シーフな魔術師

極楽とんぼ

文字の大きさ
上 下
523 / 1,038
卒業後

522 星暦555年 赤の月 25日 確認作業は重要です

しおりを挟む
「パストン島に行かないか?」
汚染騒動が終わり、アレクに色々教わりながら3人で作成した国税局への申告も終わってまったりとしていた俺達に、アレクが提案してきた。

ちなみに、申告自体はアレクがやってくれたのだが、俺達もちゃんと理解しておけ!と言うことで説明を受けつつ手伝わされたのだ。
俺が留守の間に殆ど終わっているかもと密かに思っていたのだが・・・シェフィート商会側での俺達の商品の売り上げと俺達への報酬の集計にそれなりに時間が掛って、残念ながら俺が王都に帰って来てからが正念場だった。

というか、それが分かっていたから俺が1ヶ月ほどシェイラに付き合って遊びに行くのにアレクが文句を言わなかったんだろう。

想定外な汚染騒動のせいで俺とシャルロは色々バタバタ忙しくなり、結局かなりの部分の作業はアレクがやったのだが、それに関して毎晩説明を聞かされて確認作業をさせられた俺達はアレクよりも疲労困憊な状態だった気がする。
数字って苦手なんだよね~。
暫く睨んでいると、どれも同じに見えてくる。
まあ、実際は毎月の帳簿に月次の固定費とかも計上されているから、同じ数字があちこちにあるのは当然の事なんだけど。

「本当は訂正が必要な場合のことを考えて、国税局への申告の前に確認する方が良いんだが今年は確実に利益がでていないから後回しにした。
それでも早い段階で去年の分の計算書類に目を通して確認するべきだろう。
それに、もうすぐ春になるから何か開拓作業で手伝えることがあったら手伝っても良いし。
だから、都合が付きそうだったら近いうちにパストン島に行かないか?」
アレクがクッキーを手に取りながら提案した。

そうか。
考えてみたら俺達はパストン島の収益の一部には権利があるんだから、パストン島の収益の計算を確認する必要があるんだよな。
利益が出てきたら商業省に行けば利益分の資金を引き出せると聞いていたのだが、利益の計算の確認作業に関しては何も考えていなかった。

パストン島の収支計算に関しては誰かが横領したりしないように商業省が確認していると思っていたのだが、ちゃんと自分の収益に関しては自分で確認するべきなのだろう。

「良いねぇ。
気分転換も兼ねて、屋敷船を使ってケレナも一緒に行っても良い?」
シャルロがお茶を注ぎながら合意した。

おや?
シャルロとケレナは結婚準備で忙しいんだろうと思っていたのだが。
アレクも、俺と2人で行くことを考えていたんじゃ無いのか?
「結婚の準備で忙しいんだったら俺が清早に頼んで船を動かすぜ?」

シャルロが肩を竦めた。
「ドレスのデザインとか生地選びとか採寸は全部終わったからね。
家具ももう注文出したし。
今は注文したものが出来上がるのを待っているだけって感じで大分落ち着いてきたから、ちょっと気分転換に出かけるのも良いと思うんだ。
ケレナも親族の女性陣が色々と口出ししてきていい加減どっかに隠れたいって言っていたし。
結婚式って拘ったらきりがないから」

へぇ~。
伯爵令嬢の結婚式となると、親族の女性陣も色々と口出ししてくるのか。
でも、家具も服も注文してしまった後に口出しされても困るよなぁ。

「じゃあ、明日に食料品を積み込んで、明後日ぐらいにでも出るか?
考えてみたらパディン夫人が大丈夫か確認しないとだけど」
・・・というか、俺達よりもパディン夫人がそんなに身軽に王都を出れるか否かの方が問題じゃ無いか?
あっちは旦那とかがいるんだし。
旦那の仕事が暇なら気分転換に旦那も一緒に来てくれても良いけど。

流石にシェイラは先月一杯はヴァルージャの遺跡から離れていたので、今から休みを取るのは難しいだろうなぁ。
それでもまあ、一応夜に通信機で確認してみるか。



-----------------------------------------------------------

商業省がチェックしているから大丈夫と言っても、商業省に利益を誤魔化されないようにもチェックしないとですよね。
まあ、まだ誤魔化すような利益がない段階ですが。
でも、3人で魔術を使った貢献に関してもちゃんと計算して貰っていないと。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...