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卒業後
955 星暦557年 黄の月 12日 新しい伝手(19)
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「取り敢えず、魔術回路に何か細かい違いが無いか確認して、問題無かったら試作品の方を機能ごとに分解してみてから、本体の方を分解しようぜ。
折角同じ魔術回路を造ってあるんだ。
適当に意味の無い分解をして機能しなくなるようなことはしない方が良いだろう」
ぱっかり開いた腕輪の中を覗き込みながら提案する。
魔力の流れそのものは見間違いは無いと思うが、魔力が通っていないような回路があった場合は気付けない可能性はあるからな。
魔力が通らない魔術回路なんぞなんぞ何の意味があるのか分からないが、何か俺たちがテストしなかった状況での機能を想定しているのかも知れないし。
「そうだね~」
魔術回路を書き込んだ紙を取り出して露になった腕輪の中の回路と比較しながらシャルロが応じる。
こういう図形的な確認作業とかはシャルロが一番なんだよな。
意外と絵を描くのも上手いし。
そこそこ複雑なぐにゃぐにゃな線って俺的にはちょっと線が増えてたり違うとこに繋がっていても重ねて透かしながら比較でもしなきゃそう簡単には分からないんだが、シャルロはじ~っと見ていたと思ったらササッと違うところを指摘できるんだよなぁ。
不思議すぎる。
文字を書いたり計算をするのはアレクが得意で、魔力の流れを視るのは俺。
いい感じに得意分野が分かれていて色々と便利な組み合わせだよな、俺達って。
「ん、特に問題ないっぽいね。
想定外な回路も無いと思う」
お茶を淹れて待っていたら、シャルロがやがて顔を上げて頷いた。
おっし。
「じゃあ、こことこことここ等辺で切ってみるか?」
魔力の流れ的にそんな感じでまとまっている印象なんだよな。
試作品にペンで線を引いて分解する箇所を提案する。
「・・・取り敢えずそれでやってみて、ダメだったらまた考えよう」
アレクが合意して、シャルロも頷いたのを見てギリギリギリと試作品の魔術回路を切り離した。
こっちの方が大きいから切り離しやすいが、ギリギリのサイズまで縮小してある腕輪は切り分けるのも大変そうだ。
アスカに頼めるかな?
切り離した魔術回路に魔力を通して確認してみたら、どれもちゃんと部分的な機能を発揮した。
うっし。俺の目は確かだったぜ。
一つは指輪の先の肌が触れた部分の成分を読み取る機能。
もう一つはそれを腕の部分の肌と疑似的に混ぜて反応を確認する機能。
最後はその反応に対応した警告雷撃っぽいのを生じさせる機能。
この疑似的に混ぜて反応を確認する機能なんて凄いよなぁ。
実際に血と混ぜるのではなく、混ぜたらどうなるかを疑似的に確認実験出来るって凄すぎる。
というか、これって疑似的に毒と混ぜることが出来るんだったら疑似的に誰かを殺す確認実験をしてその痛みを流し込むなんてことは出来ないのかね?
出来たら外傷がないのに殺されたなんて解決不能な殺人が出来ちゃいそうだ。
まあ、これは混ぜた時の体の反応を疑似的に確認しているだけで、血が凝固したり呼吸が止まったりする反応を実際にどこかに発生させる訳じゃないから無理か。
魔術って時々『やってみたら出来ちゃった』系の不思議な効果が可能なことがある。
これも色々実験しているうちに偶然見つけた魔術回路の効果なのだろう。
これって絶対に特許で守られているべき凄い技術だよなぁ。
登録してあるんかね?
「それじゃあ、まずは魔術回路の新素材を使ってみて、銅線とどの程度違いがあるか確認してみようか」
シャルロが工房の奥に行って新素材を取り出してくる。
「ついでに新素材を試した時に実験した他の素材も試してみようぜ。
色々と機能が珍しい魔術回路だから、普通のとちょっと反応が違うかも知れないし」
もしかしたら、部分ごとに最適な素材が違う可能性だってある。
とは言え、どれかに入手不能な緑砂鉄《チュサスト》が必要だったらどうしようもないんだけどな。
もっとも、何か代替品が見つかったとしてもそれを使った毒探知用魔具を迂闊に広めて良いのか微妙なところだしなぁ。
安易に広めすぎて東大陸の奴らから目の敵にされては困るし、富裕層全員に対して毒が使えなくなったら単にこの探知機が使えない毒を使うようになるか、ナイフとかで殺す様になるだけだろう。
結局、殺しに対する需要っていうのは変わらないのだ。
下手をしたら高級な精度の高く便利な毒探知用魔具を買う資金が無い人間だけが安易に殺されるようになるという格差の拡大につながる可能性だってあるし。
まあ、そこまで社会的影響が出る前に単にナイフを刺して殺すタイプの暗殺が流行るようになるだけかな?
毒を盛らなくたって、夜中にそっと首を絞めるとか、濡れタオルで鼻と口を塞ぐとかでも人間は死ぬし、階段から突き落とすって言うのも古くから使われる手段だ。
う~ん。
そう考えると、この開発とか実験って何のためにやっているんだろという気もしてくるな。
まあ、シャルロやアレクの知り合いが安心して暖かいご飯を食べられるようになればいいかもって感じかな?
大量に売り出さなければ対処法もそれ程大々的に広がらないだろう。
取り敢えず、実験だな!
折角同じ魔術回路を造ってあるんだ。
適当に意味の無い分解をして機能しなくなるようなことはしない方が良いだろう」
ぱっかり開いた腕輪の中を覗き込みながら提案する。
魔力の流れそのものは見間違いは無いと思うが、魔力が通っていないような回路があった場合は気付けない可能性はあるからな。
魔力が通らない魔術回路なんぞなんぞ何の意味があるのか分からないが、何か俺たちがテストしなかった状況での機能を想定しているのかも知れないし。
「そうだね~」
魔術回路を書き込んだ紙を取り出して露になった腕輪の中の回路と比較しながらシャルロが応じる。
こういう図形的な確認作業とかはシャルロが一番なんだよな。
意外と絵を描くのも上手いし。
そこそこ複雑なぐにゃぐにゃな線って俺的にはちょっと線が増えてたり違うとこに繋がっていても重ねて透かしながら比較でもしなきゃそう簡単には分からないんだが、シャルロはじ~っと見ていたと思ったらササッと違うところを指摘できるんだよなぁ。
不思議すぎる。
文字を書いたり計算をするのはアレクが得意で、魔力の流れを視るのは俺。
いい感じに得意分野が分かれていて色々と便利な組み合わせだよな、俺達って。
「ん、特に問題ないっぽいね。
想定外な回路も無いと思う」
お茶を淹れて待っていたら、シャルロがやがて顔を上げて頷いた。
おっし。
「じゃあ、こことこことここ等辺で切ってみるか?」
魔力の流れ的にそんな感じでまとまっている印象なんだよな。
試作品にペンで線を引いて分解する箇所を提案する。
「・・・取り敢えずそれでやってみて、ダメだったらまた考えよう」
アレクが合意して、シャルロも頷いたのを見てギリギリギリと試作品の魔術回路を切り離した。
こっちの方が大きいから切り離しやすいが、ギリギリのサイズまで縮小してある腕輪は切り分けるのも大変そうだ。
アスカに頼めるかな?
切り離した魔術回路に魔力を通して確認してみたら、どれもちゃんと部分的な機能を発揮した。
うっし。俺の目は確かだったぜ。
一つは指輪の先の肌が触れた部分の成分を読み取る機能。
もう一つはそれを腕の部分の肌と疑似的に混ぜて反応を確認する機能。
最後はその反応に対応した警告雷撃っぽいのを生じさせる機能。
この疑似的に混ぜて反応を確認する機能なんて凄いよなぁ。
実際に血と混ぜるのではなく、混ぜたらどうなるかを疑似的に確認実験出来るって凄すぎる。
というか、これって疑似的に毒と混ぜることが出来るんだったら疑似的に誰かを殺す確認実験をしてその痛みを流し込むなんてことは出来ないのかね?
出来たら外傷がないのに殺されたなんて解決不能な殺人が出来ちゃいそうだ。
まあ、これは混ぜた時の体の反応を疑似的に確認しているだけで、血が凝固したり呼吸が止まったりする反応を実際にどこかに発生させる訳じゃないから無理か。
魔術って時々『やってみたら出来ちゃった』系の不思議な効果が可能なことがある。
これも色々実験しているうちに偶然見つけた魔術回路の効果なのだろう。
これって絶対に特許で守られているべき凄い技術だよなぁ。
登録してあるんかね?
「それじゃあ、まずは魔術回路の新素材を使ってみて、銅線とどの程度違いがあるか確認してみようか」
シャルロが工房の奥に行って新素材を取り出してくる。
「ついでに新素材を試した時に実験した他の素材も試してみようぜ。
色々と機能が珍しい魔術回路だから、普通のとちょっと反応が違うかも知れないし」
もしかしたら、部分ごとに最適な素材が違う可能性だってある。
とは言え、どれかに入手不能な緑砂鉄《チュサスト》が必要だったらどうしようもないんだけどな。
もっとも、何か代替品が見つかったとしてもそれを使った毒探知用魔具を迂闊に広めて良いのか微妙なところだしなぁ。
安易に広めすぎて東大陸の奴らから目の敵にされては困るし、富裕層全員に対して毒が使えなくなったら単にこの探知機が使えない毒を使うようになるか、ナイフとかで殺す様になるだけだろう。
結局、殺しに対する需要っていうのは変わらないのだ。
下手をしたら高級な精度の高く便利な毒探知用魔具を買う資金が無い人間だけが安易に殺されるようになるという格差の拡大につながる可能性だってあるし。
まあ、そこまで社会的影響が出る前に単にナイフを刺して殺すタイプの暗殺が流行るようになるだけかな?
毒を盛らなくたって、夜中にそっと首を絞めるとか、濡れタオルで鼻と口を塞ぐとかでも人間は死ぬし、階段から突き落とすって言うのも古くから使われる手段だ。
う~ん。
そう考えると、この開発とか実験って何のためにやっているんだろという気もしてくるな。
まあ、シャルロやアレクの知り合いが安心して暖かいご飯を食べられるようになればいいかもって感じかな?
大量に売り出さなければ対処法もそれ程大々的に広がらないだろう。
取り敢えず、実験だな!
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