シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

725 星暦556年 橙の月 12日 確認したら、ヤバかった(3)

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「ううん??」
3つの港町と2つの領都を回り、一番南にある港のある街に着いた俺は広場に面する窓から下を見て眉をひそめた。

今まで見て回ったところでは、それなりにギルドや役場での解呪が上手くいっているようで呪具で洗脳されているっぽいのは各町に数人見かけただけだった。
どうやらアファル王国まで態々呪具を輸入して使うだけの価値は無いと、殆どの違法輸入業者の人間が判断したらしい。

取り締まる役人達の話によると、酒を飲まして呪具を使えばちょっとした情報なら盗めるかもしれないが、呪具を東大陸から輸入するだけの価値があるほど活用させるのは中々難しいらしい。
しかも定期的に解呪するのでそのタイミングで情報を漏洩したことがバレるし、誰に機密情報を聞かれたかも分かるので基本的に短期な焦土戦にならざるを得ないから、ビジネスとしてイマイチと見做されたようだ。

が。
この街では妙に洗脳に掛かっている人数が多い。
広場を見ると、腕を組んで歩いている男女のうちの男性が洗脳されているのが2組も目に入る。

「ファルナ。
あそこで露店でアクセサリーっぽいのを見ている青いスカートの女と一緒に居る若い男と、此方の端で屋台に並んでいるピンクのシャツの女と一緒に居る男が洗脳されているぜ」
荷物を降ろして部下に何やら指示を出そうとしていたファルナに声をかける。

「え??
一気に2人も???」
ファルナが驚いたように窓辺に寄ってきて下を見下ろす。

「どっちも男女で一緒に出歩いているのは偶然かも知れないが・・・一応女の方も捕まえた方が良いかも?」
機密情報を聞き出すなら酒が入る夜の方が良いと思うんだが・・・日中から時間をかけてやっているんかね?

だが、男の服装からして一人は商家の人間としても、もう一人は船乗りっぽい感じだから、イマイチ同じ情報を狙っているとは思えない。
それで一気に二人って・・・なんか不思議な偶然だ。

ファルナが部下たちに4人の確保を命じる。
「別々の部屋に入れておいて。
私は解呪の魔具を準備しておくから」
荷物を開きながらファルナが指示する。

今までは街の役人に解呪から情報収集まで任せてやり方を確認していたのだが、街に来て調査を始めて直ぐに2人も見つかったという事で此方でひとまず調べることにしたらしい。

「お、もう一組来たぞ。
一体この街はどうなっているんだ??」
今度は女が洗脳されている。
中々の美人で良い服を着た若い女が、若い男に連れられて広場に入ってきた。
丁度露店の出る日だから、デートコースにでもなっているのかね、ここ?

洗脳した人間をデートコースに誘って仲良くなると情報漏洩へのハードルが下がるのか?
男が相手の場合は酒が入った状態で体を摺り寄せる方が良い気もするが。

女性は流石にそこまで露骨に行く訳にはいかないから露店でアクセサリーでも選ばせて買う方が良いのかも知れないけど・・・。

◆◆◆◆

「情報?
俺は船乗りだぜ?航海士って訳じゃないから秘密にしなくちゃいけない情報なんて持ってないんだが・・・」
解呪された船乗りに先に聞いてみたところ、男は良く分からないという顔をしていた。

「何か新しい商品を寄港先で見つけたかとか、他国の船をどこかで意外な所で見かけたかとか、何か聞かれた?」
ファルナが眉をひそめながら尋ねる。

「うんや?
第一、その程度の情報だったら娼館か酒場で張ってれば簡単に入手出来るぜ。
寄港した時に特に何も口止めされてないし」

今までは解呪されたら即座に何かに関して情報を尋ねられたとか、少なくとも聞かれたら困る仕事関連の機密を知っていると思われそうな人間ばかりだった。

船乗りが一体どんな機密情報を知っているんだと思っていたのだが、本人もイマイチ心当たりがないらしい。

「・・・女と一緒にいたけど、前からの知り合いか?」
ふと気になって尋ねてみる。
3組立て続けに見つかり、どれも男女だったのだ。
少なくとも呪具を使った相手である可能性は高いんじゃないだろうか?

「いや。
宿屋で朝食を食おうとしたら偶々席が一緒になっただけだ」
船乗りが肩を竦めながら答える。

「今朝あったばかりにしちゃあ随分と仲が良さげな感じだったが、好みだったのか?」

男の目が少し驚きに見開かれた。
「・・・さっきまでは凄くいい女だと思っていたんだが。
考えてみたら、普通だよな?」

いや、俺に聞かれても。
確かに普通っぽい感じはしないでもないが、特にブスという訳でもないかな?

「ちょっとここで待っていて」
ファルナが突然立ち上がって扉へ向かった。

おや?
何か思い当たることがあったんかね?
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