シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

884 星暦557年 萌葱の月 14日 久しぶりに遠出(5)

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「まずは入る前に変な空間が周囲にないか確認するぜ」
久しぶりの遺跡に入る前にアレクとシャルロに声をかける。

学生時代に入った後も歴史学会の連中と一緒に何度かは入っているが、今回は久しぶりだし最近はここもあまり調査が入っていないらしいので、また変な生き物が溜まっていないか確認しておきたい。

「蒼流、虫とかが大量にいたら追い出しておいてくれる?
鼠もあまり多い様だったら嫌だなぁ」
シャルロがついでに蒼流に頼んでいる。

うん。
考えてみたら蒼流に頼むシャルロがいる限り、俺が確認する必要はないかもだが・・・思いがけない新発見があるかも知れないし、取り敢えず周囲の空間を調べてみよう。

集中して心眼《サイト》でまずは遺跡の下を視ていく。
よし、以前見つけた牢獄空間っぽい場所より下は普通に地面だ。
ぐるっとそのまま周りを視ていく。右奥の方にちょっとした部屋っぽい空間があるが、あれは確か前回来た時にも歴史学会の連中に解説してもらった場所の筈。
昔はキノコとかモヤシを育てていた場所なのではないかと言っていた。

この地域はそれなりに農業に適している筈なんだが、農家の人はどうしていたんだろう?
夜中にこの地中の街に戻ってきていたら時間の無駄だろうし、動物とかが荒らしに来ても気づかなくて追い払えないと思うが。
小さ目な農村みたいのは外に散らばっていたのかな?
そう言うのの遺跡は残っていないだろうし。

とは言え、城壁で守った中に畑がある訳ではないので、戦争とかになって攻め込まれたら一気に飢えちまいそうだが。

そんなことを考えながら遺跡を確認し、さあ入ろうと声を掛けようとした瞬間、ふと上の方の空間が心眼《サイト》で視えた。

「あれ?」
「どうした?」
アレクが尋ねてきた。

「なんかあそこの上の辺に部屋っぽい空間があるな。
元々は上から縄梯子でも垂らして登っていたんだろうけど・・・浮遊《レヴィア》で行ってみるか」
入って比較的すぐな場所の天井の上に空間がある。
秘密部屋か??
場所的に言ってお偉いさんが人目に付かずに登るのは難しそうだが。

過去の人だって魔術が使えたんだろうから浮遊《レヴィア》で上がったかも知れないが、それにしても場所が普通の一般市民が住んでいただろうと思われる区画だから違和感がある。
壁際では無いから縄梯子を垂らしたら目立つし、邪魔だったんじゃ無いか?

「大きさはどの位なんだ?
備蓄や武装を隠すような場所か、人間が隠れる場所か、それとも換気用の設備でもある場所なのか?」
備蓄や武装だったら上じゃなくて下に隠すんじゃないか?
まあ、そのまま地上に出る人が使うためにある程度の武器と食糧と金とかが置いてあっても不思議は無いが、緊急手段用の逃げ道ならばもっと目立たないところにありそうだ。
緊急避難じゃなくてももっと端の方が縄梯子を垂らしても邪魔にならないと思うが。

はっきり言って、あの場所だったら縄梯子だろうが浮遊《レヴィア》だろうが出入りはかなり目立つだろう。

「う~ん、所々陥没しているっぽいが元はそれなりに大きかったかも?
もしかして子供の遊び場所だったのかな?」
親が魔術で子供を天井の部屋に入れておけば、勝手にどっかに出かけることは無くて良いかも知れない。
下手に抜け出そうとして落ちたら死にそうだから、扉の鍵は厳重にしとく必要があるだろうが。

「まあ、取り敢えず行ってみるか」
心眼《サイト》で確認した限り、中に生き物は普通のアリ程度のサイズのが少数いるだけだ。

「浮遊《レヴィア》」
術を掛けてゆっくり空間の入り口っぽい場所に近づく。

後ろからアレクとシャルロも浮いてきた。

「こんなところに穴があったんだね」
入り口っぽい場所に近づいて、首を突っ込みながらシャルロが言う。

「多分、ここに人が住んでいた時代には落とし戸みたいのがあったんだろうな。
人がいなくなってそのうち落ちて、下に落ちた戸も誰かに拾われて持ち去られたんじゃないか?」
ここってかなり乾燥しているから腐りはしないと思うから、誰かが薪とか自分の家の落とし戸に丁度いいと思って持って帰ったんだろう。
その際に上を見たらこの部屋の事も気づいたと思うんだが。

まあ、近所のガキンチョだったら気付いても登る手段がないからどうしようもないか。

「さて。
入ってみるか」
特に変な臭いも空気の流れもないし。
問題は無い筈。

多分。


【後書き】
大きな町サイズの屋根裏部屋発見?

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