シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

810 星暦557年 紫の月 11日 肩凝り対策

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「なんかさぁ、肩凝りとか、固くなった腰とか首周りを揉み解すような魔具を作れないかな?」
シャルロの従姉妹が救出され、男としてあまり威圧感の無いシャルロが母親に招集されて暫く居なかったのだが、やっとキリファ嬢も落ち着いたらしくシャルロが普段通り朝食後に工房へ顔を出した。

アレクもその間に商業ギルドでの色々な騒ぎの影響でバタバタしていた実家の手伝いに駆り出されていたし、ある意味暇だったのは俺だけだったかも。

俺はと言うと、一斉調査とかその後の探索手伝いで色々とこき使われていたから休養が必要!という事でシェイラの所に遊びに行っていた。

で。
休息日明けに久しぶりに全員集まったので次にどんな物を開発するかを話し合うことになったのだが・・・シェイラの所に行く前に会ったシャルロの親父さんの疲れた顔を思い出して、提案してみた。

下っ端の事務職員なんかも肩凝りとかに苦しむって魔術院の職員とかから聞いていたが、どうやら肩凝りって言うのはお偉いさんでもそれなりに苦しむ症状のようだから需要は幅広くあるのではないだろうか?

軍部の奴らは流石に定期的に鍛錬の為に体を動かしているのか筋肉が凝り固まっている人間は殆ど見なかったが、シャルロの親父さんとか王宮の人間とかは中々酷い人間もそこそこ視かけている。

「ふむ。
確かに魔術学院を卒業して、強制的に運動をする機会が減ったせいで私も最近ちょっと体が微妙な気がするな。
まだ肩凝りに苦しむという程ではないが、そのうち父や兄と同様に首とか肩を揉むようになりそうな気がするから今から開発するのは良さそうだ」
アレクが首をぐるりと回して見ながら合意した。

「確かに!
父上もなんかキリファの話が発覚してからしょっちゅう首とかを揉んでいたから、疲れていたんじゃないかな。
でもウォレン叔父さんなんかは平気そうなんだよねぇ。
年齢と関係ないのかな?」
シャルロが軽く首を傾げながら言った。

「年齢と言うよりもどの程度身体を鍛えているかじゃないか?
年を取って偉くなると自分で体を動かす機会が減るから凝るんだろ。
ウォレン爺は一応軍属・・・かその顧問っぽい感じだから、一応護身ぐらいは出来る様に今でも鍛錬しているんじゃないのか?」
あのジジイを捕獲して自白剤でも飲ましたら色々とアファル王国の情報が抜き取れるだろうから、そんなことにならない様にいざという時の逃走手段はそれなりに抜かりなく準備していそうだ。

まあ、自白剤なんぞ効かないように予防的な手も講じてそうだが。

「え、じゃあ運動してたら肩は凝らないの?
だったらお金を出す魔具じゃなくて、丁度いい運動を広めれば良いだけじゃない?」
シャルロがこてりと首を傾げながら言った。

「現実的な話として、身の危険を感じるような立場にいる人間以外で定期的に鍛錬するような奴なんて殆どいないんだろ。
金で解決できるんだったら時間と手間を惜しんで運動や鍛錬をしないのが殆どさ」
鍛錬の仕方なんぞ知らない人間も多いだろうし。
まあ、そう言う連中に肩凝りに効く上に護身にも有用って話で日常的にやったら役に立つ鍛錬方法を教えたらそれはそれで需要がありそうだが・・・魔術師が売り込む技術じゃあないな。

「まあ、我々ですらウィル以外は学生時代以降は殆ど鍛錬なんぞしていないんだから、我々の親世代がする可能性は微細・・・というかほぼ皆無だと思うから、肩凝りとかに効く魔具を作れたら売れると思うよ」
アレクが笑いながら言う。

「ただまあ、どんなのが効くのかが問題だよな。
手で揉む動きを真似る程度じゃあ態々魔具を買う必要が無いし、かといって単に強く押す程度だったら痛いだけであまり効果が無いかもだし。
つうか、考えてみたら俺たちの中で誰も肩凝りに悩んでいないとなると、試作品の効果を確認する相手を探すのも難しそうだな」
村にいる近所のおっさん・じーさん連中は元気に色々と動き回っているからあまり肩なんて凝っていないんじゃないか?

時折腰が痛いと言っている気はするが。
考えてみたら、ああいう腰が痛いのって肩凝りと同じ対処法で痛みが抜けるのかね??




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