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卒業後
832 星暦557年 紫の月 30日 肩凝り対策(23)
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「へぇぇ、魔力を通すと状態が変わる素材ねぇ。
魔術回路が必要無いの?」
結局、色々な試行錯誤では多少は使い勝手が良くなる組み合わせは見つかったものの、魔術回路を使うよりも良い!と言い切れるほど使い勝手がいい素材の組み合わせは俺達では見つけられなかった。
なので明日はアスカ(とサラ君)に何かいい方法は無いか聞く予定。
今日は緑熱《ジェイパル》石を細い筒状の袋に入れて縫揃えたクッションを試作品をシェイラへのお土産として持ってきた。
「魔石で魔力を流すための簡単な回路とスイッチは必要だな。
ただし、かなり単純なものではあるけどね。
ちなみに一度使った後に再度使うなら、向きを逆さまにした方が変に中身が偏らなくって良いかも」
試作品をシェイラに渡しながら説明する。
細い筒に入れることで一度液化した後に固まっても極端に中身が寄らない様にはしてあるが、やはりそれでも一度液化して固まると中での位置が偏るので反対向きにひっくり返して使う方がいい。
「あら、良い感じに暖かくて柔らかいのね」
スイッチを入れて試作品の上に座り込んだシェイラが感触を褒めた。
素材が直接変化するせいか、暖まるのと柔らかくなるのは早いんだよなぁ。
その代わり、魔力が切れた後の熱が失われる速度と固まる速度も早いんだが。
「ちなみに、そのベルトを使えば腹の周りに巻いて腹巻にも出来るぞ」
足首に巻いたりするのも可能だが、足首用だともっと細い方がいいのでそれだったら2つに分かれる半分の幅のでも作った方が良いかもな。
「う~ん・・・寒い中、外に出歩く時にコートの下にこっそり着ておく分には良いかもだけど、人前ではちょっとつけにくいわね。
もっと薄くお洒落に出来ないの?」
お腹周りに巻いてみて、宿の部屋の鏡で姿を確認したシェイラが顔をしかめて椅子の上に試作品を置いて上に座る。
腹巻き姿は気に入らなかったらしい。
コルセットと大して違いはないと思うんだが。
まあ、コルセット程色気はないし、コルセットだって人前じゃあ見せないものだが。
「がっちり形を付けるとうっかり魔力を通し過ぎた後に魔力が抜けた際に色々と支障が出るんだよ」
試作品に追加で魔力を流し込み、緑熱《ジェイパル》石を完全に液化させてから魔力のスイッチを切ってみせる。
「あら、なにこれ。
突然冷えた上にぼこぼこの石になったわね」
慌てて試作品の上から立ち上がってシェイラが尻の下に置いていた試作品を覗き込む。
薄い板状にカバーを作って形を強制しようとしても、邪魔にならないごく薄い板では固形化する時の圧迫で割れてしまうし、割れない様に布を使うと一度液化して固まると中で石の形に丸く固まるので筒状になってしまう。
「一応、魔術回路とスイッチでは完全に液化しないレベルに魔力を抑えるようには制限を付けたんだが・・・人間ってちょっとした時に体から魔力が溢れるんだ。
興奮したり、怒ったりした時が一番多いが、人によってはちょっとしたくしゃみのついでにってこともあるから、それこそ使用者から魔力を受け付けない様に絶縁でもしない限りうっかり魔力を想定以上に受け入れちゃう状況は考えざるを得ないんだ。
そうなると今やったみたいに魔力が抜けた時に冷たい石ころがゴロゴロ入ったクッションやコルセットもどきになるって訳」
普通の魔具の場合は魔術回路に魔石から魔力を流す形になるので、意図的に回路に魔力を通そうとしない限り普通に体から漏れている魔力が魔術回路の動作に大きく影響を与えることはほぼ無い。
というか、魔術回路その物にきちんと設置した魔力源以外から魔力を吸収しない様に制御弁みたいな機能が付いているし。
だが、緑熱《ジェイパル》石は魔力を吸収したら反応するので緑熱《ジェイパル》石その物を魔力を通さない素材ででもカバーしない限り、体から漏れる魔力や近くの魔具から零れた魔力も吸収して反応してしまうのだ。
中々使い勝手が悪い。
「過去の文明でこういう素材を使う道具があったとしたら、機能を規定した範囲内に制限する為に魔力を通さない素材で覆っていたんじゃないかと思うんだが・・・そういう魔力を通さない素材を使った遺物とかって見たことあるか?」
必ずしも過去の遺跡の文明が今よりも進んでいるとは限らないが、違う方向に工夫を凝らしていた可能性はあるのだ。
何かいいアイディアがあったら拝借したい。
「う~ん・・・これって一度石の状態になっちゃうと再度使う時も中身が偏っていて中々元に戻らないのねぇ。
遺物に関しては・・・素材が魔力を通すか否かなんて分からないから、何とも言えないわね。
魔術回路が付いていて、更にあまり破損していなくて修理したら機能を確認できそうって魔具だったら最初の調査の段階で魔術院が持って行くから、そちらで確認してみたら?
魔術院の何処かに遺跡から持ち出した魔具が仕舞ってあるはずよ?」
シェイラがクッションもどきに再度魔力を通しながら言った。
「なるほど!
魔術院に置いてあるのか。
後で確認してみるよ。
ちなみにそのクッションもどきは魔力を通してひっくり返した上で上に座って圧力を掛けていればそのうちもう一度平らっぽい形にはなるぞ」
完全に液化しない様に魔力量を制限しているので柔らかくなっても石の形から平らになるのに時間がかかるんだよなぁ。
魔具ではなく自分で魔力を通して使うだけだったら石になってしまったのを液体にもどしてまた使うのもそれ程手間じゃあないんだが、売り出す時は一般人が主な想定購入層なのだ。
中々難しい。
【後書き】
過去の遺跡の文明が進んでいるとは限らないけど、周囲よりは進んでいたっぽいのに滅びてるのは不思議ですよねぇ。
魔術回路が必要無いの?」
結局、色々な試行錯誤では多少は使い勝手が良くなる組み合わせは見つかったものの、魔術回路を使うよりも良い!と言い切れるほど使い勝手がいい素材の組み合わせは俺達では見つけられなかった。
なので明日はアスカ(とサラ君)に何かいい方法は無いか聞く予定。
今日は緑熱《ジェイパル》石を細い筒状の袋に入れて縫揃えたクッションを試作品をシェイラへのお土産として持ってきた。
「魔石で魔力を流すための簡単な回路とスイッチは必要だな。
ただし、かなり単純なものではあるけどね。
ちなみに一度使った後に再度使うなら、向きを逆さまにした方が変に中身が偏らなくって良いかも」
試作品をシェイラに渡しながら説明する。
細い筒に入れることで一度液化した後に固まっても極端に中身が寄らない様にはしてあるが、やはりそれでも一度液化して固まると中での位置が偏るので反対向きにひっくり返して使う方がいい。
「あら、良い感じに暖かくて柔らかいのね」
スイッチを入れて試作品の上に座り込んだシェイラが感触を褒めた。
素材が直接変化するせいか、暖まるのと柔らかくなるのは早いんだよなぁ。
その代わり、魔力が切れた後の熱が失われる速度と固まる速度も早いんだが。
「ちなみに、そのベルトを使えば腹の周りに巻いて腹巻にも出来るぞ」
足首に巻いたりするのも可能だが、足首用だともっと細い方がいいのでそれだったら2つに分かれる半分の幅のでも作った方が良いかもな。
「う~ん・・・寒い中、外に出歩く時にコートの下にこっそり着ておく分には良いかもだけど、人前ではちょっとつけにくいわね。
もっと薄くお洒落に出来ないの?」
お腹周りに巻いてみて、宿の部屋の鏡で姿を確認したシェイラが顔をしかめて椅子の上に試作品を置いて上に座る。
腹巻き姿は気に入らなかったらしい。
コルセットと大して違いはないと思うんだが。
まあ、コルセット程色気はないし、コルセットだって人前じゃあ見せないものだが。
「がっちり形を付けるとうっかり魔力を通し過ぎた後に魔力が抜けた際に色々と支障が出るんだよ」
試作品に追加で魔力を流し込み、緑熱《ジェイパル》石を完全に液化させてから魔力のスイッチを切ってみせる。
「あら、なにこれ。
突然冷えた上にぼこぼこの石になったわね」
慌てて試作品の上から立ち上がってシェイラが尻の下に置いていた試作品を覗き込む。
薄い板状にカバーを作って形を強制しようとしても、邪魔にならないごく薄い板では固形化する時の圧迫で割れてしまうし、割れない様に布を使うと一度液化して固まると中で石の形に丸く固まるので筒状になってしまう。
「一応、魔術回路とスイッチでは完全に液化しないレベルに魔力を抑えるようには制限を付けたんだが・・・人間ってちょっとした時に体から魔力が溢れるんだ。
興奮したり、怒ったりした時が一番多いが、人によってはちょっとしたくしゃみのついでにってこともあるから、それこそ使用者から魔力を受け付けない様に絶縁でもしない限りうっかり魔力を想定以上に受け入れちゃう状況は考えざるを得ないんだ。
そうなると今やったみたいに魔力が抜けた時に冷たい石ころがゴロゴロ入ったクッションやコルセットもどきになるって訳」
普通の魔具の場合は魔術回路に魔石から魔力を流す形になるので、意図的に回路に魔力を通そうとしない限り普通に体から漏れている魔力が魔術回路の動作に大きく影響を与えることはほぼ無い。
というか、魔術回路その物にきちんと設置した魔力源以外から魔力を吸収しない様に制御弁みたいな機能が付いているし。
だが、緑熱《ジェイパル》石は魔力を吸収したら反応するので緑熱《ジェイパル》石その物を魔力を通さない素材ででもカバーしない限り、体から漏れる魔力や近くの魔具から零れた魔力も吸収して反応してしまうのだ。
中々使い勝手が悪い。
「過去の文明でこういう素材を使う道具があったとしたら、機能を規定した範囲内に制限する為に魔力を通さない素材で覆っていたんじゃないかと思うんだが・・・そういう魔力を通さない素材を使った遺物とかって見たことあるか?」
必ずしも過去の遺跡の文明が今よりも進んでいるとは限らないが、違う方向に工夫を凝らしていた可能性はあるのだ。
何かいいアイディアがあったら拝借したい。
「う~ん・・・これって一度石の状態になっちゃうと再度使う時も中身が偏っていて中々元に戻らないのねぇ。
遺物に関しては・・・素材が魔力を通すか否かなんて分からないから、何とも言えないわね。
魔術回路が付いていて、更にあまり破損していなくて修理したら機能を確認できそうって魔具だったら最初の調査の段階で魔術院が持って行くから、そちらで確認してみたら?
魔術院の何処かに遺跡から持ち出した魔具が仕舞ってあるはずよ?」
シェイラがクッションもどきに再度魔力を通しながら言った。
「なるほど!
魔術院に置いてあるのか。
後で確認してみるよ。
ちなみにそのクッションもどきは魔力を通してひっくり返した上で上に座って圧力を掛けていればそのうちもう一度平らっぽい形にはなるぞ」
完全に液化しない様に魔力量を制限しているので柔らかくなっても石の形から平らになるのに時間がかかるんだよなぁ。
魔具ではなく自分で魔力を通して使うだけだったら石になってしまったのを液体にもどしてまた使うのもそれ程手間じゃあないんだが、売り出す時は一般人が主な想定購入層なのだ。
中々難しい。
【後書き】
過去の遺跡の文明が進んでいるとは限らないけど、周囲よりは進んでいたっぽいのに滅びてるのは不思議ですよねぇ。
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