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卒業後
902 星暦557年 萌葱の月 17日 久しぶりに遠出(23)
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「横領と薬を盛る話になった流れを説明しろ。
嘘をついても他の2人と話に整合性が無かったら、王都で悪事を全てさらけ出す専門の神官の所に行って今回以外の悪事も含めて何もかも暴露されることになるぞ」
カレスターンが警告交じりに話を促す。
家令補佐は横領と薬の話を同時に受けているが、マキウスとこのメイドは先に色々と犯罪の流れを計画した筈。
まあ、横領を決めてから薬を盛ろうと話し合ったのだろうと、簡単に薬を盛れるから横領しようと話し合ったのだろうと、大して違いは無いが・・・ある意味、大元の言い出しっぺがどちらかは分かるな。
「煩いわね、嘘なんてつかないわよ」
ぶちぶちとメイドが愚痴る。
とは言え、魔具に見えている映像から察するに、この女は今までも色々と噓をついたり誤認させる言い方をして相手を騙したりってことをかなりやってきているっぽい。
ある意味、専門家である審議官が相手でも嘘をつかずに騙す気満々なのは、中々凄いな。
「家令補佐をひっかけたって話をしたら、マキウスがここの屋敷はレディ・トレンティスが暇つぶしも兼ねて帳簿のチェックをするから家令は殆どそっちの関与はしないって教えてくれて。
だったらレディ・トレンティスがしっかりチェックしない様に騙せたら金をかなりとれるねって話になったのよ」
なんでそんな屋敷内の管理手続きの話が怪しげな商会の支店長補佐に流れているのかも、ちょっと疑問だな。
誰か屋敷内に口が軽いのがいるようだ。
「私はレディ・トレンティスが孫や友人達に会いに王都へ行く社交界シーズンにやればいいって言ったんだけど、マキウスが屋敷の主人がいないのに出費が増えたら怪しまれるからダメだって言って。
それよりは注意力や記憶力が散漫になる薬があるからそれを食事かお茶に混ぜれば良いって教えてくれたの」
メイドの口ぶりだとマキウスが言い出したような感じだが・・・魔具の映像だとチャルが強請るような素振りで色々とマキウスに話を聞いているように見えるな。
確かに横領の手口や薬の情報を齎したのはマキウスだが、唆して男どもをやる気にさせたのはこのメイドっぽいな。
う~ん、ただの田舎町から出たことも無いメイドだよな、このチャルって女??
犯罪の才能が有りすぎて怖いぞ。
「で?
どうなったんだ?」
カレスターンがメイドに話を続けるよう促す。
「取り敢えず家令補佐《タルトン》をサルソートの街までデートに誘って、帰りに酒場に行ってテーブルをそれとなく確保していたマキウスさんと偶然相席になるようにして。
色々と王都でのマキウスさんの活躍とか人に聞いた話をしていく間に金持ちの貴族や豪商が全然自分の金の事なんてしっかり把握していないって話にもっていったの」
メイドが続ける。
「最初は他人事みたいにふ~んとかへ~って言っていたタルトンだけど、お酒が増えてきたら色々と手口をしっかり聞くようになってきたから、色んな手口とか薬でちょっと注意力散漫になってもらったら絶対に大丈夫だったって話とかをして、その日は解散にしたの。
タルトンったら王都で成功できなかったせいで臆病になったのか、折角雇ってくれたレディ・トレンティスを騙すなんて・・・ってぐちぐち言うから私たちが結婚したらもっとお金が必要だし、子供の為に稼ぐのも父親の責任でしょって言って聞かせたらやっと少しやる気になってきたのよ」
「・・・ちなみに家令補佐と結婚する気はあったのか?」
ちょっと興味深げにカレスターンが尋ねた。
あ、それは俺も聞きたかった!
女が妊娠したり子供が出来たら男に捨てられるって話はよく聞く。ある意味、女にとって子供が出来たら体形が悪くなるし動きも取れなくなるし(捨てれば別だが)、結婚して子を持つっていうのはそれなりにリスクがあるのだ。
それをやる気があったのかね?
自分の実家の領主に薬を盛って最終的には寝たきりにする可能性もあるような悪事を働く気があったのに、そこで呑気に結婚して子供なんぞ産む気があったのか、ちょっと疑問を感じる。
「まさか!
お金をしっかり稼いだら王都に行ってもっといい男を捕まえる予定だったわよ!
妊娠なんていしたらどれだけ太ると思っているの!?
