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卒業後
857 星暦557年 青の月 21日 魔術回路の素材(7)
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「書類を送ったのにさっさと読まない奴もいるから、通信しないと送れないって良い機能だ~ってシェイラが言ってた」
休息日の翌日、朝食後に工房でお茶を飲みながらシャルロとアレクに報告する。
「シェフィート商会の方も、送られた報告書が行方不明になった際の責任追及が泥沼化しなくて助かるって話が出た。
ただ、考えてみたら可変式な転移箱にすると相手側の魔石の設定が変わっていた場合、誰も応答する人間が居なかったら送りっぱなしっていうのも出来ないんじゃないか?」
アレクが指摘する。
「そうなんだよねぇ。
ウォレン叔父さんも同じこと言ってた。
あと、僕とケレナだったら基本的に設定を変えないと思うから夜中にお知らせを送るのに良いかと思ったんだけど、他だったら折角確実に受け取り責任を追及できる筈の設定を壊しちゃうなんて意味ないだろって」
溜め息を吐きながらシャルロが言った。
「こう、ごく短いメッセージを残せるようにして相手がそれを受け取ったら翌朝受信できるような待機受信っぽい機能でもつけるか?
可能なのか知らんが」
急いで書類を送らなければならないのに、相手が転移箱の傍にいないから送れないっていうのは困る。
だとしたら通信その物が両端で人が同時に居なくても繋がるような形に出来ないだろうか?
「ふむ。
相手がうけなくてもメッセージを残せる機能というのは携帯型通信機の方にも付けても良いかも知れないな。
固定式通信機は基本的に使用人が傍にいるから実際に通話して伝言を受ければ良いだけだが、携帯式の場合は馬車に置いてあったとかどうしても通信に応じられる状況じゃなかったなんてこともあるから不便だという苦情はシェフィート商会の方でも上がってはいたんだ」
アレクが頷く。
なんかこう、新素材の効率性を見せつける為の開発の筈なのがどんどん話が逸れている話がしないでもないが・・・態々新しい何かを開発するならがっつり使い勝手がいい物に磨き上げるべきだろう。
「そうなると送信側の魔具にメッセージを残すか、受信側に残すかが問題か?
どうやってやるかも考える必要があるが。
受信側にするとうっかりずっと通信機を確認していなかったらメッセージが沢山溜まりすぎて記録できなくなるなんてことも起こりそうだな。
かと言って送信側にすると他の人への通信をする為に相手識別用の魔石を外したらメッセージも消えちまいそうだし」
新しい機能って便利そうだけど、ちょっと考えると色々と問題が出てくるんだよなぁ。
まあ、だからこそ今まで魔具にその機能を誰も付けてこなかったんだろうが。
便利で簡単にできるんだったら誰かが既にやっている。
「う~ん、複数からのメッセージと一緒に共鳴機能も残すのって無理でしょ。
だから転移箱の受信その物は諦めて、単に受信できませんでしたから連絡しましょうね~ってお知らせするだけにしない?」
シャルロが妥協案を挙げる。
忙しい商会の事務とかだったら中々相手とのタイミングが合わずに発狂しそうなことになりそうな気もするが・・・まあ、しょうがないな。
どうしてもタイミングの調整が出来ないなら、送りっぱなしが出来る旧式の転移箱を大量にそろえてそっちを使えばいいんだし。
大手商会なんて実際にそうやっているんじゃないか?
「そうだな。
新規の可変式は便利だが忙しい事務所なんかでは複数の相手とやり取りする場合は時間調整が難しいかも知れないから現在持っている旧式は直ぐには捨てない方がいいって新式を売る際に警告した方がいいかも知れないな」
アレクが頷く。
「それって売り上げに響かないか?」
前の方が良いかもって言われたら態々大金を出して新しいのを買わないと思うんだが。
「完璧で安い魔具なんて存在しないんだ。
金額と機能を使い比べてどっちをより活用するかは使用者が考えて工夫すればいいんだが、下手に比べて選ぶことが出来ない状況にしてしまうと不満が溜まって前の方が良かったって悪評をバラまかれる可能性があるからな。
じっくり便利なところと不便なところを比べて、工夫する様に促す方が無難だ」
アレクが教えてくれた。
なるほど。
・・・商会とかの事務所が転移箱だらけになりそうだな。
旧式の転移箱に通信機と外付けの部品を組み込むだけで新式に転換できるんだったら話が楽そうなんだが・・・魔術回路に変更が必要だから、術回路まで変更するなら新しく買い直す方が早いし確実だ。
まあ、取り敢えずは通信機が繋がっていないと使えない様にだけして、後はメッセージを残す機能だな。
【後書き】
メッセージだけでも複数受けられるか否かとか、何秒話せるかとか、色々悩む点がありそう。
休息日の翌日、朝食後に工房でお茶を飲みながらシャルロとアレクに報告する。
「シェフィート商会の方も、送られた報告書が行方不明になった際の責任追及が泥沼化しなくて助かるって話が出た。
ただ、考えてみたら可変式な転移箱にすると相手側の魔石の設定が変わっていた場合、誰も応答する人間が居なかったら送りっぱなしっていうのも出来ないんじゃないか?」
アレクが指摘する。
「そうなんだよねぇ。
ウォレン叔父さんも同じこと言ってた。
あと、僕とケレナだったら基本的に設定を変えないと思うから夜中にお知らせを送るのに良いかと思ったんだけど、他だったら折角確実に受け取り責任を追及できる筈の設定を壊しちゃうなんて意味ないだろって」
溜め息を吐きながらシャルロが言った。
「こう、ごく短いメッセージを残せるようにして相手がそれを受け取ったら翌朝受信できるような待機受信っぽい機能でもつけるか?
可能なのか知らんが」
急いで書類を送らなければならないのに、相手が転移箱の傍にいないから送れないっていうのは困る。
だとしたら通信その物が両端で人が同時に居なくても繋がるような形に出来ないだろうか?
「ふむ。
相手がうけなくてもメッセージを残せる機能というのは携帯型通信機の方にも付けても良いかも知れないな。
固定式通信機は基本的に使用人が傍にいるから実際に通話して伝言を受ければ良いだけだが、携帯式の場合は馬車に置いてあったとかどうしても通信に応じられる状況じゃなかったなんてこともあるから不便だという苦情はシェフィート商会の方でも上がってはいたんだ」
アレクが頷く。
なんかこう、新素材の効率性を見せつける為の開発の筈なのがどんどん話が逸れている話がしないでもないが・・・態々新しい何かを開発するならがっつり使い勝手がいい物に磨き上げるべきだろう。
「そうなると送信側の魔具にメッセージを残すか、受信側に残すかが問題か?
どうやってやるかも考える必要があるが。
受信側にするとうっかりずっと通信機を確認していなかったらメッセージが沢山溜まりすぎて記録できなくなるなんてことも起こりそうだな。
かと言って送信側にすると他の人への通信をする為に相手識別用の魔石を外したらメッセージも消えちまいそうだし」
新しい機能って便利そうだけど、ちょっと考えると色々と問題が出てくるんだよなぁ。
まあ、だからこそ今まで魔具にその機能を誰も付けてこなかったんだろうが。
便利で簡単にできるんだったら誰かが既にやっている。
「う~ん、複数からのメッセージと一緒に共鳴機能も残すのって無理でしょ。
だから転移箱の受信その物は諦めて、単に受信できませんでしたから連絡しましょうね~ってお知らせするだけにしない?」
シャルロが妥協案を挙げる。
忙しい商会の事務とかだったら中々相手とのタイミングが合わずに発狂しそうなことになりそうな気もするが・・・まあ、しょうがないな。
どうしてもタイミングの調整が出来ないなら、送りっぱなしが出来る旧式の転移箱を大量にそろえてそっちを使えばいいんだし。
大手商会なんて実際にそうやっているんじゃないか?
「そうだな。
新規の可変式は便利だが忙しい事務所なんかでは複数の相手とやり取りする場合は時間調整が難しいかも知れないから現在持っている旧式は直ぐには捨てない方がいいって新式を売る際に警告した方がいいかも知れないな」
アレクが頷く。
「それって売り上げに響かないか?」
前の方が良いかもって言われたら態々大金を出して新しいのを買わないと思うんだが。
「完璧で安い魔具なんて存在しないんだ。
金額と機能を使い比べてどっちをより活用するかは使用者が考えて工夫すればいいんだが、下手に比べて選ぶことが出来ない状況にしてしまうと不満が溜まって前の方が良かったって悪評をバラまかれる可能性があるからな。
じっくり便利なところと不便なところを比べて、工夫する様に促す方が無難だ」
アレクが教えてくれた。
なるほど。
・・・商会とかの事務所が転移箱だらけになりそうだな。
旧式の転移箱に通信機と外付けの部品を組み込むだけで新式に転換できるんだったら話が楽そうなんだが・・・魔術回路に変更が必要だから、術回路まで変更するなら新しく買い直す方が早いし確実だ。
まあ、取り敢えずは通信機が繋がっていないと使えない様にだけして、後はメッセージを残す機能だな。
【後書き】
メッセージだけでも複数受けられるか否かとか、何秒話せるかとか、色々悩む点がありそう。
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