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卒業後
694 星暦556年 緑の月 24日 久しぶりに船探し(6)
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結局、船の掃除とか料理の手伝いにはシャルロの屋敷のメイドさんが同乗することになった。
実は料理長のデルブ夫人も来たがったのだが、流石に彼女に掃除をやって貰う訳にはいかないし船の調理用設備はそこまで整っている訳でもなかったので、諦めて貰った。
船で出来る程度の料理をする人という視点だったらパディン夫人で十分だし、やっぱり長いこと会っていない娘さんに会うというのは重要度が高いしね。
俺たち3人は昨日と一昨日はひたすら昔の保険資料とか引き揚げ屋協会の資料を読み漁って南西の海で沈没したと思われる船の情報を集め、ケレナは暫く王都を離れる関連での手配や、友人へのお土産や、服などの荷造りに励んだ。
で。
昨晩夕食の後に港に行って船に乗り、暫しワインを飲みながら4人でカードを楽しんでから気持ちよく快適なベッドで寝て・・・今朝起きたらファーグの沖に辿り着いていた。
「凄いわね!!
あれってファーグの港でしょう??
転移門は一瞬だけど着替えとかお土産の荷物をギリギリまで削らなきゃいけないからちょっと友達の所に遊びに行くのに向いていないのよね~。
船だったら3日、馬車だったら5日程度かかるのに、一晩で着くなんて知っていたけど滅茶苦茶な速度ね」
甲板に出て伸びをしていたら、ケレナが声をかけてきた。
へぇぇ、貴族でも転移門を利用する際には荷物を最低限に削るんだ?
確かに高いが・・・貴族たちの服とかの費用に比べたら安いもんだと思うけど、優先順位が違うんだろうな。
「船って実は海上を進むよりも海中を動く方が水の抵抗が無くて速く動くんだ。
ただまあ、精霊が手を貸してくれなきゃ実質不可能だからこの船でしか出来ない移動方法だな。
シャルロも俺も忙しい時だったら、新しい空滑機《グライダー》改が出来たから今後はそれを使ってみるのもありかも?
あれだったらそれなりに荷物を運べるし、座っていられるから悪くないんじゃないかな」
ちょっとケレナが女友達とかとだけで遠出したくなった場合でも、空滑機《グライダー》改を使えば屋敷船と同じぐらいの速度で移動できるんじゃないだろうか。
まあ、ベッドは無いので寝ている間に目的地に着くという便利さは無いし、着いた先でそのまま快適な船の寝室に泊るというのも出来ないが。
「そう言えば、近いうちにパイロット付きの空滑機《グライダー》改の貸し出しが始まるってシャルロも言っていたわね。
ちょっと家族や友人と遠出に行くのにも良いかも」
ケレナが頷いた。
「流石に空滑機《グライダー》改はかさばるんで今回は持って来ていないが、空滑機《グライダー》は船に乗せて来たから友達とちょっと遠出する程度だったら使ってみても良いんじゃないか?」
確かケレナも空滑機《グライダー》を飛ばせた筈。
というか、最初に俺たちに空滑機《グライダー》を開発する様要求したのはケレナだったよな。
開発後もシャルロとちょくちょく王都近辺のピクニックに使っているようだし。
ちょろっと遊びに使うのにはある意味俺よりもケレナの方が慣れているかも知れない。
友達の伯爵令嬢とやらが空滑機《グライダー》に乗りたがるかは知らないが。
「おはよ~・・・」
ケレナと雑談していたらシャルロが眠そうに欠伸をしながら現れた。
後ろにアレクも続いている。
「朝食を食ったら早速沈没船の探索に行こうぜ。
港に行く人は小型船で行けば良いだろうから屋敷船はここにこのまま停泊で良いよな?
それともちゃんと港に接岸した状態で係留した方が良いのか?」
二人に声をかける。
「港に係留すると費用がかかるし、変な人間が乗って来ようとするかも知れないから船を無人に出来なくなるよ。
それよりはここに停泊しておいて現在の搭乗者以外の人間は近づけない様に蒼流に頼んでおけば良いんじゃないかな。
ケレナはどうする?
友達に会いに行く?それとも沈没船探しに付き合う?」
シャルロが応じた。
「流石に船で王都から1日で着くなんて大々的に公にしない方が良いだろうから、今日は沈没船探しに行くわ。
下手に知られて『ついでに』乗せてくれって移動手段として頼まれるようになったら面倒よ」
ケレナが答えた。
あ~。
まあ、妻の友人がこんな便利な船を持っていると知ったら、伯爵としても費用削減と利便性を考えて転移門や馬車よりも俺たちの屋敷船を貸してもらえないかと言いたくなるだろうなぁ。
船そのものは滅多に使っていないから貸しても良いんだが、動かすためには基本的に俺かシャルロが同乗する必要があるから頼まれたくない。
せめてもう1日掛かることにして明日にでもケレナの友人とやらに声をかけるのが正解だろう。
ケレナがどのくらい沈没船探しを楽しむか、知らないが。
シェイラはどうかな?
見つかった沈没船の探索を楽しむのは確実だが、海底を探す段階はどうだろう?
1日ぐらいは珍しくて楽しんでくれるよな?
【後書き】
自分の寝室ごと旅行できると良いですよね。
旅先の新しい景色や珍しい食事は楽しいですが、ベッドは馴染みのある自分のベッドの方が良い!
実は料理長のデルブ夫人も来たがったのだが、流石に彼女に掃除をやって貰う訳にはいかないし船の調理用設備はそこまで整っている訳でもなかったので、諦めて貰った。
船で出来る程度の料理をする人という視点だったらパディン夫人で十分だし、やっぱり長いこと会っていない娘さんに会うというのは重要度が高いしね。
俺たち3人は昨日と一昨日はひたすら昔の保険資料とか引き揚げ屋協会の資料を読み漁って南西の海で沈没したと思われる船の情報を集め、ケレナは暫く王都を離れる関連での手配や、友人へのお土産や、服などの荷造りに励んだ。
で。
昨晩夕食の後に港に行って船に乗り、暫しワインを飲みながら4人でカードを楽しんでから気持ちよく快適なベッドで寝て・・・今朝起きたらファーグの沖に辿り着いていた。
「凄いわね!!
あれってファーグの港でしょう??
転移門は一瞬だけど着替えとかお土産の荷物をギリギリまで削らなきゃいけないからちょっと友達の所に遊びに行くのに向いていないのよね~。
船だったら3日、馬車だったら5日程度かかるのに、一晩で着くなんて知っていたけど滅茶苦茶な速度ね」
甲板に出て伸びをしていたら、ケレナが声をかけてきた。
へぇぇ、貴族でも転移門を利用する際には荷物を最低限に削るんだ?
確かに高いが・・・貴族たちの服とかの費用に比べたら安いもんだと思うけど、優先順位が違うんだろうな。
「船って実は海上を進むよりも海中を動く方が水の抵抗が無くて速く動くんだ。
ただまあ、精霊が手を貸してくれなきゃ実質不可能だからこの船でしか出来ない移動方法だな。
シャルロも俺も忙しい時だったら、新しい空滑機《グライダー》改が出来たから今後はそれを使ってみるのもありかも?
あれだったらそれなりに荷物を運べるし、座っていられるから悪くないんじゃないかな」
ちょっとケレナが女友達とかとだけで遠出したくなった場合でも、空滑機《グライダー》改を使えば屋敷船と同じぐらいの速度で移動できるんじゃないだろうか。
まあ、ベッドは無いので寝ている間に目的地に着くという便利さは無いし、着いた先でそのまま快適な船の寝室に泊るというのも出来ないが。
「そう言えば、近いうちにパイロット付きの空滑機《グライダー》改の貸し出しが始まるってシャルロも言っていたわね。
ちょっと家族や友人と遠出に行くのにも良いかも」
ケレナが頷いた。
「流石に空滑機《グライダー》改はかさばるんで今回は持って来ていないが、空滑機《グライダー》は船に乗せて来たから友達とちょっと遠出する程度だったら使ってみても良いんじゃないか?」
確かケレナも空滑機《グライダー》を飛ばせた筈。
というか、最初に俺たちに空滑機《グライダー》を開発する様要求したのはケレナだったよな。
開発後もシャルロとちょくちょく王都近辺のピクニックに使っているようだし。
ちょろっと遊びに使うのにはある意味俺よりもケレナの方が慣れているかも知れない。
友達の伯爵令嬢とやらが空滑機《グライダー》に乗りたがるかは知らないが。
「おはよ~・・・」
ケレナと雑談していたらシャルロが眠そうに欠伸をしながら現れた。
後ろにアレクも続いている。
「朝食を食ったら早速沈没船の探索に行こうぜ。
港に行く人は小型船で行けば良いだろうから屋敷船はここにこのまま停泊で良いよな?
それともちゃんと港に接岸した状態で係留した方が良いのか?」
二人に声をかける。
「港に係留すると費用がかかるし、変な人間が乗って来ようとするかも知れないから船を無人に出来なくなるよ。
それよりはここに停泊しておいて現在の搭乗者以外の人間は近づけない様に蒼流に頼んでおけば良いんじゃないかな。
ケレナはどうする?
友達に会いに行く?それとも沈没船探しに付き合う?」
シャルロが応じた。
「流石に船で王都から1日で着くなんて大々的に公にしない方が良いだろうから、今日は沈没船探しに行くわ。
下手に知られて『ついでに』乗せてくれって移動手段として頼まれるようになったら面倒よ」
ケレナが答えた。
あ~。
まあ、妻の友人がこんな便利な船を持っていると知ったら、伯爵としても費用削減と利便性を考えて転移門や馬車よりも俺たちの屋敷船を貸してもらえないかと言いたくなるだろうなぁ。
船そのものは滅多に使っていないから貸しても良いんだが、動かすためには基本的に俺かシャルロが同乗する必要があるから頼まれたくない。
せめてもう1日掛かることにして明日にでもケレナの友人とやらに声をかけるのが正解だろう。
ケレナがどのくらい沈没船探しを楽しむか、知らないが。
シェイラはどうかな?
見つかった沈没船の探索を楽しむのは確実だが、海底を探す段階はどうだろう?
1日ぐらいは珍しくて楽しんでくれるよな?
【後書き】
自分の寝室ごと旅行できると良いですよね。
旅先の新しい景色や珍しい食事は楽しいですが、ベッドは馴染みのある自分のベッドの方が良い!
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