スタイルだけは良かった義理の姉だって、今じゃあ目も当てられない体形なのよ!!」
あっさりとメイドがカレスターンの言葉を否定した。
おいおい。
生まれて来るであろう子供の為に悪事に手を染める必要があると説得された家令補佐は捨て駒かよ。
まあ、それこそレディ・トレンティスが薬でボケちゃったら暫くしたら王都から誰かが屋敷の管理の為に来た可能性は高いからな。
そうなったら横領がバレる可能性は高い。
掴まる為の生贄は家令補佐ってことか。
あいつも可哀想に。
悪事を決心したのは自分だからある程度は自業自得だが、やり直すつもりで戻って来たのに変な女に捕まったせいで人生終わるなんて。
まあ、実際にはレディ・トレンティスに健康被害が及ばなかったし、横領した金も大した金額になる前だったから家令補佐の方は殺人未遂には問われないで済むかもしれないが。
このメイドは毒と言っていい薬を実際に投与したんだし、殺人未遂で極刑か終身刑だろうなぁ。
【後書き】
唆されたにしても貴族の殺人未遂と横領に関わったんだから、家令補佐も極刑は無くても軽い刑罰では済まないでしょうねぇ。
嘘をついても他の2人と話に整合性が無かったら、王都で悪事を全てさらけ出す専門の神官の所に行って今回以外の悪事も含めて何もかも暴露されることになるぞ」
カレスターンが警告交じりに話を促す。
家令補佐は横領と薬の話を同時に受けているが、マキウスとこのメイドは先に色々と犯罪の流れを計画した筈。
まあ、横領を決めてから薬を盛ろうと話し合ったのだろうと、簡単に薬を盛れるから横領しようと話し合ったのだろうと、大して違いは無いが・・・ある意味、大元の言い出しっぺがどちらかは分かるな。
「煩いわね、嘘なんてつかないわよ」
ぶちぶちとメイドが愚痴る。
とは言え、魔具に見えている映像から察するに、この女は今までも色々と噓をついたり誤認させる言い方をして相手を騙したりってことをかなりやってきているっぽい。
ある意味、専門家である審議官が相手でも嘘をつかずに騙す気満々なのは、中々凄いな。
「家令補佐をひっかけたって話をしたら、マキウスがここの屋敷はレディ・トレンティスが暇つぶしも兼ねて帳簿のチェックをするから家令は殆どそっちの関与はしないって教えてくれて。
だったらレディ・トレンティスがしっかりチェックしない様に騙せたら金をかなりとれるねって話になったのよ」
なんでそんな屋敷内の管理手続きの話が怪しげな商会の支店長補佐に流れているのかも、ちょっと疑問だな。
誰か屋敷内に口が軽いのがいるようだ。
「私はレディ・トレンティスが孫や友人達に会いに王都へ行く社交界シーズンにやればいいって言ったんだけど、マキウスが屋敷の主人がいないのに出費が増えたら怪しまれるからダメだって言って。
それよりは注意力や記憶力が散漫になる薬があるからそれを食事かお茶に混ぜれば良いって教えてくれたの」
メイドの口ぶりだとマキウスが言い出したような感じだが・・・魔具の映像だとチャルが強請るような素振りで色々とマキウスに話を聞いているように見えるな。
確かに横領の手口や薬の情報を齎したのはマキウスだが、唆して男どもをやる気にさせたのはこのメイドっぽいな。
う~ん、ただの田舎町から出たことも無いメイドだよな、このチャルって女??
犯罪の才能が有りすぎて怖いぞ。
「で?
どうなったんだ?」
カレスターンがメイドに話を続けるよう促す。
「取り敢えず家令補佐《タルトン》をサルソートの街までデートに誘って、帰りに酒場に行ってテーブルをそれとなく確保していたマキウスさんと偶然相席になるようにして。
色々と王都でのマキウスさんの活躍とか人に聞いた話をしていく間に金持ちの貴族や豪商が全然自分の金の事なんてしっかり把握していないって話にもっていったの」
メイドが続ける。
「最初は他人事みたいにふ~んとかへ~って言っていたタルトンだけど、お酒が増えてきたら色々と手口をしっかり聞くようになってきたから、色んな手口とか薬でちょっと注意力散漫になってもらったら絶対に大丈夫だったって話とかをして、その日は解散にしたの。
タルトンったら王都で成功できなかったせいで臆病になったのか、折角雇ってくれたレディ・トレンティスを騙すなんて・・・ってぐちぐち言うから私たちが結婚したらもっとお金が必要だし、子供の為に稼ぐのも父親の責任でしょって言って聞かせたらやっと少しやる気になってきたのよ」
「・・・ちなみに家令補佐と結婚する気はあったのか?」
ちょっと興味深げにカレスターンが尋ねた。
あ、それは俺も聞きたかった!
女が妊娠したり子供が出来たら男に捨てられるって話はよく聞く。ある意味、女にとって子供が出来たら体形が悪くなるし動きも取れなくなるし(捨てれば別だが)、結婚して子を持つっていうのはそれなりにリスクがあるのだ。
それをやる気があったのかね?
自分の実家の領主に薬を盛って最終的には寝たきりにする可能性もあるような悪事を働く気があったのに、そこで呑気に結婚して子供なんぞ産む気があったのか、ちょっと疑問を感じる。
「まさか!
お金をしっかり稼いだら王都に行ってもっといい男を捕まえる予定だったわよ!
妊娠なんていしたらどれだけ太ると思っているの!?
スタイルだけは良かった義理の姉だって、今じゃあ目も当てられない体形なのよ!!」
あっさりとメイドがカレスターンの言葉を否定した。
おいおい。
生まれて来るであろう子供の為に悪事に手を染める必要があると説得された家令補佐は捨て駒かよ。
まあ、それこそレディ・トレンティスが薬でボケちゃったら暫くしたら王都から誰かが屋敷の管理の為に来た可能性は高いからな。
そうなったら横領がバレる可能性は高い。
掴まる為の生贄は家令補佐ってことか。
あいつも可哀想に。
悪事を決心したのは自分だからある程度は自業自得だが、やり直すつもりで戻って来たのに変な女に捕まったせいで人生終わるなんて。
まあ、実際にはレディ・トレンティスに健康被害が及ばなかったし、横領した金も大した金額になる前だったから家令補佐の方は殺人未遂には問われないで済むかもしれないが。
このメイドは毒と言っていい薬を実際に投与したんだし、殺人未遂で極刑か終身刑だろうなぁ。
【後書き】
唆されたにしても貴族の殺人未遂と横領に関わったんだから、家令補佐も極刑は無くても軽い刑罰では済まないでしょうねぇ。
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