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卒業後
707 星暦556年 緑の月 30日 久しぶりに船探し(19)
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結局、大量の箱と緩衝材及び新型の台車型魔具を持って来る必要があったので、アレクとシャルロが急いで王都に帰ることになった。
蒼流に本気で急いで貰えば9の刻に出て12の刻前後に王都に着けるとの話だったので、通信用魔具でセビウス氏に連絡して必要な物の手配をして貰い、王都でちゃちゃっと必要品を屋敷船へ運び込んでもらっている間に今後の手配について相談し、夜までに帰ってくることが決まったのだ。
食材やその他の買い物をする為にパディン夫妻も一度ついでに王都へ戻ることに。
メイドさんは偶々今日はファーグの街の知り合いの所に泊ることになっていたので、そのまま予定通り。
そして俺はシェイラやツァレスと一緒に海底で神殿探索だ。
俺一人(というか清早だけど)でも神殿の排水は十分出来るし何かあったら手漕ぎ船に3人乗せてファーグの街へ戻るのも可能なので問題は無い筈。
取り敢えず、急遽パディン夫人に作って貰ったランチとちょっとしたおやつ、あと一応夜が遅くなった時用の軽食を貰ったので、俺はのんびりと学者二人の行動を観察しつつ、時折ふらふらと気が向いたところを見て回っていた。
昼過ぎに、腹が減ったので食事のことなんぞ気にしていなかった二人に声をかける。
「昼食~!!」
「後でいい・・・」
興味なさげにツァレスが返したが、シェイラは荷物を置いて俺の方へ来た。
シェイラが無理やり昼休みを取らせないところを見るに、ツァレスはちょっとぐらい昼食を抜いても(もしくは遅れても)倒れないんだろう。
まあ、いかにも熱意が体力を補っていそうだよな。
「ウィル一人こっちに残っているんでいいの?」
バスケットの中から切り分けたミートパイを取り出しながらシェイラが尋ねる。
「おう。
一人おまけが居るけど実質いないに近いんだから、シェイラと二人で楽しく過ごすっていう予定通りだろ?
シェイラたちこそ、研究が数日しか出来ないけどいいのか?」
それに突然ヴァルージャの方の遺跡を数日間とは言え投げ出しちゃって大丈夫なのかね?
「まあ、もっとじっくり調べられたら更に嬉しいけど、それでも数百年間も人の手に触れずに残っていた遺跡を荒らされる前にそのまま調べられるのは一生に一度あったら幸運なぐらいの事だから、あまり贅沢は言えないわね。
流石にフォレスタ文明遺跡を放り出すほどではないけど、数日だったらあっちを放置しても問題は無いから、その間にたっぷり楽しませてもらうわ」
にかりと笑いながらシェイラが言った。
なるほど。
数日のお楽しみ程度で良いレベルの遺跡なのか。
「あまり歴史的発見はないのか?」
俺から見たら石造りの神殿と宝だけだからイマイチ調べる物が無い気がするのだが、学者的にはどうなんだろう?
「500年前だったら現存する建物や神殿は幾つかあるからね。
修繕とか拡張とかが無かった500年前の様子がそのまま残っているのは珍しいし、神殿が蓄財に励んだ時期の宝がそのまま残っているのは現存の神殿にはまずないから、論文を書いたら反響は大きいとは思うけど・・・フォレスタ文明程ワクワクするような驚きと発見は無いかな?
ちょっとウィルと楽しみながら宝を掘り出して梱包する程度で丁度良いかも」
ふむ。
500年だとまだ色々残っているんだな。
資料が間違っているとか推論が裏付けされるとかといった楽しみはあるかもだが、もっと古い一度途絶えた文明の遺跡程の新鮮な驚きはない、と。
道理でツァレスがあっさり引いた訳だ。
何が何でも調べさせてくれって泣きつかれても困るから、丁度よかった。
「500年前だったら基本的に当時の記録とかがちゃんと残っているのか?」
極端に技術が500年で変わったとは思えないから、今と変わらず普通に訴訟や納税記録とかが残っていると思うが、考えてみたら神殿ってどんな記録が残るのだろうか?
「まさか!
そんな沢山の資料を保管しておけるほどの場所なんてどの組織にも無いわ。
まあ、去年ウィル達が開発した映像として記録できる魔具だったらあまり場所を取らないから今後はどうなるか知らないけど、今までは20年も経ったら書類は破棄されることが多かったから、偶然倉庫に忘れられて残されていた資料とか、どっかの屋根裏から出てきた日記とか、大学の図書館に当時の教科書とかが残っている程度ね。
それでもそれなりには残っているから大体の全体像は分かっている・・・つもりなんだけど、時折想定外な発見もあったりするから、比較的新しい歴史もそれなりに面白いのよ」
シェイラがデザート代わりの果物を手に取りながら教えてくれた。
なるほど。
退屈な納税用の資料も、100年とか200年前の物になれば興味深い歴史的資料になるのか。
ただし、200年経つ前に20年後ぐらいに破棄されちゃうからあまり残らないんだろうが。
貴族の屋敷とかだったら十分場所があるから歴史がある古い家系だったりしたら色々資料はあるのかもな。
・・・シャルロの一族なんてどうなんだろ?
蒼流に本気で急いで貰えば9の刻に出て12の刻前後に王都に着けるとの話だったので、通信用魔具でセビウス氏に連絡して必要な物の手配をして貰い、王都でちゃちゃっと必要品を屋敷船へ運び込んでもらっている間に今後の手配について相談し、夜までに帰ってくることが決まったのだ。
食材やその他の買い物をする為にパディン夫妻も一度ついでに王都へ戻ることに。
メイドさんは偶々今日はファーグの街の知り合いの所に泊ることになっていたので、そのまま予定通り。
そして俺はシェイラやツァレスと一緒に海底で神殿探索だ。
俺一人(というか清早だけど)でも神殿の排水は十分出来るし何かあったら手漕ぎ船に3人乗せてファーグの街へ戻るのも可能なので問題は無い筈。
取り敢えず、急遽パディン夫人に作って貰ったランチとちょっとしたおやつ、あと一応夜が遅くなった時用の軽食を貰ったので、俺はのんびりと学者二人の行動を観察しつつ、時折ふらふらと気が向いたところを見て回っていた。
昼過ぎに、腹が減ったので食事のことなんぞ気にしていなかった二人に声をかける。
「昼食~!!」
「後でいい・・・」
興味なさげにツァレスが返したが、シェイラは荷物を置いて俺の方へ来た。
シェイラが無理やり昼休みを取らせないところを見るに、ツァレスはちょっとぐらい昼食を抜いても(もしくは遅れても)倒れないんだろう。
まあ、いかにも熱意が体力を補っていそうだよな。
「ウィル一人こっちに残っているんでいいの?」
バスケットの中から切り分けたミートパイを取り出しながらシェイラが尋ねる。
「おう。
一人おまけが居るけど実質いないに近いんだから、シェイラと二人で楽しく過ごすっていう予定通りだろ?
シェイラたちこそ、研究が数日しか出来ないけどいいのか?」
それに突然ヴァルージャの方の遺跡を数日間とは言え投げ出しちゃって大丈夫なのかね?
「まあ、もっとじっくり調べられたら更に嬉しいけど、それでも数百年間も人の手に触れずに残っていた遺跡を荒らされる前にそのまま調べられるのは一生に一度あったら幸運なぐらいの事だから、あまり贅沢は言えないわね。
流石にフォレスタ文明遺跡を放り出すほどではないけど、数日だったらあっちを放置しても問題は無いから、その間にたっぷり楽しませてもらうわ」
にかりと笑いながらシェイラが言った。
なるほど。
数日のお楽しみ程度で良いレベルの遺跡なのか。
「あまり歴史的発見はないのか?」
俺から見たら石造りの神殿と宝だけだからイマイチ調べる物が無い気がするのだが、学者的にはどうなんだろう?
「500年前だったら現存する建物や神殿は幾つかあるからね。
修繕とか拡張とかが無かった500年前の様子がそのまま残っているのは珍しいし、神殿が蓄財に励んだ時期の宝がそのまま残っているのは現存の神殿にはまずないから、論文を書いたら反響は大きいとは思うけど・・・フォレスタ文明程ワクワクするような驚きと発見は無いかな?
ちょっとウィルと楽しみながら宝を掘り出して梱包する程度で丁度良いかも」
ふむ。
500年だとまだ色々残っているんだな。
資料が間違っているとか推論が裏付けされるとかといった楽しみはあるかもだが、もっと古い一度途絶えた文明の遺跡程の新鮮な驚きはない、と。
道理でツァレスがあっさり引いた訳だ。
何が何でも調べさせてくれって泣きつかれても困るから、丁度よかった。
「500年前だったら基本的に当時の記録とかがちゃんと残っているのか?」
極端に技術が500年で変わったとは思えないから、今と変わらず普通に訴訟や納税記録とかが残っていると思うが、考えてみたら神殿ってどんな記録が残るのだろうか?
「まさか!
そんな沢山の資料を保管しておけるほどの場所なんてどの組織にも無いわ。
まあ、去年ウィル達が開発した映像として記録できる魔具だったらあまり場所を取らないから今後はどうなるか知らないけど、今までは20年も経ったら書類は破棄されることが多かったから、偶然倉庫に忘れられて残されていた資料とか、どっかの屋根裏から出てきた日記とか、大学の図書館に当時の教科書とかが残っている程度ね。
それでもそれなりには残っているから大体の全体像は分かっている・・・つもりなんだけど、時折想定外な発見もあったりするから、比較的新しい歴史もそれなりに面白いのよ」
シェイラがデザート代わりの果物を手に取りながら教えてくれた。
なるほど。
退屈な納税用の資料も、100年とか200年前の物になれば興味深い歴史的資料になるのか。
ただし、200年経つ前に20年後ぐらいに破棄されちゃうからあまり残らないんだろうが。
貴族の屋敷とかだったら十分場所があるから歴史がある古い家系だったりしたら色々資料はあるのかもな。
・・・シャルロの一族なんてどうなんだろ?
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