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卒業後
652 星暦556年 紺の月 28日 渡河用魔具(6)
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「じゃあ、改めて山津波で実験だ!」
先日渡河の実験をした川岸で、シャルロが張り切って声を上げた。
とは言え今回は勢いのある山津波に対しての実験をするので、シャルロも試作機には乗らない。
清早が動かしてくれると手を上げてくれたので今回はそれに甘えることにした。
例え試作機が大破して破片がぶつかろうと、精霊である清早に害は及ばないからね。
自動で動くための仕組みを作るよりずっと手軽なので清早の提案を受け入れることにしたのだ。
という事で。
左手が川上。
川岸からのんびりと清早が試作機を進めていたら、突然川の水面が持ち上がり、試作機が右に傾いた。
「お!」
右に傾いた瞬間に川下側の結界の出力が上がり、本体の傾きが元に戻るかに見えたが・・・。
「げ!!」
膨らんだ山津波の水面は左手から右手へと川を下り、ちょうど立て直し始めた試作機の右側を勢いよく持ち上げ・・・機体が綺麗に一回転して水しぶきと共に水面に着水した。
「ひゃっほ~~~~!!
楽しいぜ、これ!!」
清早がご機嫌に叫ぶ。
「楽しいかも知れないが・・・これはちょっと想定外だし荷馬車を運ぶ装置としては失格だな」
アレクがため息をついた。
「なんかこう、却って水面の変化に対応しようとしたことで動きが倍増した感じ?
水面の動きによる傾きを補正しようとしない方が良いかも」
シャルロも呟く。
まあなぁ。
転覆されるのと、一回転されるのと、どちらかまだマシか・・・微妙なところだ。
考えてみたらどっちもダメだけど。
「ある程度以上傾いたら非常事態という事で浮遊《レヴィア》の術で上昇して、下に関係なく水平になるよう魔術回路を使ってバランスを取らせる方が良いかもだな」
浮遊《レヴィア》の術は魔術回路にするとかなり魔力を喰うので効率性から言うとイマイチなのだが、下の勾配がどうなっていようが関係なく宙に浮くので、山津波とかで突然川面の勾配が変動した状況に対応するのには向いているだろう。
起動その物もそれなりに早いし。
しかも術の対象を水平に持ち上げるので真ん中に大きく魔術回路を設置すればバランスを取ることも考えなくて済む。
「山津波や土石流が流れ続ける時間ってどの位なのかな?
浮遊《レヴィア》ですっと上がって、すぐに降りてきても安全なのか、それともそれなりに時間を取るべきなのか。
それこそ非常事態で乗っている人間が意識もうろうとしていたり、周りが暗くて水面が見えない場合なんかだと浮遊《レヴィア》をいつ切るかをどう判断するか、難しそう」
シャルロが少し難しい顔をして言った。
確かに。
浮遊《レヴィア》は魔力を喰うので出来るだけ早く切って元の反発力を利用する結界に戻したいが、戻すタイミングを間違えると危険だ。
「まあ、機体の角度がある程度以上傾いたら浮遊《レヴィア》の魔術回路が起動するようにしておいたら浮遊《レヴィア》を切るのが早すぎても再起動するだけだろうが・・・それこそ再起動する前に横から倒木の枝や本体が突っ込んできたりしたら危ないか」
水面が斜めになっていると言う事はまだ土石流や山津波の中にいると言う事で、押し流されて来た土石や枝などに激突されかねない。
「倒木が突っ込んでくるような危険事態だったら命は金に換えられないと考えて、魔石をケチらずに使って防御結界を張るべきだろう。
そう考えると・・・浮遊《レヴィア》が起動したら防御結界も展開されるようにした方が良いかも知れない」
アレクが提案した。
確かに、増水した川を渡るなんて無茶をする状況なんだ。
非常事態で意図的に命を賭けているにしても、魔石をケチって死んでは意味がない。
そう考えたら非常事態には魔石はガンガン使っても良いんだよね?という前提条件の下で設計してしまうのも一つの手か。
「俺たちが作っているのは渡河用の普段使いの魔具なんだ。
増水中で山津波や土石流がいつ起きるか分からないような川を渡るなんて危険なことをする為の魔具ではない。
だからそう言う非常事態用に使うならふんだんに魔石を準備しておかないと使えないという事にして、そういう緊急装置付きのは高額モデルにしないか?
下手にお手軽価格で危険なことも出来ちゃう設計で造って、誰かが無茶をして死んだらお互い不幸だ」
非常時に増水した川を越えて誰かを助けるなんて事だって、増水した川を超えられる魔具がなければ最初から出来ないことなのだ。
それが可能な機種と、可能ではない機種とではっきり分けておかないと、下手に安い機種にも無茶出来そうな機能を付けて無茶をやって死なれても困る。
アレクが頷いた。
「そうだな。
誤解を招かない方が無難か」
そうそう。
不幸な誤解は避けなきゃ。
【後書き】
安易にヒーローになろうとするなって事ですね。
ヒーローになるにはそれを成し遂げるだけの資金力が必要w
先日渡河の実験をした川岸で、シャルロが張り切って声を上げた。
とは言え今回は勢いのある山津波に対しての実験をするので、シャルロも試作機には乗らない。
清早が動かしてくれると手を上げてくれたので今回はそれに甘えることにした。
例え試作機が大破して破片がぶつかろうと、精霊である清早に害は及ばないからね。
自動で動くための仕組みを作るよりずっと手軽なので清早の提案を受け入れることにしたのだ。
という事で。
左手が川上。
川岸からのんびりと清早が試作機を進めていたら、突然川の水面が持ち上がり、試作機が右に傾いた。
「お!」
右に傾いた瞬間に川下側の結界の出力が上がり、本体の傾きが元に戻るかに見えたが・・・。
「げ!!」
膨らんだ山津波の水面は左手から右手へと川を下り、ちょうど立て直し始めた試作機の右側を勢いよく持ち上げ・・・機体が綺麗に一回転して水しぶきと共に水面に着水した。
「ひゃっほ~~~~!!
楽しいぜ、これ!!」
清早がご機嫌に叫ぶ。
「楽しいかも知れないが・・・これはちょっと想定外だし荷馬車を運ぶ装置としては失格だな」
アレクがため息をついた。
「なんかこう、却って水面の変化に対応しようとしたことで動きが倍増した感じ?
水面の動きによる傾きを補正しようとしない方が良いかも」
シャルロも呟く。
まあなぁ。
転覆されるのと、一回転されるのと、どちらかまだマシか・・・微妙なところだ。
考えてみたらどっちもダメだけど。
「ある程度以上傾いたら非常事態という事で浮遊《レヴィア》の術で上昇して、下に関係なく水平になるよう魔術回路を使ってバランスを取らせる方が良いかもだな」
浮遊《レヴィア》の術は魔術回路にするとかなり魔力を喰うので効率性から言うとイマイチなのだが、下の勾配がどうなっていようが関係なく宙に浮くので、山津波とかで突然川面の勾配が変動した状況に対応するのには向いているだろう。
起動その物もそれなりに早いし。
しかも術の対象を水平に持ち上げるので真ん中に大きく魔術回路を設置すればバランスを取ることも考えなくて済む。
「山津波や土石流が流れ続ける時間ってどの位なのかな?
浮遊《レヴィア》ですっと上がって、すぐに降りてきても安全なのか、それともそれなりに時間を取るべきなのか。
それこそ非常事態で乗っている人間が意識もうろうとしていたり、周りが暗くて水面が見えない場合なんかだと浮遊《レヴィア》をいつ切るかをどう判断するか、難しそう」
シャルロが少し難しい顔をして言った。
確かに。
浮遊《レヴィア》は魔力を喰うので出来るだけ早く切って元の反発力を利用する結界に戻したいが、戻すタイミングを間違えると危険だ。
「まあ、機体の角度がある程度以上傾いたら浮遊《レヴィア》の魔術回路が起動するようにしておいたら浮遊《レヴィア》を切るのが早すぎても再起動するだけだろうが・・・それこそ再起動する前に横から倒木の枝や本体が突っ込んできたりしたら危ないか」
水面が斜めになっていると言う事はまだ土石流や山津波の中にいると言う事で、押し流されて来た土石や枝などに激突されかねない。
「倒木が突っ込んでくるような危険事態だったら命は金に換えられないと考えて、魔石をケチらずに使って防御結界を張るべきだろう。
そう考えると・・・浮遊《レヴィア》が起動したら防御結界も展開されるようにした方が良いかも知れない」
アレクが提案した。
確かに、増水した川を渡るなんて無茶をする状況なんだ。
非常事態で意図的に命を賭けているにしても、魔石をケチって死んでは意味がない。
そう考えたら非常事態には魔石はガンガン使っても良いんだよね?という前提条件の下で設計してしまうのも一つの手か。
「俺たちが作っているのは渡河用の普段使いの魔具なんだ。
増水中で山津波や土石流がいつ起きるか分からないような川を渡るなんて危険なことをする為の魔具ではない。
だからそう言う非常事態用に使うならふんだんに魔石を準備しておかないと使えないという事にして、そういう緊急装置付きのは高額モデルにしないか?
下手にお手軽価格で危険なことも出来ちゃう設計で造って、誰かが無茶をして死んだらお互い不幸だ」
非常時に増水した川を越えて誰かを助けるなんて事だって、増水した川を超えられる魔具がなければ最初から出来ないことなのだ。
それが可能な機種と、可能ではない機種とではっきり分けておかないと、下手に安い機種にも無茶出来そうな機能を付けて無茶をやって死なれても困る。
アレクが頷いた。
「そうだな。
誤解を招かない方が無難か」
そうそう。
不幸な誤解は避けなきゃ。
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安易にヒーローになろうとするなって事ですね。
ヒーローになるにはそれを成し遂げるだけの資金力が必要w
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