526 / 1,038
卒業後
525 星暦555年 赤の月 30日 確認作業は重要です(4)
しおりを挟む
「売上は良い感じに上がっていますし、パストン島に寄港する船の数も順調に増えています」
シェフィート商会の支店長のアイザードがお茶を出しながらパストン島の発展状況ついて話してくれた。
「が?
通信機では何か気になることがあるようなことを言っていたね」
アレクがお茶を受け取りながら尋ねる。
おや。
長閑な田舎の島なここでも問題があるのか。
ライバル商会の話だったら俺達がいるところで態々話題に載せるとは思えないから、海賊でも出るのかね?
シェフィート商会の船が襲われなくても、パストン島に行くルートで海賊が出るという噂が立ったらここに来る船が減ってしまうだろう。
・・・とは言え、そんな海賊がいたらさっさとアレグ島の軍艦が出てきそうなものだが。
アイザードが顔をしかめた。
「どうも緩い麻薬の様な物の流通が増えてきているようなのです。
船が入港すると船乗り相手に売人が商売をするせいで流通量が増えるのですが、入荷している船や勢力がはっきりしなくって・・・」
麻薬ねぇ。
あれは人の価値観を狂わせる上に体を壊し、最終的には周りまで巻き込んで滅茶苦茶にしかねないから危険だ。
アファル王国の本土だったらかなり厳しく取り締まりしているのだが、新しく開拓されているパストン島ではまだ取り締まるだけの人員がいないのだろうか。
・・・とは言え、それ程麻薬に金を掛けられるだけの資金的余裕が住民なり寄港する船員にあるとも思えないが。
「なんていう麻薬?
そこそこの頻度で来ているようなら、ここに僕たちがいる間に蒼流にそれを運んでいる船を見つけてもらってその販売網を潰せるかも」
シャルロがアイザードに尋ねた。
蒼流は麻薬が船に乗っていたら分かるんか??
まあ、蒼流の能力はでたらめだからなぁ。
もしかしたら風の精霊に頼んで麻薬の臭いの付いた船を見つけて貰うのかも知れないが。
「本国ではあまり聞かないタイプの麻薬で、基本的には薬味のように乾かして砕いた葉を食べ物や飲み物に混ぜて口にすると気分が良くなるようですね。
更に嵌まるとそれをパイプに入れて煙草のように吸うようです。
取り敢えず、露骨に禁断症状を示しているような人間はまだ出てきていないようですが、一部の港に居る人間の消費行動に異常が出てきています」
アイザードが箱から薬味のような砕かれた乾燥した葉の様な物を出して見せながら答えた。
・・・本国で見ない葉っぱタイプの麻薬ねぇ。
「もしかして、それって他から入荷しているじゃなくってパストン島のどこかで秘密に栽培しているんじゃ無いか?
さっきアレクが帳簿を調べている間にジャレットと話していたんだが、どうも最近防壁の外へ農作業の手伝いとして出ている人間の数と、実際に働いて支払を受けている人数が一致していないようなんだ」
ジャレットは他の国の勢力が勝手に拠点を作ろうとしているのでは無いかと心配していたが、この島は船が上陸するのに適した場所があまりない。
まあ、一次的に上陸して、拠点の人間と連動して港を攻め込んで島を占領するというのは有りかも知れないが・・・ガルカ王国が潰れた今となってはそこまで敵対的な行為をしたがる国があるのかは微妙だ。
ザルガ共和国はもっと搦め手で来るらしいし。
しかも、数日で船が来れる距離にアファル王国が軍事基地として使っているアレグ島があるのだ。
どう考えても、日帰りで出来る範囲の拠点程度でどうにかできる話では無いと思う。
だが、麻薬を育てていると言うのだったら話は変わる。
問題の麻薬がどの位早く育つのかは知らないが、南国タイプの植物だったら毎日の栽培に掛る時間はそこまで多くないだろう。
まだ島に居る人口だって少ないから、販売量だってたかが知れているだろうし。
大々的に収穫量を増やすつもりならばそれこそ拠点を別に作るかも知れないが。
・・・と言うか、大々的にやるつもりだったら一通り開拓が終わって、ジャレットのような真面目な開拓監督者が島を離れ、補給島の代官が島の責任者になった時点でそいつを買収して一緒に麻薬栽培と販売の商売を始めるのが一番だろうな。
補給島の代官だったらそこまで出世頭という訳では無いから買収しやすいだろうし、買収できなかった場合でも本国からかなり離れた島だから、あまり知られない病気にかかって本国に戻る羽目になっても不思議はない。
「僕たちの島で麻薬を育てるなんて、許せないね。
明日は早く起きて、空から空滑機《グライダー》で港町の外へ出る人間を見張ろう」
シャルロがむっとしたようにクッキーを手に取って割りながら、提案した。
そうだな。
折角屋敷船に空滑機《グライダー》も乗せてきたのだ。
街を出た人間を足でつけるよりも、上空高くから空滑機《グライダー》で見張った方が確実だろう。
俺達の島で麻薬を栽培するなんて、絶対に許さん。
------------------------------------------------------------------------------
まあ、この時点ではまだ麻薬を育てているかどうかは確定していないんですけどね。
シェフィート商会の支店長のアイザードがお茶を出しながらパストン島の発展状況ついて話してくれた。
「が?
通信機では何か気になることがあるようなことを言っていたね」
アレクがお茶を受け取りながら尋ねる。
おや。
長閑な田舎の島なここでも問題があるのか。
ライバル商会の話だったら俺達がいるところで態々話題に載せるとは思えないから、海賊でも出るのかね?
シェフィート商会の船が襲われなくても、パストン島に行くルートで海賊が出るという噂が立ったらここに来る船が減ってしまうだろう。
・・・とは言え、そんな海賊がいたらさっさとアレグ島の軍艦が出てきそうなものだが。
アイザードが顔をしかめた。
「どうも緩い麻薬の様な物の流通が増えてきているようなのです。
船が入港すると船乗り相手に売人が商売をするせいで流通量が増えるのですが、入荷している船や勢力がはっきりしなくって・・・」
麻薬ねぇ。
あれは人の価値観を狂わせる上に体を壊し、最終的には周りまで巻き込んで滅茶苦茶にしかねないから危険だ。
アファル王国の本土だったらかなり厳しく取り締まりしているのだが、新しく開拓されているパストン島ではまだ取り締まるだけの人員がいないのだろうか。
・・・とは言え、それ程麻薬に金を掛けられるだけの資金的余裕が住民なり寄港する船員にあるとも思えないが。
「なんていう麻薬?
そこそこの頻度で来ているようなら、ここに僕たちがいる間に蒼流にそれを運んでいる船を見つけてもらってその販売網を潰せるかも」
シャルロがアイザードに尋ねた。
蒼流は麻薬が船に乗っていたら分かるんか??
まあ、蒼流の能力はでたらめだからなぁ。
もしかしたら風の精霊に頼んで麻薬の臭いの付いた船を見つけて貰うのかも知れないが。
「本国ではあまり聞かないタイプの麻薬で、基本的には薬味のように乾かして砕いた葉を食べ物や飲み物に混ぜて口にすると気分が良くなるようですね。
更に嵌まるとそれをパイプに入れて煙草のように吸うようです。
取り敢えず、露骨に禁断症状を示しているような人間はまだ出てきていないようですが、一部の港に居る人間の消費行動に異常が出てきています」
アイザードが箱から薬味のような砕かれた乾燥した葉の様な物を出して見せながら答えた。
・・・本国で見ない葉っぱタイプの麻薬ねぇ。
「もしかして、それって他から入荷しているじゃなくってパストン島のどこかで秘密に栽培しているんじゃ無いか?
さっきアレクが帳簿を調べている間にジャレットと話していたんだが、どうも最近防壁の外へ農作業の手伝いとして出ている人間の数と、実際に働いて支払を受けている人数が一致していないようなんだ」
ジャレットは他の国の勢力が勝手に拠点を作ろうとしているのでは無いかと心配していたが、この島は船が上陸するのに適した場所があまりない。
まあ、一次的に上陸して、拠点の人間と連動して港を攻め込んで島を占領するというのは有りかも知れないが・・・ガルカ王国が潰れた今となってはそこまで敵対的な行為をしたがる国があるのかは微妙だ。
ザルガ共和国はもっと搦め手で来るらしいし。
しかも、数日で船が来れる距離にアファル王国が軍事基地として使っているアレグ島があるのだ。
どう考えても、日帰りで出来る範囲の拠点程度でどうにかできる話では無いと思う。
だが、麻薬を育てていると言うのだったら話は変わる。
問題の麻薬がどの位早く育つのかは知らないが、南国タイプの植物だったら毎日の栽培に掛る時間はそこまで多くないだろう。
まだ島に居る人口だって少ないから、販売量だってたかが知れているだろうし。
大々的に収穫量を増やすつもりならばそれこそ拠点を別に作るかも知れないが。
・・・と言うか、大々的にやるつもりだったら一通り開拓が終わって、ジャレットのような真面目な開拓監督者が島を離れ、補給島の代官が島の責任者になった時点でそいつを買収して一緒に麻薬栽培と販売の商売を始めるのが一番だろうな。
補給島の代官だったらそこまで出世頭という訳では無いから買収しやすいだろうし、買収できなかった場合でも本国からかなり離れた島だから、あまり知られない病気にかかって本国に戻る羽目になっても不思議はない。
「僕たちの島で麻薬を育てるなんて、許せないね。
明日は早く起きて、空から空滑機《グライダー》で港町の外へ出る人間を見張ろう」
シャルロがむっとしたようにクッキーを手に取って割りながら、提案した。
そうだな。
折角屋敷船に空滑機《グライダー》も乗せてきたのだ。
街を出た人間を足でつけるよりも、上空高くから空滑機《グライダー》で見張った方が確実だろう。
俺達の島で麻薬を栽培するなんて、絶対に許さん。
------------------------------------------------------------------------------
まあ、この時点ではまだ麻薬を育てているかどうかは確定していないんですけどね。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる