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卒業後
166 星歴552年 萌葱の月 4日 楽しい手伝い(5)
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「思ったよりも、この遺跡は隠し金庫が多いようだな」
今日の探索結果の見取り図を渡したら、ハラファが唸りながら呟いた。
先日の経験から、隠し金庫の場所は教えてやらねば分からないんだろうという事で街の見取り図を描く際に各家の隠し金庫の場所や家の中の簡単な目録(武器があるかとか、本棚の有無、台所用品の量など)も視えた物を簡単にメモって渡したらすごく喜ばれた。
ただ、ハラファにとって、俺が見た家ほぼ全部に隠し金庫があると言うのは想定外だったようだ。
「他の遺跡では隠し金庫ってあまり無いんですか?」
思わず尋ねてみる。金庫と云う言葉を使うと語弊があるが、基本的にどんな家だって隠し場所って有るもんじゃ無いかね?全財産を持ち運ぶのは重いし追い剥ぎやスリにあった時の危険が高すぎるが、かと言って財産を家に入った人が簡単に持っていけるような状態で置いておくのも危険だろう。
「いや、今まで隠し金庫なんて殆ど見つかっていないのだが・・・無かったのか、我々が見つける事が出来ていなかっただけなのか分からないから、何とも判断が難しくってね」
頭をかきながらハラファが答えた。
「他の遺跡には隠し金庫が無かったのにここにだけ多くあったとするなら、この街の方が他の遺跡よりも貨幣経済が発達していたと考えられる。物々交換の経済では持ち運べる財産が少なくなるから隠し金庫の必要も下がるだろう?
だが、他の遺跡にも隠し金庫があったのに我々が見つけられていなかっただけならそう云う仮定は間違っている。何とも判断が難しいところなんだよ」
なる程。元々発見と探索の条件そのものも違うから、比較して結論を導き出すのも難しい訳だ。
他の遺跡にも隠し金庫があったのかもしれないし、貨幣もいくつか残されていたのかもしれない。
だが、前者は研究者が見つけられていなかっただけかも知れないし、後者は遺跡を見付けた冒険家達に持ち去られた可能性も高い。
考古学と言うのは遺跡の発掘と研究は勿論重要だが、同時期若しくは近い時系列の遺跡との比較も重要なんだな。
「ところで、前から気になっていたんですけど、何だってこの遺跡シリーズって地下にあるんです?余計な手間をかける必要が何故あったのか、教えて貰えますか?以前、ここを発見した後に自分でも図書館で本を読み漁ってみたんですが、あまりはっきりとした答えが見つからなかったんですよね」
「それなんだよ!」
ハラファが俺の方へ掴みかからんばかりの勢いで振り向いた。
「それがオーパスタ神殿遺跡の最大の疑問なんだ。戦乱から守るために隠れていたのか、古の時代に存在したと言われている魔族から身を守る為の手段だったのか、自然の災害の危険が高かったのか、それとも他に何か理由があったのか、学会のメンバーの間でも仮説は山とあるんだが、どれかの説を決定付けるような証拠は見つかっていないんだ。
今回の殆ど手をつけられていないこの遺跡はこの謎を解く為の決定的な証拠を提供してくれるのではないかと非常に大きな期待を学会の方でも抱いているんだ」
とは言っても、何か説明が見出せるかもしれない書籍は量が多くて本棚一つでも魔術師一人の一生分ぐらいのかかりそうで、普通の家にしても隠し金庫の有無が変な風に疑問をかき立ててしまって大変なかんじだ。
隠し金庫のことは言わない方が良かったのかなぁ?
・・・じゃなきゃ、レディ・トレンティスの屋敷の側の以前から知られていた遺跡を調べ直して隠し金庫の場所がどの位あるのか教えてあげるべきなのだろうか。
俺としては何も入っていない可能性が高い隠し金庫のなぞを探すよりも、まだ発掘途中のこちらを探索するほうが楽しいのだが・・・。
ま、とりあえず明日まで考えておこう。
うまく行けば何か面白いものが今日見つかって金庫探しが不要になるかもしれないし。
ま、そんな素早い発見て基本的にないらしけど。
今日の探索結果の見取り図を渡したら、ハラファが唸りながら呟いた。
先日の経験から、隠し金庫の場所は教えてやらねば分からないんだろうという事で街の見取り図を描く際に各家の隠し金庫の場所や家の中の簡単な目録(武器があるかとか、本棚の有無、台所用品の量など)も視えた物を簡単にメモって渡したらすごく喜ばれた。
ただ、ハラファにとって、俺が見た家ほぼ全部に隠し金庫があると言うのは想定外だったようだ。
「他の遺跡では隠し金庫ってあまり無いんですか?」
思わず尋ねてみる。金庫と云う言葉を使うと語弊があるが、基本的にどんな家だって隠し場所って有るもんじゃ無いかね?全財産を持ち運ぶのは重いし追い剥ぎやスリにあった時の危険が高すぎるが、かと言って財産を家に入った人が簡単に持っていけるような状態で置いておくのも危険だろう。
「いや、今まで隠し金庫なんて殆ど見つかっていないのだが・・・無かったのか、我々が見つける事が出来ていなかっただけなのか分からないから、何とも判断が難しくってね」
頭をかきながらハラファが答えた。
「他の遺跡には隠し金庫が無かったのにここにだけ多くあったとするなら、この街の方が他の遺跡よりも貨幣経済が発達していたと考えられる。物々交換の経済では持ち運べる財産が少なくなるから隠し金庫の必要も下がるだろう?
だが、他の遺跡にも隠し金庫があったのに我々が見つけられていなかっただけならそう云う仮定は間違っている。何とも判断が難しいところなんだよ」
なる程。元々発見と探索の条件そのものも違うから、比較して結論を導き出すのも難しい訳だ。
他の遺跡にも隠し金庫があったのかもしれないし、貨幣もいくつか残されていたのかもしれない。
だが、前者は研究者が見つけられていなかっただけかも知れないし、後者は遺跡を見付けた冒険家達に持ち去られた可能性も高い。
考古学と言うのは遺跡の発掘と研究は勿論重要だが、同時期若しくは近い時系列の遺跡との比較も重要なんだな。
「ところで、前から気になっていたんですけど、何だってこの遺跡シリーズって地下にあるんです?余計な手間をかける必要が何故あったのか、教えて貰えますか?以前、ここを発見した後に自分でも図書館で本を読み漁ってみたんですが、あまりはっきりとした答えが見つからなかったんですよね」
「それなんだよ!」
ハラファが俺の方へ掴みかからんばかりの勢いで振り向いた。
「それがオーパスタ神殿遺跡の最大の疑問なんだ。戦乱から守るために隠れていたのか、古の時代に存在したと言われている魔族から身を守る為の手段だったのか、自然の災害の危険が高かったのか、それとも他に何か理由があったのか、学会のメンバーの間でも仮説は山とあるんだが、どれかの説を決定付けるような証拠は見つかっていないんだ。
今回の殆ど手をつけられていないこの遺跡はこの謎を解く為の決定的な証拠を提供してくれるのではないかと非常に大きな期待を学会の方でも抱いているんだ」
とは言っても、何か説明が見出せるかもしれない書籍は量が多くて本棚一つでも魔術師一人の一生分ぐらいのかかりそうで、普通の家にしても隠し金庫の有無が変な風に疑問をかき立ててしまって大変なかんじだ。
隠し金庫のことは言わない方が良かったのかなぁ?
・・・じゃなきゃ、レディ・トレンティスの屋敷の側の以前から知られていた遺跡を調べ直して隠し金庫の場所がどの位あるのか教えてあげるべきなのだろうか。
俺としては何も入っていない可能性が高い隠し金庫のなぞを探すよりも、まだ発掘途中のこちらを探索するほうが楽しいのだが・・・。
ま、とりあえず明日まで考えておこう。
うまく行けば何か面白いものが今日見つかって金庫探しが不要になるかもしれないし。
ま、そんな素早い発見て基本的にないらしけど。
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