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卒業後
546 星暦555年 紺の月 23日 総動員(3)
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「配られた担当箇所の横に移動番号が書いてあるから、説明が終わったら各々自分の移動番号が書いてある軍の輸送馬車に乗って移動してくれ」
前に張り出した大きく拡大された紙の該当箇所を指さしながら、アンディが説明を始めた。
なるほど。
幾ら王都に設置するだけとは言え、王都の『周辺』に設置するのだ。
歩いて回っていたらどれだけ時間がかかるか分かったものじゃないし、年より連中だったらそんな体力もない。かといって辻馬車を使おうにも一気に何百人もの魔術師が辻馬車を捕まえようとしたら物凄い大混乱になるだろうと漠然と考えていたのだが、ちゃんと軍が輸送を担当してくれのね。
「馬車に既に設置する探知魔道具が載せてあるので、担当場所に着いたらそれを持って降りて、設置するように。
自分より先に誰かが隣接箇所で作業をしていたら、必ず設置場所の端にある起点と終点が隣接箇所の終点もしくは起点と繋がっていることを確認してから帰ってきてくれ。
作業が終わったら魔術院へ戻ってきて終了報告をしてもらうが、もしも隣接箇所への接続がちゃんと行われていなかった場合、連帯責任で両方の箇所の設置担当魔術師がもう一度戻って繋ぐことになるので、気を付けるように!
今晩から明日にかけて魔術院で設置の確認作業を行うから、呼び出しの可能性も考えてちゃんと連絡が取れるようにしておいてくれ」
アンディが続けた。
隣接部分との接続ねぇ。
重要だろうけど、絶対隣がまだ作業していないと思ってうっかり繋がずに帰る魔術師がいそうだな。
しっかし。
今回の作業は公的サービスのような物で報酬は微々たるものだから、うっかりちゃんとやってなくて報酬を貰い損ねても大したことは無いんじゃないか?
そう考えると適当にやって帰る魔術師が続出しそうだが。
「ちなみに、隣接箇所との接続をやっていなかった魔術師の名前は年末のパーティ会場の入り口に貼り出されるので覚悟しておいてほしい。
あと、設置そのものが劣悪だった場合は、他国に買収された容疑で軍の情報部に取り調べを受けることになるぞ」
そんな俺の思いは魔術院側も分かっていたのか、アンディが最後に脅しを付け加えた。
これには部屋の空気がざわりと動いた。
おお~。
国中の魔術師が集まる年末パーティで名前の貼り出しっていうのも中々だが、軍部による取り調べとは凄いね。
まあ、失敗して王太子の結婚式で何か問題が起きた場合は責任者の首が物理的に飛ぶんだろうから、それに加担した人間は例え過失からであろうと責任は問われるだろうし、意図的なものだとしたら確かに他国(もしくは国内の反政府勢力)から買収されたということになるんだからある意味取り調べを受けて厳重に罰せられるのは当然とも言えるか。
しっかし。
王都の周りに探知網を設置するのは大変だが、それを確認するのも大変そうだな。
魔術院のやつら、暫く家に帰れないんじゃないか?
今晩と明日で終わるとは思えないけど。
そんなことを考えながら会議室から出ようとしたら、アンディに腕をつかまれた。
「ちょっとついでに頼みたいことがあるんだ」
げ。
何か嫌な予感がする・・・。
「ウィルだったら探知網がちゃんと全部つながっているか、心眼《サイト》で視ればすぐに分かるだろ?
だから確認作業の指名依頼が出てるんだ」
アンディがにこやかに続けた。
おいおい。
そりゃあ、確認すること自体は比較的簡単だと思うぜ?
それ程集中する必要もないし、視るだけで済むから魔術院の魔術師が一々魔力を通して確認するよりずっと早いだろう。
だけど。
「王都の周り全部に張り巡らされた探知網を確認するのにどれだけ時間がかかると思ってるんだよ???」
物理的に、王都の周りを一周歩けなんて絶対嫌だぜ。
かといって、軍部の輸送馬車で軍人と一緒にパカパカと周るのも遠慮したい。
この際、王太子の結婚式という一大イベントなんだから魔術院の人間で頑張れよ~。
そんなことを考えていたら、アンディが思いがけないことを提案してきた。
「確認作業用に、空滑機《グライダー》で王都の低空を飛ぶ許可を軍部から取ってあるから。
空滑機《グライダー》で周ればなんとかなるだろ?」
空滑機《グライダー》か。
確かにあれで空を動くんだったら何とかなるかな?
清早に風の精霊の知り合いにでも協力を頼んでもらってゆっくり空を動くようにすれば、確認作業をしながら周っていけるかもしれない。
だが。
「一か所も問題が無ければ良いけど、どっかがちゃんと接続されていなかった場合どうやってその場所を知らせる?
一々問題箇所で降りていたら時間がかかるぜ?」
まあ、何箇所問題が見つかるかによるが。
王都の広さを考えたら1、2箇所では済まないだろう。
「位置追跡装置に同期させた魔石を準備しておくから、それを上から落としてくれればいいよ。
落とした際に通信機で連絡してくれれば、どこら辺にあるはずっていうのも分かるからすぐに確認と記録に人をやれるし。
大丈夫、何とかなるさ!
確認作業は設置作業が終わってからだからそれなりに開始が遅くなるんで、設置作業が終わったら一度帰ってご飯でも食べてて良いよ。
家まで帰るのが面倒だったら魔術院の傍で良かったら奢るよ?
夜間業務も含むから、報酬はそれなりに弾むし」
にこやかにアンディが言ってきた。
おい~。
俺一人、皆の作業が終わった後に一人寂しく空から確認作業をしろっていうのかよ。
魔術院の傍の一番高級な食事処で奢らせてやる!!!
前に張り出した大きく拡大された紙の該当箇所を指さしながら、アンディが説明を始めた。
なるほど。
幾ら王都に設置するだけとは言え、王都の『周辺』に設置するのだ。
歩いて回っていたらどれだけ時間がかかるか分かったものじゃないし、年より連中だったらそんな体力もない。かといって辻馬車を使おうにも一気に何百人もの魔術師が辻馬車を捕まえようとしたら物凄い大混乱になるだろうと漠然と考えていたのだが、ちゃんと軍が輸送を担当してくれのね。
「馬車に既に設置する探知魔道具が載せてあるので、担当場所に着いたらそれを持って降りて、設置するように。
自分より先に誰かが隣接箇所で作業をしていたら、必ず設置場所の端にある起点と終点が隣接箇所の終点もしくは起点と繋がっていることを確認してから帰ってきてくれ。
作業が終わったら魔術院へ戻ってきて終了報告をしてもらうが、もしも隣接箇所への接続がちゃんと行われていなかった場合、連帯責任で両方の箇所の設置担当魔術師がもう一度戻って繋ぐことになるので、気を付けるように!
今晩から明日にかけて魔術院で設置の確認作業を行うから、呼び出しの可能性も考えてちゃんと連絡が取れるようにしておいてくれ」
アンディが続けた。
隣接部分との接続ねぇ。
重要だろうけど、絶対隣がまだ作業していないと思ってうっかり繋がずに帰る魔術師がいそうだな。
しっかし。
今回の作業は公的サービスのような物で報酬は微々たるものだから、うっかりちゃんとやってなくて報酬を貰い損ねても大したことは無いんじゃないか?
そう考えると適当にやって帰る魔術師が続出しそうだが。
「ちなみに、隣接箇所との接続をやっていなかった魔術師の名前は年末のパーティ会場の入り口に貼り出されるので覚悟しておいてほしい。
あと、設置そのものが劣悪だった場合は、他国に買収された容疑で軍の情報部に取り調べを受けることになるぞ」
そんな俺の思いは魔術院側も分かっていたのか、アンディが最後に脅しを付け加えた。
これには部屋の空気がざわりと動いた。
おお~。
国中の魔術師が集まる年末パーティで名前の貼り出しっていうのも中々だが、軍部による取り調べとは凄いね。
まあ、失敗して王太子の結婚式で何か問題が起きた場合は責任者の首が物理的に飛ぶんだろうから、それに加担した人間は例え過失からであろうと責任は問われるだろうし、意図的なものだとしたら確かに他国(もしくは国内の反政府勢力)から買収されたということになるんだからある意味取り調べを受けて厳重に罰せられるのは当然とも言えるか。
しっかし。
王都の周りに探知網を設置するのは大変だが、それを確認するのも大変そうだな。
魔術院のやつら、暫く家に帰れないんじゃないか?
今晩と明日で終わるとは思えないけど。
そんなことを考えながら会議室から出ようとしたら、アンディに腕をつかまれた。
「ちょっとついでに頼みたいことがあるんだ」
げ。
何か嫌な予感がする・・・。
「ウィルだったら探知網がちゃんと全部つながっているか、心眼《サイト》で視ればすぐに分かるだろ?
だから確認作業の指名依頼が出てるんだ」
アンディがにこやかに続けた。
おいおい。
そりゃあ、確認すること自体は比較的簡単だと思うぜ?
それ程集中する必要もないし、視るだけで済むから魔術院の魔術師が一々魔力を通して確認するよりずっと早いだろう。
だけど。
「王都の周り全部に張り巡らされた探知網を確認するのにどれだけ時間がかかると思ってるんだよ???」
物理的に、王都の周りを一周歩けなんて絶対嫌だぜ。
かといって、軍部の輸送馬車で軍人と一緒にパカパカと周るのも遠慮したい。
この際、王太子の結婚式という一大イベントなんだから魔術院の人間で頑張れよ~。
そんなことを考えていたら、アンディが思いがけないことを提案してきた。
「確認作業用に、空滑機《グライダー》で王都の低空を飛ぶ許可を軍部から取ってあるから。
空滑機《グライダー》で周ればなんとかなるだろ?」
空滑機《グライダー》か。
確かにあれで空を動くんだったら何とかなるかな?
清早に風の精霊の知り合いにでも協力を頼んでもらってゆっくり空を動くようにすれば、確認作業をしながら周っていけるかもしれない。
だが。
「一か所も問題が無ければ良いけど、どっかがちゃんと接続されていなかった場合どうやってその場所を知らせる?
一々問題箇所で降りていたら時間がかかるぜ?」
まあ、何箇所問題が見つかるかによるが。
王都の広さを考えたら1、2箇所では済まないだろう。
「位置追跡装置に同期させた魔石を準備しておくから、それを上から落としてくれればいいよ。
落とした際に通信機で連絡してくれれば、どこら辺にあるはずっていうのも分かるからすぐに確認と記録に人をやれるし。
大丈夫、何とかなるさ!
確認作業は設置作業が終わってからだからそれなりに開始が遅くなるんで、設置作業が終わったら一度帰ってご飯でも食べてて良いよ。
家まで帰るのが面倒だったら魔術院の傍で良かったら奢るよ?
夜間業務も含むから、報酬はそれなりに弾むし」
にこやかにアンディが言ってきた。
おい~。
俺一人、皆の作業が終わった後に一人寂しく空から確認作業をしろっていうのかよ。
魔術院の傍の一番高級な食事処で奢らせてやる!!!
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