534 / 1,038
卒業後
533 星暦555年 紫の月 10日 重要な確認作業だよね(5)
しおりを挟む
ウィルの視点に戻ってます
----------------------------------------------------------------------------
「アレク~。
これに何が書いてあるのか、教えてくれ」
盗賊《シーフ》ギルドに行って愛人宅で見つけた金貨や宝石を長に渡し、愛人との別荘の場所の詳細を受け取って帰ってきた俺は作業場で何やら作業をしていたアレクを見つけて今日発見した書類と帳簿を渡した。
「なんだ、これ?」
「どこぞの子爵家に婿養子に入った商家の次男が、愛人との息子を子爵家の跡取りにしようとして愛人の存在だけでなく実家と子爵家両方から色々と横領していたことが発覚してね。
現在実家と子爵家の両方が隠し財産を調査中なんだけど、奥方側におまけとして雇われた。
発見した財産の3割5分が報酬になるから、1割払うんでよろしく~!」
傍にあった湯沸かし器に水を入れ、茶葉を棚から取り出しながらアレクに説明する。
「ああ。ガバルト商会の次男か」
既に離婚と横領騒動の話はそれなりに流れていたのか、アレクがあっさり婿養子の実家の名前を言った。
おお~。
悪評を嫌って、審議官を呼ばずに非公式にやっているって話だけどやはり商業ギルドでは話題になってるんだね。
まあ、お蔭で愛人との別荘に明日行っても泥棒と思われないで済むだろう。
もっとも別荘のある避暑地の方まで噂が流れているかは不明だが。
そう。
やはり婿養子は子爵家の別宅の傍に愛人との別荘を買っていたのだ。
・・・考えてみたら俺が訊ねるまで別荘の存在が発覚しなかったということは、既に発見されていた裏帳簿にこの別荘を買った資金の流れが出てきてなかったということかね?
そうなるとかなりの額の資金がこの『裏帳簿』から抜けていたことになる。
奥方が『もっとあるはず!』と主張したのも当然かも。
見つかっても構わない囮用の裏帳簿だったとか?
そんなものを準備しておくぐらい用心深いんだったら、自分の息子を跡取りになんて言う馬鹿な提案をしなければ全て発覚しないで済んだかもしれないのに。
自分の血を引く子供という話になると、エゴが絡んできて判断が狂うのかね?
俺が子供を持つことになるかは不明だが、子供が絡むと判断が狂うかもしれないという教訓として覚えておくことにしよう。
「こちらの書類は投資の権利書だな。
ほおう、この合弁会社に出資していたとは、ゴバルト家の次男は噂通りに目利き力はなかなかのものだったようだな。
こちらは・・・船の権利書だ。
アリスティア号は南回りの航路でかなり儲けていた船だから、東大陸への新規航路が発見されてどうなったかは知らないが・・・それなりに抜け目のない方向転換をした可能性が高いだろうな。
後は・・・凄いな、ザルガ共和国での事業免許証まであるじゃないか」
バラの書類の方に先に目を通しながらアレクが解説してくれた。
へぇ~。
船を丸まる所有できるほど金があったんだ。
確かにあの愛人宅にも宝石やら金貨やらが沢山あったが、大型の交易船となれば儲けは大きいが初期投資も大きい。
そんなものまで隠し持っていたとは凄いね。
事業免許証がどう凄いのかは分からないが。
「事業免許証って?」
「船を持っていれば、アファル王国以外を拠点にして事業が出来る。
だが外国資本に対する規制が厳しい国が多いから、通常は本国を拠点とするのが一番なんだよ。
その点ザルガ共和国は事業免許証さえあれば規制や課税の面で殆ど現地の商会と同じレベルで事業が出来るから、外国人にとっては事業を移転しやすい場所なんだ。
ただし、事業免許証がべらぼうに高いから気軽に入手できるものではないのだがな」
アレクが裏帳簿の方を手に取りながら説明してくれた。
へぇぇ。
つまり、船があって事業免許証があったということは、最悪の場合はアファル王国を抜け出してザルガ共和国に拠点を移すつもりだったのか。
高々不倫と横領なのに、随分と大がかりだなぁ。
この婿子爵ってよく旅行とかに出ていたのかね?
愛人宅に入り浸ろうと思ったらそれなりに留守にすることが多かっただろうが、ザルガ共和国にも拠点を持っているのだとしたら更に出ずっぱりになりそうだ。
まあ、戦時中以外は金さえ払えば転移門を使って日帰りで他国にだって行けるが。
後で魔術院に行って転移門の使用記録も確認しておくか。
---------------------------------------------------------------------------------------
婿養子氏はかなりの財産を横領しまくっていた様子
しかも発覚に備えて他国に資産の分散化までしていたという用意周到さは凄いかもw
----------------------------------------------------------------------------
「アレク~。
これに何が書いてあるのか、教えてくれ」
盗賊《シーフ》ギルドに行って愛人宅で見つけた金貨や宝石を長に渡し、愛人との別荘の場所の詳細を受け取って帰ってきた俺は作業場で何やら作業をしていたアレクを見つけて今日発見した書類と帳簿を渡した。
「なんだ、これ?」
「どこぞの子爵家に婿養子に入った商家の次男が、愛人との息子を子爵家の跡取りにしようとして愛人の存在だけでなく実家と子爵家両方から色々と横領していたことが発覚してね。
現在実家と子爵家の両方が隠し財産を調査中なんだけど、奥方側におまけとして雇われた。
発見した財産の3割5分が報酬になるから、1割払うんでよろしく~!」
傍にあった湯沸かし器に水を入れ、茶葉を棚から取り出しながらアレクに説明する。
「ああ。ガバルト商会の次男か」
既に離婚と横領騒動の話はそれなりに流れていたのか、アレクがあっさり婿養子の実家の名前を言った。
おお~。
悪評を嫌って、審議官を呼ばずに非公式にやっているって話だけどやはり商業ギルドでは話題になってるんだね。
まあ、お蔭で愛人との別荘に明日行っても泥棒と思われないで済むだろう。
もっとも別荘のある避暑地の方まで噂が流れているかは不明だが。
そう。
やはり婿養子は子爵家の別宅の傍に愛人との別荘を買っていたのだ。
・・・考えてみたら俺が訊ねるまで別荘の存在が発覚しなかったということは、既に発見されていた裏帳簿にこの別荘を買った資金の流れが出てきてなかったということかね?
そうなるとかなりの額の資金がこの『裏帳簿』から抜けていたことになる。
奥方が『もっとあるはず!』と主張したのも当然かも。
見つかっても構わない囮用の裏帳簿だったとか?
そんなものを準備しておくぐらい用心深いんだったら、自分の息子を跡取りになんて言う馬鹿な提案をしなければ全て発覚しないで済んだかもしれないのに。
自分の血を引く子供という話になると、エゴが絡んできて判断が狂うのかね?
俺が子供を持つことになるかは不明だが、子供が絡むと判断が狂うかもしれないという教訓として覚えておくことにしよう。
「こちらの書類は投資の権利書だな。
ほおう、この合弁会社に出資していたとは、ゴバルト家の次男は噂通りに目利き力はなかなかのものだったようだな。
こちらは・・・船の権利書だ。
アリスティア号は南回りの航路でかなり儲けていた船だから、東大陸への新規航路が発見されてどうなったかは知らないが・・・それなりに抜け目のない方向転換をした可能性が高いだろうな。
後は・・・凄いな、ザルガ共和国での事業免許証まであるじゃないか」
バラの書類の方に先に目を通しながらアレクが解説してくれた。
へぇ~。
船を丸まる所有できるほど金があったんだ。
確かにあの愛人宅にも宝石やら金貨やらが沢山あったが、大型の交易船となれば儲けは大きいが初期投資も大きい。
そんなものまで隠し持っていたとは凄いね。
事業免許証がどう凄いのかは分からないが。
「事業免許証って?」
「船を持っていれば、アファル王国以外を拠点にして事業が出来る。
だが外国資本に対する規制が厳しい国が多いから、通常は本国を拠点とするのが一番なんだよ。
その点ザルガ共和国は事業免許証さえあれば規制や課税の面で殆ど現地の商会と同じレベルで事業が出来るから、外国人にとっては事業を移転しやすい場所なんだ。
ただし、事業免許証がべらぼうに高いから気軽に入手できるものではないのだがな」
アレクが裏帳簿の方を手に取りながら説明してくれた。
へぇぇ。
つまり、船があって事業免許証があったということは、最悪の場合はアファル王国を抜け出してザルガ共和国に拠点を移すつもりだったのか。
高々不倫と横領なのに、随分と大がかりだなぁ。
この婿子爵ってよく旅行とかに出ていたのかね?
愛人宅に入り浸ろうと思ったらそれなりに留守にすることが多かっただろうが、ザルガ共和国にも拠点を持っているのだとしたら更に出ずっぱりになりそうだ。
まあ、戦時中以外は金さえ払えば転移門を使って日帰りで他国にだって行けるが。
後で魔術院に行って転移門の使用記録も確認しておくか。
---------------------------------------------------------------------------------------
婿養子氏はかなりの財産を横領しまくっていた様子
しかも発覚に備えて他国に資産の分散化までしていたという用意周到さは凄いかもw
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる