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卒業後
923 星暦557年 緑の月 3日 熟練の技モドキ(5)
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結局、土系の幻獣の助けを借りるという反則技の危険に関しては考えないことにして、既存の毒探知用魔具の魔術回路を確認してまずは試作品を作ってみることにした。
きっと成分だけ分かれば何でも再現できるんだったら、少なくともその事を国の上層部ぐらいは知っていて何らかの手を打っているだろう。
情報管理に躍起になっていたベルファウォードやペルファーナに行く際にアスカの喚び出しに関して何も言われなかったって事は、成分だけでは足りない可能性が高い。
俺たちの使い魔には試作品のテストで手伝ってもらうことになって、取り敢えず魔力を渡し(多少ブラッシングをして)帰って貰った。
「へぇぇぇ。
こう言う毒探知の魔具ってどれも知られた毒しか探知できないんだね」
3つほど入手した身に着けるタイプの毒探知用魔具を分解して中身を見比べたところで、シャルロがちょっと驚いた様に感想を言った。
そう。
どの毒探知の魔具にも、砂一粒ぐらいのごく微量な毒が何種類か入っていて、魔術回路はそれらと同じ物が魔具の探知面に触れたら光って知らせるという構造だったのだ。
毒の純度とか濃度とか量によって光り方に違いが出るとか、死ぬタイプと体調が悪くなる(意識が朦朧とする系も含めて)タイプの違いを識別できるようになっているとか、ちょっとずつ機能に違いはあったが、基本部分はどれも『これと同じ物があったら光る』という機能だったのだ。
「こっちは違うぞ」
先に分解した毒探知用魔具3つはブレスレットとか指輪(かなりごつくて大きいが)タイプだったが、最後の一つは机の上に置く大きなタイプで、晩餐会なんかの時に毒見の代わりに主催側が使う魔具らしい。
こちらはなんでも右側の所に誰かの血を垂らして、左側に食材を触れさせるというちょっと微妙なタイプなのだが・・・どうも血が異常反応を起こすと毒だと識別するらしい。
・・・呼吸困難を起こすようなタイプの毒も血に関係するのかね?
いや、食事用のチェックだから、食べて胃から血に吸収されることで効果を発揮する毒が目当てなのだろう。そう考えると血が反応するというので良いのかな?
「なるほどね。
こちらは化粧品とかのテストにも使えそうだな。
毒だと知られていない成分でも体に有害なら反応するというのは、中々良さげだが・・・今回の土壌内の成分探知や分析に関しては小型版の魔術回路の方が利用出来そうだ」
アレクが興味深げに卓上毒探知用魔具の中を覗き込んでいたが、脇に退けて顔を上げた。
「取り敢えず、この素材を触れさせて探知させる部分を0.5メタぐらいの筒の内側ってことにして、作物を育てるのに良い成分と悪い成分とがどの程度あるか、こっちの魔術回路を使って量の違いも見える様に出来ないかな?」
シャルロが提案する。
「筒よりも、板をブスっと地面に刺してそれに触れている面じゃダメかな?」
筒って意外と場所をとるし、加工もひと手間余分にかかるし、筒の中央部分は感知する面に触れないことになるから無駄がありそうだ。
「まあ、実際に作って試してみないと分からないが、筒にせよ板にせよ、力任せに地面に押し込むとしたらその際に石とかに当たって傷がつかないか?
多少表面に傷がついても精度に問題が無いか、調べた方が良さそうだな」
アレクが指摘した。
あ~。
畑だったら流石にあまり石が転がっていないと思うが(耕しているんだから無くなっているよな??)、果樹園だったらどうか分からないし、新しい開拓地で調べたりするんだったらそれこそ石がゴロゴロ地中にありそうだな。
確かにどの程度感知させる面が無事じゃないといけないかは要確認だ。
「ダメそうだったらそれこそ筒なり長方形の箱なりを地面に押し込んで、レバーか何かの操作で下部で蓋を締められるようにして土をくり抜ける感じの部品を作る必要があるかな?
引き上げた土を調べる為に感知用板形部品の表面へざっと広げる形にしたらいいかも知れない」
ざばっと掛ける形だったら木槌とかでゴンゴン地中に打ち込む時程の力は掛からないから、中に石があっても大丈夫だろう。
多分。
「というか、試作品は工房の中で色々試せるようにトレー状の表面に庭から土を取ってきて広げて調べる形にしたらいいよね?
魔術回路の方が完成したら、そのトレー部分をそのまま板っぽい感じに地面に打ち込んで使ったり、筒状に丸めて使ったりして何か問題が起きるか確認すればいいんだし」
シャルロが指摘する。
確かに。
色々と試行錯誤するのに一々庭と工房を行き来するのは面倒だ。
あまり庭の土とかを靴に付けて家の中に持ち込むとパディン夫人に怒られるし。
【後書き】
工房の中のトレーへ土を持ち込む際に色々溢したらやはり怒られそうだけどw
きっと成分だけ分かれば何でも再現できるんだったら、少なくともその事を国の上層部ぐらいは知っていて何らかの手を打っているだろう。
情報管理に躍起になっていたベルファウォードやペルファーナに行く際にアスカの喚び出しに関して何も言われなかったって事は、成分だけでは足りない可能性が高い。
俺たちの使い魔には試作品のテストで手伝ってもらうことになって、取り敢えず魔力を渡し(多少ブラッシングをして)帰って貰った。
「へぇぇぇ。
こう言う毒探知の魔具ってどれも知られた毒しか探知できないんだね」
3つほど入手した身に着けるタイプの毒探知用魔具を分解して中身を見比べたところで、シャルロがちょっと驚いた様に感想を言った。
そう。
どの毒探知の魔具にも、砂一粒ぐらいのごく微量な毒が何種類か入っていて、魔術回路はそれらと同じ物が魔具の探知面に触れたら光って知らせるという構造だったのだ。
毒の純度とか濃度とか量によって光り方に違いが出るとか、死ぬタイプと体調が悪くなる(意識が朦朧とする系も含めて)タイプの違いを識別できるようになっているとか、ちょっとずつ機能に違いはあったが、基本部分はどれも『これと同じ物があったら光る』という機能だったのだ。
「こっちは違うぞ」
先に分解した毒探知用魔具3つはブレスレットとか指輪(かなりごつくて大きいが)タイプだったが、最後の一つは机の上に置く大きなタイプで、晩餐会なんかの時に毒見の代わりに主催側が使う魔具らしい。
こちらはなんでも右側の所に誰かの血を垂らして、左側に食材を触れさせるというちょっと微妙なタイプなのだが・・・どうも血が異常反応を起こすと毒だと識別するらしい。
・・・呼吸困難を起こすようなタイプの毒も血に関係するのかね?
いや、食事用のチェックだから、食べて胃から血に吸収されることで効果を発揮する毒が目当てなのだろう。そう考えると血が反応するというので良いのかな?
「なるほどね。
こちらは化粧品とかのテストにも使えそうだな。
毒だと知られていない成分でも体に有害なら反応するというのは、中々良さげだが・・・今回の土壌内の成分探知や分析に関しては小型版の魔術回路の方が利用出来そうだ」
アレクが興味深げに卓上毒探知用魔具の中を覗き込んでいたが、脇に退けて顔を上げた。
「取り敢えず、この素材を触れさせて探知させる部分を0.5メタぐらいの筒の内側ってことにして、作物を育てるのに良い成分と悪い成分とがどの程度あるか、こっちの魔術回路を使って量の違いも見える様に出来ないかな?」
シャルロが提案する。
「筒よりも、板をブスっと地面に刺してそれに触れている面じゃダメかな?」
筒って意外と場所をとるし、加工もひと手間余分にかかるし、筒の中央部分は感知する面に触れないことになるから無駄がありそうだ。
「まあ、実際に作って試してみないと分からないが、筒にせよ板にせよ、力任せに地面に押し込むとしたらその際に石とかに当たって傷がつかないか?
多少表面に傷がついても精度に問題が無いか、調べた方が良さそうだな」
アレクが指摘した。
あ~。
畑だったら流石にあまり石が転がっていないと思うが(耕しているんだから無くなっているよな??)、果樹園だったらどうか分からないし、新しい開拓地で調べたりするんだったらそれこそ石がゴロゴロ地中にありそうだな。
確かにどの程度感知させる面が無事じゃないといけないかは要確認だ。
「ダメそうだったらそれこそ筒なり長方形の箱なりを地面に押し込んで、レバーか何かの操作で下部で蓋を締められるようにして土をくり抜ける感じの部品を作る必要があるかな?
引き上げた土を調べる為に感知用板形部品の表面へざっと広げる形にしたらいいかも知れない」
ざばっと掛ける形だったら木槌とかでゴンゴン地中に打ち込む時程の力は掛からないから、中に石があっても大丈夫だろう。
多分。
「というか、試作品は工房の中で色々試せるようにトレー状の表面に庭から土を取ってきて広げて調べる形にしたらいいよね?
魔術回路の方が完成したら、そのトレー部分をそのまま板っぽい感じに地面に打ち込んで使ったり、筒状に丸めて使ったりして何か問題が起きるか確認すればいいんだし」
シャルロが指摘する。
確かに。
色々と試行錯誤するのに一々庭と工房を行き来するのは面倒だ。
あまり庭の土とかを靴に付けて家の中に持ち込むとパディン夫人に怒られるし。
【後書き】
工房の中のトレーへ土を持ち込む際に色々溢したらやはり怒られそうだけどw
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