シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

886 星暦557年 萌葱の月 15日 久しぶりに遠出(7)

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「ハラファが迎えに来てくれたら嬉しいな~だって」

天井裏(?)にあった洗濯物干し場(かも?)を見て回った後、遺跡の中をふらふらと散策して各家にあった隠し場所とかを色々と暴いて回った俺たちだが、ちょっとした古い折れたナイフとかボロくて微妙に不気味な木や石の人形(多分)とかを幾つか見つけた程度で大した発見はなかった。

それでもやっぱり遺跡って未知の発見がすぐ傍にありそうでワクワクするんだけどな。

だけどまあ、小さいとは言え街サイズの遺跡をじっくり見て回るのはどれだけ時間があってもそうそう終わりは見えないので、1日見て回って見切りをつけた。
翌朝、最後にもう一度葡萄と桃の収穫を手伝ってお土産用に籠一杯ずつ果物を貰って帰ろうかと朝食時に話していたらシャルロが驚きのセリフを言ってのけた。

「え?
ハラファに知らせたの?」
前回の地下の牢獄みたいな画期的(多分)な発見ならまだしも、洗濯物干し場程度の事は態々知らせなくても良かったんじゃないのか?

時折こちらの遺跡にあの連中も来ているらしいから、レディ・トレンティスに言づけておけば彼らが来た時に伝えて貰えただろうに。

今知らせたら、絶対に俺たちに送迎とその他の手伝いをお願いしてくるのは目に見えていたじゃん。

そう言う手伝い想定で10日程度予定を組んでいたならまだしも、そうじゃないのに。
連絡して頼まれたのに断るのは微妙に角が立つし、かといって『お願い』を聞いていたらきりがなくないか?

最近はシェイラの方で遺跡発掘の手伝いは十分やっているから、これ以上の手伝いは特にやりたい気分でもないんだけどなぁ。

「迎えに行ってここに数人連れてくる程度だったら空滑機《グライダー》改があるから良いとして、彼らが満足した後に送る方まで約束したらいつ王都に帰れるか、分からないぞ?」
アレクが指摘する。

「まあ、それは僕も思ったんだけどね。
取り敢えず今日1日見て回って、更なる発掘作業が必要だと思ったらまた自力で来るから今日1日だけお願いだってさ」
シャルロが肩を竦めながら答えた。

シャルロってハラファの個人(というか発掘チームの?)用携帯通信機の連絡先を持っていたんだなぁ。
それともレディ・トレンティスの方が把握していたのか?
どちらにせよ、それを使う選択をするところがシャルロだが。

「まあ、1日ぐらい余分にこっちにいても良いが・・・どうする?
もう1日こちらで過ごすとなったら誰か一人が空滑機《グライダー》改で送迎役になって、残りの2人で水除け用魔具の防風機能をそこら辺の風精霊に頼んで確認するか?もしくは全員であっちに行って一人がハラファ達を連れて戻ってこっちで1日付き合っている間に残りの人間はあちらで発掘作業の手伝いとか見物をしても良いし。
じゃなきゃ一人が送迎して残りの全員で桃と葡萄を収穫してそのまま明日は王都へ帰るって言うのも可能だと思うが」

向こうの遺跡の方が発掘作業の手伝いとかであの洗濯物干し場よりは中身の濃そうな作業が出来るだろう。
やりたいならば。

もしくは一人抜けても残りの人員で桃と葡萄を収穫すれば土産分ぐらいは十分集められるだろうし、足りなかったらレディ・トレンティスが融通してくれるだろう。

暴風対処機能だって実際に果樹があるところでテストした方が、果樹園の管理人にでも参考になる情報を貰えるかもだし。

「あ、出来ればウィルに来て隠し場所探しの手伝いをやって欲しいって~」
シャルロがのほほんとジャムをパンに塗りながら教えてくれた。

「・・・相変わらず、ちゃっかりしているな。
まあ、そのくらい図太くないと実質寄付金で活動している発掘隊を何年間も動かし続けられないか。
じゃあ、今日は私も向こうに行って書籍の保全作業の手伝いでもしてくるよ。
シャルロはこっちで送迎して・・・ハラファから解放されそうだったら蒼流にでも頼んで知り合いの風精霊の協力を得て水除け結界用魔具の防風機能がどの程度の強風まで耐えられるのか、あと果樹園に被害が出るのはどの程度の強風なのか、確認しておいてくれないか?
お土産用の果物の収穫は明日の早朝に皆でやろう」
アレクが苦笑しながら提案した。

一応俺らの住んでいるノルデ村の近辺でもそれなりに誰も使っていない草原に近い場所もあるから暴風に対するテストも出来なくもないが、こっちでやる方が果樹園に関わっている現場の人の声が聞ける。

ノルデ村でも果物はそれなりに栽培されていると思うが、野菜の方が多いんだよな。

野菜ってもっと地面の傍に生えているから暴風の影響を受けにくいだろう。

そんじゃあまあ、シャルロが対暴風対策のテストをやっている間にもう1日遺跡で手伝うとするか。

やっぱ学者じゃあ隠し場所探しが苦手なんだろうなぁ。


【後書き】
隠し場所探しは成功しているかすら分からないので、発掘隊は諦めちゃってウィルの再訪を待ち侘びていましたw
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