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卒業後
844 星暦557年 紺の月 22日 久しぶりの訪問(4)
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「何だあれ?!」
空滑機《グライダー》改の離陸用結界に浮かんだ文字を見てジャレットが声を上げた。
今日はアレクがラフェーンに乗って島を散策する予定で、シャルロはトウモロコシやその他新しい食材を使ったお菓子の開拓の為に街をくまなく探索するとのこと。
なので特にやりたいことの無かった俺が空滑機《グライダー》改の使い方を教えることになったのだ。
アスカと俺が島を動き回っても良かったんだが、アスカにとっては目新しくないし、既に常駐している土竜《ジャイアント・モール》の使い魔がいるなら島で必要とされる素材なんかもあるなら見つかっているだろう。
だったらラフェーンとアレクが動き回って何か有望(もしくは危険)な植物が無いか調べる方がいい。
アレクは最近ちょっと運動不足だし。
シャルロが屋敷船に乗せてきた空滑機《グライダー》改を離陸させて役場の前まで持って来るのを請け負ったのだが、それを見たいとジャレットも港に来ていた。
ちなみに一応離陸時の結界に文字は浮かべているが(シャルロの悪戯で『びっくりした?』となっている)、広告用の垂れ幕は付けていない。
「あれな~。
機体を離陸させるために気球っぽい形の結界を使っているんだが、それの側面に模様をつけるのが意外と簡単だって分かったから広告っぽく出来たら王都の商業ギルドでバカ受けしちゃってな。
今じゃあ空滑機《グライダー》改無しに上げて垂れ幕だけ下げている広告用の気球モドキが商業ギルドに常時浮いているんだ。
もしも港全体とか広範囲への知らせように使いたいって言うなら垂れ幕も使って見せることは可能だから後で言ってくれ」
あれが垂れ幕を付けて空に浮いていたら明らかに何か知らせがあるって分かって良いかも知れないが・・・広告用途に使われたらかなり興ざめだよな。
まあ、南国の島に遊びに来ている気分な俺たちと違って普通に暮らして働いている連中にはそこまで問題ではないかもだが。
それこそ船で入ってきた連中に特売品とか祭りの知らせとかを問答無用に見せつけられて良いのか?
「う~ん・・・掲示板を建てるよりも確実に人の目に入るし、知らせが出ている事が分かるのは良いが・・・ちょっと見た目が微妙だな」
ジャレットが苦笑しながら言った。
「だよな~」
やっぱそうだよなぁ。
「ただ・・・緊急時の告知に空へ上げるって言うのは良いな。
爆竹と合わせた発煙筒でも使っても良いかも知れない。
得体のしれない軍備した船が近寄って来た時とか、津波の兆候が発見された時にどうやって住民に知らせるかって言うのは頭が痛い点だったんだ」
ジャレットが考え深げに顎をさすりながら付け加えた。
なるほど。
広告を空に浮かべても外に出ている人間は目にするが、家の中に居たら気付かない。
その点、爆竹で音がしたら何事かと外に出てくる人間も多いだろう。
そこで発煙筒で決められた色の煙が空に上がっていたら、必要に応じて逃げるなり応戦の為の集合場所に行くなり出来る。
シャルロか俺が居れば前回の周辺国の戦争に紛れたどさくさ紛れの襲撃みたいなことが起きても前もって対処できるが、通常だと人の目で見張って対処していかなければならない。
王都だったら軍や警備兵が色々と備えているんだろうが、こういう補給島だったら海賊や他国からの襲撃への備えも自分達で工夫しなきゃいけないのか。
中々大変だなぁ。
近くのアレグ島海軍基地に軍艦があるだろうから半日程度耐えられれば何とかなる筈だが、半日あったら避難し損ねた街中の人間を皆殺しにも出来る。
避難していても半日あれば街を焼かれて略奪で丸裸にされるだろうが、少なくとも命さえ残っていれば何とかなる。
「ちなみに、あの空滑機《グライダー》改から弓を射ったり岩を落としたりは出来るのか?」
ジャレットが聞いてきた。
ええ??
まあ、確かに変な船が寄ってきたら警告した後に空から攻撃して上陸できない様にする方が島への被害は小さいだろうが・・・よっぽど効率よく準備しておかないと船を見かけてから入港までの間に出来ることは限られると思うぞ?
「現時点の構造では飛ぶ間に扉を開けると空気抵抗とかの問題でバランスを崩す可能性が高いから弓を射るのは難しいな。
岩を落とす程度だったら何か籠を下に取り付けて紐で底を開ける感じにでもすればある程度は可能かも?
だが、それだったら大砲を入手して撃つ方が良くないか?」
基本的に魔術師の方が戦争の遠距離攻撃には活躍するが、固定式な防御拠点には魔術師の魔力が尽きても反撃を続けられる様に大砲も併設する事が多いと聞く。
「あれはべらぼうに高いんだよ~。
しかも当てるのも難しいし、当てられるように練習するのも大金が掛かる。
空滑機《グライダー》改から岩や火のついた油壺でも投げ込む程度だったらもっとお手軽に練習できそうじゃないか」
ジャレットがにやりと笑いながら言った。
うわ~。
「そんなに物騒なのか?」
ガルカ王国が潰れて、陰険な手段での面倒な問題は増えた気がするが少なくとも短略的に武力で問題を解決しようと考えるバカが減って平和になっただろうと思っていたんだが。
「島の開拓が上手くいって豊かになったって噂が流れてな~。
海賊とか海賊の振りをした他国の海軍とかがそれとなくアレグ海軍基地からのパトロール周期やルートを探っているって話が来てるんだ」
溜め息を吐きながらジャレットが言った。
おやま。
皆殺しは無くても略奪はしに来るかもって感じか。
頭が痛いな。
【後書き】
国家間の足の引っ張り合いは常にあるし、考え足らずな海賊も気が付いたら新しく涌いてくるので、世の中はいつになっても物騒。
空滑機《グライダー》改の離陸用結界に浮かんだ文字を見てジャレットが声を上げた。
今日はアレクがラフェーンに乗って島を散策する予定で、シャルロはトウモロコシやその他新しい食材を使ったお菓子の開拓の為に街をくまなく探索するとのこと。
なので特にやりたいことの無かった俺が空滑機《グライダー》改の使い方を教えることになったのだ。
アスカと俺が島を動き回っても良かったんだが、アスカにとっては目新しくないし、既に常駐している土竜《ジャイアント・モール》の使い魔がいるなら島で必要とされる素材なんかもあるなら見つかっているだろう。
だったらラフェーンとアレクが動き回って何か有望(もしくは危険)な植物が無いか調べる方がいい。
アレクは最近ちょっと運動不足だし。
シャルロが屋敷船に乗せてきた空滑機《グライダー》改を離陸させて役場の前まで持って来るのを請け負ったのだが、それを見たいとジャレットも港に来ていた。
ちなみに一応離陸時の結界に文字は浮かべているが(シャルロの悪戯で『びっくりした?』となっている)、広告用の垂れ幕は付けていない。
「あれな~。
機体を離陸させるために気球っぽい形の結界を使っているんだが、それの側面に模様をつけるのが意外と簡単だって分かったから広告っぽく出来たら王都の商業ギルドでバカ受けしちゃってな。
今じゃあ空滑機《グライダー》改無しに上げて垂れ幕だけ下げている広告用の気球モドキが商業ギルドに常時浮いているんだ。
もしも港全体とか広範囲への知らせように使いたいって言うなら垂れ幕も使って見せることは可能だから後で言ってくれ」
あれが垂れ幕を付けて空に浮いていたら明らかに何か知らせがあるって分かって良いかも知れないが・・・広告用途に使われたらかなり興ざめだよな。
まあ、南国の島に遊びに来ている気分な俺たちと違って普通に暮らして働いている連中にはそこまで問題ではないかもだが。
それこそ船で入ってきた連中に特売品とか祭りの知らせとかを問答無用に見せつけられて良いのか?
「う~ん・・・掲示板を建てるよりも確実に人の目に入るし、知らせが出ている事が分かるのは良いが・・・ちょっと見た目が微妙だな」
ジャレットが苦笑しながら言った。
「だよな~」
やっぱそうだよなぁ。
「ただ・・・緊急時の告知に空へ上げるって言うのは良いな。
爆竹と合わせた発煙筒でも使っても良いかも知れない。
得体のしれない軍備した船が近寄って来た時とか、津波の兆候が発見された時にどうやって住民に知らせるかって言うのは頭が痛い点だったんだ」
ジャレットが考え深げに顎をさすりながら付け加えた。
なるほど。
広告を空に浮かべても外に出ている人間は目にするが、家の中に居たら気付かない。
その点、爆竹で音がしたら何事かと外に出てくる人間も多いだろう。
そこで発煙筒で決められた色の煙が空に上がっていたら、必要に応じて逃げるなり応戦の為の集合場所に行くなり出来る。
シャルロか俺が居れば前回の周辺国の戦争に紛れたどさくさ紛れの襲撃みたいなことが起きても前もって対処できるが、通常だと人の目で見張って対処していかなければならない。
王都だったら軍や警備兵が色々と備えているんだろうが、こういう補給島だったら海賊や他国からの襲撃への備えも自分達で工夫しなきゃいけないのか。
中々大変だなぁ。
近くのアレグ島海軍基地に軍艦があるだろうから半日程度耐えられれば何とかなる筈だが、半日あったら避難し損ねた街中の人間を皆殺しにも出来る。
避難していても半日あれば街を焼かれて略奪で丸裸にされるだろうが、少なくとも命さえ残っていれば何とかなる。
「ちなみに、あの空滑機《グライダー》改から弓を射ったり岩を落としたりは出来るのか?」
ジャレットが聞いてきた。
ええ??
まあ、確かに変な船が寄ってきたら警告した後に空から攻撃して上陸できない様にする方が島への被害は小さいだろうが・・・よっぽど効率よく準備しておかないと船を見かけてから入港までの間に出来ることは限られると思うぞ?
「現時点の構造では飛ぶ間に扉を開けると空気抵抗とかの問題でバランスを崩す可能性が高いから弓を射るのは難しいな。
岩を落とす程度だったら何か籠を下に取り付けて紐で底を開ける感じにでもすればある程度は可能かも?
だが、それだったら大砲を入手して撃つ方が良くないか?」
基本的に魔術師の方が戦争の遠距離攻撃には活躍するが、固定式な防御拠点には魔術師の魔力が尽きても反撃を続けられる様に大砲も併設する事が多いと聞く。
「あれはべらぼうに高いんだよ~。
しかも当てるのも難しいし、当てられるように練習するのも大金が掛かる。
空滑機《グライダー》改から岩や火のついた油壺でも投げ込む程度だったらもっとお手軽に練習できそうじゃないか」
ジャレットがにやりと笑いながら言った。
うわ~。
「そんなに物騒なのか?」
ガルカ王国が潰れて、陰険な手段での面倒な問題は増えた気がするが少なくとも短略的に武力で問題を解決しようと考えるバカが減って平和になっただろうと思っていたんだが。
「島の開拓が上手くいって豊かになったって噂が流れてな~。
海賊とか海賊の振りをした他国の海軍とかがそれとなくアレグ海軍基地からのパトロール周期やルートを探っているって話が来てるんだ」
溜め息を吐きながらジャレットが言った。
おやま。
皆殺しは無くても略奪はしに来るかもって感じか。
頭が痛いな。
【後書き】
国家間の足の引っ張り合いは常にあるし、考え足らずな海賊も気が付いたら新しく涌いてくるので、世の中はいつになっても物騒。
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