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卒業後
246 星暦553年 青の月 1日 幽霊屋敷?(9)
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ウィルの視点に戻っています。
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「自分は孤児です。王都の裏社会で何とか生きていましたが、偶然ハートネット学院長に出会って、彼が魔術学院に来いと言ってくれなければいつ野垂れ死んでも不思議では無い毎日から離れること出来なかった可能性が高いです。
一応読み書きが出来る程度には神殿の教室に通っていましたが、毎日通うだけの余裕はありませんでしたし、下町ではそんな子共は珍しくなかったです。
だから魔術院の奨学金制度のことを知らないまま、成人している才能のある子供は他にもそれなりに居ると思うのです」
あ~久しぶりの敬語って疲れるぜ。
「学院長は、王都では魔術学院の奨学金制度のことはそれなりに知られていると思われている為、神殿での声かけが徹底されていなかったから自分が知らぬまま過ごしていたのでは無いかと言っていましたが、知り合いに魔術師がいる人間以外にとって、魔術師とは馴染みがない職業です。
奨学金のことなども、本当にあるのかあまり信じて居ない場合もあるのでは無いでしょうか?
第一、それなりに魔力があるか、心眼が優れた人間で無い限り、自分が魔力持ちであると実感できない場合が多いでしょう。
ですからもっと才能のある子供を見つけるために手を広げるべきだと思ったのです」
まあ、実際の所、自分が魔力持ちであると実感できない程度の子供の才能がどの程度なのかは微妙に不明だが。
だが、絶対に魔力持ちでも俺みたいに金やコネが無いから魔術師になることを諦めている子供はそれなりに居るはずだ。
また、親が奨学金制度の事を知っていても、自分の職業を継いで貰いたいからよく分からない魔術師なんて言うモノに借金をしてなる必要は無いと思って子供に教えない可能性もある。
「もっと才能のある人間がいるはずですと学院長にお伝えしたら、その可能性は高いが何分資金が足りないと言われました。
確かに、何もかもを行うための資金は膨大な額になると思います。
でも、少しの額から王都の中での周知や、近辺の街への周知をやっていって徐々に範囲を広げるのだったらそこまでお金も掛らないかも知れません。
その少しの額として、自分は今回メルタル師の魔道具を活用して作る商品の売り上げを基金へ寄付したいと思いますし、出来ることならばメルタル師の相続にの方にもメルタル師の術を活用することから生じる収入を寄付するよう説得したいと思っています」
アプレス氏がちょっと首をかしげて考え込んだ。
「ふむ。
収入を寄付するという考えは面白いな。
だが、私は宮廷魔術師だからメルタル師の術の研究が成功したとしてもその収入は国に帰属するモノで有り、それを寄付することは出来ぬ。
それに、周知をすると言っても今やっていることと何が違うというのだ?」
「ちょっとしたお祭りのようなモノを開いて、そこで魔術を使って子供の目を引くような見世物、例えば花火や妖精召喚なりを行って注意を引き、その場での周知や翌日神殿教室で魔術師と話すことが出来ると知らせておいて子供達が自発的に集まって話を聞こうとするよう仕向けるというのはどうでしょう?」
この方法は地方の街の方がやりやすいだろう。
王都では人口が多すぎるため、何カ所かに分けて行う必要があるし、事前の周知にしても手間と暇が掛るかも知れない。
だが、子供にとっての魔術師という存在のアピールは絶対に必要だろう。
俺みたいに、警戒用の魔術や侵入者拘束用の魔術を回避するために色々研究する必要があった裏社会に属する者以外だったら、魔術師なんぞとは殆ど縁がないのだ。
大人になれば家を買った際の固定化の術や、職場の警戒用の術等、それなりに魔術師も生活に関与してくるかもしれないが、大人になってからでは魔術師の訓練は難しい。
第一、孤児や貧困層の子供だったらその前に死んでいる可能性もそれなりに高いし。
にやりとアプレス氏が笑った。
「お祭りか。
それは面白い考えだな。
王都での催事だったらそれこそメルタル師に恩がある人間が手を貸すことで費用を下げることも出来るかもしれない。
そうだな、思っていたよりも実現性があるかも知れない。
俺の弟弟子にこういったことを企画するのが上手な人間がいる。まずそいつと話して案を練ろう」
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「自分は孤児です。王都の裏社会で何とか生きていましたが、偶然ハートネット学院長に出会って、彼が魔術学院に来いと言ってくれなければいつ野垂れ死んでも不思議では無い毎日から離れること出来なかった可能性が高いです。
一応読み書きが出来る程度には神殿の教室に通っていましたが、毎日通うだけの余裕はありませんでしたし、下町ではそんな子共は珍しくなかったです。
だから魔術院の奨学金制度のことを知らないまま、成人している才能のある子供は他にもそれなりに居ると思うのです」
あ~久しぶりの敬語って疲れるぜ。
「学院長は、王都では魔術学院の奨学金制度のことはそれなりに知られていると思われている為、神殿での声かけが徹底されていなかったから自分が知らぬまま過ごしていたのでは無いかと言っていましたが、知り合いに魔術師がいる人間以外にとって、魔術師とは馴染みがない職業です。
奨学金のことなども、本当にあるのかあまり信じて居ない場合もあるのでは無いでしょうか?
