シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

732 星暦556年 橙の月 12日 確認したら、ヤバかった(10)

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俺の危機回避体勢を鼻で笑ったファルナはカバーを開いて中身の紙をがっつり読み始めた。

流石に他の人間には見えない角度で持っているが、捜査員が部屋中の書類を調べている最中だと云うのに図太い。

これでがどっかの高位貴族や王族のヤバい浮気関連の手紙だったらどうするんだよ?
幾ら国軍の士官でウォレン爺の部下(多分)だとしても、あんまりにもヤバすぎる情報を知った人間の末路って言うのは誰にも知られない墓ってことが多いんだぞ??

「2階や他の部屋にも隠し金庫が無いか、確認してくる」
取り敢えず、変なことを見つけるにしても俺がいないところでやって欲しいので、退散することにした。

この部屋よりも重要な隠し場所は無いとは思うが・・・逃げる時の資金源になるような隠し財産もあるんだったら没収しておく方が良いだろう。
まあ、一つの家に全部詰め込むほどアホではないとは思うが。

王都なり、他国のどっかの港街なりに隠れ家があるだろうが、先立つものが無ければそこまで辿り着くのだって難しい。
取り敢えずこの次男を国が利用するか処刑するかを決める前に変に逃げられない様に、手軽なところにある資金源は全て没収しておく方が無難だ。

地下室から上がり、洗濯室に首を突っ込んで特に斬新な隠し場所が無いのを確認したら台所の方へ向かう。
次男《ゼネファルト》は食道楽なのか、やたらと色々と香辛料がある。
パントリーを覗いてみたら更に沢山ストックがあった。

東大陸から呪具を仕入れる際に香辛料も沢山買い付けているようだ。
換金価値はかなりあるとは思うが・・・流石に胡椒や丁子をそこら辺で現金化して船や馬車に乗るのは難しい。

パントリーに地下収納みたいな引き出しがあってそこに高そうなワインがそこそこの数あったが・・・こちらももしもの時の持ち出しには向かない。

が。
高級そうな赤いボトル(確か同じ銘柄のを以前どっかの貴族がオークションでとんでもない金で買い取ったと自慢しているのを奥さんのネックレスを拝借しに行った時に聞いた記憶がある)の一つが、中に宝石が入っていた。

宝石って濡らしても良いんかね?
少なくともこないだの海神の神殿にあった真珠はダメだったが・・・あれは年月が経ちすぎていたせいもあるかな?

取り敢えず、傍で見ていた役人を呼びつけ、ボトルを持ち上げて渡した。
「中に宝石が入っているっぽいから確認した方が良い」

考えてみたら、石の一種である宝石が液体であるワインの代わりに入っていれば分かるが、調理用の小麦粉の袋の一部が麻薬だとしても俺には分からないな。

そう言うのも調べるんだろうか?
適当にやっていたら調べる担当の警備兵にネコババされそうだが・・・まあ、違法麻薬の販売についても調べるんだ、そこら辺はちゃんとプロが対応するんだろう。

他に俺が分かるような隠し物は1階には無かったので2階へ進む。

寝室には普通の金庫があり、他の客室は特に何もなく・・・屋根裏の使用人の部屋へ行く階段の途中の板が1枚外れるようになっていてその中に束になった手紙が箱に入れられていた。

こちらは男女両方だから普通の脅迫用なのかな?
箱を手に、下に降りて行ったらリビングのわきの小さ目な部屋にファルナが次男《ゼネファルト》と二人きりで座っていた。

俺が見つけた怪しげな手紙がファルナの手の中でひらひらと動いている。
やべ、脅している所だったか。

「失礼、また後で来る」
すぐさま引っ込もうと扉を閉めるために一歩下がったが、ファルナに呼び止められた。

「あら、他にも手紙も見つけたの?」
俺の手にあった箱とその中に入っている紙の束を見てファルナが尋ねる。

「ああ。
2階はちょっとした装飾品と宝石と金貨が寝室、この手紙が使用人用の階段脇にあっただけだな。
ちなみに台所ではワインボトルの中に宝石が入っていた。
小麦粉とかの中に麻薬がまじっていても俺は分からんが、そこら辺は警備兵の誰かが調べるのか?」
隠し財産の殆どは見つかったから協力した方が為になるぞ~と知らしめるために発見した隠し場所についてファルナに知らせていく。

「ありがと。
ふふふ、そう言えばさっきは隠し場所から手紙を読む前にあっという間に消えちゃったけど、それ程危険な物ではなかったわよ?
単なる純愛の証みたいな手紙?
後生大事に持っているということは、今でも大切な人なんでしょうねぇ」
おいおい、本人が持っていた自分宛のラブレターで脅すつもりなのか?

そんなの上手くいくんかね??


【後書き】
純愛の証ww
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