シーフな魔術師

極楽とんぼ

文字の大きさ
上 下
554 / 1,038
卒業後

553 星暦555年 青の月 5日 台所用魔道具

しおりを挟む
「そう言えばさ、シャルロの新居って料理人を雇うんだろ?
台所用に色々魔道具を設置してみて、使い勝手を確認してもらわないか?」
王都探知網の設置やその後の様々な魔術院からの依頼をこなし終えて、もうそろそろ次の開発は何にしようかを話し合っていた朝食の場で、ふと思いついたことを提案した。

ちなみに、王太子の結婚式の日付は先月の30日に正式発表され、準備のばたばたが終わったら直接の警備からは外れられた俺たちの日常は大分落ち着いてきた。

まあ、間際に変な襲撃の情報とかが入ってきたらまた駆り出されるんだろうが。

それはさておき。
シャルロの結婚式そのものは貴族の家同士の繋がりを貴族階級に広める形式的な儀式らしいので、俺たちは出席しないし、手伝いもいらないと言われている。
シャルロ本人すらあまり関与していないらしい。
ケレナは綺麗な服を見せびらかす(?)のも重要らしいのでそれに関連して色々と忙しいらしいが、シャルロの準備はもうほとんど終わっていると言っていた。
引越しの方は王太子の結婚式を待っている間にシャルロとケレナがコツコツと準備してきたのでもういつでも引っ越せる状態らしい。

「台所用の魔道具???」
シャルロが驚いたようにこちらを見ていた。
というか、アレクも驚いているか。

「いや~考えてみたらさ、俺がそんな侯爵クラスまで偉くなるのってまず無理じゃん?
そう考えたらドリアーナに魔道具を納品できるようになったら、偶にでもあそこの賄い食にでもありつけるようになるかな?なんて思って」
まあ、魔道具なんてそうしょっちゅう新規購入するとは思えないが、台所用の魔道具で『いいモノを作る』という評判を得られたら、オーダーを受けて詳細を詰めるために店で相談するよう話を持っていき、賄い食を食べさせてもらえるんじゃないか?

そう説明したら、二人に爆笑された。
「気が長いね~。
まあ、確かにあそこのお得意様リストに入るのにかかる時間よりは短いかもだけど。
だけど、どんな魔道具を作るの?」
シャルロがくつくつと笑いながら言った。

「知らん。
だから、取り敢えずシャルロの料理人に新居の台所でやる作業を聞いて、それをやるのに便利かもしれない魔道具を片っ端から作って使い勝手を聞いて改良して行ったらどうかと思ったんだけど」
肩を竦めながら答えた。

アレクの実家の料理人でも良いんだけど、シャルロの新居の方が近いからな。
第一、侯爵家と伯爵家の息子と娘の新居なんだ。きっと雇った料理人が出す料理もドリアーナが出すような物に近いのではないだろうか?

貴族と裕福な平民の料理がどう違うのか、良く知らんが。

つうか、考えてみたら普通の貴族の料理人だったらガキの頃に良く忍び込んだパーティなどで部屋の端に置いてあったブッフェテーブルに出してあったような長時間出しておくことを想定した料理なんかも多いんだろうが、パーティをしないシャルロのところだったら食事処であるドリアーナと似たようなものになる可能性は高い様にも思えるし。

・・・それとも、ドリアーナってああいうパーティ食も依頼されたら作るのか?

まあ、そこら辺はもっと後の話だな。
まずはシャルロの料理人に二人が引っ越してきたら毎日どんな作業を料理する為にするのか聞かないと。

「ドリアーナ程の店となれば下働きをしたい人間だって山ほどいるから魔道具が必要になるかは微妙な気がするが・・・まあ、料理用の魔道具を色々開発するのは商業的な意味でも悪くはないだろう。
シャルロ、君のところの料理人はいつから働き始めるんだい?」
アレクがパンを手に取りながら尋ねた。
どうやら台所用魔道具の開発という方向性に関しては異議はないらしい。

「今でもケレナと僕の口にあっているか確認する為とか言って新居で下働きの子達をしごきながら色々と料理を作ってるよ?」
シャルロが肩を竦めながら答えた。

へぇぇ。
主人(というか女主人の方が重要なのかも)の口に合うように前もって色々と試して準備するんだ。
流石、貴族の家は違うね~。
シャルロに言わせれば、結婚したらオレファーニ侯爵家を離れるし親父さんが提案した分家の子爵家の爵位を継ぐ話は断ったからもう貴族じゃないとのことだが、やっぱ生活習慣が違うね~。

・・・つうか、シャルロは魔術院の寮で自分の身の回りのことを自分で最低限するのを学んだけど、ケレナは大丈夫なのかね?

まあ、俺達もそれなりに儲けるようになってきたし、侯爵家ともなれば3男であろうとも何らかの資産や事業を分けてそれなりの生活レベルを保てるようにするんだろうから、ケレナの身の回りをするようなメイドぐらいは雇うんだろう。

それはともかく。
まずは台所用の魔道具だ。
既に色々作業をするようになっているのだったら、引越しを待たなくても何があったら便利か聞き込みも出来るだろうし!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

僕の義姉妹の本性日記

桜田紅葉
恋愛
いつものような毎日を義姉妹と送っていた主人公、橋本時也(はしもととしや)は儀姉妹、姉、橋本可憐(はしもとかれん)と、妹、橋本睦月(はしもとむつき)との日常を過ごす。 しかし、二人の意外な本性や心動きなどが見られる。 果たして時也はどうなるのか? しかし、彼に陰ながらも好意を持つ幼馴染、秋は一体どうなるのか

家事もろくにできないと見下されたうえ婚約破棄されてしまいました……

四季
恋愛
「君のような家事もろくにできない女性と生きていくことはできない。婚約破棄されてもらう」 婚約者ロック・アブローバはある日突然私にそう告げた。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

やり直ししてますが何か?私は殺される運命を回避するため出来ることはなんでもします!邪魔しないでください!

稲垣桜
恋愛
私、クラウディア・リュカ・クロスローズは、子供の頃に倒れて、前世が柏樹深緒という日本人だったことを思い出した。そして、クラウディアとして一度生きた記憶があることも。 だけど、私、誰かに剣で胸を貫かれて死んでる?? 「このままだと、私、殺されるの!?」 このまま死んでたまるか!絶対に運命を変えてやる!と、持ち前の根性で周囲を巻き込みながら運命回避のために色々と行動を始めた。 まず剣術を習って、魔道具も作って、ポーションも作っちゃえ!そうそう、日本食も食べたいから日本食が食べられるレストランも作ろうかな? 死ぬ予定の年齢まであと何年?まだあるよね? 姿を隠して振舞っていたら、どうやらモテ期到来??だけど、私……生きられるかわかんないから、お一人様で過ごしたいかな? でも、結局私を殺したのって誰だろう。知り合い?それとも… ※ ゆる~い設定です。 ※ あれ?と思っても温かい心でスルーしてください。 ※ 前半はちょっとのんびり進みます。 ※ 誤字脱字は気を付けてますが、温かい目で…よろしくお願いします。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

処理中です...