726 / 1,038
卒業後
725 星暦556年 橙の月 12日 確認したら、ヤバかった(3)
しおりを挟む
「ううん??」
3つの港町と2つの領都を回り、一番南にある港のある街に着いた俺は広場に面する窓から下を見て眉をひそめた。
今まで見て回ったところでは、それなりにギルドや役場での解呪が上手くいっているようで呪具で洗脳されているっぽいのは各町に数人見かけただけだった。
どうやらアファル王国まで態々呪具を輸入して使うだけの価値は無いと、殆どの違法輸入業者の人間が判断したらしい。
取り締まる役人達の話によると、酒を飲まして呪具を使えばちょっとした情報なら盗めるかもしれないが、呪具を東大陸から輸入するだけの価値があるほど活用させるのは中々難しいらしい。
しかも定期的に解呪するのでそのタイミングで情報を漏洩したことがバレるし、誰に機密情報を聞かれたかも分かるので基本的に短期な焦土戦にならざるを得ないから、ビジネスとしてイマイチと見做されたようだ。
が。
この街では妙に洗脳に掛かっている人数が多い。
広場を見ると、腕を組んで歩いている男女のうちの男性が洗脳されているのが2組も目に入る。
「ファルナ。
あそこで露店でアクセサリーっぽいのを見ている青いスカートの女と一緒に居る若い男と、此方の端で屋台に並んでいるピンクのシャツの女と一緒に居る男が洗脳されているぜ」
荷物を降ろして部下に何やら指示を出そうとしていたファルナに声をかける。
「え??
一気に2人も???」
ファルナが驚いたように窓辺に寄ってきて下を見下ろす。
「どっちも男女で一緒に出歩いているのは偶然かも知れないが・・・一応女の方も捕まえた方が良いかも?」
機密情報を聞き出すなら酒が入る夜の方が良いと思うんだが・・・日中から時間をかけてやっているんかね?
だが、男の服装からして一人は商家の人間としても、もう一人は船乗りっぽい感じだから、イマイチ同じ情報を狙っているとは思えない。
それで一気に二人って・・・なんか不思議な偶然だ。
ファルナが部下たちに4人の確保を命じる。
「別々の部屋に入れておいて。
私は解呪の魔具を準備しておくから」
荷物を開きながらファルナが指示する。
今までは街の役人に解呪から情報収集まで任せてやり方を確認していたのだが、街に来て調査を始めて直ぐに2人も見つかったという事で此方でひとまず調べることにしたらしい。
「お、もう一組来たぞ。
一体この街はどうなっているんだ??」
今度は女が洗脳されている。
中々の美人で良い服を着た若い女が、若い男に連れられて広場に入ってきた。
丁度露店の出る日だから、デートコースにでもなっているのかね、ここ?
洗脳した人間をデートコースに誘って仲良くなると情報漏洩へのハードルが下がるのか?
男が相手の場合は酒が入った状態で体を摺り寄せる方が良い気もするが。
女性は流石にそこまで露骨に行く訳にはいかないから露店でアクセサリーでも選ばせて買う方が良いのかも知れないけど・・・。
◆◆◆◆
「情報?
俺は船乗りだぜ?航海士って訳じゃないから秘密にしなくちゃいけない情報なんて持ってないんだが・・・」
解呪された船乗りに先に聞いてみたところ、男は良く分からないという顔をしていた。
「何か新しい商品を寄港先で見つけたかとか、他国の船をどこかで意外な所で見かけたかとか、何か聞かれた?」
ファルナが眉をひそめながら尋ねる。
「うんや?
第一、その程度の情報だったら娼館か酒場で張ってれば簡単に入手出来るぜ。
寄港した時に特に何も口止めされてないし」
今までは解呪されたら即座に何かに関して情報を尋ねられたとか、少なくとも聞かれたら困る仕事関連の機密を知っていると思われそうな人間ばかりだった。
船乗りが一体どんな機密情報を知っているんだと思っていたのだが、本人もイマイチ心当たりがないらしい。
「・・・女と一緒にいたけど、前からの知り合いか?」
ふと気になって尋ねてみる。
3組立て続けに見つかり、どれも男女だったのだ。
少なくとも呪具を使った相手である可能性は高いんじゃないだろうか?
「いや。
宿屋で朝食を食おうとしたら偶々席が一緒になっただけだ」
船乗りが肩を竦めながら答える。
「今朝あったばかりにしちゃあ随分と仲が良さげな感じだったが、好みだったのか?」
男の目が少し驚きに見開かれた。
「・・・さっきまでは凄くいい女だと思っていたんだが。
考えてみたら、普通だよな?」
いや、俺に聞かれても。
確かに普通っぽい感じはしないでもないが、特にブスという訳でもないかな?
「ちょっとここで待っていて」
ファルナが突然立ち上がって扉へ向かった。
おや?
何か思い当たることがあったんかね?
3つの港町と2つの領都を回り、一番南にある港のある街に着いた俺は広場に面する窓から下を見て眉をひそめた。
今まで見て回ったところでは、それなりにギルドや役場での解呪が上手くいっているようで呪具で洗脳されているっぽいのは各町に数人見かけただけだった。
どうやらアファル王国まで態々呪具を輸入して使うだけの価値は無いと、殆どの違法輸入業者の人間が判断したらしい。
取り締まる役人達の話によると、酒を飲まして呪具を使えばちょっとした情報なら盗めるかもしれないが、呪具を東大陸から輸入するだけの価値があるほど活用させるのは中々難しいらしい。
しかも定期的に解呪するのでそのタイミングで情報を漏洩したことがバレるし、誰に機密情報を聞かれたかも分かるので基本的に短期な焦土戦にならざるを得ないから、ビジネスとしてイマイチと見做されたようだ。
が。
この街では妙に洗脳に掛かっている人数が多い。
広場を見ると、腕を組んで歩いている男女のうちの男性が洗脳されているのが2組も目に入る。
「ファルナ。
あそこで露店でアクセサリーっぽいのを見ている青いスカートの女と一緒に居る若い男と、此方の端で屋台に並んでいるピンクのシャツの女と一緒に居る男が洗脳されているぜ」
荷物を降ろして部下に何やら指示を出そうとしていたファルナに声をかける。
「え??
一気に2人も???」
ファルナが驚いたように窓辺に寄ってきて下を見下ろす。
「どっちも男女で一緒に出歩いているのは偶然かも知れないが・・・一応女の方も捕まえた方が良いかも?」
機密情報を聞き出すなら酒が入る夜の方が良いと思うんだが・・・日中から時間をかけてやっているんかね?
だが、男の服装からして一人は商家の人間としても、もう一人は船乗りっぽい感じだから、イマイチ同じ情報を狙っているとは思えない。
それで一気に二人って・・・なんか不思議な偶然だ。
ファルナが部下たちに4人の確保を命じる。
「別々の部屋に入れておいて。
私は解呪の魔具を準備しておくから」
荷物を開きながらファルナが指示する。
今までは街の役人に解呪から情報収集まで任せてやり方を確認していたのだが、街に来て調査を始めて直ぐに2人も見つかったという事で此方でひとまず調べることにしたらしい。
「お、もう一組来たぞ。
一体この街はどうなっているんだ??」
今度は女が洗脳されている。
中々の美人で良い服を着た若い女が、若い男に連れられて広場に入ってきた。
丁度露店の出る日だから、デートコースにでもなっているのかね、ここ?
洗脳した人間をデートコースに誘って仲良くなると情報漏洩へのハードルが下がるのか?
男が相手の場合は酒が入った状態で体を摺り寄せる方が良い気もするが。
女性は流石にそこまで露骨に行く訳にはいかないから露店でアクセサリーでも選ばせて買う方が良いのかも知れないけど・・・。
◆◆◆◆
「情報?
俺は船乗りだぜ?航海士って訳じゃないから秘密にしなくちゃいけない情報なんて持ってないんだが・・・」
解呪された船乗りに先に聞いてみたところ、男は良く分からないという顔をしていた。
「何か新しい商品を寄港先で見つけたかとか、他国の船をどこかで意外な所で見かけたかとか、何か聞かれた?」
ファルナが眉をひそめながら尋ねる。
「うんや?
第一、その程度の情報だったら娼館か酒場で張ってれば簡単に入手出来るぜ。
寄港した時に特に何も口止めされてないし」
今までは解呪されたら即座に何かに関して情報を尋ねられたとか、少なくとも聞かれたら困る仕事関連の機密を知っていると思われそうな人間ばかりだった。
船乗りが一体どんな機密情報を知っているんだと思っていたのだが、本人もイマイチ心当たりがないらしい。
「・・・女と一緒にいたけど、前からの知り合いか?」
ふと気になって尋ねてみる。
3組立て続けに見つかり、どれも男女だったのだ。
少なくとも呪具を使った相手である可能性は高いんじゃないだろうか?
「いや。
宿屋で朝食を食おうとしたら偶々席が一緒になっただけだ」
船乗りが肩を竦めながら答える。
「今朝あったばかりにしちゃあ随分と仲が良さげな感じだったが、好みだったのか?」
男の目が少し驚きに見開かれた。
「・・・さっきまでは凄くいい女だと思っていたんだが。
考えてみたら、普通だよな?」
いや、俺に聞かれても。
確かに普通っぽい感じはしないでもないが、特にブスという訳でもないかな?
「ちょっとここで待っていて」
ファルナが突然立ち上がって扉へ向かった。
おや?
何か思い当たることがあったんかね?
0
お気に入りに追加
505
あなたにおすすめの小説
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
僕の義姉妹の本性日記
桜田紅葉
恋愛
いつものような毎日を義姉妹と送っていた主人公、橋本時也(はしもととしや)は儀姉妹、姉、橋本可憐(はしもとかれん)と、妹、橋本睦月(はしもとむつき)との日常を過ごす。
しかし、二人の意外な本性や心動きなどが見られる。
果たして時也はどうなるのか?
しかし、彼に陰ながらも好意を持つ幼馴染、秋は一体どうなるのか
家事もろくにできないと見下されたうえ婚約破棄されてしまいました……
四季
恋愛
「君のような家事もろくにできない女性と生きていくことはできない。婚約破棄されてもらう」
婚約者ロック・アブローバはある日突然私にそう告げた。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
やり直ししてますが何か?私は殺される運命を回避するため出来ることはなんでもします!邪魔しないでください!
稲垣桜
恋愛
私、クラウディア・リュカ・クロスローズは、子供の頃に倒れて、前世が柏樹深緒という日本人だったことを思い出した。そして、クラウディアとして一度生きた記憶があることも。
だけど、私、誰かに剣で胸を貫かれて死んでる??
「このままだと、私、殺されるの!?」
このまま死んでたまるか!絶対に運命を変えてやる!と、持ち前の根性で周囲を巻き込みながら運命回避のために色々と行動を始めた。
まず剣術を習って、魔道具も作って、ポーションも作っちゃえ!そうそう、日本食も食べたいから日本食が食べられるレストランも作ろうかな?
死ぬ予定の年齢まであと何年?まだあるよね?
姿を隠して振舞っていたら、どうやらモテ期到来??だけど、私……生きられるかわかんないから、お一人様で過ごしたいかな?
でも、結局私を殺したのって誰だろう。知り合い?それとも…
※ ゆる~い設定です。
※ あれ?と思っても温かい心でスルーしてください。
※ 前半はちょっとのんびり進みます。
※ 誤字脱字は気を付けてますが、温かい目で…よろしくお願いします。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる