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卒業後
939 星暦557年 黄の月 3日 新しい伝手(3)
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「明かり?
暗い部屋に入った時なんかに便利かもね」
バッグ飾りの説明を読んだシャルロが言った。
「虫除けか冷風と温風機能に変えようかと思ったんだが・・・明かりの方が良いかね?」
俺は人よりも夜目が効くし、心眼《サイト》と慣れのお蔭で真っ暗闇な中でもさして問題なく動き回れる。だから明かりの無い部屋に入った時とか暗い夜道を歩いたりするのに不便を感じたことはほぼ無いんだよね。
女性が一人で夜道を歩くなんて危険なことはシェイラでもしないだろうから、明かりとしては暗い部屋に入った時に使う程度になるから、あまり必要は無いかと思ったんだが・・・あったら便利なのか?
「う~ん、シェイラって宿にずっと滞在しているんでしょ?
遅い時間に帰って来たりしたら、部屋の中が薄暗い場合に廊下の扉を開けて光源を確保して明かりをつける羽目になると思う。
宿の扉を直ぐに閉めないって言うのは場合によっては危険だし、どちらにしても廊下から漏れる明かり程度で動き回るのって不便だから、そう言う事をしなくても手許を明るく出来る魔具があったら便利じゃない?」
シャルロがちょっと首を傾げながら言った。
そうか。
確かに普通だったら部屋の中に入った時に暗闇でランプを見つけて点灯するのは不自由かもだな。
シェイラが泊っている宿は3階は長期滞在者用で安全な筈だが、宿と食事処という不特定多数な人間が立ち入る建物であることを考えると変な人間が紛れ込む危険だってゼロではない。
そう考えると夜に扉を開けておいて部屋の明かりを付けなければならないなんて、危険だな。
まあ、そこら辺はシェイラだったら何らかの手を講じているとは思うが、新しい発見に熱中しすぎてついうっかりなんてこともあってもおかしくはない。
一応防犯用結界魔具も渡してあるし、襲われた時用の反撃に使える雷撃を与える魔具も持っているとは言っていたが、襲われて撃退するよりも襲われない状況にしておく方が良い。
「ふむ。
そう考えると、これは中の魔術回路は変えない方が良いか。
まあ、もうそろそろ虫もいなくなる季節だし、丁度いいか」
「そう考えると、キーホルダーとかちょっとしたブレスレットとかで短時間だけ明かりを付けられる安価な魔具の需要はありそうだな。
安心できる宿に必ずしも行商人が泊れるとは限らないし、個人宅の玄関のカギを開ける際にも手許を明るく照らせたら便利そうだ」
横で聞いていたアレクが口を挟む。
「確かに、シェイラよりももっと出入りの激しい宿屋に泊る商会の人間なんかの方が扉を直ぐに開け閉めできる必要がありそうだな」
行商人や商会の人間を襲う宿なんて直ぐに廃れるだろうが、街によっては他に選択肢がない場合もある。
まあ、それでもひど過ぎる場合は信頼できない宿に泊まらずに、馬車で寝るという場合もあるらしいが。
防寒・防犯用結界に多少手を加えると、寝ている最中に忍び込んでくる人間の警戒用に使えるらしい。
「こちらは半貴石な魔石が意外と多いな。
魔石としては割高だが、半貴石でもあるという点を考えるとアファル王国で買うよりお手ごろだ。
もう少し買って帰っても良いかも知れない」
店の中の半貴石を使った魔具を見ながらアレクが言った。
普段は魔石の購入なんぞ俺たちは関与していないが、東大陸での購入なんて商会の人間に任せるても直ぐには手配できないだろうから、来ているついでに買い漁るつもりなのかな?
アスカあたりに頼めば色々と見つけてきてくれるだろうが・・・まあ、個人のプレゼントならまだしも、事業用の石をアスカに頼むのは微妙だから、何も言わないでおこう。
「見てこれ、中々綺麗でしょ?」
アレクが店の中の魔術回路付きな半貴石を見て回っている間にシャルロはお洒落っぽいペンを購入したらしい。
握りの部分が半貴石で出来ていて、しゅっと細いわりに繊細な彫刻が彫り込まれている。元々の石の模様と相まって中々お洒落そうだ。
が。
「それってずっと握って使っていたら手垢とかで汚れるんじゃないか?
洗って大丈夫なタイプの石なのか?」
宝石とか半貴石って物によっては水洗いとか石鹸洗いすると変色したり割れ易くなったりするって話だが。
「・・・いざとなったら、蒼流に頼めば石を壊さずに綺麗にしてくれるから、大丈夫!」
一瞬考えたシャルロだが、にっこり笑って返事をしてきた。
確かに。
水精霊だったらどんな石だって破損させずに汚れを洗い流せそうだ。
そんなことを考えている間に、アレクが何やらアクセサリーを買いながら店の人間と話していた。
「半貴石を専門で取り扱っている店がこの奥にあるらしい。
そこに寄って良いか?」
店の人間から石の仕入れ先を聞いてきたらしい。
まあ、石が欲しいんだったら加工済みなここのよりも仕入先の方で買う方が合理的だもんな。
よくぞ教えてくれたな。
幾らか金貨を握らせたのかな?
おっと。それよりも、俺もさっさと会計を済ませなきゃ。
暗い部屋に入った時なんかに便利かもね」
バッグ飾りの説明を読んだシャルロが言った。
「虫除けか冷風と温風機能に変えようかと思ったんだが・・・明かりの方が良いかね?」
俺は人よりも夜目が効くし、心眼《サイト》と慣れのお蔭で真っ暗闇な中でもさして問題なく動き回れる。だから明かりの無い部屋に入った時とか暗い夜道を歩いたりするのに不便を感じたことはほぼ無いんだよね。
女性が一人で夜道を歩くなんて危険なことはシェイラでもしないだろうから、明かりとしては暗い部屋に入った時に使う程度になるから、あまり必要は無いかと思ったんだが・・・あったら便利なのか?
「う~ん、シェイラって宿にずっと滞在しているんでしょ?
遅い時間に帰って来たりしたら、部屋の中が薄暗い場合に廊下の扉を開けて光源を確保して明かりをつける羽目になると思う。
宿の扉を直ぐに閉めないって言うのは場合によっては危険だし、どちらにしても廊下から漏れる明かり程度で動き回るのって不便だから、そう言う事をしなくても手許を明るく出来る魔具があったら便利じゃない?」
シャルロがちょっと首を傾げながら言った。
そうか。
確かに普通だったら部屋の中に入った時に暗闇でランプを見つけて点灯するのは不自由かもだな。
シェイラが泊っている宿は3階は長期滞在者用で安全な筈だが、宿と食事処という不特定多数な人間が立ち入る建物であることを考えると変な人間が紛れ込む危険だってゼロではない。
そう考えると夜に扉を開けておいて部屋の明かりを付けなければならないなんて、危険だな。
まあ、そこら辺はシェイラだったら何らかの手を講じているとは思うが、新しい発見に熱中しすぎてついうっかりなんてこともあってもおかしくはない。
一応防犯用結界魔具も渡してあるし、襲われた時用の反撃に使える雷撃を与える魔具も持っているとは言っていたが、襲われて撃退するよりも襲われない状況にしておく方が良い。
「ふむ。
そう考えると、これは中の魔術回路は変えない方が良いか。
まあ、もうそろそろ虫もいなくなる季節だし、丁度いいか」
「そう考えると、キーホルダーとかちょっとしたブレスレットとかで短時間だけ明かりを付けられる安価な魔具の需要はありそうだな。
安心できる宿に必ずしも行商人が泊れるとは限らないし、個人宅の玄関のカギを開ける際にも手許を明るく照らせたら便利そうだ」
横で聞いていたアレクが口を挟む。
「確かに、シェイラよりももっと出入りの激しい宿屋に泊る商会の人間なんかの方が扉を直ぐに開け閉めできる必要がありそうだな」
行商人や商会の人間を襲う宿なんて直ぐに廃れるだろうが、街によっては他に選択肢がない場合もある。
まあ、それでもひど過ぎる場合は信頼できない宿に泊まらずに、馬車で寝るという場合もあるらしいが。
防寒・防犯用結界に多少手を加えると、寝ている最中に忍び込んでくる人間の警戒用に使えるらしい。
「こちらは半貴石な魔石が意外と多いな。
魔石としては割高だが、半貴石でもあるという点を考えるとアファル王国で買うよりお手ごろだ。
もう少し買って帰っても良いかも知れない」
店の中の半貴石を使った魔具を見ながらアレクが言った。
普段は魔石の購入なんぞ俺たちは関与していないが、東大陸での購入なんて商会の人間に任せるても直ぐには手配できないだろうから、来ているついでに買い漁るつもりなのかな?
アスカあたりに頼めば色々と見つけてきてくれるだろうが・・・まあ、個人のプレゼントならまだしも、事業用の石をアスカに頼むのは微妙だから、何も言わないでおこう。
「見てこれ、中々綺麗でしょ?」
アレクが店の中の魔術回路付きな半貴石を見て回っている間にシャルロはお洒落っぽいペンを購入したらしい。
握りの部分が半貴石で出来ていて、しゅっと細いわりに繊細な彫刻が彫り込まれている。元々の石の模様と相まって中々お洒落そうだ。
が。
「それってずっと握って使っていたら手垢とかで汚れるんじゃないか?
洗って大丈夫なタイプの石なのか?」
宝石とか半貴石って物によっては水洗いとか石鹸洗いすると変色したり割れ易くなったりするって話だが。
「・・・いざとなったら、蒼流に頼めば石を壊さずに綺麗にしてくれるから、大丈夫!」
一瞬考えたシャルロだが、にっこり笑って返事をしてきた。
確かに。
水精霊だったらどんな石だって破損させずに汚れを洗い流せそうだ。
そんなことを考えている間に、アレクが何やらアクセサリーを買いながら店の人間と話していた。
「半貴石を専門で取り扱っている店がこの奥にあるらしい。
そこに寄って良いか?」
店の人間から石の仕入れ先を聞いてきたらしい。
まあ、石が欲しいんだったら加工済みなここのよりも仕入先の方で買う方が合理的だもんな。
よくぞ教えてくれたな。
幾らか金貨を握らせたのかな?
おっと。それよりも、俺もさっさと会計を済ませなきゃ。
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