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卒業後
915 星暦557年 萌葱の月 21日 やはりお手伝いか(11)
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何やら小さな石(?)をすり鉢ですり潰していた男はすりこぎを近くの小さなボウルの中に入れ、すり鉢の上へ蓋がわりにそっと紙を乗せてから小さくため息を吐いて顔を上げた。
「とうとう見つかったか。
私はグルダナの解毒剤を見つけるためにあれを輸入しているヴィント商会と協力していたのだが・・・代りに生成させられていた毒はそれらを流通する資格がある商会と言っても明らかに量が多すぎたから、いつかはバレて当局の手が入るだろうとは思っていたが・・・」
おいおい。
つまり、こいつ本人は解毒剤を発明したくて研究をしているが、そのために必要な材料を入手できるヴィント商会と協力していて、協力の代償として毒も生成していたのか?
しかも違法な販売に使われていると薄々分かっていたのにそれに目をつぶっていたと。
・・・駄目じゃね??
「ふむ。
誰か、近い人間がグルダナの毒に倒れたのか?」
ウォレン爺が尋ねる。
「妹が何やら男女の恋愛のもつれとやらで毒を盛られた。
幸いにも直ぐに気付いて中和薬を飲ませたから死ななかったが、ほぼ寝たきりで常に苦痛に悩まされる状態になっている」
ふうん?
あまり聞かない毒だが、そんなそこらの女と男の三角関係ぐらいで気軽に盛れるような毒なのかね?
あっさり入手できる毒って即効性が高いが露骨に毒だって分かる物か、死ぬか死なないか当たり外れがあるようなちょっと弱いのが殆どだと思っていたんだが。
そんな長期的に死なずに苦しむ毒なんてあったんだな。
はっきり言って、妹さんにしてみたら大人しく死にたかったんじゃないか?
痛いままずっと寝たきり、兄は自分の為に解毒剤の研究をする為に怪しげな商会で軟禁されて毒を生成してるなんて、はっきり言って生きている意味ってあるんか疑問なんだが。
まあ、その恋愛のもつれとやらが横恋慕してきた女が悪くって、男の方が未だに妹を愛していて体調が戻ったら結婚しようとでも言って現在でも献身的に介護しているならまだ救いがあるが・・・。
痛みを耐えながらほぼ寝たきりじゃあ顔もやつれるし、あっさり男には浮気されているんじゃないかね?
やっと解毒剤を発明して妹さんが回復した時に、男に裏切られていて首を吊ったから男を兄の方が毒殺したなんて話にならないことを期待しているぞ~。
「ふむ。
毒の生成は違法行為だが、解毒剤を作れる人間は貴重だ。
場合によっては罪の償いも兼ねて国の研究所で解毒剤の研究に携われるように手配するのも可能かも知れない。
取り敢えず、大人しくついて来て正直に調査員の質問に答えるのだな」
ウォレン爺が男に告げ、上からついてきた部下(多分)に男の拘束と事情聴取を命じてから俺の方を向いた。
「地下に何か他に隠し場所はあるのか?」
「特には無いな」
とは言え、無造作に置いてある粉とか液体が猛毒な可能性はそれなりに高そうだから、隠されていないからって安易に触らない方が良さげだが。
「では他の部屋に回ろう」
頷きながらウォレン爺が梯子の方へ戻る。
「グルダナの毒って聞いたことがないんだけど、街中の普通の薬師の家族が気軽に盛られる程一般に流通している毒なのか?」
盛られても死なずに苦しみ続ける毒って珍しいと思うんだが。
「いや、それこそあの男が態々こんな幽閉状態になっても研究の為に協力するぐらい、入手は難しい珍しい毒だな。
というか、一般的な使い方としては殺さずに被害者を長期間苦しませるための毒として貴族の間では知られている」
おっと。
苦しませるための毒、ね。
「それってあの男は嵌められたってやつ?」
「その可能性は高いだろうな。
解毒剤の生成に成功したら、あの男がヴィント商会の人間を毒殺するのと、あの男が殺されるのと、どちらが先になったかは見物だったかもしれない」
梯子を上りながらウォレン爺が言った。
うわぁ。
あの薬師も馬鹿でなければヴィント商会を怪しんでいたんだろうが、開き直っていたみたいだな。
毒も言われるがままに生成しているんだ。
全てが終わったら自分も死ぬか・・・裏社会にどっぷり浸かって腐り果てるつもりなのかな?
悪用できる技術に関して腕が良すぎるって、危険だよなぁ・・・。
【後書き】
ちょっとブーメランしそうな感想w
「とうとう見つかったか。
私はグルダナの解毒剤を見つけるためにあれを輸入しているヴィント商会と協力していたのだが・・・代りに生成させられていた毒はそれらを流通する資格がある商会と言っても明らかに量が多すぎたから、いつかはバレて当局の手が入るだろうとは思っていたが・・・」
おいおい。
つまり、こいつ本人は解毒剤を発明したくて研究をしているが、そのために必要な材料を入手できるヴィント商会と協力していて、協力の代償として毒も生成していたのか?
しかも違法な販売に使われていると薄々分かっていたのにそれに目をつぶっていたと。
・・・駄目じゃね??
「ふむ。
誰か、近い人間がグルダナの毒に倒れたのか?」
ウォレン爺が尋ねる。
「妹が何やら男女の恋愛のもつれとやらで毒を盛られた。
幸いにも直ぐに気付いて中和薬を飲ませたから死ななかったが、ほぼ寝たきりで常に苦痛に悩まされる状態になっている」
ふうん?
あまり聞かない毒だが、そんなそこらの女と男の三角関係ぐらいで気軽に盛れるような毒なのかね?
あっさり入手できる毒って即効性が高いが露骨に毒だって分かる物か、死ぬか死なないか当たり外れがあるようなちょっと弱いのが殆どだと思っていたんだが。
そんな長期的に死なずに苦しむ毒なんてあったんだな。
はっきり言って、妹さんにしてみたら大人しく死にたかったんじゃないか?
痛いままずっと寝たきり、兄は自分の為に解毒剤の研究をする為に怪しげな商会で軟禁されて毒を生成してるなんて、はっきり言って生きている意味ってあるんか疑問なんだが。
まあ、その恋愛のもつれとやらが横恋慕してきた女が悪くって、男の方が未だに妹を愛していて体調が戻ったら結婚しようとでも言って現在でも献身的に介護しているならまだ救いがあるが・・・。
痛みを耐えながらほぼ寝たきりじゃあ顔もやつれるし、あっさり男には浮気されているんじゃないかね?
やっと解毒剤を発明して妹さんが回復した時に、男に裏切られていて首を吊ったから男を兄の方が毒殺したなんて話にならないことを期待しているぞ~。
「ふむ。
毒の生成は違法行為だが、解毒剤を作れる人間は貴重だ。
場合によっては罪の償いも兼ねて国の研究所で解毒剤の研究に携われるように手配するのも可能かも知れない。
取り敢えず、大人しくついて来て正直に調査員の質問に答えるのだな」
ウォレン爺が男に告げ、上からついてきた部下(多分)に男の拘束と事情聴取を命じてから俺の方を向いた。
「地下に何か他に隠し場所はあるのか?」
「特には無いな」
とは言え、無造作に置いてある粉とか液体が猛毒な可能性はそれなりに高そうだから、隠されていないからって安易に触らない方が良さげだが。
「では他の部屋に回ろう」
頷きながらウォレン爺が梯子の方へ戻る。
「グルダナの毒って聞いたことがないんだけど、街中の普通の薬師の家族が気軽に盛られる程一般に流通している毒なのか?」
盛られても死なずに苦しみ続ける毒って珍しいと思うんだが。
「いや、それこそあの男が態々こんな幽閉状態になっても研究の為に協力するぐらい、入手は難しい珍しい毒だな。
というか、一般的な使い方としては殺さずに被害者を長期間苦しませるための毒として貴族の間では知られている」
おっと。
苦しませるための毒、ね。
「それってあの男は嵌められたってやつ?」
「その可能性は高いだろうな。
解毒剤の生成に成功したら、あの男がヴィント商会の人間を毒殺するのと、あの男が殺されるのと、どちらが先になったかは見物だったかもしれない」
梯子を上りながらウォレン爺が言った。
うわぁ。
あの薬師も馬鹿でなければヴィント商会を怪しんでいたんだろうが、開き直っていたみたいだな。
毒も言われるがままに生成しているんだ。
全てが終わったら自分も死ぬか・・・裏社会にどっぷり浸かって腐り果てるつもりなのかな?
悪用できる技術に関して腕が良すぎるって、危険だよなぁ・・・。
【後書き】
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