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卒業後
560 星暦555年 青の月 18日 結婚式の映像記録(4)
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「この小型の空滑機《グライダー》は素晴らしいですね!!!
是非いくつか買わせてください!!」
昨日はパレードのルートを実際に使う馬車を走らせて予行演習をしていたのだが、今日は神殿の中での儀式の予行演習だった。
映像を記録した魔石を献上して利益を3割王家に差し出す代わりに神殿の中での儀式の様子も記録できることになったので、神殿内での映像を記録する役には王都の劇場で人気俳優の舞台の映像を記録して売り出しているフェルターノという男を雇うことにした。
やっぱ俺達じゃあイマイチどういう映像を記録すると良いのか分からないからね。
魔道具が揺れないように、最初に馬車に繋ぐ予定だった小型な空滑機《グライダー》を魔石で暫く浮かべられるように改造して提供したところ、フェルターノが物凄い興奮しまくった。
どうやら劇場で映像を記録する際も、魔道具を動かす時に手振れが起きるのが悩みの種だったらしい。
小型な空滑機《グライダー》に乗せて綱でゆっくり引っ張る分には殆ど揺れが無く滑らかに動くので、是非とも舞台での映像記録にも使いたいらしい。
まあ、売り上げが増えるのは大歓迎だから良いんだけどさ。
だけど、ちゃんと王太子の結婚式を良い感じに映像記録してくれよ?
光の神殿は極端に大きい訳ではないので、フェルターノは壁際で記録用魔道具を搭載した小型の空滑機《グライダー》を引っ張りながら王太子と王太子妃を追いかけることになった。
神殿長の前で誓いを捧げる場面では会衆席と前の開けた場所との間に別の記録用魔道具を設置して、もっと近くからの映像を記録できるようにする。
こちらは流石にその場でフェルターノが魔道具を弄るわけにはいかないので、飾り旗の上につけた回る円盤みたいなものを更に花で偽装して記録用魔道具をゆっくりと回して主役2人と神殿長、及び周囲の貴族や神官の様子を記録することになっている。
昨日のパレードでは近衛のお偉いさんが身代わりになって馬車に乗っていたのだが、今日の予行演習では『どうせ近いうちに同じことをするんだからついでに』ということでシャルロとケレナが身代わりになることになった。
シャルロはちょっと背が足りないので上げ底の靴を履き、ケレナは多少背が高すぎるので背筋を伸ばしすぎないようにと指示されていたが。
まあ、お蔭でどちらもすいすい素早く歩けず、実際の儀式の時のもったいぶった歩く速度に近くなったらしいので儀式の説明をしていた神官に褒められていたが。
そういう速度とかのことを考えたら王太子達だって練習が必要なんじゃないの??とシャルロに聞いたところ、今回の予行演習は警備上の穴を確認する為のもので、実際の儀式に関する予行演習は別にやっているんだそうだ。
神殿も大変だねぇ。
まあ、王太子の結婚式を行うなんて栄誉あることだし、これに影響を受けて他の貴族や金のある市民も結婚式に光の神殿を使いたがることに繋がるだろうから損はしないんだろうが。
「花婿・花嫁入場!」
アウヴァーン少佐の声が響き、神殿の扉がゆっくりと開いた。
3度目の挑戦だ。
「これで予行演習が終わりになると良いねぇ」
のんびりと椅子に座ってゆっくりと歩いてくるシャルロの姿を見ながら呟く。
なんと言っても王太子の結婚式だ。
何かがあっては困るので、軍部の暗殺部隊(?)かどうか知らないか何やら襲撃犯のような役割を負ったグループが攻撃を仕掛けられるかを試すので、シャルロに彼らの攻撃が届いた時点で近衛兵達が問題点を洗い直して警備体制を修正し、また繰り返すということをやっているので中々終わらない。
お蔭で上げ底の靴で何度もゆっくり歩く羽目になっているシャルロはかなり哀れな感じだ。
出力をバリバリに上げた王族用の防御用結界の魔道具を身に着けているので剣も矢も全部弾かれているが、王太子の結婚式に襲撃なんぞあっては近衛のメンツに関わるということで襲撃その物が発生した時点で『問題点』として話し合いに展開してしまうのだ。
お蔭で扉の前で馬車を降りてから神殿の中に入ってきて神殿長の前で誓いを行い、更に出て行って馬車に乗るまでの流れが長い事。
しっかし。
王太子の結婚式なんだから警備に穴が無いように最初から完璧を期すると思っていたんだけどねぇ。
「襲撃犯役のデザヌ大佐は凄腕で有名らしいからね。
どうやら今回は予行演習で襲撃の様子も記録が撮れることだしということで、思う存分若手を育てるために失敗させまくっているらしい」
アレクが俺のつぶやきに答えた。
なるほどね。
王太子の結婚式なんていう襲撃に絶好のチャンスともなるイベントなんてそうそうない。
若手を育てるために予行演習を利用しまくっているのか。
どうりで『予行演習での記録映像用にどうぞ』とやたらと沢山魔石を提供された訳だ。
シャルロも可哀想に。
是非いくつか買わせてください!!」
昨日はパレードのルートを実際に使う馬車を走らせて予行演習をしていたのだが、今日は神殿の中での儀式の予行演習だった。
映像を記録した魔石を献上して利益を3割王家に差し出す代わりに神殿の中での儀式の様子も記録できることになったので、神殿内での映像を記録する役には王都の劇場で人気俳優の舞台の映像を記録して売り出しているフェルターノという男を雇うことにした。
やっぱ俺達じゃあイマイチどういう映像を記録すると良いのか分からないからね。
魔道具が揺れないように、最初に馬車に繋ぐ予定だった小型な空滑機《グライダー》を魔石で暫く浮かべられるように改造して提供したところ、フェルターノが物凄い興奮しまくった。
どうやら劇場で映像を記録する際も、魔道具を動かす時に手振れが起きるのが悩みの種だったらしい。
小型な空滑機《グライダー》に乗せて綱でゆっくり引っ張る分には殆ど揺れが無く滑らかに動くので、是非とも舞台での映像記録にも使いたいらしい。
まあ、売り上げが増えるのは大歓迎だから良いんだけどさ。
だけど、ちゃんと王太子の結婚式を良い感じに映像記録してくれよ?
光の神殿は極端に大きい訳ではないので、フェルターノは壁際で記録用魔道具を搭載した小型の空滑機《グライダー》を引っ張りながら王太子と王太子妃を追いかけることになった。
神殿長の前で誓いを捧げる場面では会衆席と前の開けた場所との間に別の記録用魔道具を設置して、もっと近くからの映像を記録できるようにする。
こちらは流石にその場でフェルターノが魔道具を弄るわけにはいかないので、飾り旗の上につけた回る円盤みたいなものを更に花で偽装して記録用魔道具をゆっくりと回して主役2人と神殿長、及び周囲の貴族や神官の様子を記録することになっている。
昨日のパレードでは近衛のお偉いさんが身代わりになって馬車に乗っていたのだが、今日の予行演習では『どうせ近いうちに同じことをするんだからついでに』ということでシャルロとケレナが身代わりになることになった。
シャルロはちょっと背が足りないので上げ底の靴を履き、ケレナは多少背が高すぎるので背筋を伸ばしすぎないようにと指示されていたが。
まあ、お蔭でどちらもすいすい素早く歩けず、実際の儀式の時のもったいぶった歩く速度に近くなったらしいので儀式の説明をしていた神官に褒められていたが。
そういう速度とかのことを考えたら王太子達だって練習が必要なんじゃないの??とシャルロに聞いたところ、今回の予行演習は警備上の穴を確認する為のもので、実際の儀式に関する予行演習は別にやっているんだそうだ。
神殿も大変だねぇ。
まあ、王太子の結婚式を行うなんて栄誉あることだし、これに影響を受けて他の貴族や金のある市民も結婚式に光の神殿を使いたがることに繋がるだろうから損はしないんだろうが。
「花婿・花嫁入場!」
アウヴァーン少佐の声が響き、神殿の扉がゆっくりと開いた。
3度目の挑戦だ。
「これで予行演習が終わりになると良いねぇ」
のんびりと椅子に座ってゆっくりと歩いてくるシャルロの姿を見ながら呟く。
なんと言っても王太子の結婚式だ。
何かがあっては困るので、軍部の暗殺部隊(?)かどうか知らないか何やら襲撃犯のような役割を負ったグループが攻撃を仕掛けられるかを試すので、シャルロに彼らの攻撃が届いた時点で近衛兵達が問題点を洗い直して警備体制を修正し、また繰り返すということをやっているので中々終わらない。
お蔭で上げ底の靴で何度もゆっくり歩く羽目になっているシャルロはかなり哀れな感じだ。
出力をバリバリに上げた王族用の防御用結界の魔道具を身に着けているので剣も矢も全部弾かれているが、王太子の結婚式に襲撃なんぞあっては近衛のメンツに関わるということで襲撃その物が発生した時点で『問題点』として話し合いに展開してしまうのだ。
お蔭で扉の前で馬車を降りてから神殿の中に入ってきて神殿長の前で誓いを行い、更に出て行って馬車に乗るまでの流れが長い事。
しっかし。
王太子の結婚式なんだから警備に穴が無いように最初から完璧を期すると思っていたんだけどねぇ。
「襲撃犯役のデザヌ大佐は凄腕で有名らしいからね。
どうやら今回は予行演習で襲撃の様子も記録が撮れることだしということで、思う存分若手を育てるために失敗させまくっているらしい」
アレクが俺のつぶやきに答えた。
なるほどね。
王太子の結婚式なんていう襲撃に絶好のチャンスともなるイベントなんてそうそうない。
若手を育てるために予行演習を利用しまくっているのか。
どうりで『予行演習での記録映像用にどうぞ』とやたらと沢山魔石を提供された訳だ。
シャルロも可哀想に。
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