563 / 1,038
卒業後
562 星暦555年 青の月 30日 台所用魔道具(5)
しおりを挟む
「あ、この角度が良いわ!!」
ケレナが声をあげる。
「了解~」
シャルロが魔道具を弄って画像を調整してボタンを押した。
結婚式の当日に、式典とパレードの後に俺たちは記録用魔道具と魔石を回収して家に戻ってワインを片手にそれらを鑑賞したのだが、翌日の朝には早速反省会を開きたがった軍部に魔石を(俺ごと)取られてしまったので、実際に出版する為の画像の確定はまだ出来ていなかった。
我々が魔石を保持できるのは王太子夫婦が新婚旅行から帰ってくるまでという話になっているので、少なくとも5日は必要だと主張してやっと昨晩になって軍から魔石を回収できたのだが・・・。
女性陣が『良い!』という角度が沢山ありすぎて、一冊の本には纏まらないんじゃないだろうか。
それほど興味がないと思っていたシェイラも態々また王都に戻ってきたし。
まあ、少なくとも今回は細かい画像の出力をシャルロがやってくれているので俺はのんびり眺めているだけで良いんだけどさ。
幾ら軍部とのやり取りが妙に俺に集中しているからって、4日間丸ごとあちらに貸し出されて朝から晩までこき使われてきたのだ。
こっちの作業はシャルロとアレクに任せても文句は言わせない。
「そう言えば、父上と親しい公爵家がドリアーナの料理人たちを祝賀会の料理の為に雇ったから、デルブ夫人も手伝いに行ったじゃない?
撹拌機《ブレダー》の試作品をドリアーナの副料理長に試してもらうことが出来たんだって」
画像の出力を待っていたシャルロが、ふと報告した。
お?!
そう言えば、どっかの知り合いの家での祝賀会でうまくいったらドリアーナの人間に試作品を見せられるかもという話は聞いていたが、副料理長に見せられたとは凄いじゃないか。
「で、どうだって?」
「殺人的に忙しい祝賀会の準備の最中だったからね~。
取り敢えず、野菜とかの細切れや焼き菓子のベースを混ぜるのに便利だねという話になったけど、ドリアーナで使いたいと思うほどの品質かは確認できなかったってさ。
でも、元々ドリアーナは少数精鋭な食事処だからね。
大きなパーティとかの料理を請け負った際に、下準備を効率良くできたら外部の人間の助けを頼まないで済むから助かるかもって言っていたらしい。
だから今度、試作品を試してそれなりに使えそうだと思ったらそれの改良も一緒にやろうって提案したんだって」
シャルロがにんまりと笑った
おお~~~~!!!!
「じゃあ、試作品の改良とかで店の台所に押しかけて賄い食を食べられそう??!!」
思わず身を乗り出して聞いてしまった。
アレクも熱心に答えを待っていたから、身を乗り出したのは俺だけじゃなかったけど。
「料理長に相談してからって話だけど・・・賄い食さえ食べさせてもらえれば試作品の最終版は少なくとも一つはただであげて良いし、『ドリアーナ』の名前を売り文句にしたりしないって約束したから上手くいく可能性はそこそこあるんじゃない?
王太子の結婚式関連の祝賀会が沢山あったせいであの店もここ数日はいつも以上に滅茶苦茶に忙しかったらしいから、数日中に返事をくれるはずなんだ」
シャルロが嬉しそうに答えた。
「デルブ夫人に加えて俺達3人とも押し掛けて大丈夫なのか?
交代で一人ずつなんてことになると喧嘩が起きそうだが」
ふと、気になって訊ねた。
なんと言っても直近でドリアーナに行ったのは俺なのだ。
だから交代で行くなんてことになったら最後にされそうだ。
「幾ら少数精鋭って言ったって接客係も含めれば常に20人以上はドリアーナで働いているんだろうから、もう数人増えたってかまわないでしょ。
何だったら固定化の術とか適当な術の補強をついでにやってあげたら喜んでおまけでデザートもつけてくれるかもよ?」
シャルロが肩を竦めながら答えた。
つうかさ、お前さんの場合はデザートの方が大切なんじゃないの?
どう考えても撹拌機《ブレダー》の使用方法はスープとかの下準備用としてのよりも焼き菓子づくり用のに時間をかけてるのを知ってるぞ。
まあ、俺だって甘いものが嫌いな訳じゃあない。
ちょっと術をかけるだけでおまけが出るんだったら大歓迎だ。
ケレナが声をあげる。
「了解~」
シャルロが魔道具を弄って画像を調整してボタンを押した。
結婚式の当日に、式典とパレードの後に俺たちは記録用魔道具と魔石を回収して家に戻ってワインを片手にそれらを鑑賞したのだが、翌日の朝には早速反省会を開きたがった軍部に魔石を(俺ごと)取られてしまったので、実際に出版する為の画像の確定はまだ出来ていなかった。
我々が魔石を保持できるのは王太子夫婦が新婚旅行から帰ってくるまでという話になっているので、少なくとも5日は必要だと主張してやっと昨晩になって軍から魔石を回収できたのだが・・・。
女性陣が『良い!』という角度が沢山ありすぎて、一冊の本には纏まらないんじゃないだろうか。
それほど興味がないと思っていたシェイラも態々また王都に戻ってきたし。
まあ、少なくとも今回は細かい画像の出力をシャルロがやってくれているので俺はのんびり眺めているだけで良いんだけどさ。
幾ら軍部とのやり取りが妙に俺に集中しているからって、4日間丸ごとあちらに貸し出されて朝から晩までこき使われてきたのだ。
こっちの作業はシャルロとアレクに任せても文句は言わせない。
「そう言えば、父上と親しい公爵家がドリアーナの料理人たちを祝賀会の料理の為に雇ったから、デルブ夫人も手伝いに行ったじゃない?
撹拌機《ブレダー》の試作品をドリアーナの副料理長に試してもらうことが出来たんだって」
画像の出力を待っていたシャルロが、ふと報告した。
お?!
そう言えば、どっかの知り合いの家での祝賀会でうまくいったらドリアーナの人間に試作品を見せられるかもという話は聞いていたが、副料理長に見せられたとは凄いじゃないか。
「で、どうだって?」
「殺人的に忙しい祝賀会の準備の最中だったからね~。
取り敢えず、野菜とかの細切れや焼き菓子のベースを混ぜるのに便利だねという話になったけど、ドリアーナで使いたいと思うほどの品質かは確認できなかったってさ。
でも、元々ドリアーナは少数精鋭な食事処だからね。
大きなパーティとかの料理を請け負った際に、下準備を効率良くできたら外部の人間の助けを頼まないで済むから助かるかもって言っていたらしい。
だから今度、試作品を試してそれなりに使えそうだと思ったらそれの改良も一緒にやろうって提案したんだって」
シャルロがにんまりと笑った
おお~~~~!!!!
「じゃあ、試作品の改良とかで店の台所に押しかけて賄い食を食べられそう??!!」
思わず身を乗り出して聞いてしまった。
アレクも熱心に答えを待っていたから、身を乗り出したのは俺だけじゃなかったけど。
「料理長に相談してからって話だけど・・・賄い食さえ食べさせてもらえれば試作品の最終版は少なくとも一つはただであげて良いし、『ドリアーナ』の名前を売り文句にしたりしないって約束したから上手くいく可能性はそこそこあるんじゃない?
王太子の結婚式関連の祝賀会が沢山あったせいであの店もここ数日はいつも以上に滅茶苦茶に忙しかったらしいから、数日中に返事をくれるはずなんだ」
シャルロが嬉しそうに答えた。
「デルブ夫人に加えて俺達3人とも押し掛けて大丈夫なのか?
交代で一人ずつなんてことになると喧嘩が起きそうだが」
ふと、気になって訊ねた。
なんと言っても直近でドリアーナに行ったのは俺なのだ。
だから交代で行くなんてことになったら最後にされそうだ。
「幾ら少数精鋭って言ったって接客係も含めれば常に20人以上はドリアーナで働いているんだろうから、もう数人増えたってかまわないでしょ。
何だったら固定化の術とか適当な術の補強をついでにやってあげたら喜んでおまけでデザートもつけてくれるかもよ?」
シャルロが肩を竦めながら答えた。
つうかさ、お前さんの場合はデザートの方が大切なんじゃないの?
どう考えても撹拌機《ブレダー》の使用方法はスープとかの下準備用としてのよりも焼き菓子づくり用のに時間をかけてるのを知ってるぞ。
まあ、俺だって甘いものが嫌いな訳じゃあない。
ちょっと術をかけるだけでおまけが出るんだったら大歓迎だ。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる