シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

862 星暦557年 翠の月 20日 水除け

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「ふうん、結局最初に登録した素材が一番良かったの?」
朝食を食べながらシェイラが聞いてきた。

10日かけてやっと残りの俺たちが開発した魔具の魔術回路に関して各種試作した素材を試し終わったが、結局あれだけ時間と手間をかけたのにやらなくても大して変わりはない結果となった。

ちょっと時間が無駄だったなぁ。
でもまあ、試さなきゃ『大して変わりがない』って結果が分からなくってずっと気になっただろう。

だけどあれだけ時間をかけたんだから『ない』という結果じゃなくって『ある』という結果が欲しかったかも。

それはそれで面倒なことになった可能性は高いが。

「まあ、多少良くなる程度の違いがあるのも種類によってはあったが、極端に違いがある訳では無かったから下手に新素材の種類を増やさない方がいいだろうってことで申請しなかった」
お蔭である意味、10日間は何もやってなかったみたいな感じで表だった成果はゼロ。

「ふうん。
でもまあ、知識っていうのは『無い』って方向であっても知らないよりは知っている方がいいから、いつかは役に立つと思っておけば良いじゃない。
とは言え、魔具の種類によって最適な魔術回路の素材が違ったとなると、これからは新規な魔具を開発するたびに更に良い魔術回路の素材が無いか、色々試作する必要がありそうね?」
ちょっと笑いながらシェイラが言った。

確かになぁ。
大して違いはないと思っていても、ついつい色々と試してみたがるシャルロとかアレクの姿が目に浮かぶ。
俺も『ちょっと気になるから』とか言って夜遅くまで色々思い付きで試作品を作りそうだし。

俺たちの開発熱が収まるまで、夜更かしし過ぎない様に工房は夜遅くなったら明かりが消える仕様にでもした方が良いかも?

「新素材の開発とテストが終わったとなると、次はどうするの?
また発掘現場での手伝いとかに来てもいいのよ?」
わきわきと怪し気に指を動かしながらシェイラが提案する。

いや、美顔器はがっつり売れそうだし、可変性転移箱もそれなりに人気が出そうだが、まだ流石に働くのを投げ出せる程今年の稼ぎは多くないぞ。

新素材開発関連のテストに時間をかなり取られたし。
「遊ぶ前にもう少し仕事だな。
新しい開発をしようと思っているんだが、何か不便なこととか、こんなのがあったら良いのにって思うようなのってある?」

俺って元が貧乏だったからあまり不便に関して強く不満を感じないせいで、新規開発のアイディアが余り出てこないんだよなぁ。
まあ、美顔器みたいのは男だったら余程の見栄っ張りじゃない限り、金持ちな暮らしをしていたって出てこないと思うが。

「そうねぇ。
こう、お手軽な雨除けとか泥除けがあったら嬉しいわね。
もうそろそろ雨が多くなる時期なんだけど、森の中での発掘作業だと濡れるし泥だらけになるのよねぇ」
シェイラが言った。

そう言えば、雨が降ると上半身も足元も濡れて面倒なことになるんだよな。
清早と知り合ってから基本的に水に関しては苦労していないから忘れていた。

傘は既に存在するから金をかけて魔具を使ってまでして水を避けたいかというのは微妙なところかもしれないが、泥跳ねとか強風時の横なぐりな雨の水除けが出来ると便利かも。

地面にしゃがみ込んで作業しているなら傘は邪魔だろうし。
雨合羽は濡れている間に水が沁み込んできて、最終的には水除けとしてはほぼ意味をなさないからなぁ。

防御結界っぽく水を寄せ付けない感じにすると良いだろうか?
だが、足元の水跳ねに関しては地面の水たまりの水まで排除する様にしたら魔力消費量が凄い事になりそうだ。

地面に結界でも展開して1イクチ2センチより上に水が来ない様にでもするかね?
ついでにうっかり水たまりを踏んでも靴の中が濡れない様にでも出来たら更に嬉しいが、難しそうだな・・・。

これは無理にやろうとしたら人間が水の上を歩けるようにするような力技になりそうだ。
もしくは水のなかに足を沈められなくなってふわふわに浮かぶ感じになって足を取られて転びそうになるとか。

雨が降っていたら水たまりを踏まない様に気を付ければ良いと言えばそれまでなんだが、地区によってはほぼ水没しちゃう路地もあるからなぁ。

泥で滑りやすくなっているところで変に足が沈まないでふわふわしたりしたら、滑って全身泥だらけになりそうな気もする。

何か良い手があるだろうか・・・。






【後書き】
雨の時は歩くと何故か足が膝までびしょびしょになるので、目立たず簡単に着脱できる足元カバーがあるなら欲しいw

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