655 / 1,038
卒業後
654 星暦556年 青の月 13日 渡河用魔具(8)
しおりを挟む
ウォレン爺の視点が続きます
【本文】
>>>サイド ウォレン・ガズラート
「ご覧になったように、徐々に水面が上がる程度の増水でしたら対応できますが、突然土石流や山津波が上流から流れてきて水面が一気に持ち上がると標準型の渡河用魔具では対応できません。
ですので標準型を使って橋を流された増水時などに渡河する場合は、川の上流の地形なども考慮に入れた上でくれぐれも山津波などが想定できる場合は使わないで下さい」
アレクが見ている人間に念を込めた説明をした。
ふむ。
上流の地形と言っても倒木などで増水が一時的に堰き止められて山津波のような現象が起きることもある。
ある意味、増水している最中には使うなという事じゃな。
増水で橋が流された場合、それの修理に10日以上かかることも珍しくない。
この足止めされている期間に荷馬車ごと渡河できるとなれば、それはそれで十分効果があると言えよう。
「さて、こちらはそんな増水時にどうしても渡河しなければならない非常時用の魔具です。
山津波が起きても大丈夫なように色々と機能をつけているので機体がかなり高額になりますし、非常時の起動は魔石の消費が非常に激しいです。
高額な機体を買ってもちゃんと動かすだけの魔石を搭載しておかないと意味は無いので、そこら辺の準備もしっかり毎回事前にご確認ください」
アレクが更に説明を続ける。
その間、ウィルとシャルロで荷馬車の中から先ほどの『標準型』より多少厚みがあるように見える魔具を取り出して、荷馬車をそちらの上に移していた。
「では行きま~す」
呑気に手を振って再びシャルロが川に向かう。
多少増水気味だった川面は先ほどの山津波の様な高波の後も何事も無かったように戻っていたのだが・・・考えてみたら、あの波は下流には流れていないのだろうな?
あれで橋が流されていたりしたら大問題だ。
シャルロと蒼流(及びアレク)なのでそこら辺は抜かりないとは思うが、後で確認しておこう。
シャルロが川の半ばに差し掛かったところで再び急遽川の水位が2メタほど盛り上がったが、今回はそれに合わせたようにふわっと魔具と荷馬車が更に上空に浮き上がった。
波が過ぎ去ったところで魔具が降りてきたが、そこへ倒木らしき物体まで流れてくる。
なんとも芸が細かい。
水面から飛び出している枝が荷馬車にぶち当たるかと思ったが・・・結界に弾かれて水面の下に押し戻されていた。
ほう。
非常時に上昇するだけでなく、防御結界も展開するのか。
これならば確かに高額で魔石も大量に使うだろう。
とは言え、増水時の渡河にはこの程度の安全対策は無いと安心はできないか。
そのままシャルロが川を渡り続けていたら更に大波が何度か上流から現れるが、そのたびにふわりふわりと魔具が浮かび上がって水を避けている。
うん?
普通に渡河している時は川面が微妙に下へ押されているように見えるが、この緊急避難的上昇の時にはそれが無い・・・か?
使っている魔術が違うのかも知れんの。
下へ力を掛けずに荷馬車を持ち上げられるとしたら、土砂崩れなどで道が塞がれた斜面などを通るのにも使える可能性が高い。
まあ、土砂崩れでふさがれた道をなんとしても緊急事態として荷馬車ごと通らねばならぬ状況などそうそうないが。
それでも鉱山などの様な人が多い特殊な現場だったら食糧と水の運び込みなどが必要な場合などもある。
山や谷越えだけでなく、土砂崩れ対応に関する需要も後で確認しておくか。
数は揃える必要はないだろうが、非常時用に幾つか軍部で買っておいても良さそうじゃの。
購入部門の主任も熱心にシェフィート商会の人間に質問をしているから同じことを考えていそうだ。
どの位値切れるか、見ものじゃの。
最近はシェフィート商会も軍との取引が増えて来たせいで、『軍との取引のとっかかりになるから』という口実での値引きには応じなくなってきたと聞く。
まあ、頑張って貰おう。
儂としてはシャルロが儲かるのはそれはそれで構わんし。
【後書き】
相変わらずシャルロラブな爺w
【本文】
>>>サイド ウォレン・ガズラート
「ご覧になったように、徐々に水面が上がる程度の増水でしたら対応できますが、突然土石流や山津波が上流から流れてきて水面が一気に持ち上がると標準型の渡河用魔具では対応できません。
ですので標準型を使って橋を流された増水時などに渡河する場合は、川の上流の地形なども考慮に入れた上でくれぐれも山津波などが想定できる場合は使わないで下さい」
アレクが見ている人間に念を込めた説明をした。
ふむ。
上流の地形と言っても倒木などで増水が一時的に堰き止められて山津波のような現象が起きることもある。
ある意味、増水している最中には使うなという事じゃな。
増水で橋が流された場合、それの修理に10日以上かかることも珍しくない。
この足止めされている期間に荷馬車ごと渡河できるとなれば、それはそれで十分効果があると言えよう。
「さて、こちらはそんな増水時にどうしても渡河しなければならない非常時用の魔具です。
山津波が起きても大丈夫なように色々と機能をつけているので機体がかなり高額になりますし、非常時の起動は魔石の消費が非常に激しいです。
高額な機体を買ってもちゃんと動かすだけの魔石を搭載しておかないと意味は無いので、そこら辺の準備もしっかり毎回事前にご確認ください」
アレクが更に説明を続ける。
その間、ウィルとシャルロで荷馬車の中から先ほどの『標準型』より多少厚みがあるように見える魔具を取り出して、荷馬車をそちらの上に移していた。
「では行きま~す」
呑気に手を振って再びシャルロが川に向かう。
多少増水気味だった川面は先ほどの山津波の様な高波の後も何事も無かったように戻っていたのだが・・・考えてみたら、あの波は下流には流れていないのだろうな?
あれで橋が流されていたりしたら大問題だ。
シャルロと蒼流(及びアレク)なのでそこら辺は抜かりないとは思うが、後で確認しておこう。
シャルロが川の半ばに差し掛かったところで再び急遽川の水位が2メタほど盛り上がったが、今回はそれに合わせたようにふわっと魔具と荷馬車が更に上空に浮き上がった。
波が過ぎ去ったところで魔具が降りてきたが、そこへ倒木らしき物体まで流れてくる。
なんとも芸が細かい。
水面から飛び出している枝が荷馬車にぶち当たるかと思ったが・・・結界に弾かれて水面の下に押し戻されていた。
ほう。
非常時に上昇するだけでなく、防御結界も展開するのか。
これならば確かに高額で魔石も大量に使うだろう。
とは言え、増水時の渡河にはこの程度の安全対策は無いと安心はできないか。
そのままシャルロが川を渡り続けていたら更に大波が何度か上流から現れるが、そのたびにふわりふわりと魔具が浮かび上がって水を避けている。
うん?
普通に渡河している時は川面が微妙に下へ押されているように見えるが、この緊急避難的上昇の時にはそれが無い・・・か?
使っている魔術が違うのかも知れんの。
下へ力を掛けずに荷馬車を持ち上げられるとしたら、土砂崩れなどで道が塞がれた斜面などを通るのにも使える可能性が高い。
まあ、土砂崩れでふさがれた道をなんとしても緊急事態として荷馬車ごと通らねばならぬ状況などそうそうないが。
それでも鉱山などの様な人が多い特殊な現場だったら食糧と水の運び込みなどが必要な場合などもある。
山や谷越えだけでなく、土砂崩れ対応に関する需要も後で確認しておくか。
数は揃える必要はないだろうが、非常時用に幾つか軍部で買っておいても良さそうじゃの。
購入部門の主任も熱心にシェフィート商会の人間に質問をしているから同じことを考えていそうだ。
どの位値切れるか、見ものじゃの。
最近はシェフィート商会も軍との取引が増えて来たせいで、『軍との取引のとっかかりになるから』という口実での値引きには応じなくなってきたと聞く。
まあ、頑張って貰おう。
儂としてはシャルロが儲かるのはそれはそれで構わんし。
【後書き】
相変わらずシャルロラブな爺w
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる