789 / 1,038
卒業後
788 星暦557年 赤の月 21日 一斉調査(5)
しおりを挟む
「軍の人間を2人とヴェルナスを連れて一緒にどこまでこの地下通路が行くか確認するのに協力してくれないか?
人が通路に居るならば捕獲、無人だったら繋がった先を確認して貰ったら後は軍の方でそちらを見張る」
地下通路を見つけた後、怖い顔をしたヴェルナスが連れてきたベテランっぽい士官に頼まれた。
「今日だけで済むなら吝かじゃあないぞ。
ちなみに地下通路発見とその確認作業の協力に関する追加報酬については誰と交渉すれば良いんだ?」
誰かいるならさっさと捕まえれば良いし、いないなら繋がった先を見張ればどういう人間が利用しているのか分かり、ついでに色々と捕まえられるかもだ。
その面倒な見張り作業を此方に押し付けないなら、ちょっとの残業なら全然許容範囲内だ。
とは言え、通路を見つけたら色々と余分な仕事が増えるんだからその分の報酬は欲しい。
ウォレン爺とこの仕事の報酬は交渉したんだが、最終的な報酬の支払い手は税務局なのか、それとも軍部なのか、どっちなんだ?
「・・・隠し通路は税関と言うよりは国防だから、軍の方で払おう。
取り敢えず最低でも1日分の日給を出すことは約束するが、上と相談して更に増やすかもしれないという事で良いだろうか?」
士官のおっさんが言った。
「ああ、ウチの方もちょっと同僚と相談したいから、しっかり話し合うのは後日にしよう」
取り敢えずただ働きでなければ良い。
という事で下に降りる。
マジか~。
俺たちが開発した浮遊型台車が梯子のすぐそばに置いてある。
やっぱこういう密輸用の地下通路では便利に悪用されるよなぁ・・・。
まあそれ以外の場所で普通に活用されていると思って、悪用されている場面のことは考えないでおこう。
そのまま足を進めると、ちょっと広い目の部屋っぽい場所に出た。
幾つか木箱が積んである。
「これも密輸入品の発見だよな?」
ヴェルナスに確認する。
「勿論だが・・・何が入っていそうだ?」
「魔具と呪具だな」
地下通路なんぞあるのに密輸入をしない訳が無いと思ったら、こっちに高額品は既に動かしてあったんだな。
一斉捜査を始めたら木箱の持ち出しや船への積み戻しは禁止されるが、倉庫の中の整理は許容されているので、捜査が始まったという知らせを聞いて直ぐに慌てて取り敢えずこっちに移したのかな?
まあ、倉庫だと一般の従業員による盗難もあるから魔具や呪具だったら船から降ろした直後にこちらまで動かしている可能性も高いが。
地下通路を知っている従業員はちゃちな盗みをしないぐらいに報酬を与えているか裏切らない様にしっかり弱みを握っているかだろうから、人目が無くてもこちらの方が盗難される危険は低い筈だ。
「・・・通関担当の魔術師までこっちに連れ込んだら気付かれるかも知れないから、取り敢えずここに残しておこう」
士官のおっさんが言った。
「・・・帰る際に入り口付近にあった浮遊型の台車をそれとなく壊しておくか?
そうすればこれを持ち出すのに手間取る筈」
確かに色々と一気に捕まえたい気持ちは分かるが、呪具は下手に街に持ち込まれるとこっちに後からとばっちりが来るかも知れないからなぁ。
出来るだけ簡単に持ち出せない様にしておきたい。
「頼む」
短く士官のおっさんが応じた。
という事で更に進む。
魔力を込めて心眼《サイト》で上を随時確認していたら、やがて港の区域から出たのが分かった。
通関前の港の区域は他の王都区域から分けるために侵入禁止の結界があるので、それを超えると王都に入ったのが分かる。
あの結界、地下にも張り巡らすべきだったな。
とは言え、地面の下に結界を展開すると色々と調整しなければいけない点とかがあるから、難しいんだろうが・・・せめて年に一度ぐらいは結界の範囲を調べて下に通路が無い事位は確認すべきなんじゃないかね?
壁に生えている苔を見る限り、少なくともこの地下通路はそれなりに古そうだ。
まあ、厳しくそこら辺を調べて潰したら単に王都以外の場所で岸に降ろすだけだろうから、潰すのではなく監視しておいて利用者を捕まえるべきなのかもだが・・・常時見張る為の人件費もバカにならないかな?
