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卒業後
772 星暦557年 藤の月 21日 ちょっと方向が違う方が良い?(13)
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しゅわ~と蒸気がうっすらと結界の中を満たす。
「これってどのくらいかかるんだ?」
ダレンが尋ねた。
「普通にこの程度の汚れを落とすためって事で3ミルが標準設定だけど、好みで延長できるようになってる。
もっとでろでろに汚れているなら長い方が良いし、服の汚れを落とすなら様子を見ながらちょっとずつ追加で繰り返す方が汚れを徐々に抜き取れるから続けて長時間やるより良いと思う。
貴族女性だったらそこまで汚れてないだろうから、お茶でも一杯飲みながら3ミル程度起床時と就寝前にやると良いって僕の親族の女性陣は言っているね~」
シャルロが答える。
今回は汗と土埃がそこそこついているのだがそれも3ミルで綺麗になるかも観察対象だ。
「3ミルたったぞ」
砂時計で時間を確認していたアレクが声をかけたところで魔具が止まる。
排出された水を別の容器に移したところ、それなりに色が茶色く汚れている。
「ほい、よろしく~」
自分の手の映像を記録したシャルロがアレクに記録用魔具を渡してまた顔を髪の映像を記録し、試作機の水がまだ十分あるのを確認して精油も数滴たらした後、再度魔具を起動する。
「あれ?
今ので綺麗になっていないのか?」
ダレンが首を傾げながら尋ねた。
「もう一度やって、排水が汚れているか、映像に汚れが映るかを確認して完全に汚れが落ちていたかを確認するんです。
まあ、目視で水の色やちょっとした埃を確認する程度なのである程度以上の汚れは見えないと思いますが。
見た目の微細な違いは女性の方が気づきやすいと言いますから、良かったら母君にも繰り返し使った場合にどのような違いが生じるかや、使用時間を長くした場合に何か違いが目に付くか等々、気付いたことは何でも教えていただけると助かります」
アレクがダレンに説明した。
まあ、俺的には女性陣の『綺麗になった』や『髪が艶々になった』は最初の数回の後は気のせいなんじゃないかと思うんだけどね~。
そうは言っても女性陣の意見が気のせいであると証明する手段は無いので、一応参考にはさせて貰うけど。
「よし、時間だ」
アレクの言葉にシャルロが止まった試作機から離れ、再び自分の手の映像を記録する。
俺も排水を抜き出してさっきと同じ色の容器に注ぎ、二つを比較する。
明らかに今回の方が汚れが少ない。
そこでもう一つ同じ色の容器を取ってきてそこに普通の水を入れて見比べてみたところ、ほぼ同じに見える。
「今回は殆ど汚れは落ちていないみたいだぜ?」
アレクとシャルロに声をかけたら二人・・・とダレンが覗き込んできた。
「こっちが最初、これが2回目、で、これは?」
三つの容器を見ながらシャルロが尋ねる。
「これは単なる水。
2回目の排水と殆ど同じに見えるだろ?」
数滴分の精油が入っている筈だから完全に同じではないだろうが、最初の排水には多少の砂が底の方に見えるのに対し、2回目の排水にはそれが見えない。
「ふむ。
ちょっとした運動で着く程度の表面的な汚れは1回で落ちるようだな」
アレクがしげしげと容器の水を見ながら言った。
「だね~。
後で映像を印刷して虫眼鏡で拡大して確認してみよう。
次はアレクの番~」
シャルロが後ろから声をかける。
「ついでにちょっと女性陣がつけるような白粉とか紅も塗ったくってどの程度落ちるか試してみたらどうだ?」
最初に長剣、一息ついてからナイフと2回戦った俺はそれなりに埃まみれだが、シャルロとアレクはほぼ同じ程度の運動しかしていないので、比較対象としてあまり違いは無い筈。
だったらついでに他の実験もしてみたらどうだろうか。
化粧系の落ちに関しては女性陣が執拗にテストするだろうが、どうせだったら直にどうなるのか見て確認した方が良い。
「・・・化粧品なんぞ持っていないぞ」
アレクが微妙に顔を歪めながら応じた。
嫌だけどそうは言わずに、出来ない理由だけも言っても弱いぞ。
「大丈夫、きっとパディン夫人が持ってるよ!
女性ってどんな時も白粉と紅は持ち歩くって話だから!」
明るくシャルロが言いきり、アレクが止める暇もなくさっさとパディン夫人を求めて工房から出て行った。
「酷いな、ウィル。
とばっちりが来る前に俺は帰るわ。
明日もまた同じ時間で良いんだな?」
ダレンが姿を消したシャルロの後を一瞬目を丸くして見送り、ささっと工房の出口の方へ行って先ほど渡した試作品を手に取った。
「1回使ってみて何か改善して欲しい要望とかが出てきたら、言ってくれれば明日改修できる可能性もあるので何でもフィードバックは歓迎しますよ」
諦めたようにため息を吐きながらアレクが声をかける。
・・・考えてみたら、女性陣って化粧をまずクリームとか油で落とすよな?
明日はあれも準備しておくといいかな?
まあ、アレクが万事手配するだろう。
俺が実験台にされる可能性も高いが。
ついでにダレンも巻きこめないかな?
皮膚の状態って個人差があるらしいし、被検体は多ければ多い程良いんじゃないかね?
「これってどのくらいかかるんだ?」
ダレンが尋ねた。
「普通にこの程度の汚れを落とすためって事で3ミルが標準設定だけど、好みで延長できるようになってる。
もっとでろでろに汚れているなら長い方が良いし、服の汚れを落とすなら様子を見ながらちょっとずつ追加で繰り返す方が汚れを徐々に抜き取れるから続けて長時間やるより良いと思う。
貴族女性だったらそこまで汚れてないだろうから、お茶でも一杯飲みながら3ミル程度起床時と就寝前にやると良いって僕の親族の女性陣は言っているね~」
シャルロが答える。
今回は汗と土埃がそこそこついているのだがそれも3ミルで綺麗になるかも観察対象だ。
「3ミルたったぞ」
砂時計で時間を確認していたアレクが声をかけたところで魔具が止まる。
排出された水を別の容器に移したところ、それなりに色が茶色く汚れている。
「ほい、よろしく~」
自分の手の映像を記録したシャルロがアレクに記録用魔具を渡してまた顔を髪の映像を記録し、試作機の水がまだ十分あるのを確認して精油も数滴たらした後、再度魔具を起動する。
「あれ?
今ので綺麗になっていないのか?」
ダレンが首を傾げながら尋ねた。
「もう一度やって、排水が汚れているか、映像に汚れが映るかを確認して完全に汚れが落ちていたかを確認するんです。
まあ、目視で水の色やちょっとした埃を確認する程度なのである程度以上の汚れは見えないと思いますが。
見た目の微細な違いは女性の方が気づきやすいと言いますから、良かったら母君にも繰り返し使った場合にどのような違いが生じるかや、使用時間を長くした場合に何か違いが目に付くか等々、気付いたことは何でも教えていただけると助かります」
アレクがダレンに説明した。
まあ、俺的には女性陣の『綺麗になった』や『髪が艶々になった』は最初の数回の後は気のせいなんじゃないかと思うんだけどね~。
そうは言っても女性陣の意見が気のせいであると証明する手段は無いので、一応参考にはさせて貰うけど。
「よし、時間だ」
アレクの言葉にシャルロが止まった試作機から離れ、再び自分の手の映像を記録する。
俺も排水を抜き出してさっきと同じ色の容器に注ぎ、二つを比較する。
明らかに今回の方が汚れが少ない。
そこでもう一つ同じ色の容器を取ってきてそこに普通の水を入れて見比べてみたところ、ほぼ同じに見える。
「今回は殆ど汚れは落ちていないみたいだぜ?」
アレクとシャルロに声をかけたら二人・・・とダレンが覗き込んできた。
「こっちが最初、これが2回目、で、これは?」
三つの容器を見ながらシャルロが尋ねる。
「これは単なる水。
2回目の排水と殆ど同じに見えるだろ?」
数滴分の精油が入っている筈だから完全に同じではないだろうが、最初の排水には多少の砂が底の方に見えるのに対し、2回目の排水にはそれが見えない。
「ふむ。
ちょっとした運動で着く程度の表面的な汚れは1回で落ちるようだな」
アレクがしげしげと容器の水を見ながら言った。
「だね~。
後で映像を印刷して虫眼鏡で拡大して確認してみよう。
次はアレクの番~」
シャルロが後ろから声をかける。
「ついでにちょっと女性陣がつけるような白粉とか紅も塗ったくってどの程度落ちるか試してみたらどうだ?」
最初に長剣、一息ついてからナイフと2回戦った俺はそれなりに埃まみれだが、シャルロとアレクはほぼ同じ程度の運動しかしていないので、比較対象としてあまり違いは無い筈。
だったらついでに他の実験もしてみたらどうだろうか。
化粧系の落ちに関しては女性陣が執拗にテストするだろうが、どうせだったら直にどうなるのか見て確認した方が良い。
「・・・化粧品なんぞ持っていないぞ」
アレクが微妙に顔を歪めながら応じた。
嫌だけどそうは言わずに、出来ない理由だけも言っても弱いぞ。
「大丈夫、きっとパディン夫人が持ってるよ!
女性ってどんな時も白粉と紅は持ち歩くって話だから!」
明るくシャルロが言いきり、アレクが止める暇もなくさっさとパディン夫人を求めて工房から出て行った。
「酷いな、ウィル。
とばっちりが来る前に俺は帰るわ。
明日もまた同じ時間で良いんだな?」
ダレンが姿を消したシャルロの後を一瞬目を丸くして見送り、ささっと工房の出口の方へ行って先ほど渡した試作品を手に取った。
「1回使ってみて何か改善して欲しい要望とかが出てきたら、言ってくれれば明日改修できる可能性もあるので何でもフィードバックは歓迎しますよ」
諦めたようにため息を吐きながらアレクが声をかける。
・・・考えてみたら、女性陣って化粧をまずクリームとか油で落とすよな?
明日はあれも準備しておくといいかな?
まあ、アレクが万事手配するだろう。
俺が実験台にされる可能性も高いが。
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