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卒業後
791 星暦557年 赤の月 21日 一斉調査(8)
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「取り敢えず中に居た人間の拘束は終わった。
隠し金庫探しが得意って話だが、奥の倉庫に変な呪具が無いかも確認してもらえるか?」
寒い中、足踏みしながら待っていた俺のところにタルージュがヴェルナスと一緒に出て来た。
ヴェルナスは気が付いたらいなくなっていたんで酒場にでもしけこんだのかと思っていたんだが、実は意外と武闘派だったらしい。
「おう。
先に倉庫を調べるか?」
変な呪具や魔具があって運び出す際に暴発されたりしたら困るだろう。
まあ、倉庫にそんな危険なブツがある可能性は低い気がするが。
それでも兵士が没収品を持ち出そうとしてヤバい自爆用の罠を起動させてしまう危険だってあり得る。
タルージュもそう思ったのか、俺の言葉に頷いた。
「そうだな」
地下は後回しにして、取り敢えず地階の奥にある倉庫スペースへ。
1階は酒場の横で雑貨を売っているような店だった。
人と荷物が多数出入りしておかしくないような店としてやっているんだろうが・・・かなり変な組み合わせだ。
一応酒の仕入れ先の特産品だと張り出してあるが、ぱっと見には普通な品物が多い。
まあ、違法な密輸品をそのまま売る訳に行かないから、誤魔化す為にも売っているふりをしていたのかな?
普通な品物の単価が何かなんて知らんが、珍しい地方の品だって名目で値段を高くして密輸品と抱き合わせて販売して売り上げを誤魔化しているのかも知れない。
港の傍の店で売ってしまう方が王都を出る際の抜き打ち検査に引っかかる確率を下げられるだろう。
それに王都の方が地方都市よりも金が集まっていて、その流れも目立たない。
「この箱は呪具が入っている。かなり多いから担当の魔術師を呼んだ方が良いだろう。
こっちは・・・魔具も入っているから密輸品かどうか、確認した方が良いだろうな」
魔具が密輸品かどうかなんて見てわかるのか知らないが。
店に並んだら普通に正規に入手したって誤魔化せるんじゃないかね?
他国産であっても、個人用の使用だったら魔具の持ち込みは違法ではない。
金に困ってそれを後から売るのも合法なのだから、国内で生産されていない魔具であるってだけじゃあ違法とは言い切れないのだ。
まあ、それなりに書類とかが揃っていなかったらこの状況だったら密輸扱いになるんだろうけど。
明らかに違法に持ち込まれた呪具が同時期に店にあったって言うのはかなり致命的だよな。
倉庫はそれ以外は特に怪しい物も隠し場所も無かったので隣の部屋へ。
こちらは酒場の方の調理場だった。
調理場の隣が倉庫だなんて、微妙だな。
密輸品を扱っている店の倉庫なのだ。
下手をしたら違法な麻薬とか毒キノコとかも荷物に入っていて、それが食事にかかっていたらどうするんだ??と心配になる。
まあ、最近は俺もこういう怪しげな店には出入りしていないから俺個人には被害は無いだろうけどさ。
台所にも特に怪しげな隠し場所は無かった。
とは言え、香辛料とかに紛れて堂々と麻薬が置いてあった場合は俺には分からんが。
そう言うのって一つずつ容器を調べるのかね?
やっていたらきりが無い気がするが。
地階は人の出入りが多いし煩いのでヤバい仕事には使っていなかったのか、結局どこにも隠し金庫も書類も無かった。
という事で、2階へ。
「まずはこっちの窓がある部屋を調べよう」
脱出用の窓があるなんて、絶対お偉いさんが使う部屋だろう。
あるとしたらそこに隠し金庫もある筈。
下っ端の会計担当みたいのが使う部屋があったらそっちも怪しいだろうが、ある意味実務をやっている奴の部屋だったらあまり念入りに隠していたら時間の無駄だ。毎日忙しい下っ端が出し入れする様な隠し場所だったら普通に税務局の調査員でも見つけられる可能性が高いだろう。
基本的に、偉い奴の方が見つかり難い金のかかる凝った隠し場所を使っているものだ。
部屋に入ってみると、西側の窓の所には薄いカーテンが掛かっている。窓があること自体は隠していなかったが、そのすぐ向こうが別の窓なのはわかりにくい作りだ。
取り敢えずそちらは後回しにして、部屋の中を見回す。
まずはどっしりとした書斎机。
2段目の引き出しを取り出し、裏から底を軽く持ち上げながら押したらかたんと二重底になっている部分がずれた。
「暗号解読用のやつかな?」
中に入っていた良く分からない単語の羅列をタルージュに渡す。
こういうのの解読は俺の担当じゃあない。
更に一番下の引き出しを取り出したら、小さな冊子が奥から出てきた。
単に偶然引き出しから落ちたのか、隠していたのか微妙に不明だがそれも渡しておく。
「後は・・・これか?」
壁の傍にあった時計をどけ、現れた隠し金庫を開く。
宝石が入った袋とナイフ、金貨が少しに書類が一つかみ。
意外と少ないな。
違法な人間売買と密輸となったら、それなりに書類が出てくる筈なんだが。
態々地下通路を掘ったのだ、それなりに活用しているだろう。
学生時代に関わった事件でももっと大量に資料が出てきたぞ。
「・・・ちょっと隣の家の部屋も確認しよう」
まだ建物の中を調べ終わっていないが、ちらっと見た他の部屋は護衛担当の待機室とか、ちょっとした商談用の部屋といった感じでイマイチ重要書類の隠し場所に向いている雰囲気ではなかった。
まあ、奥に会計係の部屋があったのであちらは後でしっかり確認するが。
【後書き】
長くなったのでここで一旦切ります。
隣家は次回!
隠し金庫探しが得意って話だが、奥の倉庫に変な呪具が無いかも確認してもらえるか?」
寒い中、足踏みしながら待っていた俺のところにタルージュがヴェルナスと一緒に出て来た。
ヴェルナスは気が付いたらいなくなっていたんで酒場にでもしけこんだのかと思っていたんだが、実は意外と武闘派だったらしい。
「おう。
先に倉庫を調べるか?」
変な呪具や魔具があって運び出す際に暴発されたりしたら困るだろう。
まあ、倉庫にそんな危険なブツがある可能性は低い気がするが。
それでも兵士が没収品を持ち出そうとしてヤバい自爆用の罠を起動させてしまう危険だってあり得る。
タルージュもそう思ったのか、俺の言葉に頷いた。
「そうだな」
地下は後回しにして、取り敢えず地階の奥にある倉庫スペースへ。
1階は酒場の横で雑貨を売っているような店だった。
人と荷物が多数出入りしておかしくないような店としてやっているんだろうが・・・かなり変な組み合わせだ。
一応酒の仕入れ先の特産品だと張り出してあるが、ぱっと見には普通な品物が多い。
まあ、違法な密輸品をそのまま売る訳に行かないから、誤魔化す為にも売っているふりをしていたのかな?
普通な品物の単価が何かなんて知らんが、珍しい地方の品だって名目で値段を高くして密輸品と抱き合わせて販売して売り上げを誤魔化しているのかも知れない。
港の傍の店で売ってしまう方が王都を出る際の抜き打ち検査に引っかかる確率を下げられるだろう。
それに王都の方が地方都市よりも金が集まっていて、その流れも目立たない。
「この箱は呪具が入っている。かなり多いから担当の魔術師を呼んだ方が良いだろう。
こっちは・・・魔具も入っているから密輸品かどうか、確認した方が良いだろうな」
魔具が密輸品かどうかなんて見てわかるのか知らないが。
店に並んだら普通に正規に入手したって誤魔化せるんじゃないかね?
他国産であっても、個人用の使用だったら魔具の持ち込みは違法ではない。
金に困ってそれを後から売るのも合法なのだから、国内で生産されていない魔具であるってだけじゃあ違法とは言い切れないのだ。
まあ、それなりに書類とかが揃っていなかったらこの状況だったら密輸扱いになるんだろうけど。
明らかに違法に持ち込まれた呪具が同時期に店にあったって言うのはかなり致命的だよな。
倉庫はそれ以外は特に怪しい物も隠し場所も無かったので隣の部屋へ。
こちらは酒場の方の調理場だった。
調理場の隣が倉庫だなんて、微妙だな。
密輸品を扱っている店の倉庫なのだ。
下手をしたら違法な麻薬とか毒キノコとかも荷物に入っていて、それが食事にかかっていたらどうするんだ??と心配になる。
まあ、最近は俺もこういう怪しげな店には出入りしていないから俺個人には被害は無いだろうけどさ。
台所にも特に怪しげな隠し場所は無かった。
とは言え、香辛料とかに紛れて堂々と麻薬が置いてあった場合は俺には分からんが。
そう言うのって一つずつ容器を調べるのかね?
やっていたらきりが無い気がするが。
地階は人の出入りが多いし煩いのでヤバい仕事には使っていなかったのか、結局どこにも隠し金庫も書類も無かった。
という事で、2階へ。
「まずはこっちの窓がある部屋を調べよう」
脱出用の窓があるなんて、絶対お偉いさんが使う部屋だろう。
あるとしたらそこに隠し金庫もある筈。
下っ端の会計担当みたいのが使う部屋があったらそっちも怪しいだろうが、ある意味実務をやっている奴の部屋だったらあまり念入りに隠していたら時間の無駄だ。毎日忙しい下っ端が出し入れする様な隠し場所だったら普通に税務局の調査員でも見つけられる可能性が高いだろう。
基本的に、偉い奴の方が見つかり難い金のかかる凝った隠し場所を使っているものだ。
部屋に入ってみると、西側の窓の所には薄いカーテンが掛かっている。窓があること自体は隠していなかったが、そのすぐ向こうが別の窓なのはわかりにくい作りだ。
取り敢えずそちらは後回しにして、部屋の中を見回す。
まずはどっしりとした書斎机。
2段目の引き出しを取り出し、裏から底を軽く持ち上げながら押したらかたんと二重底になっている部分がずれた。
「暗号解読用のやつかな?」
中に入っていた良く分からない単語の羅列をタルージュに渡す。
こういうのの解読は俺の担当じゃあない。
更に一番下の引き出しを取り出したら、小さな冊子が奥から出てきた。
単に偶然引き出しから落ちたのか、隠していたのか微妙に不明だがそれも渡しておく。
「後は・・・これか?」
壁の傍にあった時計をどけ、現れた隠し金庫を開く。
宝石が入った袋とナイフ、金貨が少しに書類が一つかみ。
意外と少ないな。
違法な人間売買と密輸となったら、それなりに書類が出てくる筈なんだが。
態々地下通路を掘ったのだ、それなりに活用しているだろう。
学生時代に関わった事件でももっと大量に資料が出てきたぞ。
「・・・ちょっと隣の家の部屋も確認しよう」
まだ建物の中を調べ終わっていないが、ちらっと見た他の部屋は護衛担当の待機室とか、ちょっとした商談用の部屋といった感じでイマイチ重要書類の隠し場所に向いている雰囲気ではなかった。
まあ、奥に会計係の部屋があったのであちらは後でしっかり確認するが。
【後書き】
長くなったのでここで一旦切ります。
隣家は次回!
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