そんなことを考えつつ更に進んだら、やっと行き止まりに着いた。
ある意味予想通り、誰も下には居なかった。
真上の部屋にも誰もいないのを確認して、そっと天井の扉を開けて上がっていく。
「ふむ。
納戸のような場所か?」
ヴェルナスが周りを見回しながら静かに呟く。
「あっち側に店があるっぽいな」
人の気配がある方向を指しながら、周りを見回す。
どこか窓でもあれば店の位置を確認できるんだが。
【後書き】
地下通路の存在を知って密入国する連中を捕まえるために泳がせるにはかなり人件費が掛かりそうだけど、どうなるんでしょうね~
人が通路に居るならば捕獲、無人だったら繋がった先を確認して貰ったら後は軍の方でそちらを見張る」
地下通路を見つけた後、怖い顔をしたヴェルナスが連れてきたベテランっぽい士官に頼まれた。
「今日だけで済むなら吝かじゃあないぞ。
ちなみに地下通路発見とその確認作業の協力に関する追加報酬については誰と交渉すれば良いんだ?」
誰かいるならさっさと捕まえれば良いし、いないなら繋がった先を見張ればどういう人間が利用しているのか分かり、ついでに色々と捕まえられるかもだ。
その面倒な見張り作業を此方に押し付けないなら、ちょっとの残業なら全然許容範囲内だ。
とは言え、通路を見つけたら色々と余分な仕事が増えるんだからその分の報酬は欲しい。
ウォレン爺とこの仕事の報酬は交渉したんだが、最終的な報酬の支払い手は税務局なのか、それとも軍部なのか、どっちなんだ?
「・・・隠し通路は税関と言うよりは国防だから、軍の方で払おう。
取り敢えず最低でも1日分の日給を出すことは約束するが、上と相談して更に増やすかもしれないという事で良いだろうか?」
士官のおっさんが言った。
「ああ、ウチの方もちょっと同僚と相談したいから、しっかり話し合うのは後日にしよう」
取り敢えずただ働きでなければ良い。
という事で下に降りる。
マジか~。
俺たちが開発した浮遊型台車が梯子のすぐそばに置いてある。
やっぱこういう密輸用の地下通路では便利に悪用されるよなぁ・・・。
まあそれ以外の場所で普通に活用されていると思って、悪用されている場面のことは考えないでおこう。
そのまま足を進めると、ちょっと広い目の部屋っぽい場所に出た。
幾つか木箱が積んである。
「これも密輸入品の発見だよな?」
ヴェルナスに確認する。
「勿論だが・・・何が入っていそうだ?」
「魔具と呪具だな」
地下通路なんぞあるのに密輸入をしない訳が無いと思ったら、こっちに高額品は既に動かしてあったんだな。
一斉捜査を始めたら木箱の持ち出しや船への積み戻しは禁止されるが、倉庫の中の整理は許容されているので、捜査が始まったという知らせを聞いて直ぐに慌てて取り敢えずこっちに移したのかな?
まあ、倉庫だと一般の従業員による盗難もあるから魔具や呪具だったら船から降ろした直後にこちらまで動かしている可能性も高いが。
地下通路を知っている従業員はちゃちな盗みをしないぐらいに報酬を与えているか裏切らない様にしっかり弱みを握っているかだろうから、人目が無くてもこちらの方が盗難される危険は低い筈だ。
「・・・通関担当の魔術師までこっちに連れ込んだら気付かれるかも知れないから、取り敢えずここに残しておこう」
士官のおっさんが言った。
「・・・帰る際に入り口付近にあった浮遊型の台車をそれとなく壊しておくか?
そうすればこれを持ち出すのに手間取る筈」
確かに色々と一気に捕まえたい気持ちは分かるが、呪具は下手に街に持ち込まれるとこっちに後からとばっちりが来るかも知れないからなぁ。
出来るだけ簡単に持ち出せない様にしておきたい。
「頼む」
短く士官のおっさんが応じた。
という事で更に進む。
魔力を込めて心眼《サイト》で上を随時確認していたら、やがて港の区域から出たのが分かった。
通関前の港の区域は他の王都区域から分けるために侵入禁止の結界があるので、それを超えると王都に入ったのが分かる。
あの結界、地下にも張り巡らすべきだったな。
とは言え、地面の下に結界を展開すると色々と調整しなければいけない点とかがあるから、難しいんだろうが・・・せめて年に一度ぐらいは結界の範囲を調べて下に通路が無い事位は確認すべきなんじゃないかね?
壁に生えている苔を見る限り、少なくともこの地下通路はそれなりに古そうだ。
まあ、厳しくそこら辺を調べて潰したら単に王都以外の場所で岸に降ろすだけだろうから、潰すのではなく監視しておいて利用者を捕まえるべきなのかもだが・・・常時見張る為の人件費もバカにならないかな?
そんなことを考えつつ更に進んだら、やっと行き止まりに着いた。
ある意味予想通り、誰も下には居なかった。
真上の部屋にも誰もいないのを確認して、そっと天井の扉を開けて上がっていく。
「ふむ。
納戸のような場所か?」
ヴェルナスが周りを見回しながら静かに呟く。
「あっち側に店があるっぽいな」
人の気配がある方向を指しながら、周りを見回す。
どこか窓でもあれば店の位置を確認できるんだが。
【後書き】
地下通路の存在を知って密入国する連中を捕まえるために泳がせるにはかなり人件費が掛かりそうだけど、どうなるんでしょうね~
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる