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卒業後
936 星暦557年 緑の月 30日 熟練の技モドキ(18)
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「へぇぇ、中に入っている物の成分が分かるの?
しれっと混ぜ物をしてくる業者退治だけでなく、色々と便利そうねぇ」
取り敢えずチャックの引っ越しと弟子入りも問題なく話が進み、桃の苗木もシャルロの屋敷の庭に植えられ、俺たちの魔力をガンガン妖精に渡して大きく育てるのも無事成功した。
農作業用の利用は基本的に農作物学会に任せ、彼らは領主陣相手にこれから研究への関与と支援を持ち掛ける予定らしいが、そちらはもう俺たちの手からは離れたと考えている。
商業ギルドの方も何やらぐちぐちと反対していた副ギルド長が多額の贈収賄と横領が明るみに出て失脚したお蔭ですんなり大量納入と商業ギルドからの貸し出し・販売の話が纏まったらしい。
シェフィート商会が直接売らないのかとちょっと驚いたが、混ぜ物を発見する装置というのはちょっと恨まれやすい上に色々仕込まれて陥れられる危険性が高いとのことで、こっそり信頼できる知り合いの商会に融通するのはまだしも、ほぼ付き合いのない第三者に売るのは商業ギルドに任せることにしたそうだ。
セビウス氏が居ればどんな罠も撃退できるとは思うが、そんな手間と暇をかけて恨みを買うよりも、多少は利幅が落ちても商業ギルドに恩と面倒を売りつける方が良いという結論にアレクの実家の方では達したらしい。
「分かっている成分の割合が目で見える様になるっていうのが正確なとこだな。
だから砂糖とか塩とか小麦粉の袋の中にどれだけ本来入っているべき砂糖や塩や小麦粉が含まれているかを確認するのは可能だし、よく嵩増し用に使われる砂なんかの量も分かるが、知らない素材が入っている場合は知っているのに加えて『不明な成分が何割』って感じになるな」
農業用の土だったら代表的な栄養素と含まれていたら不味い毒系の成分との割合を確認させるんだが・・・毒系って体に蓄積するせいで微量でもだんだん悪さをする様になることもあるらしいから、こっちは必ずしも見つかるとは限らないかも。
「知っている成分の割合を確認する感じなんだ?」
パンにジャムを塗りながらシェイラが尋ねる。
「そう。
まあ、土の中の成分だったらアスカに聞けば成分を全部教えてくれるが・・・人間社会でなんと呼んでいるか知らないことも多いな」
人間に害がある成分は直ぐに指摘してくれるけど、名前を知っているとは限らないんだよなぁ。
まあ、俺だって土の中の成分の名称なんぞ知らないから、アスカが知らなくても不思議は無いが。
「へぇぇぇ。
・・・じゃあ、割れた陶器とかの成分も分かるの??」
シェイラの手が止まってこちらに顔がぐりっと向いた。
なんかこう、学者の連中って興味がある話を嗅ぎつけると妙に首だけ動くんだよなぁ。
体ごと動かせよ、体ごと。
首から下の事を忘れんじゃないぞ~。
「まあ、分かるっちゃあ分かるが、陶器とかって焼く前の下準備とか、焼く際の温度や湿度とか、焼いた後の温度の下げ方とか色々と必要な技術があるだろ?
割れた遺物の成分が分かったところで、再現できるまでにはかなりの試行錯誤が必要だと思うぞ?」
それこそレディ・トレンティスの屋敷の傍のオーパスタ神殿文明の遺跡は陶器系の強度がかなり強かったみたいで色々と活用されていたから、あれを現代に再現出来たら金に成るかも知れないが・・・材料が分かっても、再現するまでの試行錯誤の資金提供が大変なんじゃないか?
それに、幾ら便利だと言っても金属用の性能が良い炉がある今だったら鉄や青銅を使う方が便利な場面が多いと思うし。
ある意味、思いっきり高級路線で『無骨な金属には無い優雅さと、同じぐらいの強度』って感じに売り出すなら貴族とかは喜ぶかもだが、何に使うのかはかなり疑問な気がする。
「あ~、そうねぇ。
でも、使われている素材が何かが分かるだけで、近辺のどこで採掘されたのかとか、どこか別の町から輸入したのかも知れないとかといった推測が出来るから、是非今度アスカに協力してもらいたいな!!」
にっこりと微笑みながらシェイラが強請ってきた。
「まあ、良いけど。
次回までに調べたいサンプルを選んでおいてくれ。
ちなみに明日からはちょっと東大陸の方に行くから、いつ帰って来るかはちょっとまだ不明なんだ。
随時連絡入れるよ」
シェイラが王都の方に遊びに来る可能性はかなり低いが、もしも偶然遊びに来たのに俺が居なかったら残念過ぎるからな。
「あら?
また香辛料の買い付け?
それとも呪詛関連で更に問題がおきたの?」
サラリとジャムの上に更にメープルシロップをかけながらシェイラが聞いてきた。
シェイラってシャルロ程の甘い物好きじゃあないんだが、時折変な風にはっちゃけてやたらと甘い物を食べたがるんだよなぁ。
日によって変わる味覚と嗜好なんて、不思議すぎる。
お蔭でちゃんと気を付けて『通常の状態』を確認しておかないと、好きかと思って買ってきたお土産がそっと横に押しやられることになるんだよなぁ。
「ちょっと毒探知関連で何か便利な魔具が無いか、聞きに行こうと思ってね。
いつも行くジルダスは毒よりも呪詛が主な産業だが、もっと南の方に行くと毒が主産業な街もあるらしいから、そっちまで足を延ばす予定だ」
まずはジルダスに寄ってゼブから紹介状でも貰えないか、頼み込むつもりだが。
ついでにお土産に何か生地でも買ってくるかな。
以前かったショールは中々好評だった。
遺物とかを買ってきたら一番喜ぶんだろうが、俺じゃあ偽物と本物の見分けが難しすぎるからなぁ。
【後書き】
シェイラは通常甘いものは比較的我慢しているんですが、時々反動が出てドカ食いしちゃうタイプw
しれっと混ぜ物をしてくる業者退治だけでなく、色々と便利そうねぇ」
取り敢えずチャックの引っ越しと弟子入りも問題なく話が進み、桃の苗木もシャルロの屋敷の庭に植えられ、俺たちの魔力をガンガン妖精に渡して大きく育てるのも無事成功した。
農作業用の利用は基本的に農作物学会に任せ、彼らは領主陣相手にこれから研究への関与と支援を持ち掛ける予定らしいが、そちらはもう俺たちの手からは離れたと考えている。
商業ギルドの方も何やらぐちぐちと反対していた副ギルド長が多額の贈収賄と横領が明るみに出て失脚したお蔭ですんなり大量納入と商業ギルドからの貸し出し・販売の話が纏まったらしい。
シェフィート商会が直接売らないのかとちょっと驚いたが、混ぜ物を発見する装置というのはちょっと恨まれやすい上に色々仕込まれて陥れられる危険性が高いとのことで、こっそり信頼できる知り合いの商会に融通するのはまだしも、ほぼ付き合いのない第三者に売るのは商業ギルドに任せることにしたそうだ。
セビウス氏が居ればどんな罠も撃退できるとは思うが、そんな手間と暇をかけて恨みを買うよりも、多少は利幅が落ちても商業ギルドに恩と面倒を売りつける方が良いという結論にアレクの実家の方では達したらしい。
「分かっている成分の割合が目で見える様になるっていうのが正確なとこだな。
だから砂糖とか塩とか小麦粉の袋の中にどれだけ本来入っているべき砂糖や塩や小麦粉が含まれているかを確認するのは可能だし、よく嵩増し用に使われる砂なんかの量も分かるが、知らない素材が入っている場合は知っているのに加えて『不明な成分が何割』って感じになるな」
農業用の土だったら代表的な栄養素と含まれていたら不味い毒系の成分との割合を確認させるんだが・・・毒系って体に蓄積するせいで微量でもだんだん悪さをする様になることもあるらしいから、こっちは必ずしも見つかるとは限らないかも。
「知っている成分の割合を確認する感じなんだ?」
パンにジャムを塗りながらシェイラが尋ねる。
「そう。
まあ、土の中の成分だったらアスカに聞けば成分を全部教えてくれるが・・・人間社会でなんと呼んでいるか知らないことも多いな」
人間に害がある成分は直ぐに指摘してくれるけど、名前を知っているとは限らないんだよなぁ。
まあ、俺だって土の中の成分の名称なんぞ知らないから、アスカが知らなくても不思議は無いが。
「へぇぇぇ。
・・・じゃあ、割れた陶器とかの成分も分かるの??」
シェイラの手が止まってこちらに顔がぐりっと向いた。
なんかこう、学者の連中って興味がある話を嗅ぎつけると妙に首だけ動くんだよなぁ。
体ごと動かせよ、体ごと。
首から下の事を忘れんじゃないぞ~。
「まあ、分かるっちゃあ分かるが、陶器とかって焼く前の下準備とか、焼く際の温度や湿度とか、焼いた後の温度の下げ方とか色々と必要な技術があるだろ?
割れた遺物の成分が分かったところで、再現できるまでにはかなりの試行錯誤が必要だと思うぞ?」
それこそレディ・トレンティスの屋敷の傍のオーパスタ神殿文明の遺跡は陶器系の強度がかなり強かったみたいで色々と活用されていたから、あれを現代に再現出来たら金に成るかも知れないが・・・材料が分かっても、再現するまでの試行錯誤の資金提供が大変なんじゃないか?
それに、幾ら便利だと言っても金属用の性能が良い炉がある今だったら鉄や青銅を使う方が便利な場面が多いと思うし。
ある意味、思いっきり高級路線で『無骨な金属には無い優雅さと、同じぐらいの強度』って感じに売り出すなら貴族とかは喜ぶかもだが、何に使うのかはかなり疑問な気がする。
「あ~、そうねぇ。
でも、使われている素材が何かが分かるだけで、近辺のどこで採掘されたのかとか、どこか別の町から輸入したのかも知れないとかといった推測が出来るから、是非今度アスカに協力してもらいたいな!!」
にっこりと微笑みながらシェイラが強請ってきた。
「まあ、良いけど。
次回までに調べたいサンプルを選んでおいてくれ。
ちなみに明日からはちょっと東大陸の方に行くから、いつ帰って来るかはちょっとまだ不明なんだ。
随時連絡入れるよ」
シェイラが王都の方に遊びに来る可能性はかなり低いが、もしも偶然遊びに来たのに俺が居なかったら残念過ぎるからな。
「あら?
また香辛料の買い付け?
それとも呪詛関連で更に問題がおきたの?」
サラリとジャムの上に更にメープルシロップをかけながらシェイラが聞いてきた。
シェイラってシャルロ程の甘い物好きじゃあないんだが、時折変な風にはっちゃけてやたらと甘い物を食べたがるんだよなぁ。
日によって変わる味覚と嗜好なんて、不思議すぎる。
お蔭でちゃんと気を付けて『通常の状態』を確認しておかないと、好きかと思って買ってきたお土産がそっと横に押しやられることになるんだよなぁ。
「ちょっと毒探知関連で何か便利な魔具が無いか、聞きに行こうと思ってね。
いつも行くジルダスは毒よりも呪詛が主な産業だが、もっと南の方に行くと毒が主産業な街もあるらしいから、そっちまで足を延ばす予定だ」
まずはジルダスに寄ってゼブから紹介状でも貰えないか、頼み込むつもりだが。
ついでにお土産に何か生地でも買ってくるかな。
以前かったショールは中々好評だった。
遺物とかを買ってきたら一番喜ぶんだろうが、俺じゃあ偽物と本物の見分けが難しすぎるからなぁ。
【後書き】
シェイラは通常甘いものは比較的我慢しているんですが、時々反動が出てドカ食いしちゃうタイプw
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