第一、それなりに魔力があるか、心眼が優れた人間で無い限り、自分が魔力持ちであると実感できない場合が多いでしょう。
ですからもっと才能のある子供を見つけるために手を広げるべきだと思ったのです」
まあ、実際の所、自分が魔力持ちであると実感できない程度の子供の才能がどの程度なのかは微妙に不明だが。
だが、絶対に魔力持ちでも俺みたいに金やコネが無いから魔術師になることを諦めている子供はそれなりに居るはずだ。
また、親が奨学金制度の事を知っていても、自分の職業を継いで貰いたいからよく分からない魔術師なんて言うモノに借金をしてなる必要は無いと思って子供に教えない可能性もある。
「もっと才能のある人間がいるはずですと学院長にお伝えしたら、その可能性は高いが何分資金が足りないと言われました。
確かに、何もかもを行うための資金は膨大な額になると思います。
でも、少しの額から王都の中での周知や、近辺の街への周知をやっていって徐々に範囲を広げるのだったらそこまでお金も掛らないかも知れません。
その少しの額として、自分は今回メルタル師の魔道具を活用して作る商品の売り上げを基金へ寄付したいと思いますし、出来ることならばメルタル師の相続にの方にもメルタル師の術を活用することから生じる収入を寄付するよう説得したいと思っています」
アプレス氏がちょっと首をかしげて考え込んだ。
「ふむ。
収入を寄付するという考えは面白いな。
だが、私は宮廷魔術師だからメルタル師の術の研究が成功したとしてもその収入は国に帰属するモノで有り、それを寄付することは出来ぬ。
それに、周知をすると言っても今やっていることと何が違うというのだ?」
「ちょっとしたお祭りのようなモノを開いて、そこで魔術を使って子供の目を引くような見世物、例えば花火や妖精召喚なりを行って注意を引き、その場での周知や翌日神殿教室で魔術師と話すことが出来ると知らせておいて子供達が自発的に集まって話を聞こうとするよう仕向けるというのはどうでしょう?」
この方法は地方の街の方がやりやすいだろう。
王都では人口が多すぎるため、何カ所かに分けて行う必要があるし、事前の周知にしても手間と暇が掛るかも知れない。
だが、子供にとっての魔術師という存在のアピールは絶対に必要だろう。
俺みたいに、警戒用の魔術や侵入者拘束用の魔術を回避するために色々研究する必要があった裏社会に属する者以外だったら、魔術師なんぞとは殆ど縁がないのだ。
大人になれば家を買った際の固定化の術や、職場の警戒用の術等、それなりに魔術師も生活に関与してくるかもしれないが、大人になってからでは魔術師の訓練は難しい。
第一、孤児や貧困層の子供だったらその前に死んでいる可能性もそれなりに高いし。
にやりとアプレス氏が笑った。
「お祭りか。
それは面白い考えだな。
王都での催事だったらそれこそメルタル師に恩がある人間が手を貸すことで費用を下げることも出来るかもしれない。
そうだな、思っていたよりも実現性があるかも知れない。
俺の弟弟子にこういったことを企画するのが上手な人間がいる。まずそいつと話して案を練ろう」
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