983 / 1,061
卒業後
982 星暦557年 桃の月 11日 家族(?)サービス期間(6)
しおりを挟む
「え、精霊って経年劣化も防げるの??」
ちょっとびっくりして清早に尋ねる。
精霊の凄さって言うのは清早が出来ることだけでも分かるし、蒼流なんか更に凄いのもそれなりに知っている。
だが、時の経過をなかったことに出来る程とは知らなかった。
だって、精霊の加護持ちって普通に年を取っているんだぜ?
幾らなんでもピクニック用の台よりも加護持ちへの愛情の方が強いと思うから、ピクニックテーブルの経年劣化を無しに出来るんだったら加護持ちだの寿命だって伸ばしそうなもんじゃないか。
『命を引き延ばすのは無理かな。
病気とか怪我で死なない様に助けることは出来るけど、流石に寿命を無視して生きた状態を伸ばすのは無理だね。
死ぬ寸前に仮死状態で時間を凍結させるって言うのは出来なくもないけど、あまりやる意味ないでしょ?
でも、決まった場所にある程度以上草が生えてこない様にしたり、物の状態を劣化しない様に維持するのは可能だよ』
清早が答えた。
「なるほど。
じゃあ、シャルロ君やウィルが永遠に生きるってことはないのね」
シェイラがちょっと安心したように言った。
シャルロが永遠の命を貰って・・・なんてことになってもあいつ一人じゃああまり幸せな人生を過ごせるとも思えないな。
近い家族と友人全部ってなったらまだしもだが、流石にそれは無理だろうし。
清早はそんなことを俺にするとは思わないが、蒼流は過保護だからなぁ。
まあ、死ぬ寸前の体を仮死状態にして保管って言うのはするかも知れないが・・・精霊だったら自然な命の循環を無理やり止めたりはしないかな?
『そう。
やっぱ命って無理やり伸ばすと色々と問題が起きるみたいだからね~。
それにうっかり注意が逸れている間に砂になっていたなんてことが起きると気まずいし』
清早があっさり答える。
砂??
無理やり精霊に頼んで時間を止めるっぽい事をすると、精霊の注意が逸れた瞬間に時間の流れが生命に追いついてあっという間に死んじまうのかな?
砂までいかなくても骨と皮だけの死体に変わったりするぐらいの時期の方が見た目はえぐいかも。
どちらにせよそんなことを頼むつもりはないが、やってみた人間と精霊は居たようだな。
「ちなみに、このテーブルってどうやって劣化を止めているんだ?
魔術で同じことが出来るんだったら中々便利な気がするんだが」
『う~ん、一番簡単なのは時の流れを禁じることだね。
時の精霊に頼めば一発だけど、あいつはのんびり屋だから捕まえるまでに腐って無くなっちゃわない様に水や虫や小さな生き物が表面より中に入るのを禁じておくのが無難だね』
清早が言った。
へぇぇ。
時の精霊なんて居るんだ??
精霊にすらのんびり屋って言われるってことは、人間が頼みごとをしようと思っても声を掛けて返事を貰える前に寿命が来ちゃいそうだが。
「もしかして、この迷いの森とか、昔の人たちが住んでいた範囲の広場の辺とかも状態維持に時の精霊に何か頼みごとがしてあるのかしら?」
シェイラが尋ねる。
一瞬、清早がシェイラの問いを無視しそうな雰囲気だったが、俺がシェイラの質問を繰り返そうとしたら肩を竦めて答えてくれた。
一応シェイラの事は俺の大切な人ってことで注意は払ってくれているんだけど、必ずしも質問や頼みごとに応じようと感じている訳じゃあないんだよなぁ。
これって俺がいない時だったら気分次第ではシェイラが声を掛けても無視しそうだ。
『人が暮らす「場所」の時の流れを止めると色々と問題があるから、あそこは土の精霊に広場に要らない植物が生えてこない様に頼んだだけだね』
「昔ここに住んでいた民って精霊と仲がいい人間が多かったのか?」
別に、森に棲んで自然を大切にしていれば精霊が仲良くしてくれるという訳ではない。
それだったら田舎の農家や狩人に加護持ちが多い筈だが、実際にはそんなことは無いらしい。
まあ、加護持ちだったら軍や魔術院に勧誘されて街に出て来るって言う事もあるのかもだけど。
だから基本的にアファル王国では精霊の加護っていうのはいつ誰が貰えるか分からないから、頼っちゃいけないけどあったら運が良かったねという程度の扱いだ。
勿論、シャルロや学院長のように強力だったらそれなりに必要に応じて国の運営に助けを求めるけど。
だけどフォラスタ文明の人の暮らしにそれなりに精霊の助けを貰っていたのだったら、この迷いの森の民と精霊の関係はちょっと違ったのかも?
『う~ん、どうだろ?
この森が好きな精霊が居て、そこに住み着いた人たちが精霊を怒らせない様に気を使って暮らしていたっていうのが正解じゃないかな?
そんでもって時折その精霊に気に入られた人間がいた程度?』
なるほど。
加護持ちの人間がいて精霊が住み着いたのではなく、精霊が先なのか。
まあ、そうじゃなきゃ人間が居なくなった後もずっと精霊が残って頼まれていた効果がそのまま残るのはおかしいよな。
ちょっとびっくりして清早に尋ねる。
精霊の凄さって言うのは清早が出来ることだけでも分かるし、蒼流なんか更に凄いのもそれなりに知っている。
だが、時の経過をなかったことに出来る程とは知らなかった。
だって、精霊の加護持ちって普通に年を取っているんだぜ?
幾らなんでもピクニック用の台よりも加護持ちへの愛情の方が強いと思うから、ピクニックテーブルの経年劣化を無しに出来るんだったら加護持ちだの寿命だって伸ばしそうなもんじゃないか。
『命を引き延ばすのは無理かな。
病気とか怪我で死なない様に助けることは出来るけど、流石に寿命を無視して生きた状態を伸ばすのは無理だね。
死ぬ寸前に仮死状態で時間を凍結させるって言うのは出来なくもないけど、あまりやる意味ないでしょ?
でも、決まった場所にある程度以上草が生えてこない様にしたり、物の状態を劣化しない様に維持するのは可能だよ』
清早が答えた。
「なるほど。
じゃあ、シャルロ君やウィルが永遠に生きるってことはないのね」
シェイラがちょっと安心したように言った。
シャルロが永遠の命を貰って・・・なんてことになってもあいつ一人じゃああまり幸せな人生を過ごせるとも思えないな。
近い家族と友人全部ってなったらまだしもだが、流石にそれは無理だろうし。
清早はそんなことを俺にするとは思わないが、蒼流は過保護だからなぁ。
まあ、死ぬ寸前の体を仮死状態にして保管って言うのはするかも知れないが・・・精霊だったら自然な命の循環を無理やり止めたりはしないかな?
『そう。
やっぱ命って無理やり伸ばすと色々と問題が起きるみたいだからね~。
それにうっかり注意が逸れている間に砂になっていたなんてことが起きると気まずいし』
清早があっさり答える。
砂??
無理やり精霊に頼んで時間を止めるっぽい事をすると、精霊の注意が逸れた瞬間に時間の流れが生命に追いついてあっという間に死んじまうのかな?
砂までいかなくても骨と皮だけの死体に変わったりするぐらいの時期の方が見た目はえぐいかも。
どちらにせよそんなことを頼むつもりはないが、やってみた人間と精霊は居たようだな。
「ちなみに、このテーブルってどうやって劣化を止めているんだ?
魔術で同じことが出来るんだったら中々便利な気がするんだが」
『う~ん、一番簡単なのは時の流れを禁じることだね。
時の精霊に頼めば一発だけど、あいつはのんびり屋だから捕まえるまでに腐って無くなっちゃわない様に水や虫や小さな生き物が表面より中に入るのを禁じておくのが無難だね』
清早が言った。
へぇぇ。
時の精霊なんて居るんだ??
精霊にすらのんびり屋って言われるってことは、人間が頼みごとをしようと思っても声を掛けて返事を貰える前に寿命が来ちゃいそうだが。
「もしかして、この迷いの森とか、昔の人たちが住んでいた範囲の広場の辺とかも状態維持に時の精霊に何か頼みごとがしてあるのかしら?」
シェイラが尋ねる。
一瞬、清早がシェイラの問いを無視しそうな雰囲気だったが、俺がシェイラの質問を繰り返そうとしたら肩を竦めて答えてくれた。
一応シェイラの事は俺の大切な人ってことで注意は払ってくれているんだけど、必ずしも質問や頼みごとに応じようと感じている訳じゃあないんだよなぁ。
これって俺がいない時だったら気分次第ではシェイラが声を掛けても無視しそうだ。
『人が暮らす「場所」の時の流れを止めると色々と問題があるから、あそこは土の精霊に広場に要らない植物が生えてこない様に頼んだだけだね』
「昔ここに住んでいた民って精霊と仲がいい人間が多かったのか?」
別に、森に棲んで自然を大切にしていれば精霊が仲良くしてくれるという訳ではない。
それだったら田舎の農家や狩人に加護持ちが多い筈だが、実際にはそんなことは無いらしい。
まあ、加護持ちだったら軍や魔術院に勧誘されて街に出て来るって言う事もあるのかもだけど。
だから基本的にアファル王国では精霊の加護っていうのはいつ誰が貰えるか分からないから、頼っちゃいけないけどあったら運が良かったねという程度の扱いだ。
勿論、シャルロや学院長のように強力だったらそれなりに必要に応じて国の運営に助けを求めるけど。
だけどフォラスタ文明の人の暮らしにそれなりに精霊の助けを貰っていたのだったら、この迷いの森の民と精霊の関係はちょっと違ったのかも?
『う~ん、どうだろ?
この森が好きな精霊が居て、そこに住み着いた人たちが精霊を怒らせない様に気を使って暮らしていたっていうのが正解じゃないかな?
そんでもって時折その精霊に気に入られた人間がいた程度?』
なるほど。
加護持ちの人間がいて精霊が住み着いたのではなく、精霊が先なのか。
まあ、そうじゃなきゃ人間が居なくなった後もずっと精霊が残って頼まれていた効果がそのまま残るのはおかしいよな。
0
お気に入りに追加
501
あなたにおすすめの小説
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる