代の歴史の教科書よりも分厚そうな本は、1ページ毎に違った靴のデザインが描かれていた。
え??
この中から選ぶの???
俺が????
「適当に歩きやすくて滑らず、目立たないのにしてくれ」
足音に関しては最後に靴底の素材として要請すれば良いだろう。
最初にちゃんと言ってあるんだし。
まあ、足の運び方で音はかなり消せるんだけどな。
それでも靴底の形や素材次第で普通に歩いた時の音はそれなりに変わる。
全力疾走した際に音を殺す努力をしなくちゃいけないか否かでそれなりに体力の消耗度も違うのだ。
俺としてはデザインなんぞよりもそっちを重視したい。
とは言え、あまり主張しすぎると怪しまれるから最後に言う程度で済ませるが。
「ではこちらはどうでしょう?」
ぱらぱらっとページを捲った爺さんがなんか野暮ったい感じの靴の絵を見せてきた。
「それはちょっと野暮ったいかな」
態々新しく作るのに、それは無いだろう。
「ではこちらは?」
今度は妙に足先が細くなってナヨナヨしい感じの靴を見せられた。
「いや、それはちょっと・・・」
駄目だこりゃ。
取り敢えず許容範囲内なデザインのを見つけて選ばないととんでもないのを造られそうだ。
爺さんがシャっと巻き尺と紙を取り出して俺に近寄ってきた。
「え?
前回靴を買おうとした時も何か測ってただろ?
何かノートに書きこんでいたと思ったが、あれは残っていないのか?」
それなりに時間をかけて測られた記憶があるんだが。
あんまり足元に人がしゃがみ込んで色々と触れてくるのって好きじゃないんだよなぁ。
足ってある意味逃げるために一番重要な部位だし。
「あれは大雑把に足のサイズを把握してあの時点で店にあった既製品が入るかを確認しただけです。
折角一から靴を造らせるのです。
ぴったり合う靴にする為にはしっかり測って木型を作らねば!」
爺さんにびしっと言われて足を押さえつけられてしまった。
ぐいっと紙の上に足を載せて、何やら足の輪郭をなぞっている。
くすぐったいんだが。
「一度作れば次回以降は変な歩き方をしたり怪我したりして足の形が変わっていないか確認するだけで済むから、今回我慢すれば次回以降が楽になるわよ~?」
店の奥で女性の店員と話し合っていたシェイラが声を掛けてきた。
そうなのか。
まあ、奥の壁にある木型を見る限り、ほぼ足の形と同じように見えるからなんだったら店に来ずに皮とスタイルだけ指定して通信機で連絡して作って貰うというのも可能そうだな。
というか、靴をオーダーメイドする人間は毎回こういう風に木型を作っているんだったら、贔屓の店を知っていれば靴をプレゼントするなんて言うのも可能そうだな。
サイズが合わない靴なんて貰ってもしょうがないから靴はプレゼントに向かないと思っていたが、服よりも確実に身体に合う物を造らせることが出来そうだ。
まあ、とは言ってもデザインとか色とかを選ばなきゃならないとなるとハードルが一気に高くなるが。
第一、相手がどんな靴を持っているか把握していないとうっかり既に持っているのと似たような靴を送ってしまったらあまり喜ばれないだろうし。
シェイラの買い物の仕方を見るに、服に合わせて靴も作らせているみたいだから、基本的に持っている服に合わせた靴は持っているってことになる。
つまり持っていない色の靴を造らせて贈っても着る服が無いってことになる・・・のか?
服まで贈らなきゃいけないとなったら予算がかなり大きくなるし・・・靴の贈り物って言うのは無しか。
流石に服の色やデザインを選んで贈るのは俺には難易度が高すぎて無理だ。
「ちょっと足を上げてください」
足をなぞり終わった爺さんに言われて右足を上げると、巻き尺を足の先とか甲の辺とか、何か所か巻かれ、爺さんが紙に数字を書き込む。
「数字でサイズを測っても、形はそれなりに個人差があるんじゃないのか?」
木型って言うのは足の模型みたいな物に見える。
あれに合わせて靴を造るとしたら、形が違ったらやっぱダメなんじゃないのか?
「それなりに足の形というのはパターンがありますからの。
良くあるパターンにそって個人差の大きい部分をしっかり測って合わせれば大体大丈夫です。
靴の素材はそれなりに柔らかく曲がる皮ですから、多少の形の修正だったら靴紐で出来ますし」
爺さんが今度は左足の方を軽く叩いて上げさせながら言った。
なるほど。
木型そのものは足の模型みたいに見えるが、合計のサイズさえ合っていれば多少形が違っても皮の方が足に合わせて曲がるか。
そうだよな、靴は木で出来ている訳じゃあ無い。
少なくともここで作っているのは。
「じゃあ、これで後は任せたってことで良いんだな?」
足のサイズを測り終えて、一安心してシェイラの所に行こうとしたらぐいっと本のような物を目の前に押し付けられた。
「さあ、デザインを決めましょう」
魔術学院時代の歴史の教科書よりも分厚そうな本は、1ページ毎に違った靴のデザインが描かれていた。
え??
この中から選ぶの???
俺が????
「適当に歩きやすくて滑らず、目立たないのにしてくれ」
足音に関しては最後に靴底の素材として要請すれば良いだろう。
最初にちゃんと言ってあるんだし。
まあ、足の運び方で音はかなり消せるんだけどな。
それでも靴底の形や素材次第で普通に歩いた時の音はそれなりに変わる。
全力疾走した際に音を殺す努力をしなくちゃいけないか否かでそれなりに体力の消耗度も違うのだ。
俺としてはデザインなんぞよりもそっちを重視したい。
とは言え、あまり主張しすぎると怪しまれるから最後に言う程度で済ませるが。
「ではこちらはどうでしょう?」
ぱらぱらっとページを捲った爺さんがなんか野暮ったい感じの靴の絵を見せてきた。
「それはちょっと野暮ったいかな」
態々新しく作るのに、それは無いだろう。
「ではこちらは?」
今度は妙に足先が細くなってナヨナヨしい感じの靴を見せられた。
「いや、それはちょっと・・・」
駄目だこりゃ。
取り敢えず許容範囲内なデザインのを見つけて選ばないととんでもないのを造られそうだ。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる