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卒業後
971 星暦557年 橙の月 24日 次は?(6)
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「これって馬が纏まって走っていると魔力吸収の効率が下がって少し遅くなってる?」
競馬フィールドの範囲の中を3台の馬のぬいぐるみを乗せたオモチャが走り回っていたのだが、やがて一頭が残りの2頭から離れて走り始めた。
「・・・確かにそっちの方が速い、かも?
ちょっとウィルと私でこちらの方に纏まって右から左へ真っ直ぐ走り、シャルロが上の方で同じ方向に突っ走って競馬フィールドの端に辿り着くのにかかる時間の差を確認しよう」
シャルロの馬の動きを見て、アレクが制御球から手を離して言った。
「魔力吸収の効率が変わると共鳴の効率も変わるのかな?」
馬を手前の方へ戻しながら心眼《サイト》で競馬フィールド上に残っている魔力の残滓を見るが、既に元に戻ってしまっているのかイマイチ違いが分からない。
『競馬フィールド』と名付けた長さ2メタ幅1メタの走り回る部分には一様にランプの明かり程度の少量な魔力が放出されるように魔法陣を設置してある。
この放出される魔力を馬が乗る台の下面に刻んだ魔力吸収の魔法陣で吸収し、制御球と台を動かす球とを連動させる共鳴用の魔術回路を動かす魔石を充填する仕組みにすることで、通常だったら4ミル程度で魔石が尽きてしまう馬を載せた小さな台車が1刻程動くようにした。
ちなみにこの共鳴魔術回路、離れて魔道具を動かせる事でヤバい悪事に使えるかとも心配になって色々と実験してみたのだが、幸いにも距離が離れると消費魔力が跳ね上がる事が判明。一部屋分ぐらい離れると特大サイズの魔石でも使わないと動かなくなるので、多分そう簡単には悪用できないだろう。
オモチャなので流石にこれは修理の事とかも考えると特許登録しない訳にはいかないので、いつか誰かががっつり改良して有効距離を大幅に伸ばす危険性はあるが。
まあ、何事も金を出すなら凄腕を雇ったり使用人を買収したり、色々と手はあるのだ。
大金をかけて魔術回路を改造させ、高価になるであろう魔石を使ってまでして魔具を利用しようと考える人間はあまりいないと期待しよう。
「じゃあ、行くよ?
3,2,1,行け!」
シャルロが声を掛け、俺たちも一斉に制御球をガンガン転がす。
普通に2メタ程度直線距離で動かすだけだったら3人とも大して違いは出ないので、実際に魔力吸収の効率の違いなのか分かる筈。
これがもっと長時間走らせたり、ぐりぐりと方向転換とかフェイントを混ぜた勝負っぽい事になると個人差が出てくる。長時間だったらアレクの腕の持久力が一番低く、フェイントを籠めた勝負っぽい事はシャルロがちょっと弱かった。
最初に負けた時にシャルロが悔しがったのを見て蒼流が手を貸そうとしたのだが・・・自分の馬があり得ない速度で進むのを見たシャルロに怒られていたのはちょっと笑えた。
もしかしたらこのオモチャでやたらと強い子がいたら、そいつは精霊に好かれる子なのかも知れないな。
清早曰く、別に『加護を与えるよ』と言わなくても精霊が気に入った人間の傍にいてこっそり手伝いをしたり悪戯をしたりというのは良くある事らしい。
まあ、子供が育って性質が変わってしまったり、別に興味を引かれる存在が出てきたらそっちに気を取られたりで精霊の助力がずっと貰えるとは限らないらしいが。
一応『加護してあげる』と宣言した場合はちゃんとその人間の寿命の間は付き合うのが精霊の仁義らしい。
どうしても許容できないところまで人間が変わってしまった場合は、ちゃんと加護の撤回を本人と周囲にいる精霊に宣言するので知らぬ間に精霊の助力を貰っていたのがいつの間にか消えていたというのは加護の場合は無いらしい。
「お!
やっぱ違うみたいだね!」
俺とアレクの馬がほぼ同じところ走っているのに対し、シャルロの馬が1ハドぐらい先に進んで競馬フィールドの端に到着したのを見て、シャルロが声を上げた。
「次はシャルロとウィルが一緒に走らせて、私が離れて動かす様にしてみよう」
アレクが馬を戻しながら提案する。
「最後はアレクとシャルロが一緒で俺が別って事か。
まあ、競馬だって集団で走っているよりも離れて回り込む方が先頭集団を抜ける時もあるから、別に離れて走らせた方が速いってことは問題ないんじゃないか?」
俺の馬も戻しながら言う。
流石に魔力吸収の効率をそこまで一様にするのは難しいし、面倒だ。
「ああ。
だが最初から分かっているのだったら、使用説明書にそう言う事もあるから最短距離を皆で走るよりも離れて回り込むという戦略も有りかも?と言った感じに書いておく方が、後から苦情が来なくて済む」
アレクが応じた。
なる程。
故障しているから直せとか、修理しなくても良いがこのまま使ってやるから返金しろとか、変な要求をしてくる客が居たら確かに面倒だな。
「大体出来上がったらシェフィート商会従業員の子供を集めて色々遊ばせて、裏技を見つけたらお小遣いでも払うことにしようよ。
子供ってこういうのに拘って遊ぶと色々と思いがけない裏技を見つけるからね~」
シャルロが提案する。
「だが、折角の裏技だったら子供たちが遊ぶうちに見つけた方が面白くないか?」
最初から全部分かっていたら面白くないような気がするが。
「使用説明書の最後に小さな文字で小難しく書いておけば、ほぼ誰も読まんよ。
苦情が来た時に、説明書の最後に書いてありますと言えれば良いだけだ」
アレクが笑いながら言った。
なるほど。
楽しみが減るような詳細は態と小文字で小難しく書いて読まないようにするんか。
腹黒~。
競馬フィールドの範囲の中を3台の馬のぬいぐるみを乗せたオモチャが走り回っていたのだが、やがて一頭が残りの2頭から離れて走り始めた。
「・・・確かにそっちの方が速い、かも?
ちょっとウィルと私でこちらの方に纏まって右から左へ真っ直ぐ走り、シャルロが上の方で同じ方向に突っ走って競馬フィールドの端に辿り着くのにかかる時間の差を確認しよう」
シャルロの馬の動きを見て、アレクが制御球から手を離して言った。
「魔力吸収の効率が変わると共鳴の効率も変わるのかな?」
馬を手前の方へ戻しながら心眼《サイト》で競馬フィールド上に残っている魔力の残滓を見るが、既に元に戻ってしまっているのかイマイチ違いが分からない。
『競馬フィールド』と名付けた長さ2メタ幅1メタの走り回る部分には一様にランプの明かり程度の少量な魔力が放出されるように魔法陣を設置してある。
この放出される魔力を馬が乗る台の下面に刻んだ魔力吸収の魔法陣で吸収し、制御球と台を動かす球とを連動させる共鳴用の魔術回路を動かす魔石を充填する仕組みにすることで、通常だったら4ミル程度で魔石が尽きてしまう馬を載せた小さな台車が1刻程動くようにした。
ちなみにこの共鳴魔術回路、離れて魔道具を動かせる事でヤバい悪事に使えるかとも心配になって色々と実験してみたのだが、幸いにも距離が離れると消費魔力が跳ね上がる事が判明。一部屋分ぐらい離れると特大サイズの魔石でも使わないと動かなくなるので、多分そう簡単には悪用できないだろう。
オモチャなので流石にこれは修理の事とかも考えると特許登録しない訳にはいかないので、いつか誰かががっつり改良して有効距離を大幅に伸ばす危険性はあるが。
まあ、何事も金を出すなら凄腕を雇ったり使用人を買収したり、色々と手はあるのだ。
大金をかけて魔術回路を改造させ、高価になるであろう魔石を使ってまでして魔具を利用しようと考える人間はあまりいないと期待しよう。
「じゃあ、行くよ?
3,2,1,行け!」
シャルロが声を掛け、俺たちも一斉に制御球をガンガン転がす。
普通に2メタ程度直線距離で動かすだけだったら3人とも大して違いは出ないので、実際に魔力吸収の効率の違いなのか分かる筈。
これがもっと長時間走らせたり、ぐりぐりと方向転換とかフェイントを混ぜた勝負っぽい事になると個人差が出てくる。長時間だったらアレクの腕の持久力が一番低く、フェイントを籠めた勝負っぽい事はシャルロがちょっと弱かった。
最初に負けた時にシャルロが悔しがったのを見て蒼流が手を貸そうとしたのだが・・・自分の馬があり得ない速度で進むのを見たシャルロに怒られていたのはちょっと笑えた。
もしかしたらこのオモチャでやたらと強い子がいたら、そいつは精霊に好かれる子なのかも知れないな。
清早曰く、別に『加護を与えるよ』と言わなくても精霊が気に入った人間の傍にいてこっそり手伝いをしたり悪戯をしたりというのは良くある事らしい。
まあ、子供が育って性質が変わってしまったり、別に興味を引かれる存在が出てきたらそっちに気を取られたりで精霊の助力がずっと貰えるとは限らないらしいが。
一応『加護してあげる』と宣言した場合はちゃんとその人間の寿命の間は付き合うのが精霊の仁義らしい。
どうしても許容できないところまで人間が変わってしまった場合は、ちゃんと加護の撤回を本人と周囲にいる精霊に宣言するので知らぬ間に精霊の助力を貰っていたのがいつの間にか消えていたというのは加護の場合は無いらしい。
「お!
やっぱ違うみたいだね!」
俺とアレクの馬がほぼ同じところ走っているのに対し、シャルロの馬が1ハドぐらい先に進んで競馬フィールドの端に到着したのを見て、シャルロが声を上げた。
「次はシャルロとウィルが一緒に走らせて、私が離れて動かす様にしてみよう」
アレクが馬を戻しながら提案する。
「最後はアレクとシャルロが一緒で俺が別って事か。
まあ、競馬だって集団で走っているよりも離れて回り込む方が先頭集団を抜ける時もあるから、別に離れて走らせた方が速いってことは問題ないんじゃないか?」
俺の馬も戻しながら言う。
流石に魔力吸収の効率をそこまで一様にするのは難しいし、面倒だ。
「ああ。
だが最初から分かっているのだったら、使用説明書にそう言う事もあるから最短距離を皆で走るよりも離れて回り込むという戦略も有りかも?と言った感じに書いておく方が、後から苦情が来なくて済む」
アレクが応じた。
なる程。
故障しているから直せとか、修理しなくても良いがこのまま使ってやるから返金しろとか、変な要求をしてくる客が居たら確かに面倒だな。
「大体出来上がったらシェフィート商会従業員の子供を集めて色々遊ばせて、裏技を見つけたらお小遣いでも払うことにしようよ。
子供ってこういうのに拘って遊ぶと色々と思いがけない裏技を見つけるからね~」
シャルロが提案する。
「だが、折角の裏技だったら子供たちが遊ぶうちに見つけた方が面白くないか?」
最初から全部分かっていたら面白くないような気がするが。
「使用説明書の最後に小さな文字で小難しく書いておけば、ほぼ誰も読まんよ。
苦情が来た時に、説明書の最後に書いてありますと言えれば良いだけだ」
アレクが笑いながら言った。
なるほど。
楽しみが減るような詳細は態と小文字で小難しく書いて読まないようにするんか。
腹黒~。
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