910 / 1,038
卒業後
909 星暦557年 萌葱の月 21日 やはりお手伝いか(5)
しおりを挟む
「ここには他に隠し棚や引き出しの二重底とかは無い様だから・・・後は上の会長の部屋かな」
周りをもう一度視回して、隠された構造や変な場所に書類や帳簿が無い事を確認して、部屋を出る。
店舗の方にも後ろ暗い客が来た時に渡す商品用の隠し場所もあるとは思うが・・・そちらは大した量じゃないだろうし、プロだったら見つけられるような場所にあるだろう。
そっちは頼まれてないし。
ということで階段を上る。
いつの間にかウォレン爺が戻ってきていた。
あの隠し棚の書類とかを調べなくて良いのかね?
それとも実際の数字とかの調査は現役の人間に任せるのかな?
ああいう隠し帳簿って出来るだけ量を減らすために小さな字でちみちみと書くことが多いから、老人の目には辛そうだ。
・・・つうか、情報部って会計にも精通してるんかね?
少なくとも俺は裏帳簿を見てもイマイチそれが何を意味しているか分からないからいつもアレクに丸投げだが、ウォレン爺はああいうのを見て解読できるのだろうか?
まあ、どうでも良いこったけど。
階段を上って真っすぐ進んだ突き当りが会長の部屋、その横の部屋は護衛が待機するっぽい部屋だった。
まっとうな商会だったら会長の部屋の傍に武器と人が隠されている部屋なんて必要ないだろう。
商会の会長の傍に護衛用の部屋なんぞがあるって言う時点で後ろ暗い事をしているって公言している様なものだと思うんだが、合法な取引相手とかに怪しまれないのかね?
スラムの小さな商会だったらお互いの争いが商品の目利きや販売網の伝手ではなく物理になることもあるが、大型寄りの中堅商会の会長室に武装が必要な理由なんぞ無い。
船の方は国外に出たら色々と危険はあるだろうし、倉庫や店舗にもある程度の護衛が必要だろうが、王都の商会本店の会長室はねぇ。
・・・そう考えると、会長がちょっと被害妄想気味なのか、もっとヤバい商売から大きくなって商会の形を整えたのか。
それとも、もしかしてヤバい商売をやっていた人間がまっとうな商会を乗っ取ったとか?
考えてみたら、記憶が曖昧になってこちらの言う事に従順になる薬なんて、どっかの家や商会を乗っ取るのに役に立ちそうな道具だよな。
マジでそれを使ってこの商会を乗っ取って、その成功経験に基づいてヤバい使い道のある違法薬物の商売に手を伸ばしたのかも知れないな。
「ここの会長ってこの商会の跡継ぎだったんかな?
お坊ちゃま育ちにしちゃあ、本店の自分の部屋の傍に護衛を置いたり、外への秘密通路を作ったりってやっていることが裏社会っぽいが」
隣の部屋を示しながらウォレン爺に尋ねる。
「ふむ・・・。
考えてみたら、ここの会長は婿養子じゃの。
比較的真面目な長男がいて、そのサポート役に使えそうな孤児だが頭の良い男が娘の恋人になって結婚をした筈だが・・・長男がだんだんと酒浸りになって結局体を壊したから娘の婿が前会長の養子になって跡を継いだと聞いた。
その頃から徐々に違法薬物の流通にこの商会の名前が出て来るようになっていたんじゃが、もしかしたら最初に商品を使った相手は身内だったのかも知れんの」
顔をしかめながらウォレン爺が言った。
おお~。
跡継ぎの長男が普通にいるから娘の婿はちょっと得体のしれない孤児でも良いと思って結婚を許したら毒蛇だったってことかい。
・・・そう考えると、俺がシェイラと結婚するのも実はオスレイダ家側からしたら危険で用心すべき結びつきかも知れないってことかも?
魔術師なんだから社会的信用はそこらの従業員をやっていた孤児とかよりはずっとマシだろうが、ある意味悪意を持って乗っ取りを考えているなら得体の知れなさは更に大きくて不安かも知れない。
まあ、俺が出て来なくても、オスレイダ商会はシェイラがやる気さえ出せばいつでも親父さんが譲るって言っているっぽいからあまり関係ないし、シェイラはそう簡単に乗っ取りを許す程脇が甘い人間じゃあないが。
それはさておき。
会長の部屋を調べて、さっさと昼食でも食べて次の商会の調査に突撃だな。
【後書き】
実はウィルってシェイラの実家商会の乗っ取り疑惑をあっちからは掛けられていたのかも??
周りをもう一度視回して、隠された構造や変な場所に書類や帳簿が無い事を確認して、部屋を出る。
店舗の方にも後ろ暗い客が来た時に渡す商品用の隠し場所もあるとは思うが・・・そちらは大した量じゃないだろうし、プロだったら見つけられるような場所にあるだろう。
そっちは頼まれてないし。
ということで階段を上る。
いつの間にかウォレン爺が戻ってきていた。
あの隠し棚の書類とかを調べなくて良いのかね?
それとも実際の数字とかの調査は現役の人間に任せるのかな?
ああいう隠し帳簿って出来るだけ量を減らすために小さな字でちみちみと書くことが多いから、老人の目には辛そうだ。
・・・つうか、情報部って会計にも精通してるんかね?
少なくとも俺は裏帳簿を見てもイマイチそれが何を意味しているか分からないからいつもアレクに丸投げだが、ウォレン爺はああいうのを見て解読できるのだろうか?
まあ、どうでも良いこったけど。
階段を上って真っすぐ進んだ突き当りが会長の部屋、その横の部屋は護衛が待機するっぽい部屋だった。
まっとうな商会だったら会長の部屋の傍に武器と人が隠されている部屋なんて必要ないだろう。
商会の会長の傍に護衛用の部屋なんぞがあるって言う時点で後ろ暗い事をしているって公言している様なものだと思うんだが、合法な取引相手とかに怪しまれないのかね?
スラムの小さな商会だったらお互いの争いが商品の目利きや販売網の伝手ではなく物理になることもあるが、大型寄りの中堅商会の会長室に武装が必要な理由なんぞ無い。
船の方は国外に出たら色々と危険はあるだろうし、倉庫や店舗にもある程度の護衛が必要だろうが、王都の商会本店の会長室はねぇ。
・・・そう考えると、会長がちょっと被害妄想気味なのか、もっとヤバい商売から大きくなって商会の形を整えたのか。
それとも、もしかしてヤバい商売をやっていた人間がまっとうな商会を乗っ取ったとか?
考えてみたら、記憶が曖昧になってこちらの言う事に従順になる薬なんて、どっかの家や商会を乗っ取るのに役に立ちそうな道具だよな。
マジでそれを使ってこの商会を乗っ取って、その成功経験に基づいてヤバい使い道のある違法薬物の商売に手を伸ばしたのかも知れないな。
「ここの会長ってこの商会の跡継ぎだったんかな?
お坊ちゃま育ちにしちゃあ、本店の自分の部屋の傍に護衛を置いたり、外への秘密通路を作ったりってやっていることが裏社会っぽいが」
隣の部屋を示しながらウォレン爺に尋ねる。
「ふむ・・・。
考えてみたら、ここの会長は婿養子じゃの。
比較的真面目な長男がいて、そのサポート役に使えそうな孤児だが頭の良い男が娘の恋人になって結婚をした筈だが・・・長男がだんだんと酒浸りになって結局体を壊したから娘の婿が前会長の養子になって跡を継いだと聞いた。
その頃から徐々に違法薬物の流通にこの商会の名前が出て来るようになっていたんじゃが、もしかしたら最初に商品を使った相手は身内だったのかも知れんの」
顔をしかめながらウォレン爺が言った。
おお~。
跡継ぎの長男が普通にいるから娘の婿はちょっと得体のしれない孤児でも良いと思って結婚を許したら毒蛇だったってことかい。
・・・そう考えると、俺がシェイラと結婚するのも実はオスレイダ家側からしたら危険で用心すべき結びつきかも知れないってことかも?
魔術師なんだから社会的信用はそこらの従業員をやっていた孤児とかよりはずっとマシだろうが、ある意味悪意を持って乗っ取りを考えているなら得体の知れなさは更に大きくて不安かも知れない。
まあ、俺が出て来なくても、オスレイダ商会はシェイラがやる気さえ出せばいつでも親父さんが譲るって言っているっぽいからあまり関係ないし、シェイラはそう簡単に乗っ取りを許す程脇が甘い人間じゃあないが。
それはさておき。
会長の部屋を調べて、さっさと昼食でも食べて次の商会の調査に突撃だな。
【後書き】
実はウィルってシェイラの実家商会の乗っ取り疑惑をあっちからは掛けられていたのかも??
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした
星ふくろう
恋愛
カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。
帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。
その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。
数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。
他の投稿サイトでも掲載しています。
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる