シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

887 星暦557年 萌葱の月 15日 久しぶりに遠出(8)

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「久しぶりだね!
今回は新発見について連絡をくれて、本当にありがとう!!!」
ハラファが嬉し気にシャルロに抱き着いていた。

俺は挨拶での親愛の表現でも男に抱き着かれる気はないので、すっと後ろに下がる。
アレクはさっと手を差し出して握手していた。
そっか、手を差し出せば抱き着くなという暗黙の意思表示になるのか。

「まあ、大したことは無い発見だけどな。
天井にある空間で、換気孔から動物が入ったりしない様にする仕組みに洗濯物干し場か、物置か、子供の遊び場かを組み合わせた場所なんじゃないか?
まあ、何をやっている場所なのか分かったら教えてくれよ」
ハラファに軽く手を振りながら伝える。

一応天井の柱に縄梯子を括り付けておいたから、ハラファ達は今後も出入りできる。
とは言え、子供が上から落ちたら危ないし、家出を決め込んだ子供が縄梯子を上に引っ張り上げて籠城しても困る。将来的にはあの縄梯子を撤去した方が良いだろうが・・・そこら辺の処理は誰か出来るかな?

まあ、今日一日で終わるなら俺たちの誰かが、終わらないならアルマが来て浮遊《レヴィア》で上まで行って縄梯子を撤去すれば良いだろう。

レディ・トレンティスの所にも多少は魔術が出来る人間が出入りしているだろうし。

「勿論だよ!!
そう言えば、これが新しい空滑機《グライダー》改か?
4人程連れていけるって聞いたけど、本当に大きいんだな」
ハラファがぐるぐると空滑機《グライダー》改の周りを歩き回り、最後に中に首を突っ込んで声を上げる。

う~ん、ツァレスもだけど、発掘隊の人間って本当に好奇心で溢れているな。
歴史だけじゃなくて魔具にも興味津々な人間が多い。
まあ、好奇心があるからこそ過去の人間の暮らしとか文明の解明に人生をささげてひたすら土を掘り返したり黴臭い遺跡を調べたり出来るんだろうが。

どちらもたまにやるなら俺も面白いとは思うが、人生をささげる気は起きない。
・・・考えてみたら、シェイラはどうするんだろ?
彼女も遺跡が大好きだし歴史も好きだが、人生を捧げる気なのかな?
勿論、捧げるって言ってもどの程度なのかで個人差はあるとは思うが。

俺としては別に結婚も子供も特に必要って訳じゃあないが・・・シェイラはどうなんだろうか。
女性は結婚と子供を求めるべき存在だっていう社会的な暗黙の了解があってむかつくって以前言っていたから、下手に聞いたら怒りそうな気もしないでもないだよなぁ。

とは言え、結婚したいのかを聞かないと『遊びなのね!』とそのうち詰られても不思議は無いって気もしないでもないし。

ケレナにでも相談してみるかね?
別に結婚しても今みたいに別居して休息日や纏まって休みを取ると決めた時にあっちに遊びに行っても構わないが、結婚したらしたで今度は子供を産まないの?産めないの?可哀想~なんて態度を周囲から取られたらそれはそれで切れそうだしなぁ。

今いるフォレスタ文明の遺跡発掘隊でそんなことを言うような人間はいないだろうし、いてもシェイラに瞬時にぺしゃんこにされるだろうが、偶に王都に戻ってきた際に歴史学会とか親族の人間に会った際に親切がましい同情でまぶした嫌味を言われることになりそうだ。

しかも下手に子供が生まれたら時期によってはシェイラの実家の方の跡継ぎ問題に巻き込まれかねないし。
本人が商業に興味があって商会を継ぎたいって考えているなら良いが、単に有能だからって引き込まれたら可哀想だ。

・・・シェイラが結婚したいかどうかすら知らんけど。
取り敢えず、今度シェイラがケレナと会う機会がありそうな時にでも、ケレナに相談しておいて探りを入れて貰おうかな?

「じゃあ、後はよろしく!」
一通り賑やかに空滑機《グライダー》改を見た後、ハラファはそそくさと助手を2人とと共に中へ姿を消した。

「あれ、行かなくていいんだ?」
残ったアルマに尋ねる。

「君たちに頼む作業の指示とかを出す責任者が必要だろ?
特にウィルの場合は思いがけない発見をすることもあるし、夕方まで待って時間を無駄にするよりは即座にその場で相談できる方が良い。
それに特に見どころがあるんだったら次にレディ・トレンティスの屋敷にお邪魔する際に見せて貰えば良いし」
肩を竦めながらアルマが言った。

理性的だね~。
さて。
隠し金庫と隠し場所探しでもしようか。
隠し部屋とかもあったら面白いかもだけど、流石にそこまで大きな発見は無いだろうなぁ~。



【後書き】
フラグ?
それとも現実的なコメントか・・・
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