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卒業後
885 星暦557年 萌葱の月 14日 久しぶりに遠出(6)
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「・・・随分と広いな」
浮遊《レヴィア》で上がった先は、俺たちがまっすぐ立ってぎりぎり頭がぶつからない程度の高さの部屋だった。
高さがギリギリなせいで圧迫感があるが、空間そのものはかなり広い。
一部崩落しているのかと下から心眼《サイト》で見た時思った部分は、殆どは柱のような感じで床を支え(?)ていた。
・・・というか、天井の上を少しずつくり抜いて部屋を作ったのか?
くり抜いた後にそれなりに整備したのか、床はしっかり平らで歩きやすい。
何やら木の棒を組み合わせたような物の残骸が残っているが、流石に年月で崩壊したのかバラバラになっているので元の形が何だったのか分からない。
「何のための場所なんだろ?
隠れ場所??」
シャルロが周りを見回しながら首を傾げる。
「緊急避難場所だとしたらもう少し何か食糧とかあっても良さげだし、上にあったら街に火を放たれた場合に熱と煙に巻かれて危険だと思うが・・・」
アレクが納得できなそうな顔で指摘する。
まあ、食料は住民が出て行くときに持って行く可能性が高いし、そうじゃなくても虫や鼠に食われたんだろうが・・・避難先だとしたら毛布やゴザ程度があってもおかしくないと思うのだが。
じっくり空間の壁や柱や天井を心眼《サイト》で見回していたら、一か所柱ではなく本当に崩落したっぽく上から土が流れ込んで固まった場所があった。
木の根も入り込んでいるお蔭で流れ込んだ土が比較的一か所に纏まっているせいで柱みたいに見えたようだ。
考えてみたら、丘の中にある割に、根っことかが天井から出てこないよな、この遺跡。
丘の上にはそれなりに木も生えているんだから植物の根も伸びているだろうに。
つうか、木でなくても草だって雑草なんかはびっくりするほど根が広がっているのもあるのに、そう言うのも特に見当たらない。
過去のこの文明の連中は土を固める技術が凄かったのかも知れない。
もしくは植物の根が入り込まないような処理方法を知っていたのか。
根の処理はまだしも、土を固める技術は現代でも色々と有効活用できそうだが・・・そう言う技術って言うのは今から見ても分かる物じゃあないからなぁ。
それともアスカに見て貰ったら土竜《ジャイアント・モール》の本能的な何かでどんな手法で土を固めたか、分かるかな?
まあ、土の加工方法なんぞ知っても俺達じゃあまり活用できないけど。
建築ギルドにでも売りつけたら金になるかもだが、検証されていない情報に大金を出す人間はいないし、検証なんぞする為に家を建てて色々負荷試験をする気はないし。
なんと言っても魔術師関連の特許制度ではないからあっという間に情報が漏れて、俺たちに入る金が激減して終わりそうな気がする。
それはさておき。
「ここが上への出口だったか換気口だったかみたいだな」
心眼《サイト》でじっくり視てみると、この上から根が入ってきている部分だけ土が違う。
良く視ると、細い通路っぽい形に固まった土壁みたいのがあり、その中にも土が入り込んで埋まってしまったようだ。
「ほおう?
緊急出口だったのかな?
もしくはここは換気口で、ついでに洗濯物でも干していたとか」
アレクが根で固まっている土の周辺を覗き込みながら言った。
「え、こんな上まで洗濯物を引き上げるのなんて、大変じゃない??」
シャルロがびっくりしたように言った。
俺はとしてはシャルロが洗濯物の持ち運びの大変さを知っていること自体に驚いたよ。
魔術学院の寮だって洗濯は籠に入れておけばやって貰えたし、今の家だって使用人がいるだろう。洗濯物を持って行って干すなんて行動をやる機会なんていつあったんだ??
シャルロの事だから使用人の手伝いをしようとしても可笑しくないが・・・シャルロだったら洗濯ものを運ぶよりも蒼流に頼んで水分を抜いてそのまま乾かしちまった方が早いだろうに。
下手に安易に速乾すると皺だらけになるけど。
一度清早に頼んだら、服に比較的無頓着な俺でも着るのを躊躇する程凄い皺だらけになって驚いたんだよなぁ。
「滑車でも使って引き上げる形にしていたのかも知れないな。
この地中の街中じゃあ料理程度ならまだしも、洗濯まで干していたら湿気が籠って黴だらけになっていたかも知れないから、ここみたいに上に直接湿気を逃がせる場所で乾かしていたのかも知れない」
アレクが言った。
風が流れていれば湿気も抜けやすいかも知れないから、確かに家の中で服を干すよりもここで干した方が直ぐに乾いて黴臭くなることも無かったかもだが・・・どうせなら服は外に干した方が良かっただろうに。
ここの住民は本当になんだって地下になんて住んでいたんだろ?
マジで本当に不思議だ。
【後書き】
もしかしたらとんでも技術で街中の湿気を凝縮して飲み水にする技術があったかもですけどねw
だとしたら上にあるスペースは何用だったのか・・・
浮遊《レヴィア》で上がった先は、俺たちがまっすぐ立ってぎりぎり頭がぶつからない程度の高さの部屋だった。
高さがギリギリなせいで圧迫感があるが、空間そのものはかなり広い。
一部崩落しているのかと下から心眼《サイト》で見た時思った部分は、殆どは柱のような感じで床を支え(?)ていた。
・・・というか、天井の上を少しずつくり抜いて部屋を作ったのか?
くり抜いた後にそれなりに整備したのか、床はしっかり平らで歩きやすい。
何やら木の棒を組み合わせたような物の残骸が残っているが、流石に年月で崩壊したのかバラバラになっているので元の形が何だったのか分からない。
「何のための場所なんだろ?
隠れ場所??」
シャルロが周りを見回しながら首を傾げる。
「緊急避難場所だとしたらもう少し何か食糧とかあっても良さげだし、上にあったら街に火を放たれた場合に熱と煙に巻かれて危険だと思うが・・・」
アレクが納得できなそうな顔で指摘する。
まあ、食料は住民が出て行くときに持って行く可能性が高いし、そうじゃなくても虫や鼠に食われたんだろうが・・・避難先だとしたら毛布やゴザ程度があってもおかしくないと思うのだが。
じっくり空間の壁や柱や天井を心眼《サイト》で見回していたら、一か所柱ではなく本当に崩落したっぽく上から土が流れ込んで固まった場所があった。
木の根も入り込んでいるお蔭で流れ込んだ土が比較的一か所に纏まっているせいで柱みたいに見えたようだ。
考えてみたら、丘の中にある割に、根っことかが天井から出てこないよな、この遺跡。
丘の上にはそれなりに木も生えているんだから植物の根も伸びているだろうに。
つうか、木でなくても草だって雑草なんかはびっくりするほど根が広がっているのもあるのに、そう言うのも特に見当たらない。
過去のこの文明の連中は土を固める技術が凄かったのかも知れない。
もしくは植物の根が入り込まないような処理方法を知っていたのか。
根の処理はまだしも、土を固める技術は現代でも色々と有効活用できそうだが・・・そう言う技術って言うのは今から見ても分かる物じゃあないからなぁ。
それともアスカに見て貰ったら土竜《ジャイアント・モール》の本能的な何かでどんな手法で土を固めたか、分かるかな?
まあ、土の加工方法なんぞ知っても俺達じゃあまり活用できないけど。
建築ギルドにでも売りつけたら金になるかもだが、検証されていない情報に大金を出す人間はいないし、検証なんぞする為に家を建てて色々負荷試験をする気はないし。
なんと言っても魔術師関連の特許制度ではないからあっという間に情報が漏れて、俺たちに入る金が激減して終わりそうな気がする。
それはさておき。
「ここが上への出口だったか換気口だったかみたいだな」
心眼《サイト》でじっくり視てみると、この上から根が入ってきている部分だけ土が違う。
良く視ると、細い通路っぽい形に固まった土壁みたいのがあり、その中にも土が入り込んで埋まってしまったようだ。
「ほおう?
緊急出口だったのかな?
もしくはここは換気口で、ついでに洗濯物でも干していたとか」
アレクが根で固まっている土の周辺を覗き込みながら言った。
「え、こんな上まで洗濯物を引き上げるのなんて、大変じゃない??」
シャルロがびっくりしたように言った。
俺はとしてはシャルロが洗濯物の持ち運びの大変さを知っていること自体に驚いたよ。
魔術学院の寮だって洗濯は籠に入れておけばやって貰えたし、今の家だって使用人がいるだろう。洗濯物を持って行って干すなんて行動をやる機会なんていつあったんだ??
シャルロの事だから使用人の手伝いをしようとしても可笑しくないが・・・シャルロだったら洗濯ものを運ぶよりも蒼流に頼んで水分を抜いてそのまま乾かしちまった方が早いだろうに。
下手に安易に速乾すると皺だらけになるけど。
一度清早に頼んだら、服に比較的無頓着な俺でも着るのを躊躇する程凄い皺だらけになって驚いたんだよなぁ。
「滑車でも使って引き上げる形にしていたのかも知れないな。
この地中の街中じゃあ料理程度ならまだしも、洗濯まで干していたら湿気が籠って黴だらけになっていたかも知れないから、ここみたいに上に直接湿気を逃がせる場所で乾かしていたのかも知れない」
アレクが言った。
風が流れていれば湿気も抜けやすいかも知れないから、確かに家の中で服を干すよりもここで干した方が直ぐに乾いて黴臭くなることも無かったかもだが・・・どうせなら服は外に干した方が良かっただろうに。
ここの住民は本当になんだって地下になんて住んでいたんだろ?
マジで本当に不思議だ。
【後書き】
もしかしたらとんでも技術で街中の湿気を凝縮して飲み水にする技術があったかもですけどねw
だとしたら上にあるスペースは何用だったのか・・・
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