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卒業後
891 星暦557年 萌葱の月 15日 久しぶりに遠出(12)
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「まさか!?
こっちにもあったなんて!!!」
夕方になって空滑機《グライダー》改に乗ってシャルロに送られてきたハラファが、天井から降ろされている縄梯子を見て愕然としていた。
「別に、こっちにあろうがあちらの確認は必要なことに変わりはないだろう」
アルマがあっさり応じる。
さっきまで半刻《30分強》ごとに入れ替わる他の発掘隊のメンバーを無視して只管色々と調べていた人とは思えない態度だね~。
まあ、いいんだけどさ。
ガルバがいなくなり、事務担当として新しく来たゼルガのやらかしにハラファが気付くのが遅れたせいで年末の諸々の報告や申請が遅れまくって以来、流石に若いゼルガにガルバの後釜を期待するのは無理だったと反省してアルマも多少管理関係の手伝いをするようになったらしいからな。
きっと色々とストレスが溜まっていたんだろう。
真面・計画的に仕事をするだけな人間だったら魔術師なのに遺跡発掘隊に根を下ろしたりはしない。
とは言え、我儘を言って自分のやりたいことだけをやっていたのでは予算が枯渇すると分かったようだから、ハラファとアルマはちょっと大人になった感じだよな。
「ちなみに、あの空間が何だったか、分かったのか?」
結局アルマは色々調べまくるのに夢中で何を聞いてもおざなりな返事しかしてくれなかったし。
専門家の目で見て、あれが何だったのか知りたいんだけど。
「さあ?
考古学なんて、それこそあの地下牢や疫病で封鎖された洞窟型宿泊施設みたいに状況説明を書き残した記録がある場所以外、正確に何が行われていたのかとか何に使われていたのかなんて分からず、色々仮説を立ててその考えが合っていそうか検証を兼ねて更に調べる学問なんだ。
まだ見つけたばかりなんだし、特に何の書き置きも記録もなかったから、これから色々と考えていくことになるな!」
楽し気にハラファが答えた。
おいおい。
つまり、基本的に全部夢想しているだけなのか??
今迄は遺跡の珍しさに気を取られていてあまり『これは何に使っていたのか』なんて聞かなかったから知らなかったが、考古学って誰かの残した残骸を見て、何をしていたのか想像するだけの学問なのかよ?
まあ、それはそれで面白いかも知れないが・・・一度シェイラに何がそんなに面白いのか、聞いてみようかな?
現実にどっしり根付いているシェイラがそんな想像力を逞しくして色々夢想するだけの学問に夢中になるなんて、ちょっと意外な気がするぞ。
「今まで解読した資料の中にはこの空間の事らしき言及は何もないですか」
アレクが尋ねる。
ちなみに、シャルロは俺たちを放って新しく見つかった天井裏(?)空間を見に行っている。
相変わらず他の発掘隊員たちが順番に上を見に行っているが、流石に今だけ来ているシャルロが覗き見するに関しては順番飛ばしだと文句を言っていないようだ。
まあ、レディ・トレンティスがそれなりにこの遺跡発掘に資金援助しているらしいし、彼女のお気に入りの孫に意地悪をする度胸がある人間はいないだろうな。
「う~ん、資料が多すぎて、未だにまだしっかり中身を吟味できていないものが多すぎるんだよねぇ。
ベルファウォードから資金が入ってからは工房関係の資料に重点的に人手を割くようになったし。
見つかった資料系の遺物の固定化と復元だけでまだ一杯一杯で、辛うじて内容を一覧表にして工房関係のを別の班が調べているって感じかな。
この街の整備や各地区の役割分担みたいなことが書いてありそうな資料は・・・見つかってないよな?」
ハラファがアルマに聞く。
「復元した資料の中に入っている可能性はゼロではないが、読みながら作業をすると圧倒的に速度が落ちるのでな。
ちらっと最初の部分を流し読みする程度で我慢しているから確実なことは言えないが、取り敢えず街の防衛や整備に関する記載はまだ見た記憶がない」
アルマが応じた。
確かになぁ。
本の整理って読みながらやると収拾がつかなくなるもんなぁ。
アルマ以外の人間で紙の固定化や復元に手伝いに来ている人間って必ずしもオーパスタ神殿文明時代の言語を読める訳でもないらしいし。
そう言う術を得意とする魔術師が何人か専任で歴史学会に雇われて遺跡で見つかった書籍や書類の復元を請け負っているらしいが、ここはずば抜けて見つかった資料の量が多いらしくて全然作業も解析も追いついていないって以前来た時に嬉しい悲鳴を上げていたが、今でも状況が変わっていないようだ。
「そうか。
何か分かったら是非教えてくれ。
シャルロ!
もうそろそろ帰ろうぜ!」
上に声をかける。
そろそろ帰らないと夕食に間に合わんぞ?
【後書き】
考古学の理論ってどうやって検証するんでしょうね?
こっちにもあったなんて!!!」
夕方になって空滑機《グライダー》改に乗ってシャルロに送られてきたハラファが、天井から降ろされている縄梯子を見て愕然としていた。
「別に、こっちにあろうがあちらの確認は必要なことに変わりはないだろう」
アルマがあっさり応じる。
さっきまで半刻《30分強》ごとに入れ替わる他の発掘隊のメンバーを無視して只管色々と調べていた人とは思えない態度だね~。
まあ、いいんだけどさ。
ガルバがいなくなり、事務担当として新しく来たゼルガのやらかしにハラファが気付くのが遅れたせいで年末の諸々の報告や申請が遅れまくって以来、流石に若いゼルガにガルバの後釜を期待するのは無理だったと反省してアルマも多少管理関係の手伝いをするようになったらしいからな。
きっと色々とストレスが溜まっていたんだろう。
真面・計画的に仕事をするだけな人間だったら魔術師なのに遺跡発掘隊に根を下ろしたりはしない。
とは言え、我儘を言って自分のやりたいことだけをやっていたのでは予算が枯渇すると分かったようだから、ハラファとアルマはちょっと大人になった感じだよな。
「ちなみに、あの空間が何だったか、分かったのか?」
結局アルマは色々調べまくるのに夢中で何を聞いてもおざなりな返事しかしてくれなかったし。
専門家の目で見て、あれが何だったのか知りたいんだけど。
「さあ?
考古学なんて、それこそあの地下牢や疫病で封鎖された洞窟型宿泊施設みたいに状況説明を書き残した記録がある場所以外、正確に何が行われていたのかとか何に使われていたのかなんて分からず、色々仮説を立ててその考えが合っていそうか検証を兼ねて更に調べる学問なんだ。
まだ見つけたばかりなんだし、特に何の書き置きも記録もなかったから、これから色々と考えていくことになるな!」
楽し気にハラファが答えた。
おいおい。
つまり、基本的に全部夢想しているだけなのか??
今迄は遺跡の珍しさに気を取られていてあまり『これは何に使っていたのか』なんて聞かなかったから知らなかったが、考古学って誰かの残した残骸を見て、何をしていたのか想像するだけの学問なのかよ?
まあ、それはそれで面白いかも知れないが・・・一度シェイラに何がそんなに面白いのか、聞いてみようかな?
現実にどっしり根付いているシェイラがそんな想像力を逞しくして色々夢想するだけの学問に夢中になるなんて、ちょっと意外な気がするぞ。
「今まで解読した資料の中にはこの空間の事らしき言及は何もないですか」
アレクが尋ねる。
ちなみに、シャルロは俺たちを放って新しく見つかった天井裏(?)空間を見に行っている。
相変わらず他の発掘隊員たちが順番に上を見に行っているが、流石に今だけ来ているシャルロが覗き見するに関しては順番飛ばしだと文句を言っていないようだ。
まあ、レディ・トレンティスがそれなりにこの遺跡発掘に資金援助しているらしいし、彼女のお気に入りの孫に意地悪をする度胸がある人間はいないだろうな。
「う~ん、資料が多すぎて、未だにまだしっかり中身を吟味できていないものが多すぎるんだよねぇ。
ベルファウォードから資金が入ってからは工房関係の資料に重点的に人手を割くようになったし。
見つかった資料系の遺物の固定化と復元だけでまだ一杯一杯で、辛うじて内容を一覧表にして工房関係のを別の班が調べているって感じかな。
この街の整備や各地区の役割分担みたいなことが書いてありそうな資料は・・・見つかってないよな?」
ハラファがアルマに聞く。
「復元した資料の中に入っている可能性はゼロではないが、読みながら作業をすると圧倒的に速度が落ちるのでな。
ちらっと最初の部分を流し読みする程度で我慢しているから確実なことは言えないが、取り敢えず街の防衛や整備に関する記載はまだ見た記憶がない」
アルマが応じた。
確かになぁ。
本の整理って読みながらやると収拾がつかなくなるもんなぁ。
アルマ以外の人間で紙の固定化や復元に手伝いに来ている人間って必ずしもオーパスタ神殿文明時代の言語を読める訳でもないらしいし。
そう言う術を得意とする魔術師が何人か専任で歴史学会に雇われて遺跡で見つかった書籍や書類の復元を請け負っているらしいが、ここはずば抜けて見つかった資料の量が多いらしくて全然作業も解析も追いついていないって以前来た時に嬉しい悲鳴を上げていたが、今でも状況が変わっていないようだ。
「そうか。
何か分かったら是非教えてくれ。
シャルロ!
もうそろそろ帰ろうぜ!」
上に声をかける。
そろそろ帰らないと夕食に間に合わんぞ?
【後書き】
考古学の理論ってどうやって検証するんでしょうね?
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