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卒業後
873 星暦557年 萌葱の月 1日 水除け(12)
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「そう言えばさ、貴族とか金持ち商家の常識として、暴風雨だったらガーデンパーティって延期する?
それとも魔術師に頑張らせて強行するのか?」
休息日を終えて王都に戻り、いつもの朝食後のお茶を工房で飲みながらふとシェイラの質問(要望?)を思い出してアレクとシャルロに尋ねた。
「基本的に今までは雨が降った場合、魔術師を確保していたらそのまま結界を張って続行、確保してなかったら延期か中止が常識だったからねぇ。
これから色々とパーティの主催者側が悩むことになるかも?」
シャルロがちょっと首を傾げながら応じた。
「男性はともかく女性陣は強風だと服や髪が乱れるから、風まで止められる結界を展開できるのでない限り、中止にしなくても客が帰ってしまうと思うぞ」
マグを持ち上げながらアレクが指摘した。
おお~。
「そっか、枝とか屋根の一部が飛んでこない様に防御結界も兼ね備えられる魔具を造る必要があるかと思ったけど、風自体が問題だったら単なる対物防御結界じゃあ駄目なんだな」
普通の防御結界は空気は素通りさせる仕組みになっているので風は止めない。
以前開発した防寒・防御結界は寒さを奪く風を抑えるために空気の動きもある程度止める設計になっているのがある意味画期的だったのだ。
「そう考えると風や落下物を防ぐ機能は特に必要無いね~。
でも、考えてみたら雨が降らなくても強風だったらガーデンパーティも興ざめだから、強風を防いでくれる結界って欲しがる夫人は多いかも?
花の季節とかって限られているから、ちょっと風が強くても庭の花を楽しむお茶会って決行したがると思うし」
シャルロが意外な提案をしてきた。
無駄だから要らんっていう結論になると思ったら、反対に雨が降ってなくてもお茶会用に使うって・・・。
でもまあ、確かに折角晴れてて庭に綺麗な花が咲いていても、風が強かったらお茶や菓子に土埃や枯れ葉が混じりそうで微妙か。
そうじゃなくても女性陣の繊細な髪型って風で乱れるとかなり悲惨なことになりかねないし。
まあ、一番強風が天敵なのって寂しくなった頭を誤魔化してる男どもなんだけどな。
鬘が吹き飛ぶのも絶望的だが、横向きに無理やり撫でつけて禿げた部分を隠している(つもりになっているだけという場合が多いが)のに、風でぴゅ~と髪が反対向きに飛ばされたりすると皆非常に気まずくなる。
場合によっては見ている側は笑いを堪えるのに非常に苦労するし。
うっかり噴き出しても許してくれるような大らかな人間だったら最初から小細工して隠さないからなぁ。
つまり、小細工しているのが台無しにされて、それを目撃しただけで関係が微妙になるし、うっかり笑ったりしたら目の敵にされるのはほぼ確実なのだ。
あと、色々無理に盛っている女性の胸なんかは強風でも不自然なほどに動かなかったり、反対にぺったんこになったりすることもある。
こっちは見る眼があると気付く程度の話だが。
どちらにせよ。
ガーデンパーティ用だったら強風対策機能を組み込んだバージョンも売れるかも?
それこそ、外でやる式典で主催者側や主賓の男が寂しい頭上を小細工する人間だったら絶対に必須だろうし。
「風だけ止める設定と、風と雨を止める設定とを選べるようにした方が魔石の消費量は節約できるだろうな。
強風と雨でどの程度魔石の消費量が違うか知らないが、参考として1刻あたりどの程度の魔石を消費するか、調べて明示しておく方が良さそうだ」
アレクが立ち上がって黒板に書き込む。
「強風時って土埃や枯れ葉とかが風で舞い上がっているから、そう言うのが落ちてこない様に水だけじゃなくって物理的な結界としての機能も必要じゃない?」
シャルロが指摘する。
ある意味、暖房機能の無い防寒・防御結界の大型版みたいな感じになりそうだな。
なんかこう、強風が困るならパーティなんぞ止めればいいのにって気もしないでもないが・・・人との付き合いとか庭自慢って言うのも貴族とかの人脈づくりとかでは重要なのかな?
単なる見栄って場合も多そうだが。
まあ、どちらにせよ、突如当日に中止になったせいでケータリング業者や臨時雇いのメイドが急に収入が無くなって困る事が減るんだし、経済の循環にとっては金持ちが金を払って活動するのは良い事なんだろうが。
問題は・・・ちゃんと大規模に狙った機能を発揮できる魔具を造れるかと、どの程度売れるかってところかな?
【後書き】
貴族用の学校の式典とかでも強風対処用魔具は必須かもw
それとも魔術師に頑張らせて強行するのか?」
休息日を終えて王都に戻り、いつもの朝食後のお茶を工房で飲みながらふとシェイラの質問(要望?)を思い出してアレクとシャルロに尋ねた。
「基本的に今までは雨が降った場合、魔術師を確保していたらそのまま結界を張って続行、確保してなかったら延期か中止が常識だったからねぇ。
これから色々とパーティの主催者側が悩むことになるかも?」
シャルロがちょっと首を傾げながら応じた。
「男性はともかく女性陣は強風だと服や髪が乱れるから、風まで止められる結界を展開できるのでない限り、中止にしなくても客が帰ってしまうと思うぞ」
マグを持ち上げながらアレクが指摘した。
おお~。
「そっか、枝とか屋根の一部が飛んでこない様に防御結界も兼ね備えられる魔具を造る必要があるかと思ったけど、風自体が問題だったら単なる対物防御結界じゃあ駄目なんだな」
普通の防御結界は空気は素通りさせる仕組みになっているので風は止めない。
以前開発した防寒・防御結界は寒さを奪く風を抑えるために空気の動きもある程度止める設計になっているのがある意味画期的だったのだ。
「そう考えると風や落下物を防ぐ機能は特に必要無いね~。
でも、考えてみたら雨が降らなくても強風だったらガーデンパーティも興ざめだから、強風を防いでくれる結界って欲しがる夫人は多いかも?
花の季節とかって限られているから、ちょっと風が強くても庭の花を楽しむお茶会って決行したがると思うし」
シャルロが意外な提案をしてきた。
無駄だから要らんっていう結論になると思ったら、反対に雨が降ってなくてもお茶会用に使うって・・・。
でもまあ、確かに折角晴れてて庭に綺麗な花が咲いていても、風が強かったらお茶や菓子に土埃や枯れ葉が混じりそうで微妙か。
そうじゃなくても女性陣の繊細な髪型って風で乱れるとかなり悲惨なことになりかねないし。
まあ、一番強風が天敵なのって寂しくなった頭を誤魔化してる男どもなんだけどな。
鬘が吹き飛ぶのも絶望的だが、横向きに無理やり撫でつけて禿げた部分を隠している(つもりになっているだけという場合が多いが)のに、風でぴゅ~と髪が反対向きに飛ばされたりすると皆非常に気まずくなる。
場合によっては見ている側は笑いを堪えるのに非常に苦労するし。
うっかり噴き出しても許してくれるような大らかな人間だったら最初から小細工して隠さないからなぁ。
つまり、小細工しているのが台無しにされて、それを目撃しただけで関係が微妙になるし、うっかり笑ったりしたら目の敵にされるのはほぼ確実なのだ。
あと、色々無理に盛っている女性の胸なんかは強風でも不自然なほどに動かなかったり、反対にぺったんこになったりすることもある。
こっちは見る眼があると気付く程度の話だが。
どちらにせよ。
ガーデンパーティ用だったら強風対策機能を組み込んだバージョンも売れるかも?
それこそ、外でやる式典で主催者側や主賓の男が寂しい頭上を小細工する人間だったら絶対に必須だろうし。
「風だけ止める設定と、風と雨を止める設定とを選べるようにした方が魔石の消費量は節約できるだろうな。
強風と雨でどの程度魔石の消費量が違うか知らないが、参考として1刻あたりどの程度の魔石を消費するか、調べて明示しておく方が良さそうだ」
アレクが立ち上がって黒板に書き込む。
「強風時って土埃や枯れ葉とかが風で舞い上がっているから、そう言うのが落ちてこない様に水だけじゃなくって物理的な結界としての機能も必要じゃない?」
シャルロが指摘する。
ある意味、暖房機能の無い防寒・防御結界の大型版みたいな感じになりそうだな。
なんかこう、強風が困るならパーティなんぞ止めればいいのにって気もしないでもないが・・・人との付き合いとか庭自慢って言うのも貴族とかの人脈づくりとかでは重要なのかな?
単なる見栄って場合も多そうだが。
まあ、どちらにせよ、突如当日に中止になったせいでケータリング業者や臨時雇いのメイドが急に収入が無くなって困る事が減るんだし、経済の循環にとっては金持ちが金を払って活動するのは良い事なんだろうが。
問題は・・・ちゃんと大規模に狙った機能を発揮できる魔具を造れるかと、どの程度売れるかってところかな?
【後書き】
貴族用の学校の式典とかでも強風対処用魔具は必須かもw
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