シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

977 星暦557年 桃の月 10日 家族(?)サービス期間

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「本当に何でも手伝ってくれるの?
年末に向けて色々と忙しい時期でしょうに」
休息日にいつも通りに遊びに来た俺の言葉に、シェイラが驚いたように聞き返してきた。

「良いの良いの。
オモチャの開発は魔術回路を弄る段階は終わったから、今後はシェフィート商会の従業員やそのガキたちに色々と遊ばせて周辺部品で工夫を出来るやることを増やすだけだから。
今から新しい開発を考えるのはちょっと時間的に中途半端だし、今年はちょっと頑張って働き過ぎた気がするし。
ゆったり親しい人と年末に向けて時間を過ごそうって話になったんだ」
まあ、ゆったりするのはシャルロだけかもだが。

アレクは年末に向けて忙しい実家の方で確実にこき使われるだろう。
俺は・・・遊び兼シェイラの手伝いって名目で来ているが、どのくらいこき使われるかはシェイラの予定次第かな?

「ちなみに、シェイラが年末の報告書とか書くのに忙しいんだったら適当に街の中でも散策しているから、無理に手伝うことは考えてくれなくて良いから」
シェイラと一緒にだったら元迷いの森の中を歩き回って現在発掘している範囲以外の所に何かないか探しても良いが、自分一人で森の中を歩き回るつもりはない。

冬になったから虫や小動物は減ったかも知れないが、それでも俺は街の人混みの方が森の中よりも安心できる都会の住民だ。
断じて暇つぶしに森の中を散策するタイプではない。

「あら、そちらは大丈夫よ。
報告書はほぼ仕上げてあるから。
あとはツァレスや他の研究員が書かなきゃいけない部分に関して毎日せっついて進捗状況を確認していけばいいだけだから」
にっこりと笑いながらシェイラが応じた。

流石シェイラ。
そこら辺の管理はしっかりしてるよなぁ。
ある意味、これだけ実務的で現実的なシェイラが遺跡の発掘なんて言う夢見勝ちな職業を選ぶなんて、シェイラの親父さんもびっくりだっただろう。

商会もシェイラに任せておけば大丈夫だと思っていただろうから、マジでシェイラが考古学に惚れ込んで歴史学会に就職した時は頭を抱えただろうなぁ。
お蔭でそれ程真剣に考えてこなかった跡継ぎ問題が未だに解決していないんだし。

シェイラが商会に入るとなったら跡継ぎなんて悩む必要も無いと思っていたんだろう。才能がある人間がそれを活用する機会を捨てて、貴族になるとでもいうのならまだしも考古学者になるなんて言うのは理解を越えるよなぁ。

まあ、あのおっさんもまだ年がいき過ぎて働けないって訳じゃあないんだ。
なんだったら孫世代まで頑張って何とか誰かを育てるんだな。

あのおっさんが大きくした商会なんだから、どうしてもダメだったら他の家に譲るのも有りだろうし。

「取り敢えず、今日は折角だから街中を散策して美味しい店でも教えてくれよ。
明日から現場での探索とか森の中の調査とか、適当に付き合うぜ?
ああ、ついでに魔石の充填もしておくか」
今迄譲った試作品系の魔具の魔石はどれもすっからかんになっていそうだ。
それとも魔石が枯渇して使えなくなることを心配して使っていないか?

「あ、魔石の充填は是非お願いしたいわね。
あとは・・・折角冬なんだから、迷いの森の中を歩き回りましょう。
広い森なんだから、それなりに他の集落とか防衛拠点とか備蓄庫とかがあってもおかしくないわ。
冬だったら下草や葉っぱも少ないし、虫が減るしで探すのに丁度いいでしょ?」
シェイラが言った。

ああ、下草とかが無いのは良いな。
広葉樹が落葉しているのも樹に刻まれた魔術回路とかが視やすいかも知れない。

しっかし。
シェイラは女性なのによく虫が平気だよなぁ。
噛まれるのは嫌だから虫除けは喜ぶが、出てきたら出てきたで別に動揺もせずに叩き潰して捨てている。

下手をしたら俺の方が悲鳴を上げて、シェイラが撃退するって流れになってちょっと情けないが・・・まあ、適材適所ということで許してもらおう。
俺だって虫に対処できない訳じゃあないんだ。
嫌いだからしたくないだけで。

心の準備が出来ていれば、音を出さずに即殺だって出来るんだぞ?
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