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卒業後
754 星暦556年 桃の月 20日 年末の予定(12)
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「ちなみに、呪具を使っていると分かる魔具っていうのは現実的に使い勝手が良いのは無いな。
魔力全般を使うと分かる大掛かりな魔具とか、神殿の高位神官に協力してもらう魔力全般の使用を抑制する術とかならあるが、お世辞にもお手軽に使えるとは言えん」
家の中に戻りながらゼブが教えてくれた。
そうか、呪具も魔力を使うから、魔力を使うのを探知できれば呪具の利用も分かる・・・とは言え、確かにあまり実用的ではないな。
俺以外の人間だと魔術師でも心眼《サイト》で微細な魔力の動きを見るにはそれなりに集中しないとダメだから、『細《ささ》やかなお願い』を聞きたくなる程度の呪具の魔力使用を常時視えるようにするっていうのは現実的ではないだろう。
どこか決まった人物だけを監視し続けると言うのならまだしも、一定以上の広さがある場所に出入りして動き回る人間全部をって感じに広い視野的に心眼《サイト》を使い続けるのは苦手とする魔術師が殆どだ。
苦手というか、実質出来ないだろう。
シャルロや学院長みたいな精霊の加護持ちなら精霊に頼むという手があるが、精霊の加護持ちに対する需要は色々ありすぎだからそんな常時確認作業的な仕事は頼めない。
心眼《サイト》代わりの魔具で広い範囲を観察できるタイプは存在しないし。
ある意味、隠された魔具を探せる探知用魔具で呪具を使っている人の方向を偶々調べていたら分かるだろうが・・・そんな偶然はほぼ現実ではありえないだろうな。
「そうか。
そう言えば、洗脳に掛かっている人間が分かる魔具ってあるよな?
なんであれを使っていないんだ?
解呪用魔具が呪具の種類変更に追いついていなくても、洗脳状態を発見するのだけだったら関係ないだろ?」
確か、呪具騒動が起きた初期にそう言うのも入手した気がする。
一々調べるのに時間が掛かりすぎるから俺が大きな都市を回って探す羽目になって、他の事まで見つけちまったせいで年末どころか年始まで忙しくなっちまったが、組織の頭とか秘密に触れる人間に使う程度だったら問題は無いだろうに。
「そうなんだよなぁ。
定期的に使っている筈なんだが・・・誰かに手を加えられたんだろう」
ギリっとゼブが忌々し気に歯ぎしりする。
おお~。
意外と奥が深そう?
「大掛かりな闘争とかを始めるなら年末が明けてからにしてくれよ」
折角シェイラとの休暇なんだ。
物騒な騒動が街中で起きていたら落ち着かん。
「まあ、まだ調べるのに色々と時間が掛かるだろうから、年初は確実に過ぎるだろうよ。
さて、ザルガ共和国へ売っている物だが・・・最近は香辛料が減った代わりに色々な薬草系の売り上げが増えているようだな。
元々、香辛料でも薬として使われてきた物も多かったんだが、そういう薬系の香辛料の売り上げは今になっても下がっていないし、香辛料として使えない薬物系の売り上げも増えていると聞く」
ゼブが椅子に腰を下ろしてエールのボトルに手を伸ばしながら教えてくれた。
「麻薬か?それとも毒殺系?」
薬は量を間違えれば毒になる。
とは言え、量的にはそれ程裁けないと思うから麻薬なのかな?
「微妙なところだな。
勿論麻薬の売り上げは常にあるが、麻薬とまで行かないようなちょっと気持ちがゆったりしていい気分になる香とか、悩みを忘れる・・・とまで言わなくても多少気にならなくなるような香油とか。
あとはちょっとこちらのことを聞きやすくなる粉とかもあるな」
おいおい。
なんかそう言うのこそ悩んでいる人間を怪しげな宗教とかに依存させる為の道具っぽくないか?
悩んでいない人間には大して効かないだろうが、世の中色々とどうでも良い事に悩む人間は多いから、それなりに使用対象者は多そうだ。
「一通りそう言う微妙に怪しげな薬物系のブツのサンプルを貰えないか?
知り合いが引っかかっていないか確認したい」
ウォレン爺に押し付ければ良いだろう。
それとも長に渡してスラムで変な宗教が蔓延していないか確認するべきか?
「・・・良いだろう。
まあ、俺の部下はそっち系の売り上げには頼っていないしな」
一瞬考えてからにやりと笑いつつゼブが応じた。
おやぁ?
対抗している顔役の収入源なのかね?
「後は毒を塗りやすい暗器なんかもそれなりに売れるが・・・まあ、こっちはそれ程重要じゃないだろ?」
ゼブが気楽に付け加える。
どうなんだろうね~。
まあ、暗殺とか殺し合いって言うのは結果《死体》が露骨に残るからそれ程脅威ではないだろうし、俺にはあまり関係ないかな。
取り敢えず、呪具や魔具みたいなので心眼《サイト》が必要になるの以外だったら俺が呼び出されることもないし。
これで安心してシェイラとの休暇を楽しめそうだ!
魔力全般を使うと分かる大掛かりな魔具とか、神殿の高位神官に協力してもらう魔力全般の使用を抑制する術とかならあるが、お世辞にもお手軽に使えるとは言えん」
家の中に戻りながらゼブが教えてくれた。
そうか、呪具も魔力を使うから、魔力を使うのを探知できれば呪具の利用も分かる・・・とは言え、確かにあまり実用的ではないな。
俺以外の人間だと魔術師でも心眼《サイト》で微細な魔力の動きを見るにはそれなりに集中しないとダメだから、『細《ささ》やかなお願い』を聞きたくなる程度の呪具の魔力使用を常時視えるようにするっていうのは現実的ではないだろう。
どこか決まった人物だけを監視し続けると言うのならまだしも、一定以上の広さがある場所に出入りして動き回る人間全部をって感じに広い視野的に心眼《サイト》を使い続けるのは苦手とする魔術師が殆どだ。
苦手というか、実質出来ないだろう。
シャルロや学院長みたいな精霊の加護持ちなら精霊に頼むという手があるが、精霊の加護持ちに対する需要は色々ありすぎだからそんな常時確認作業的な仕事は頼めない。
心眼《サイト》代わりの魔具で広い範囲を観察できるタイプは存在しないし。
ある意味、隠された魔具を探せる探知用魔具で呪具を使っている人の方向を偶々調べていたら分かるだろうが・・・そんな偶然はほぼ現実ではありえないだろうな。
「そうか。
そう言えば、洗脳に掛かっている人間が分かる魔具ってあるよな?
なんであれを使っていないんだ?
解呪用魔具が呪具の種類変更に追いついていなくても、洗脳状態を発見するのだけだったら関係ないだろ?」
確か、呪具騒動が起きた初期にそう言うのも入手した気がする。
一々調べるのに時間が掛かりすぎるから俺が大きな都市を回って探す羽目になって、他の事まで見つけちまったせいで年末どころか年始まで忙しくなっちまったが、組織の頭とか秘密に触れる人間に使う程度だったら問題は無いだろうに。
「そうなんだよなぁ。
定期的に使っている筈なんだが・・・誰かに手を加えられたんだろう」
ギリっとゼブが忌々し気に歯ぎしりする。
おお~。
意外と奥が深そう?
「大掛かりな闘争とかを始めるなら年末が明けてからにしてくれよ」
折角シェイラとの休暇なんだ。
物騒な騒動が街中で起きていたら落ち着かん。
「まあ、まだ調べるのに色々と時間が掛かるだろうから、年初は確実に過ぎるだろうよ。
さて、ザルガ共和国へ売っている物だが・・・最近は香辛料が減った代わりに色々な薬草系の売り上げが増えているようだな。
元々、香辛料でも薬として使われてきた物も多かったんだが、そういう薬系の香辛料の売り上げは今になっても下がっていないし、香辛料として使えない薬物系の売り上げも増えていると聞く」
ゼブが椅子に腰を下ろしてエールのボトルに手を伸ばしながら教えてくれた。
「麻薬か?それとも毒殺系?」
薬は量を間違えれば毒になる。
とは言え、量的にはそれ程裁けないと思うから麻薬なのかな?
「微妙なところだな。
勿論麻薬の売り上げは常にあるが、麻薬とまで行かないようなちょっと気持ちがゆったりしていい気分になる香とか、悩みを忘れる・・・とまで言わなくても多少気にならなくなるような香油とか。
あとはちょっとこちらのことを聞きやすくなる粉とかもあるな」
おいおい。
なんかそう言うのこそ悩んでいる人間を怪しげな宗教とかに依存させる為の道具っぽくないか?
悩んでいない人間には大して効かないだろうが、世の中色々とどうでも良い事に悩む人間は多いから、それなりに使用対象者は多そうだ。
「一通りそう言う微妙に怪しげな薬物系のブツのサンプルを貰えないか?
知り合いが引っかかっていないか確認したい」
ウォレン爺に押し付ければ良いだろう。
それとも長に渡してスラムで変な宗教が蔓延していないか確認するべきか?
「・・・良いだろう。
まあ、俺の部下はそっち系の売り上げには頼っていないしな」
一瞬考えてからにやりと笑いつつゼブが応じた。
おやぁ?
対抗している顔役の収入源なのかね?
「後は毒を塗りやすい暗器なんかもそれなりに売れるが・・・まあ、こっちはそれ程重要じゃないだろ?」
ゼブが気楽に付け加える。
どうなんだろうね~。
まあ、暗殺とか殺し合いって言うのは結果《死体》が露骨に残るからそれ程脅威ではないだろうし、俺にはあまり関係ないかな。
取り敢えず、呪具や魔具みたいなので心眼《サイト》が必要になるの以外だったら俺が呼び出されることもないし。
これで安心してシェイラとの休暇を楽しめそうだ!
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