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卒業後
727 星暦556年 橙の月 12日 確認したら、ヤバかった(5)
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「・・・魔術師にとっては自分一人を転移門で移動させるのはそれ程大変じゃあないって話を聞いたけど、本当?」
船乗りと宿屋の女性を解放した後、彼に呪具を使ったらしき女と他の2組の加害者らしき女と男を尋問したファルナが戻ってきて暫し現地の役人と話し合ったと思ったら、俺の所へ転移門のことを尋ねにきた。
転移門で今まで回った場所をもう一度回ってこいって言うのか?
港町って言っても漁港に毛が生えた程度の所もあったからそう言う場所には魔術院の支部は無いが、ここはそれなりに大きな港なので支部があり、急いで戻れないことは無いが・・・。
ちらっと見るだけじゃあここ程あっさり被害者が見つかるかは不明だぞ?
「まあ、俺一人での転移だったらそれ程大変じゃないが・・・。
魔術院の支部の傍にデートスポットとして人気があるような露店通りがあるとは限らないし、俺一人で周って見てくるだけって訳にもいかないだろ?
各街のデートスポットを案内する人間と被害者がいたら捕獲しておく人間が必要だが、それを直ぐに手配できるのか?」
もう一度回る必要があるか確認する為に見て回るという手もあるが。
「・・・考えてみたら、貴方なら呪具を大量に持っている人間も見つけられるわよね。
販売元を探すのに協力してもらう方が良いか」
ちょっと悩んで、行き当たりばったりな確認よりはしっかりここで販売元を捕まえてそこから供給源や配給先を探す方が良いと思ったのか、ファルナが別のことを言いだした。
俺の契約って単に怪しい奴を視て探すだけの筈なんだけどなぁ。
まあ、協力してさっさと終わらせないとまた去年みたいに年末の休みを潰されかねない。取り敢えずここは文句を言わずに協力しておこう。
夕食時にでも追加報酬を要求だな。
「誘惑した側の人間から、どこで呪具なりお呪《まじな》いなりを買ったのか聞けたのか?」
既に目安が付いているんだったらついて行って『後ちょっとで逃げられた』を防ぐのに協力するぐらいはしてやろう。
「裏通りの出店で売っているらしいわ。
主に若い女性相手に売っているみたいだから裏通りの出店の癖に昼過ぎから商売をしているって話。
今から行くわよ」
ファルナが剣を手に取りながら言う。
なるほど。
裏通りの出店って夕方から夜に商売をする怪しげな店が多いんだが、流石に裏通りを夜に出歩く良家の若い女はいないだろう。
少なくともぼったくり価格な呪具を買うだけの金がある女はそんな危険は冒さない。
誘拐されたり乱暴されたりしたんじゃあ、意中の男を捕まえるのに差し支える。
目的とする購入層を考えると真昼間から売るしかなく・・・それでもいつでも逃げ出せるように店舗ではなく出店を使うことになるから、ある意味目立つかもしれないな。
「へいへい」
ファルナと現地の警備兵と役人と一緒に港から少し離れた方向の裏通りへ進む。
こんなに人を集めたら目立つんじゃないかね?
場所が分かっているなら前もって警備兵を目的の裏通りの周辺に散らばって配置させておけば良いのに。
そんなことを考えながらファルナの後をついて宿屋のある広場から裏通りに入ったが・・・道が長かった。
『裏通り』というよりも、『表のメイン通りじゃない2番目の通り』といった感じだな。
港で入荷した物を売る店舗や出店が、港から街の中央部を突っ切って更に内陸部までずっと続いている。
確かにこの通りを全て囲むのは難しいか。
幸い人通りが多いから警備兵もある程度は紛れているみたいだし。
でも、真昼間から出店をやっていてもあまり目立たないから店を見つけるのは手間そうだ。
港の方へ向かうのと、内陸方面へ向かうのとどちらにするのかと思ったら、2手に分かれて俺たちは港の方へと向かった。
これってどっちかで見つかって声を上げても、通行人が邪魔でもう一方と合流するのは至難の業なんじゃないかねぇ。
数人を内陸側から逃げるのを防ぐために配置して、後は表通りで港に向かってそっちから全員纏まってしっかり調べた方が逃げられないんじゃないかという気もするが。
まあ、呪具って言っても誘惑用となったらそこまで死ぬ気では逃げないかな?
売っている方もあまり深く考えていない可能性は高いし。
こういうのって下っ端の実行役は実は違法行為をしていることすら自覚していない場合も多いんだよな。
金を集める上役は分かっているが、そいつらはそう簡単には見つからない様に上手く立ち回る。
ここまで派手に探していたら実行役から上をたどった時点で既に逃げられているかもなぁ。
港町だから船があれば国外にだって逃げられるし。
まあ、なるようになるだろう。
俺の年末年始を潰しさえしなければ何でも良いや。
【後書き】
定期的に解呪する決まりなので、誘惑されたその日にベッドインしなければ被害者も致命的な事態にはならない・・・筈。
それもあってちょっと投げやりなウィル君w
船乗りと宿屋の女性を解放した後、彼に呪具を使ったらしき女と他の2組の加害者らしき女と男を尋問したファルナが戻ってきて暫し現地の役人と話し合ったと思ったら、俺の所へ転移門のことを尋ねにきた。
転移門で今まで回った場所をもう一度回ってこいって言うのか?
港町って言っても漁港に毛が生えた程度の所もあったからそう言う場所には魔術院の支部は無いが、ここはそれなりに大きな港なので支部があり、急いで戻れないことは無いが・・・。
ちらっと見るだけじゃあここ程あっさり被害者が見つかるかは不明だぞ?
「まあ、俺一人での転移だったらそれ程大変じゃないが・・・。
魔術院の支部の傍にデートスポットとして人気があるような露店通りがあるとは限らないし、俺一人で周って見てくるだけって訳にもいかないだろ?
各街のデートスポットを案内する人間と被害者がいたら捕獲しておく人間が必要だが、それを直ぐに手配できるのか?」
もう一度回る必要があるか確認する為に見て回るという手もあるが。
「・・・考えてみたら、貴方なら呪具を大量に持っている人間も見つけられるわよね。
販売元を探すのに協力してもらう方が良いか」
ちょっと悩んで、行き当たりばったりな確認よりはしっかりここで販売元を捕まえてそこから供給源や配給先を探す方が良いと思ったのか、ファルナが別のことを言いだした。
俺の契約って単に怪しい奴を視て探すだけの筈なんだけどなぁ。
まあ、協力してさっさと終わらせないとまた去年みたいに年末の休みを潰されかねない。取り敢えずここは文句を言わずに協力しておこう。
夕食時にでも追加報酬を要求だな。
「誘惑した側の人間から、どこで呪具なりお呪《まじな》いなりを買ったのか聞けたのか?」
既に目安が付いているんだったらついて行って『後ちょっとで逃げられた』を防ぐのに協力するぐらいはしてやろう。
「裏通りの出店で売っているらしいわ。
主に若い女性相手に売っているみたいだから裏通りの出店の癖に昼過ぎから商売をしているって話。
今から行くわよ」
ファルナが剣を手に取りながら言う。
なるほど。
裏通りの出店って夕方から夜に商売をする怪しげな店が多いんだが、流石に裏通りを夜に出歩く良家の若い女はいないだろう。
少なくともぼったくり価格な呪具を買うだけの金がある女はそんな危険は冒さない。
誘拐されたり乱暴されたりしたんじゃあ、意中の男を捕まえるのに差し支える。
目的とする購入層を考えると真昼間から売るしかなく・・・それでもいつでも逃げ出せるように店舗ではなく出店を使うことになるから、ある意味目立つかもしれないな。
「へいへい」
ファルナと現地の警備兵と役人と一緒に港から少し離れた方向の裏通りへ進む。
こんなに人を集めたら目立つんじゃないかね?
場所が分かっているなら前もって警備兵を目的の裏通りの周辺に散らばって配置させておけば良いのに。
そんなことを考えながらファルナの後をついて宿屋のある広場から裏通りに入ったが・・・道が長かった。
『裏通り』というよりも、『表のメイン通りじゃない2番目の通り』といった感じだな。
港で入荷した物を売る店舗や出店が、港から街の中央部を突っ切って更に内陸部までずっと続いている。
確かにこの通りを全て囲むのは難しいか。
幸い人通りが多いから警備兵もある程度は紛れているみたいだし。
でも、真昼間から出店をやっていてもあまり目立たないから店を見つけるのは手間そうだ。
港の方へ向かうのと、内陸方面へ向かうのとどちらにするのかと思ったら、2手に分かれて俺たちは港の方へと向かった。
これってどっちかで見つかって声を上げても、通行人が邪魔でもう一方と合流するのは至難の業なんじゃないかねぇ。
数人を内陸側から逃げるのを防ぐために配置して、後は表通りで港に向かってそっちから全員纏まってしっかり調べた方が逃げられないんじゃないかという気もするが。
まあ、呪具って言っても誘惑用となったらそこまで死ぬ気では逃げないかな?
売っている方もあまり深く考えていない可能性は高いし。
こういうのって下っ端の実行役は実は違法行為をしていることすら自覚していない場合も多いんだよな。
金を集める上役は分かっているが、そいつらはそう簡単には見つからない様に上手く立ち回る。
ここまで派手に探していたら実行役から上をたどった時点で既に逃げられているかもなぁ。
港町だから船があれば国外にだって逃げられるし。
まあ、なるようになるだろう。
俺の年末年始を潰しさえしなければ何でも良いや。
【後書き】
定期的に解呪する決まりなので、誘惑されたその日にベッドインしなければ被害者も致命的な事態にはならない・・・筈。
それもあってちょっと投げやりなウィル君w
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