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卒業後
804 星暦557年 紫の月 5日 人探し(7)
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イマイチ役人用の寮に賄賂の証拠とか悪事の取引相手の弱みの証拠書類とかをしまっておくとも思えない。
なんと言っても国の施設なのだ。
どっかで水漏れがあったとか、変な病気が流行ったなんて時には問答無用で住民の許可なしに国の兵なり役人なりが立ち入ってそれこそ壁をぶち抜くことだって出来る。
普通の民間の家だったら区画の人間を避難勧告で追い出す為に各家の玄関のカギを壊して立ち入って中に人がいないのを確認し、その後地域全部を立ち入り禁止にすることぐらいは出来ても、流石に壁をぶち抜くことは無い。
大雑把な人間だったら起きる確率の低い『もしも』の状況なんぞ気にせずに色々と隠すかもしれないが、この整理整頓の出来た家や細心の注意を払って磨き上げてある宝飾品のコレクションを見る限り、この部屋の住人はかなり細かい性格なように見える。
証拠集めは完璧そうだが・・・だからこそ量も多くてこんな比較的狭い独身用の部屋に隠してあるとは思えない。
「この女の別邸は?」
無いとしたら銀行の金庫と言う可能性もありかも?
でも、銀行の金庫よりは別邸を借りてここに仕舞い切れなかった宝飾品とかを飾っておきそうなものだが。
「商業地域にちょっとした小型倉庫を借りているな。
あと2つほどこの区域の家を回った後に行く予定だ」
赤があっさり答える。
そうか。
だったらここはざっと見回してなかったら次だな。
寝室の下着の引き出しの中に換金用らしきばらの宝石と金貨が少し、及びザルガ共和国の身分証明書が隠してあったが、それだけだった。
「他国にも国籍がある人間も国の役人として働けるのか?」
国防とか通関とかじゃなければ良いのか?
流石に昇進とかは上限が決まっていると思いたいが。
「親戚が居る程度は良いが、完全にあちらの国籍を持っているのはダメだろ。
これは金で買った偽物っぽいが」
赤が身分証明書を手に取って調べながら応じる。
そっか。
逃げる時用の偽造身分証明書か。
「他者の悪事の証拠はまだしも、財産はザルガ共和国の方にも隠してありそうだな?」
政府に取引条件として渡すための他者の悪事の証拠はまだしも、後で資産を回復するための脅迫ネタとかも『財産』の一部としてザルガ共和国の方にもありそうだ。
「国外の拠点は今じっくりギルドの人間が調べているよ。
今回の組織はあちこちの国に根を張っていたからな」
なるほど。
ザルガ共和国(や他の国)だったら派手に喧嘩をしてもアファル王国の盗賊《シーフ》ギルド的に余波は特にないのか。
「まあいいや。
次に行こうぜ」
という事で更に2軒ほど役人の家を周り・・・さっきの女の別邸へ。
ちなみに回った2軒のうち1軒はほぼ全て金をギャンブルに注いでいたのか、胴元の賭けチップとかがちょこちょこあったが生活はカツカツという感じで、碌な書類も残っていなかった。
出てきた帳簿も賄賂の記録ではなく、賭博の勝ち負けの記録のみ。
こんだけ負け込んでいるくせに、なんだって続けるのかね?
役人の給料と賄賂で得た金の8割ぐらいを注ぎ込んでも足が出ているのだ。
まだ愛人に貢ぐ方がマシだろうに。
もう一軒の方は愛人宅だった。
愛人を眠らせて家の中を探したら多少は書類があったが、金の殆どは愛人の服や宝飾品と美術品の偽物に消えたっぽい。
「なんかこう、愛人とか賭博に賄賂で儲けた金を注がれるよりは、換金価値の高い宝飾品に費やされる方が被害者への弁済に使えそうでまだ救いがある気がするな。
・・・というか、役人が賄賂を貰って悪事を見逃した場合って、賄賂で貯めた金とかは悪事の被害者に渡されるのか?」
直接悪事を働いた組織の財産は被害者への補償に使われそうだが・・・役人の賄賂ってどうなんだ?
「全部国が没収して終わりだな。
場合によっては被害者救済用の基金でも設立されてそこに多少は寄付されるかもしれないが、因果関係がはっきりしないから殆どは国庫に入るんじゃないか?」
赤が肩を竦めた。
やっぱりかぁ。
なんかこう、そうだったらここの宝飾品の一部でもくすねて被害者にばら撒くべきなんじゃないかねって気もするが、被害者がどれだけいるかも分からないからなぁ。
残念ながら俺の手に負える話じゃない。
女役人の倉庫は見た目は大手の衣料系に強い商家の名前に近い名称が掲げられた普通の倉庫だったが、厳重な鍵を開けて入り、更にあった魔力認証の超高級な鍵も騙して入った中は・・・豪華絢爛という感じだった。
まるで王宮の舞踏会で着飾る煌びやかなドレスと宝石のショールームのようだ。
あちこちに等身大の人形が色々なポーズで置かれ、見事なドレスと宝飾品を展示している。
着る場所も無いだろうに、ドレスも作らせていたのか。
こんな倉庫を完備できる程金を貯めるなんて、賄賂で本当に可能なのか?
「もしかして、この女は組織の幹部だったんじゃないか?
賄賂を貰うだけでこんなに金を貯められるか??」
都合よくどっかの金満貴族の弱みを握って脅迫していたっていうのならまだしも。
「・・・確かにそうかも知れないな。
組織の上の方でも何人かは外部に全く顔を見せないメンバーがいたが・・・こいつもその一人かも知れない」
赤が顔をしかめながら倉庫の中を見回す。
取り敢えず資産価値の方は良いとして・・・奥に書斎っぽい部屋があるから、そちらを調べよう。
なんと言っても国の施設なのだ。
どっかで水漏れがあったとか、変な病気が流行ったなんて時には問答無用で住民の許可なしに国の兵なり役人なりが立ち入ってそれこそ壁をぶち抜くことだって出来る。
普通の民間の家だったら区画の人間を避難勧告で追い出す為に各家の玄関のカギを壊して立ち入って中に人がいないのを確認し、その後地域全部を立ち入り禁止にすることぐらいは出来ても、流石に壁をぶち抜くことは無い。
大雑把な人間だったら起きる確率の低い『もしも』の状況なんぞ気にせずに色々と隠すかもしれないが、この整理整頓の出来た家や細心の注意を払って磨き上げてある宝飾品のコレクションを見る限り、この部屋の住人はかなり細かい性格なように見える。
証拠集めは完璧そうだが・・・だからこそ量も多くてこんな比較的狭い独身用の部屋に隠してあるとは思えない。
「この女の別邸は?」
無いとしたら銀行の金庫と言う可能性もありかも?
でも、銀行の金庫よりは別邸を借りてここに仕舞い切れなかった宝飾品とかを飾っておきそうなものだが。
「商業地域にちょっとした小型倉庫を借りているな。
あと2つほどこの区域の家を回った後に行く予定だ」
赤があっさり答える。
そうか。
だったらここはざっと見回してなかったら次だな。
寝室の下着の引き出しの中に換金用らしきばらの宝石と金貨が少し、及びザルガ共和国の身分証明書が隠してあったが、それだけだった。
「他国にも国籍がある人間も国の役人として働けるのか?」
国防とか通関とかじゃなければ良いのか?
流石に昇進とかは上限が決まっていると思いたいが。
「親戚が居る程度は良いが、完全にあちらの国籍を持っているのはダメだろ。
これは金で買った偽物っぽいが」
赤が身分証明書を手に取って調べながら応じる。
そっか。
逃げる時用の偽造身分証明書か。
「他者の悪事の証拠はまだしも、財産はザルガ共和国の方にも隠してありそうだな?」
政府に取引条件として渡すための他者の悪事の証拠はまだしも、後で資産を回復するための脅迫ネタとかも『財産』の一部としてザルガ共和国の方にもありそうだ。
「国外の拠点は今じっくりギルドの人間が調べているよ。
今回の組織はあちこちの国に根を張っていたからな」
なるほど。
ザルガ共和国(や他の国)だったら派手に喧嘩をしてもアファル王国の盗賊《シーフ》ギルド的に余波は特にないのか。
「まあいいや。
次に行こうぜ」
という事で更に2軒ほど役人の家を周り・・・さっきの女の別邸へ。
ちなみに回った2軒のうち1軒はほぼ全て金をギャンブルに注いでいたのか、胴元の賭けチップとかがちょこちょこあったが生活はカツカツという感じで、碌な書類も残っていなかった。
出てきた帳簿も賄賂の記録ではなく、賭博の勝ち負けの記録のみ。
こんだけ負け込んでいるくせに、なんだって続けるのかね?
役人の給料と賄賂で得た金の8割ぐらいを注ぎ込んでも足が出ているのだ。
まだ愛人に貢ぐ方がマシだろうに。
もう一軒の方は愛人宅だった。
愛人を眠らせて家の中を探したら多少は書類があったが、金の殆どは愛人の服や宝飾品と美術品の偽物に消えたっぽい。
「なんかこう、愛人とか賭博に賄賂で儲けた金を注がれるよりは、換金価値の高い宝飾品に費やされる方が被害者への弁済に使えそうでまだ救いがある気がするな。
・・・というか、役人が賄賂を貰って悪事を見逃した場合って、賄賂で貯めた金とかは悪事の被害者に渡されるのか?」
直接悪事を働いた組織の財産は被害者への補償に使われそうだが・・・役人の賄賂ってどうなんだ?
「全部国が没収して終わりだな。
場合によっては被害者救済用の基金でも設立されてそこに多少は寄付されるかもしれないが、因果関係がはっきりしないから殆どは国庫に入るんじゃないか?」
赤が肩を竦めた。
やっぱりかぁ。
なんかこう、そうだったらここの宝飾品の一部でもくすねて被害者にばら撒くべきなんじゃないかねって気もするが、被害者がどれだけいるかも分からないからなぁ。
残念ながら俺の手に負える話じゃない。
女役人の倉庫は見た目は大手の衣料系に強い商家の名前に近い名称が掲げられた普通の倉庫だったが、厳重な鍵を開けて入り、更にあった魔力認証の超高級な鍵も騙して入った中は・・・豪華絢爛という感じだった。
まるで王宮の舞踏会で着飾る煌びやかなドレスと宝石のショールームのようだ。
あちこちに等身大の人形が色々なポーズで置かれ、見事なドレスと宝飾品を展示している。
着る場所も無いだろうに、ドレスも作らせていたのか。
こんな倉庫を完備できる程金を貯めるなんて、賄賂で本当に可能なのか?
「もしかして、この女は組織の幹部だったんじゃないか?
賄賂を貰うだけでこんなに金を貯められるか??」
都合よくどっかの金満貴族の弱みを握って脅迫していたっていうのならまだしも。
「・・・確かにそうかも知れないな。
組織の上の方でも何人かは外部に全く顔を見せないメンバーがいたが・・・こいつもその一人かも知れない」
赤が顔をしかめながら倉庫の中を見回す。
取り敢えず資産価値の方は良いとして・・・奥に書斎っぽい部屋があるから、そちらを調べよう。
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