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卒業後
908 星暦557年 萌葱の月 21日 やはりお手伝いか(4)
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商会の本店と言っても、店舗よりも商会全体の仕入れや各店舗への輸送、人事や経理などと言った書類を大量に生み出す作業が多いのか、机が沢山並んだ部屋の方が店舗部分より大きいぐらいだった。
当然、そう言った書類をファイルにしてしまってある棚や古い書類を仕舞ってある倉庫モドキな部屋も幾つかある。取り敢えず古いのは後回しで良いとして・・・引き出しの二重底でも探すかな?
裏帳簿を付けるにしても、どの単語や記号が何を意味するかの一覧表を経験の浅い下っ端が使うことは多い。
ということで視て回ったら、3つほど二重底のある引き出しがあった。
取り敢えず最初の部屋に入って、右角にある机の一番上の引き出しを取り出し、裏を外して中の紙を一緒に来ていたおっさんに渡す。
「帳簿を隠せるだけの厚みがある隠し場所はこの部屋には無いから、この机に座っている人間が使う棚にでも、裏帳簿も普通に入っているのかも?」
どうせ帳簿なんて通常時は担当と、せいぜいその上司しかしっかりとは見ないのだ。
中身が税金を払う時の計算と整合性があるのかなんて、じっくりしっかり確認しなければ分からない。内容に露骨に違法な商品名でも記載されていない限り、他者がちらっと見た程度ではバレないと考えて日常的に使う帳簿は普通に棚に入れて置いているっぽい。
特にここみたいに大々的に棚と書類が大量にある場所ならその方が目立たなそうだ。
まあ、じっくり目を通せば利益率とかがおかしいのが分かるんだろうから、税務調査とかが入る前にヤバい帳簿は店外に持ち出すか、それこそあの認識阻害結界がしてある部屋に隠すのかも?
そう言えば、あの隠し部屋の棚の一角に少し空間が開いていたな。
あそこが隠し帳簿置き場なのかも知れない。
日常的には使っていない様だったが。
まあ、下っ端にまでヤバい場所の鍵を与えていたら情報漏洩の危険が大きくなりすぎるからな。
夜帰る前とか、税務調査の情報が入った時期にだけ帳簿を動かしているのかも。
税務調査の調査先の情報は厳密に守られた機密で、調査部門と調査部隊の責任者ぐらいしか事前には知らないらしいが、調査を行うということ自体は人員の調整なんかで国税局に働いていたり、出入りしている人間だったらそれなりに想像がつくらしい。
だからどこの商会もそれなりに国税局に出入りする人間や下っ端に金を払って情報を集めているとアレクが言っていた。
シェフィート商会みたいに脱税していない(多分)ところでもそんなことをするのかと聞いたら、税務調査が来ると色々と邪魔が入るから日常業務が遅れる上に、下手をすると新しく開発中の販路や商品についての情報が漏れることもあるので、機密性が重要な案件は税務調査が始まるという噂が流れたらどこかに実際に税務調査が入るまで開始を遅らせることも多いとのことだった。
今回なんかはウォレン爺がごり押ししたから、税務調査の情報が殆ど流れてないからびっくりした商会が多そうだな。
ある意味、ヤバい事をやっている商会なんかはこれが通常の税務調査ではなく、税務調査にかこつけた犯罪調査かもと推測して税務調査の話が広まった明日ぐらいには慌てて証拠隠滅に走っている可能性が高そうだ。
そう考えると、あと3つほど商会を回ると言っていたが、今日の午後にもう一か所回って明日の朝で最後の場所にも行った方が良いかも知れないな。
おっさんが走ってどこかに行くのを横目に、奥の机に行ってそこの一番下にある引き出しを取り出し、二重底になっている板を外す。
こちらには一覧表と薄い帳簿みたいのが入っていた。
ふむ。
裏帳簿にしては情報が薄いが・・・自分がちょろまかした分の情報か、それとも誰かを脅迫する用の覚え書きか。
良く分からんが、頑張って調査員にこの机の主を尋問して貰おう。
隠されていた中身を別のおっさんに渡し、隣の部屋へ行く。
こちらは奥の偉そうな机の後ろにスライドして二重になる棚があり・・・中々面白い仕組みで真ん中の部分が通常の方法で引っ張っても出てこない様になっている。
何やら鍵になる物を横に差し込む必要があるんだが・・・どこにあるかな?
穴に入るサイズを心眼で目測し、偉そうな机の引き出しを順に開いて探していったが、無い。
う~ん、本人が持ち歩いているのかな?
そう考えつつ机の周囲を見回したら、ふと机の上に立ててある小さな肖像画の後ろに丁度いい隙間があるのに気づいた。
これか。
肖像画を取り上げて後ろの部分にあったバランスをとる為と見える支えの部分から、人差し指程度の長さと太さの棒を取り出し、本棚の横に刺して回したら何やら中でガコンと音がした。
「うん?」
俺のやることを覗き込んでいた調査員のおっさんが本棚をじっくり観察し始める。
「どうやら特別注文で造ったみたいだが、普通の使い方では見えない真ん中の棚が今ので開くようになるんだ」
前の棚を右へ動かし、奥の棚をグイッと一番左まで押しやると、先ほどまでは出て来なかった棚が縦一段分姿を現した。
「ほおう?
便利だな」
感心したように調査員のおっさんが棚をじっくりと調べ始めた。
「隠し金庫よりも目立たなくて良いと思ったんじゃないか?
家具を持ち込むだけで済むから工事の手間もかからない」
固定化の術が掛かっていないから魔術師の注意も引きにくいしな!
当然、そう言った書類をファイルにしてしまってある棚や古い書類を仕舞ってある倉庫モドキな部屋も幾つかある。取り敢えず古いのは後回しで良いとして・・・引き出しの二重底でも探すかな?
裏帳簿を付けるにしても、どの単語や記号が何を意味するかの一覧表を経験の浅い下っ端が使うことは多い。
ということで視て回ったら、3つほど二重底のある引き出しがあった。
取り敢えず最初の部屋に入って、右角にある机の一番上の引き出しを取り出し、裏を外して中の紙を一緒に来ていたおっさんに渡す。
「帳簿を隠せるだけの厚みがある隠し場所はこの部屋には無いから、この机に座っている人間が使う棚にでも、裏帳簿も普通に入っているのかも?」
どうせ帳簿なんて通常時は担当と、せいぜいその上司しかしっかりとは見ないのだ。
中身が税金を払う時の計算と整合性があるのかなんて、じっくりしっかり確認しなければ分からない。内容に露骨に違法な商品名でも記載されていない限り、他者がちらっと見た程度ではバレないと考えて日常的に使う帳簿は普通に棚に入れて置いているっぽい。
特にここみたいに大々的に棚と書類が大量にある場所ならその方が目立たなそうだ。
まあ、じっくり目を通せば利益率とかがおかしいのが分かるんだろうから、税務調査とかが入る前にヤバい帳簿は店外に持ち出すか、それこそあの認識阻害結界がしてある部屋に隠すのかも?
そう言えば、あの隠し部屋の棚の一角に少し空間が開いていたな。
あそこが隠し帳簿置き場なのかも知れない。
日常的には使っていない様だったが。
まあ、下っ端にまでヤバい場所の鍵を与えていたら情報漏洩の危険が大きくなりすぎるからな。
夜帰る前とか、税務調査の情報が入った時期にだけ帳簿を動かしているのかも。
税務調査の調査先の情報は厳密に守られた機密で、調査部門と調査部隊の責任者ぐらいしか事前には知らないらしいが、調査を行うということ自体は人員の調整なんかで国税局に働いていたり、出入りしている人間だったらそれなりに想像がつくらしい。
だからどこの商会もそれなりに国税局に出入りする人間や下っ端に金を払って情報を集めているとアレクが言っていた。
シェフィート商会みたいに脱税していない(多分)ところでもそんなことをするのかと聞いたら、税務調査が来ると色々と邪魔が入るから日常業務が遅れる上に、下手をすると新しく開発中の販路や商品についての情報が漏れることもあるので、機密性が重要な案件は税務調査が始まるという噂が流れたらどこかに実際に税務調査が入るまで開始を遅らせることも多いとのことだった。
今回なんかはウォレン爺がごり押ししたから、税務調査の情報が殆ど流れてないからびっくりした商会が多そうだな。
ある意味、ヤバい事をやっている商会なんかはこれが通常の税務調査ではなく、税務調査にかこつけた犯罪調査かもと推測して税務調査の話が広まった明日ぐらいには慌てて証拠隠滅に走っている可能性が高そうだ。
そう考えると、あと3つほど商会を回ると言っていたが、今日の午後にもう一か所回って明日の朝で最後の場所にも行った方が良いかも知れないな。
おっさんが走ってどこかに行くのを横目に、奥の机に行ってそこの一番下にある引き出しを取り出し、二重底になっている板を外す。
こちらには一覧表と薄い帳簿みたいのが入っていた。
ふむ。
裏帳簿にしては情報が薄いが・・・自分がちょろまかした分の情報か、それとも誰かを脅迫する用の覚え書きか。
良く分からんが、頑張って調査員にこの机の主を尋問して貰おう。
隠されていた中身を別のおっさんに渡し、隣の部屋へ行く。
こちらは奥の偉そうな机の後ろにスライドして二重になる棚があり・・・中々面白い仕組みで真ん中の部分が通常の方法で引っ張っても出てこない様になっている。
何やら鍵になる物を横に差し込む必要があるんだが・・・どこにあるかな?
穴に入るサイズを心眼で目測し、偉そうな机の引き出しを順に開いて探していったが、無い。
う~ん、本人が持ち歩いているのかな?
そう考えつつ机の周囲を見回したら、ふと机の上に立ててある小さな肖像画の後ろに丁度いい隙間があるのに気づいた。
これか。
肖像画を取り上げて後ろの部分にあったバランスをとる為と見える支えの部分から、人差し指程度の長さと太さの棒を取り出し、本棚の横に刺して回したら何やら中でガコンと音がした。
「うん?」
俺のやることを覗き込んでいた調査員のおっさんが本棚をじっくり観察し始める。
「どうやら特別注文で造ったみたいだが、普通の使い方では見えない真ん中の棚が今ので開くようになるんだ」
前の棚を右へ動かし、奥の棚をグイッと一番左まで押しやると、先ほどまでは出て来なかった棚が縦一段分姿を現した。
「ほおう?
便利だな」
感心したように調査員のおっさんが棚をじっくりと調べ始めた。
「隠し金庫よりも目立たなくて良いと思ったんじゃないか?
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